記事の紹介

税務調査において、質問への不答弁や虚偽答弁、帳簿書類の提示拒否など、
いわゆる「検査忌避等」があった場合、
税務署や国税局ではどのような対応が取られているのでしょうか。

本記事では、東京国税局が発出した
「『検査忌避等事案調査票』の提出等について(指示)」を取り上げ、
質問検査権の行使に対する拒否・妨害行為が発生した場合の
内部報告手続や対応方針を整理・解説します。

特に本指示では、

  • 不答弁・虚偽答弁・検査拒否・検査妨害・検査忌避の具体例
  • 留守を装う、過度な日程制限、設備不提供などが検査忌避等に該当し得る点
  • 電子データの提示拒否や虚偽提出の取扱い
  • 税理士が検査忌避等に関与した場合の特別な取扱い
  • 税理士法上の責任や、局署横断的な情報管理の仕組み

といった、実務上見落とされがちな重要事項が詳細に示されています。

「任意調査」とされる税務調査の実態や、
最高裁判例(荒川民商事件)を踏まえた質問検査権の位置付けを理解するうえでも、
税務調査対応に携わる税理士にとって必読の内部資料です。

検査忌避等には、次のものが含まれるので注意が必要です。

虚偽と思われる多忙・来客・体調不良等を理由として検査を忌避

②留守を装うことや、留守電・連絡票に返答しないことにより検査を回避

③ 調査等の日数・時間を極端に限定することにより検査を忌避

④検査に必要な場所・設備・環境を用意しないことにより検査を忌避


東京国税局「検査忌避等事案調査票」の提出等について(指示)

標題のことについては、令和5年7月10日以降は、平成24年8月31日付東局課ー総2-30ほか5課共同「『検査忌避等事案調査票』等の提出について」指示によらず、下記のとおり適切に実施するよう周知徹底されたい。                                                                     

なお、国税徴収法に規定された質問検査権及び事業者等への協力要請について、令和5年度税制改正の内容は、令和6年1月1日以後に新たに滞納処分を開始する調査に係るものについて適用されることに留意されたい。

(趣旨)国税通則法、国税徴収法その他の税法に規定された質問検査権を行使する行為又は行使するために必要な行為(法定調書に係る法定監査を含む。以下「調査等」という。)の際に、不答弁、虚偽答弁など、調査等を担当する職員による質問・検査を拒否する行為(以下「検査忌避等」という。)があった場合の局への報告手続等を定めるものである。

第1     基本的な考え方

調査等の際に検査忌避等があった場合には、調査等が納税者等の理解と協力に基づき行われるものであることに鑑み、これまでも、納税者等に対して調査等への協力を繰り返し求めるなど適切な対応に努めてきたところである。

しかしながら、依然として調査等において検査忌避等は発生しており、こうした事例の中には、①当局からの再三にわたる協力要請にもかかわらず、正当な理由なく調査等への協力を一切拒否する、②取引先や従業員に対して調査等に協力しないよう働きかける、③税理士が積極的に検査忌避等に関与するなど、悪質性が高いと認められる事案も少なからず存在する。

よって、本指示は、引き続き検査忌避等に対しては毅然とした対応をとるとともに、検査忌避等に対する国税通則法、国税徴収法その他の税法における罰則規定の適用や税理士法上の対応も視野に入れた所要の対応を行うべく必要な情報の集積を図ることを指示するものである。なお、税務調査等に当たっては、引き続き納税者等の理解と協力を繰り返し求めることが必要であることに留意する。

第2     検査忌避等事案の報告等

1 報告対象事案

報告対象事案は、以下の行為があった事案とする。

なお、行為者は納税者(法人にあっては、代表者)に限らず、税務代理人のほか、法人においては経理費任者など代表者から調査等への対応を委任された者を含む。

(1) 不答弁

質問に対する答弁を拒否

(2)虚偽答弁

質問に対して虚偽の内容を答弁。???

(3)検査の拒否  

イ 任意調査であることやプライバシーを理由に検査を拒否

ロ 無予告調査・反面調査や前回調査への不満を理由に検査を拒否

ハ 調査理由の開示がないこと、第三者の立会いやビデオ撮影等が認められないことを理由に検査を拒否

(4)   検査の妨害

イ 帳簿書類の焼却、破棄、隠匿等により検査を妨害ロ 桐喝、暴言等により検査を妨害

ハ 事務室内への立入り等を妨害

— 取引先に対して反面調査に協力しないよう依頼・指示することにより検査を妨害

ホ 正当な理由のない抗議行動・抗議文等の提出により検査を妨害へ納税者又は従業員等への面接を拒否することにより検査を妨害

(5)検査の忌避

???虚偽と思われる多忙・来客・体調不良等を理由として検査を忌避

???留守を装うことや、留守電・連絡票に返答しないことにより検査を回避

ハ  調査等の日数・時間を極端に限定することにより検査を忌避

ニ 検査に必要な場所・設備・環境を用意しないことにより検査を忌避

(6)物件の提示・提出の拒否

イ   帳簿書類その他の物件の提示・提出(霊子データの閲覧やそのコピーデータの提出等を含む。)を拒否ロ 関係資料が国外に存在することや、外国法人との間の守秘義務契約などを理由に、資料の提示を忌避・引き延ばし

(7)物件の提示・提出の要求への虚偽提出

帳簿書類その他の物件の提示・提出(竜子データの閲覧やそのコピーデータの提出等を含む。)に対して、偽りの記載又は記録をしたものを提出???

(8)特定事業者等への報告の求め(国税通則法第74条の7の2)の拒否・虚偽提出

国税通則法第74条の7の2に基づく特定事業者等への報告の求めに対して、報告を拒否又は偽りの内容を報告

(9)事業者等への協力要請(国税通則法第74条の12等)の拒否

事業者・官公庁に対して国税通則法第74条の12又は国税徴収法第146条の2に基づき行われた協力要請を正当な理由なく拒否

(10)その他

調査等を妨げる目的で行われたと思われる上記以外の行為(例:公務執行妨害や執拗な罵倒・暴言等)

(注)1???

2     報告対象事案が上記(9)に該当する場合において、令和元年12月18日付東局課ー総5-94「特定事業者等への報告の求めに係る事務実施要領の制定について」事務運営指針に基づき「事業者等への協力要請に関する対応状況表」(以下「対応状況表」という。)を作成している場合には、当該対応状況表を調査票に添付することで、調査票の記述を一部省略しても差し支えない。

2 報告手続

局署において、調査等を実施する部署(以下「調査等実施部署」という。)は、上記1に掲げる報告対象事案が発生した場合には、速やかに別紙1「検査忌避等事案調査票」(以下「調査票」という。)を作成し、その詳細が明らかになる害類一を添付した上で、文害管理システムで次表のとおり報告する。

なお、税理士が検査忌避等に関与するなど特に悪質性が高く速やかな対応が必要と思われる事案については、その後の庁局主管課による調査展開等

の指示の機会が逸されぬよう、調査票の作成を待たずに適宜の方法によって第一報を報告することとする。

(注) 報告後、納税者等の対応に改善等が認められた場合には、速やかにその旨を報告先に連絡する。

3 検査忌避等への対応の留意点

① 過去の調査状況等から、今回の調査等において検査忌避等を行う可能性がある事案においては、必要に応じて記録役を同行させる等の対応を講ずる。

② 検査忌避等があった場合でも、その後の課税処理(更正・決定等)や滞納処分に必要な直接証拠の収集・保全に努めるほか、検査忌避等の詳細(日時、場所、相手方、当局からの要請内容、納税者の主張等)について確実に記録を残すことに留意する。その際、検査忌避等の内容について、???当該文書の添付資料等として保存する。

③ 検査忌避等を行う者に対しては、「質問検査権の相手方はこれを受忍すべき義務を一般的に負うと解されており、質問・検査を拒む等の行為をした場合の罰則も規定されていること」を確実に説明した上で、改めて調査等への理解と協力を要請する。???

ただし、国税通則法第74条の12又は国税徴収法第146条の2に基づく事業者等への協力要請が拒否された場合においては、当該要請はあくまで任意の協力要請として実施しているものであって罰則は規定されていないことから、当該説明は行わないことに留意する。???

おって、税理士が検査忌避等に関与している場合には、税理士法上の規定に抵触するおそれがあることについても併せて確実に説明する。

[参考】最高裁昭和48年7月10日決定(荒川民商事件最高裁決定)

…前記規定に基づく質問検査に対しては相手方はこれを受忍すべき義務を一般的に負い、その履行を間接的心理的に強制されているものであって、ただ、相手方においてあえて質問検査を受忍しない場合にはそれ以上直接的物理的に右義務の履行を強制しえないという関係を称して一般に「任意調査」と表現されているだけのことであり…

④ 調査等を行うための接触自体を拒む者に対しては、必要に応じて害面等により、調査等への協力要請を行う。その際には、①内容証明郵便を利用するなどして、国税通則法等に基づく質問・検査への協力を当局として要請した事実・内容を確実に記録すること、②調査等への協力ができないことにつき特段の理由がある場合には、その旨及び理由を記載して返送することを期限を付して求めるなど、質問検査権の行使を明確に拒否等したという事実を証拠化する。

第3     税理士が検査忌避等に関与する事案の留意事項等

1 税理士等情報せんとの関係

本指示に基づく調査票を作成する事案において、税理士が検査忌避等に関与している場合には、平成14年7月25日付総総第617号「『関係各部課及び税務署から税理士監理官への情報提供要領』の制定について」事務運営指針に基づき、税理士等情報せんを作成する。

なお、作成した当該情報せんを添付することで、調査票の記述を一部省略しても差し支えない。

2 検査忌避等に関与した税理士に関する局署横断的な情報管理の実施

検査忌避等に関与した税理士は他の事案においても検査忌避等に関与する可能性が高いことを踏まえ、自局署管外の税理士が関与している納税者に対して調査等を実施する場合において、必要な調査等体制を構築すべきかあらかじめ判断することができるようにする観点から、以下のとおり情報管理を行う。

① 検査忌避等に税理士が関与しており、当該税理士が他の事案においても検査忌避等に関与する可能性が高いと判断した場合には、調査票の所定欄にその旨を記載する。

② 上記①の記載がある調査票の提出を受けた庁課税総括課は、当該税理士についての検査忌避等の状況管理票を作成し、当該管理票を資料調査システムに「ファイル登録対象資料(その他(資料識別コード805))」として登録する。

③ 調査等実施部署は、必要に応じ、別紙2「検査忌避等の状況管理票の検索方法の例」に記載された方法によって、調査等を予定している事案に係る税理士が検査忌避等に関与する可能性が高い者かを確認し、記録役の同行など所要の調査等体制の構築等の要否を検討する。

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