記事の紹介

税務調査の対象選定が、いま「経験と勘」から「AIによる科学的分析」へと激変しています。

本記事では、東京国税局が令和7年度に策定した内部資料「資産税各税の実地調査事務等の実施要領」に基づき、最新の調査実態を明らかにします。最大の注目点は、AI調査選定支援ツール「RIN」の本格運用です。申告内容や過去の所得、外部情報など7つの要素から「リスクスコア」を算出し、追徴税額が見込める事案を自動で優先順位付けする仕組みが詳細に記されています。

また、令和7年度の3大重点課題として掲げられた方針も必見です。

  • 国際化: 海外資産保有者は「全件報告」の対象。CRS情報や国外財産調書を駆使した網羅的なチェック。
  • 富裕層: 特定の管理名簿に登載された者への、局と署が連携した徹底調査。
  • 無申告: 「申告要否検討表」やAI判定による、潜在的な無申告事案の掘り起こし。

税理士にとっては、当局の「選定ロジック」を逆算して理解することで、クライアントの税務リスクを事前に評価するための最高レベルの指針となるはずです。

東京国税局「資産税各税の実地調査事務等の実施要領(令和7年版)」

以下は、要約版です。資料には黒塗り部分もあります。正式には、必ずダウンロード資料をご確認ください。


AI調査選定システム「RIN」とは何か

RINの正式名称と機能

「相続税選定支援ツール RIN」は、AI搭載の調査選定支援システムです。従来は税務職員の経験と勘に頼っていた調査対象の選定を、データ分析により科学的・効率的に行うことを目的としています。

RINの主な機能(p.39-40)

【RINの5つのコア機能】

1. リスクスコア算出
   └ 申告内容から不正の可能性を数値化

2. 優先度判定の自動化
   └ 追徴税額を意識した調査優先度の判定

3. 事案管理機能
   └ 調査対象事案の一元管理

4. 進行管理機能
   └ 調査の進捗状況をリアルタイム可視化

5. データ出力・監査機能
   └ 照会回答等のデータ管理と事後監査

重要: RINは「選定補助」ツールであり、最終判断は税務職員が行います。しかし、RINが「高リスク」と判定した事案は、調査対象となる可能性が高いです。


令和7年度の調査方針:3つの重点課題

1. 国際化への取組(p.1)

対象となる事案

  • 海外資産保有者
  • 国外財産調書提出者
  • 海外送金記録がある納税者
  • CRS情報(自動的情報交換)該当者

実務上の注意点: 海外資産関連事案は全件、局資産課税課への報告対象です。

2. 富裕層への取組

重点管理富裕層の定義

  • 課税部事案名簿閲覧システムに登載された者
  • 一定基準以上の資産保有者
  • 調査着手前に局への事前連絡が必須

3. 無申告事案への取組(p.31)

新たな選定基準

  • 申告要否検討表の活用
  • RIN情報による無申告リスク判定
  • 署内外資料からの課税見込み検討


リスクスコアと優先度判定の仕組み

リスクスコアの算出方法(p.31-32)

RINは以下の7つの要素を分析してリスクスコアを算出:

【リスクスコア算出の7要素】・・・【本件資料では黒塗りなので、想定されるものを挙げておきます。】

① 申告内容の整合性
② 財産評価の適正性
③ 過去の調査履歴
④ 資料情報との突合
⑤ 生前の所得状況
⑥ 相続人の属性
⑦ 外部情報(登記・金融機関照会等)

調査手法

準備調査で何が行われるか(p.35-36)

税務署が事前に行う調査・・・【本件資料等に基づいて記載】

  1. 金融機関への一斉照会
    • 全国の主要金融機関に照会
    • 被相続人・相続人名義の口座確認
    • 過去10年分の取引履歴取得
  2. 登記情報の確認
    • 不動産登記簿の確認
    • 所有権移転履歴の精査
    • 担保設定状況の確認
  3. 蓄積資料の確認
    • 過去の申告情報
    • 資料せん(支払調書等)
    • 他の税務調査からの情報
  4. ネガティブチェックシートによる減額要素確認
    • 地積規模の大きな宅地該当性
    • 災害特定地域該当性
    • 各種控除適用漏れ

臨宅調査の実態(p.36, 23-24, 88-89)

現物確認調査の対象

  • 自宅金庫・貸金庫の中身
  • 書画・骨董品
  • 貴金属・宝飾品
  • 重要書類の保管状況

質問事項の例

  • 被相続人の趣味嗜好
  • 海外渡航歴
  • 過去の相続・贈与
  • 生前の資産運用状況
  • 相続人の収入・資産状況


事前通知を行わない「無予告調査」(p.7, 21-23)

実務上の具体例

  • 多額の現金・貴金属保有が見込まれる
  • 証拠隠滅のおそれ
  • 反社会的勢力との関連
  • 過去に調査拒否・非協力の履歴

手続き

  • 「事前通知を要しない調査の適否検討表」作成
  • 署長までの決裁が必要


机上調査と実地調査の違い

机上調査の実態(p.37-39, 別紙18)

接触方法

  • 電話・文書による照会
  • 来署依頼
  • 郵送による資料提出依頼

机上調査でも反面調査は可能

  • 金融機関調査
  • 取引先への照会
  • ただし過度な事務量投下は避ける

実地調査への移行基準

  • 納税者が接触を拒否
  • 対面でなければ解明困難
  • 書面回答に不審な点

重要: 机上調査から実地調査に移行する場合、改めて事前通知が必要



上記のほか本資料には様々な情報が掲載されています。

東京国税局「資産税各税の実地調査事務等の実施要領(国際関係編)」要約

東京国税局が令和7年度に策定した海外資産関連事案の調査実施要領。CRS情報(自動的情報交換)、国外送金等調書、国外財産調書を活用し、海外資産の申告漏れを重点的に調査する方針を明記。

海外資産関連事案の定義は、①海外資産の相続・贈与・譲渡、②被相続人・贈与者・譲渡人が非居住者、③海外資産等の資料情報あり、④その他海外資産関連が見込まれる事案の4類型。

調査選定は署国際官(国際税務専門官)が主導し、RINシステムと「海外資産関連事案リスト」を活用。相続税は令和5年以降開始分を対象に、5月末までに1次・2次選定と局国際官との協議(選定会議)を実施。

租税条約に基づく情報提供要請、長期出張者への調査依頼、非居住者への接触方法など国際調査の具体的手続きを規定。調査完了時は「海外資産関連事案の連絡シート」で局に報告義務あり。

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