平成29年度税制改正では、改正資金決済法において仮想通貨が支払いの手段として位置づけられたことや、EU 等では仮想通貨の譲渡は非課税とされていること等を踏まえ、仮想通貨の譲渡については消費税を非課税とする消費税法施行令の改正が行われました。以下、経過措置を中心とした立案担当当局等の資料の紹介です。
財務省「平成29年度税制改正の解説」905-906頁
二 仮想通貨の譲渡に係る課税関係の見直し
1 改正前の制度の概要
消費税は、国内における消費一般に対して広く公平に負担を求める税であり、原則として全ての財貨・サービスの国内における販売、提供などを課税対象としていますが、支払手段その他これに類するものについては、消費に負担を求める税の性格上、課税することになじまないものとして非課税とされています(消法6 ①、消法別表1 二)。
消費税法上、支払手段とは、外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号。以下「外為法」といいます。)第6 条第1 項第7 号に規定する支払手段をいい、具体的には、銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、為替手形等をいいます。
また、支払手段等の譲渡については、その性格に鑑み、課税売上割合の計算に含めないこととされています(消法30⑥、消令48②一)。
2 改正の内容等
⑴ 仮想通貨と「資金決済に関する法律」の改正
ICT の進展等を背景に、近年、インターネットを通じて電子的に取引される仮想通貨が登場しています。仮想通貨には様々な種類がありますが、代表的な例である「ビットコイン」を見てみると、法定通貨とは異なり、特定の発行主体の債務として発行されるものではなく、いわゆる「ブロックチェーン」技術を用いて中央管理者による管理を介さずに流通するといった特徴を有しているといわれており、外為法上の支払手段には該当しないものの、財貨・サービスの販売、提供などの対価として、現金等に代えて仮想通貨による支払いを受け入れる事業者も増加しているといわれています。
こうした中、利用者保護やマネー・ロンダリング対策の観点から、仮想通貨交換業者の登録制度の導入やマネー・ロンダリング対策規制、利用者保護のためのルール整備等を内容とする「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)が成立し、平成29年4 月1 日から施行されています。
同法による改正後の「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「改正資金決済法」といいます。)において、仮想通貨は、
・ 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨と相互に交換ができること、
・ 電子的に記録され、移転できること、
・ 法定通貨又は法定通貨建ての資産ではないこと
等の性質を持つ財産的価値と定義されています。
⑵ 改正の内容
このように改正資金決済法において仮想通貨が支払いの手段として位置づけられたことや、EU 等では仮想通貨の譲渡は非課税とされていること等を踏まえ、仮想通貨の譲渡については消費税を非課税とする消費税法施行令の改正が行われました。
具体的には、消費税が非課税とされる支払手段に類するものの範囲に、改正資金決済法第2条第5 項に規定する仮想通貨が追加されました(消令9 ④)。
また、仮想通貨の譲渡については、その性格に鑑み、法定通貨等の支払手段と同様に、課税売上割合の計算に含めないこととされました(消令48②一)。
3 適用関係
上記改正は、平成29年7 月1 日(以下「施行日」といいます。)以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用され、施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れについては、なお従前の例によることとされています(改正消令附則2 )。
ただし、施行日前に仮想通貨を駆け込みで仕入れることが行われ、仮想通貨の市場に大きな影響を及ぼすことを回避する観点から、
・ 施行日の前日に100万円以上(税抜き)の仮想通貨を有しており、かつ、
・ 施行日前1 月間の平均保有数量に比べ、施行日前日の保有数量が増加している場合には、当該増加分の課税仕入れに係る消費税額については、仕入税額控除を認めないとする経過措置が設けられています(改正消令附則8 )。
このほか、小規模事業者の納税義務の免除の特例に関する経過措置等、所要の経過措置が設けられています(改正消令附則3 ~ 7 、9 ~14)。
与党税制改正大綱
第二平成29年度税制改正の具体的内容
四消費課税
5 その他
(国税)
(2) 仮想通貨に係る課税関係の見直し
① 資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡について、消費税を非課税とする。
② その他所要の措置を講ずる。
(注1) 上記の改正は、平成29年7月1日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等及び課税仕入れについて適用する。
(注2)上記の改正前に譲り受けた仮想通貨について、個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合の仕入れ区分は、「課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ」に該当するものとする。
(注3)事業者が、平成29年6月30日に100万円(税抜き)以上の仮想通貨(国内において譲り受けたものに限る。)を保有する場合において、同日の仮想通貨の保有数量が平成29年6月1日から平成29年6月30日までの間の各日の仮想通貨の保有数量の平均保有数量に対して増加したときは、その増加した部分の課税仕入れに係る消費税につき、仕入税額控除制度の適用を認めないこととする。