以下は、照会者が、期末に期末評価を行う必要はなく、評価額を期末簿価に表現する必要もないかを照会したものの、東京国税局が、照会者に対し、法令の改正過程にある内容については文書回答の対象とならない旨説明したところ、照会者より、本照会を取り下げたい旨の返答があった案件の決済資料です。
以下は、照会資料のうち、口頭回答用のものからの抜粋です。「???」は情報公開請求で入手した資料の黒塗り部分です。
照会対象の暗号資産はDEXに上場されているということでしょうか。
資料では、本件照会は、「実地確認や取引等関係者等への照会等による事実関係の認定を必要とするものでないこと」という事前照会の要件を満たしておらず、文書回答の対象となる事前照会には該当しないという記述もあります。
法令等
イ 暗号資産の時価評価損益の計上(令和5年度税制改正前)
内国法人が事業年度終了の時において有する次の(イ)にいう市場暗号資産については、次の(イ)にいう時価法により評価した金額をもって、その時における評価額とし(改正前法法61②)、その市場暗号資産を自己の計算において有する場合には、時価評価損益を益金の額又は損金の額に算入するとされている(改正前法法61③)。
(イ) 市場暗号資産
市場暗号資産とは、内国法人が有する暗号資産のうち次に掲げる要件の全てに該当するものとされている(改正前法令118の7) 。
A 継続的に売買の価格(交換比率を含む。以下「売買価格等」という。)の公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
B 継続的に上記Aの売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
C 次のいずれかに該当すること。
(A) 上記Aの売買価格等の公表が当該内国法人以外の者によりされていること。
(B) 上記Bの取引が主として当該内国法人により自己の計算において行われた取引でないこ
と。
(ロ) 時価法
時価法とは、事業年度終了の時において有する市場暗号資産をその種類又は銘柄(以下「種類等」という。)の異なるごとに区別し、その種類等の同じものについて、その時における価額として一定の次のいずれかの金額にその市場暗号資産の数董を乗じて計算をした金額をもって当該市場暗号資産のその時における評価額とする方法とされている(改正前法法61②、改正前法令118の8①)。
A 価格等公表者によって公表された当該事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の売買の価格(公表された同日における最終の売買の価格がない場合には、同日前の最終の売買の価格が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の売買の価格)
B 価格等公表者によって公表された当該事業年度終了の日における市場暗号資産の最終の交換比率(他の暗号資産との交換の比率をいい、公表された同日における最終の交換比率がない場合には、同日前の最終の交換比率が公表された日で当該事業年度終了の日に最も近い日におけるその最終の交換比率とする。)に、その交換比率により交換される他の市場暗号資産に係る上記Aに掲げる価格を乗じて計算した金額
ロ 令和5年度税制改正
令和5年度税制改正により法人税法第61条《短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益》の規定が改正され、特定自己発行暗号資産が新たに定義され、特定自己発行暗号資産とは、当該特定自己発行暗号資産を有する内国法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産であってその時から継続して次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当するものとされた(改正後法法61②、改正後法令118の7②、改正後法規26の10)。
(イ) 当該暗号資産につき、他の者に移転することができないようにする技術的措置であって、次のいずれにも該当する措置が取られていること。
A その移転することができない期間が定められていること。
B その技術的措置が、その暗号資産を発行した内国法人の役員及び使用人等のみによって解除をすることができないものであること。
(ロ) 当該暗号資産が一定の信託の信託財産とされていること。
そして、事業年度終了の時において有する特定自己発行暗号資産については、市場暗号資産であっても時価評価損益の計上が不要であるとされた。
また、この改正後の規定は、令和5年4月1日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税について適用されるが(令5改正法附則12①)、法人が同日の属する事業年度終了の時においてその法人が発行した暗号資産を有する場合に、その暗号資産の全てが上記(イ)又は(ロ)に該当するときは、当該事業年度以前の各事業年度については、その暗号資産と同一の種類の暗号資産は特定自己発行暗号資産に該当するものとみなして、令和5年度税制改正後の法人税法(以下「新法人税法」という。)第61条の規定の適用をすることができるとされた(同②)。
(2) 検討
ィ ???について時価評価損益の計上を要するか
時価評価損益の計上に当たっては、照会者が???において保有する???が上記(1)イ(イ)にいう市場暗号資産に該当するかの判定を要するところ、本照会時点では???は到来していないことから、時価評価損益の計上の要否を判断することはできず、また、次のことからすれば、その判定には事実の認定を要するため、???が市場暗号資産に該当するかの判定をすることはできない。
すなわち、市場暗号資産の判定に当たっては、継続的に売買価格等の公表がされ、かつ、その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであることが要件の一つとされているところ、この要件に該当するかどうかを判定するための取扱いは明らかにされていない。
この点、立法担当者の説明によれば、上記の「その公表がされる売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること」の判定に当たっては、売買目的有価証券の時価評価金額に係る通達である法人税法基本通達(以下「法基通」という。) 2-3-29《市場有価証券の区分及び時価評価金額》と同様の解釈でいければと考えていると説明されている(『租税研究2019,7』28頁)。
そこで、法基通2-3-29(2)をみると、「『その公表する価格がその有価証券の売買の価格の決定に重要な影響を与えている場合』とは、基本的には、ブローカー(中略)の公表する価格又は取引システムその他の市場において成立した価格がその時における価額を表すものとして一般的に認められている状態にあることをいう」とされていることからすれば、市場暗号資産の判定に当たっても、これと同様に解釈すべきであると考えられるが、本件各取引所において公開されている???の取引の価格が、この状態にあるかどうかは事実の認定を要するものであると考えられる。
したがって、???について時価評価損益の計上を要するかについては、事前照会で判断することができない。
ロ ???が特定自己発行暗号資産とみなされるものに該当するか
上記イのとおり、???が市場暗号資産に該当するかの判定はできないが、仮に照会者の???において???が市場暗号資産に該当する場合であっても、???が上記(1)口(イ)又は(ロ)に該当するときには、???は特定自己発行暗号資産に該当するものとみなして、新法人税法第61条の規定の適用をすることができるとされ、???について時価評価損益を益金の額又は損金の額に算入しないことができるとされている(令5改正法附則12②)。
この点、照会者は、???ため(上記1(2)へ)、???は、その移転することができない期間が定められていることに該当する措置が取られていない。
また、???(上記1(2)ヌ(ロ))。
以上のことからすれば、???は、上記(1)口(イ)又は(ロ)のいずれにも該当しないことから、特定自己発行暗号資産に該当するものとみなされず、照会者の???において???が市場暗号資産に該当する場合には、時価評価損益を益金の額又は損金の額に算入することとなる。
ハ ???の時価評価金額
???を時価評価損益を計上する場合の時価評価金額は、時価法により評価した金額であるとされ、当該金額は、事業年度終了の時における価額として、価格等公表者によって公表された当該事業年度終了の日における最終の売買の価格等にその市場暗号資産の数量を乗じて計算をした金額であるとされている。
したがって、時価評価金額の計算に当たっては、???の???の最終の売買価格に???の数量を乗じて計算することとなる。