国税庁や税務署に対して、意見・要望・苦情を申し入れた場合、
その声は内部でどのように記録され、どの部署に回付され、最終的にどのように処理されるのでしょうか。
本記事では、この点について、
平成12年7月3日付で制定された
国税庁「『意見・要望等記録書の処理要領』の制定について(事務運営指針)」を取り上げ、
意見・要望等記録書の作成基準から、署・局・庁それぞれの処理手続、検討結果の連絡、公表に至るまでの内部フローを詳細に整理・解説します 。
この処理要領は、単なる事務マニュアルにとどまらず、
- 納税者等の声をどの段階で「改善の検討対象」とするのか
- 局限りで判断できない事項がどのように庁へエスカレーションされるのか
- 意見・要望が実際に事務運営の改善や公表事項につながる仕組み
といった、**税務行政の「内側の意思決定構造」**を読み解く重要資料です。
国税庁ホームページの「ご意見・ご要望」や、窓口・電話等で申し出た内容が、
決して場当たり的に処理されているわけではなく、制度的・階層的に管理されていることが、本指針から明らかになります。
税務行政の透明性や説明責任に関心のある方はもちろん、
税理士・研究者・実務家にとっても、行政運営を理解する基礎資料として有用な内容です。
平成12年7月3日付の国税庁「『意見・要望等記録書の処理要領』の制定について(事務運営指針)」(官広1-12。最終改正。令和3年7月1日官広3 - 5)の紹介です。
意見・要望等記録書の処理要領
1 目的
本事務運営指針は、平成24 年6月26 日付官広1-11 ほか26 課共同「『広報広聴事務運営要領』の制定について(事務運営指針)」に基づき処理することとなっている意見・要望等について、庁局署の関係部署への連絡が的確に行われるよう、その処理要領を定めたものである。
2 用語の意義
記録書
本事務運営指針の「意見・要望等記録書」(様式第1号)をいう。
送付書
本事務運営指針の「意見・要望等送付書」(様式第2号又は第3号)をいう。
改善等の検討結果
国税局(沖縄国税事務所を含む。以下「局」という。)又は国税庁(以下「庁」という。)の担当課における記録書の検討結果のうち、
①改善の予定がある場合又は既に改善措置等がとられているもの
②事務運営の改善等を具体的に検討していくこととしたもの
をいう。
聴取部署
庁、局及び税務署(以下「署」という。)において、納税者等から税務行政に対する意見・要望等を聴取し、記録書を作成した課、室及び部門等をいう。
取りまとめ部門等
署の総務課、税務広報広聴官、酒類指導官、管理運営部門、徴収部門、個人課税部門、資産課税部門及び法人課税部門の第一部門(これらの課、部門等が所掌する事務を担当する独立した部門等がない署における当該事務を担当する者が属する課、部門等及び署派遣納税者支援官を含む。)並びに業務センター室(分室を含む。以下「センター」という。)の総括・監査グループ(コール・調査支援グループの単独設置センターにおいては、当グループ。以下同じ。)をいう。
担当課
記録書に記載された意見・要望等の内容を所掌する、庁及び局(センターを除く。)のそれぞれにおける課、室等(複数の課、室等が事務を所掌している場合には、取りまとめを行う課、室等)及び署又はセンターにおける取りまとめ部門等をいう。
関係課
庁、局及び署のそれぞれにおいて、担当課以外に、記録書に記載された意見・要望等の内容を参考とすべき課、室、部門等がある場合に、当該課、室、部門等(署及びセンターにおいては、取りまとめ部門等に限る。)をいう。
広聴担当部署
署にあっては税務広報広聴官(非設置署にあっては総務課。以下同じ。)、局にあっては国税広報広聴室(沖縄国税事務所にあっては国税広報広聴官。以下同じ。)、庁にあっては広報広聴室をいう。
3 処理の通則
⑴ 記録書の作成基準等
庁、局及び署の職員は、納税者等から税務行政に対する意見・要望等を聴取した場合には、別添1「記録書の作成基準」により、記録書を作成し、庁局署の関係部署へ的確に連絡する(別添2-1「意見・要望等記録書のフローチャート」及び別添2-2「意見・要望等記録書のフローチャート(センター用)」参照)。
また、意見・要望等の内容が、既に改善等の措置済みであるものなど、当方の見解を説明することができる場合には、可能な限りその場で説明し理解を求めるよう努める(説明の結果、申出者の理解を得られた場合は、記録書の作成は要しない。)。
なお、意見・要望等に対し、至急回答を要すると認められる場合は、本事務運営指針によらずに、直ちに庁又は局に連絡し協議するなど、迅速かつ誠実な対応に努める。
⑵ 記録書の編てつ、整理
庁、局及び署において作成した記録書は、庁にあっては広報広聴室、局(センターを除く)にあっては国税広報広聴室、センターにあっては総括・監査グループ、署にあっては税務広報広聴官が原義を保管する。
これらの部署が記録書の検討結果に関する連絡を受けた場合には、その内容について、記録書の補完記入、資料追加など適宜の方法により、記録書を整理する。
なお、記録書の検討結果に関しては、必要に応じて、担当課においても庁・局間又は局・署間の連絡を行うが、記録書の内容の特定が円滑に行われるよう整理することに留意する。
4 署における記録書の処理手続
⑴ 記録書の作成及び署広聴担当部署への提出
署において、記録書を作成した場合には、作成した部門等の取りまとめ部門等を通じて、速やかに署広聴担当部署に提出する。
⑵ 署広聴担当部署における記録書の集約及び署担当課等への回付
署広聴担当部署は、提出を受けた記録書及び署広聴担当部署が作成した記録書又はセンターから回付を受けた記録書について、聴取部署以外に署担当課又は署関係課がある場合には、その写しを参考として回付する。
署担当課は、回付された記録書における意見・要望等の内容について、既に改善措置等がとられている場合又はその予定がある場合には、記録書の「意見の内容」欄に簡記して、速やかに署広聴担当部署に連絡し、連絡を受けた署広聴担当部署は、取りまとめ部門等を通じて聴取部署にその内容を連絡する。
⑶記録書の局への提出
署広聴担当部署は、提出を受けた記録書(既に改善措置等がとられているものを除く。)及び署
広聴担当部署が作成した記録書の写しに送付書を添付して速やかに局広聴担当部署に提出する。
⑷ 局から連絡を受けた記録書の検討結果の処理
イ 署広聴担当部署における処理
署が作成し局に提出した記録書に関し、局広聴担当部署から検討結果の連絡を受けた場合には、その内容に基づき記録書を整理し、速やかに署担当課及び取りまとめ部門等を通じて聴取部署に連絡する。
特に、意見・要望等の検討結果について、申出者が回答を求めている場合には、検討結果の連絡を受けた後、速やかに聴取部署に連絡する。
なお、他署等が作成した記録書に関し、局広聴担当部署から参考として検討結果の連絡を受けた場合には、同様の内容の意見・要望等の処理の際の参考とする。
ロ 署担当課における処理
署広聴担当部署から連絡を受けた内容に応じ、必要な措置を講ずる。
なお、署担当課が局担当課から直接連絡を受けた場合には、その内容を署広聴担当部署を通じて聴取部署に連絡するとともに、必要な措置を講ずる。
ハ 聴取部署における処理
署広聴担当部署等から連絡を受けた検討結果のうち、申出者から回答を求められたものについて、速やかに申出者に対する説明を行う。また、改善等の検討結果については、機会を捉えて申出者に対する説明を行うなど誠実な対応に努める。
5 センターにおいて作成した記録書の処理手順
⑴ 記録書の作成及び局企画課への提出
センターにおいて、記録書を作成した場合には、取りまとめ部門等を通じ、記録書の写しに送付書を添付して速やかに局企画課に提出する。
⑵ センターにおける署広聴担当部署への回付
センターは、作成した記録書について、署担当課又は署関係課がある場合には、その写しを当該署の広聴担当部署へ参考として回付する。
⑶ 局企画課における記録書の集約及び局広聴担当部署への提出
局企画課は、提出を受けた記録書(既に改善措置等がとられているものを除く。)を集約し、速やかに局広聴担当部署に提出する。
⑷ 局広聴担当部署から連絡を受けた記録書の検討結果の処理
イ 局企画課における処理
センターから局企画課を通じて提出した記録書に関し、局広聴担当部署から検討結果の連絡を受けた場合には、速やかに取りまとめ部門等を通じて聴取部署に連絡する。
特に、意見・要望等の検討結果について、申出者が回答を求めている場合には、検討結果の連絡を受けた後、速やかに聴取部署に連絡する。
なお、他のセンター等が作成した記録書に関し、局広聴担当部署から参考として検討結果の連絡を受けた場合には、同様の内容の意見・要望等の処理の際の参考とする。
ロ 聴取部署における処理
局企画課から連絡を受けた検討結果のうち、申出者から回答を求められたものについて、速やかに申出者に対する説明を行う。また、改善等の検討結果については、機会を捉えて申出者に対する説明を行うなど誠実な対応に努める。
6 局(センターを除く)における記録書の処理手続
⑴ 記録書の作成及び局広聴担当部署への提出
局内各課室(センターを除く。以下6において同じ。)において記録書を作成した場合には、速やかに局広聴担当部署に提出する。
⑵ 局広聴担当部署における記録書の集約及び局担当課等への回付
局広聴担当部署は、署広聴担当部署、企画課(センターから提出を受けたものに限る。)又は局内各課室から提出を受けた記録書及び局広聴担当部署が作成した記録書を集約、整理し、局内で検討を要するものと明らかに局限りで判断できないもの(※)に区分し、局内で検討を要するものは、その写しを速やかに局担当課に回付する。
また、局広聴担当部署が集約した記録書は、局関係課に参考としてその写しを回付する。
なお、記録書の内容が、他局に関するものである場合には、局広聴担当部署は、他局の局広聴担当部署にその写しを回付する。
(※)明らかに局限りで判断できないものの例示は、次のとおり(なお、判断に迷う場合については、「局内で検討を要するもの」として扱う。)。
・税制・通達の改正に関すること
・庁で作成している書類(申告書・届出書等、手引き、パンフレット等)の様式・記載要領に関すること
・国税庁ホームページ(各局のコーナーを除く。)に関すること
・国税電子申告・納税システム(e-Tax)に関すること
・他省庁の所管に関すること(税務行政に関連のない事項は除く。)
⑶ 局担当課における記録書の内容の検討及び局広聴担当部署への連絡
局担当課は、記録書の回付を受けてから2週間以内を目途にその検討結果について、次のいず
れに該当するか局広聴担当部署に連絡する。
イ 改善の予定がある場合又は既に改善措置等がとられている場合
ロ 当該意見・要望等の内容に、全国的な事務運営の施策に関わる要望等、局限りでは判断できない事項が含まれている場合
ハ 局において事務運営の改善等を具体的に検討していくこととした場合
ニ 今後の事務運営等の参考とする場合
ホ その他(上記イ~ニ以外)
検討結果がイに該当する場合には、原則として、庁ホームページ局コーナーで公表するため、当該改善措置等に関する公表文を作成し、併せて連絡する。
検討結果がハに該当する場合及びニ又はホに該当し、その検討結果について局担当課が署又はセンターと情報共有を図る必要があると認めた場合には、その検討内容を併せて局広聴担当部署に連絡する。
また、必要に応じて、局担当課は、記録書の検討結果の内容を署又はセンターの担当課に連絡する。
⑷ 記録書の検討結果の署広聴担当部署等への連絡
局担当課から連絡を受けた局広聴担当部署は、必要に応じて、検討結果の内容について局担当課と協議するとともに、記録書の検討結果を署広聴担当部署又は局聴取部署に連絡する。
特に、意見・要望等の検討結果について、申出者が回答を求めている場合には、検討結果の連絡を受けた後、速やかに署広聴担当部署又は局聴取部署に連絡する。
なお、検討結果の連絡を受けた局聴取部署は、申出者から回答を求められた検討結果について、速やかに申出者に対する説明を行う。また、改善等の検討結果については、機会を捉えて申出者に対する説明を行うなど誠実な対応に努める。
おって、局広聴担当部署は、必要に応じて記録書作成署以外の署広聴担当部署に参考として記録書の検討結果を連絡する。
⑸ 記録書の庁への提出
局広聴担当部署は、上記 において、明らかに局限りで判断できないものとした記録書及び局担当課の検討結果が上記⑶ロに該当するものとされた記録書について、毎月月末までに連絡を受けた分を取りまとめ、送付書を添付して翌月15 日までに庁広聴担当部署に提出する。
なお、局担当課の検討結果が上記⑶ロ以外に該当するものとされた記録書については、年度末までに連絡を受けた分を取りまとめ、送付書を添付して翌年度の4月30 日までに庁広聴担当部署に提出する。
⑹ 庁から連絡を受けた記録書の検討結果の処理
イ 局広聴担当部署における処理
上記⑸において、庁に提出した記録書に関し、局広聴担当部署が庁広聴担当部署から検討結果の連絡を受けた場合には、その内容を記録書に整理し、上記⑷に準じた処理を行う。自局以外の記録書の検討結果について、庁広聴担当部署から参考として検討結果の連絡を受けた場合には、同様の内容の意見・要望等の処理の際の参考とする。
ロ 局担当課における処理
局広聴担当部署から連絡を受けた内容に応じ、必要な措置を講ずる。
局担当課が庁担当課から直接連絡を受けた場合には、局担当課は、その内容により必要な措置を講ずる。局担当課が聴取部署でない場合には、局担当課はその内容を署担当課又は署広聴担当部署を通じて署聴取部署に連絡する。
ハ 聴取部署における処理
上記⑷に準じた処理を行う。
7 庁における記録書の処理手続
⑴ 記録書の作成及び庁広聴担当部署への提出
庁内各課室において記録書を作成した場合には、速やかに庁広聴担当部署に提出する。
⑵ 庁広聴担当部署における記録書の集約及び庁担当課等への回付
庁広聴担当部署は、局又は庁内各課から提出を受けた記録書及び庁広聴担当部署が作成した記録書を集約、整理し、庁内で検討するものは、その写しを速やかに庁担当課に回付するとともに、庁関係課に参考としてその写しを回付する。
⑶ 庁担当課における記録書の内容の検討及び庁広聴担当部署等への連絡
庁担当課は、記録書の回付を受けてから2週間以内を目途にその検討結果について、次のいずれに該当するか庁広聴担当部署に連絡する。
イ 改善の予定がある場合又は既に改善措置等がとられている場合
ロ 庁において事務運営の改善等を具体的に検討していくこととした場合
ハ 今後の事務運営等の参考とする場合
ニ その他(上記イ~ハ以外)
なお、イに該当する場合には、原則として、庁ホームページで公表するため、当該改善措置等に関する公表文を作成し、併せて連絡する。
また、ロに該当する場合、及びハ又はニに該当し、その検討結果について庁担当課が庁局間の担当課等において情報共有を図る必要があると認めた場合には、その検討内容を併せて庁広聴担当部署に連絡する。
おって、必要に応じて、庁担当課は、記録書の検討結果の内容を局担当課に連絡する。
⑷ 記録書の検討結果の局広聴担当部署等への連絡
庁担当課から連絡を受けた庁広聴担当部署は、必要に応じて、検討結果の内容について庁担当課と協議するとともに、記録書の検討結果を局広聴担当部署又は庁聴取部署に連絡する。
また、庁広聴担当部署は、必要に応じて記録書作成局以外の局広聴担当部署に参考として記録書の検討結果を連絡する。
特に、意見・要望等の検討結果について、申出者が回答を求めている場合には、検討結果の連絡を受けた後、速やかに局広聴担当部署又は庁聴取部署に連絡する。


意見・要望等記録書のフローチャート

意見・要望等記録書

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