記事の紹介

本記事では、国税庁が財務省主税局に対して提出した「令和3年度税制改正意見」の内容を整理し、主要な改正意見について紹介します。

国税庁では、納税者の利便性の向上や適正・公平な課税・徴収を実現する観点から、制度上の対応(税制改正)が必要と考えられる事項について意見を申入れています。これらの意見は、主税局との事務的な調整を経た後、与党税制調査会で審議され、毎年度の税制改正大綱に反映されます。

現在の税務実務において、証拠書類のない簿外経費が所得税法上、必要経費不算入となり、法人税法上、損金不算入となったり、記帳水準向上のため過少申告加算税や無申告加算税の加重措置が定められた経緯をご存知でしょうか。これらのルーツは、国税庁が財務省へ申し入れた「令和3年度税制改正意見」にあります。

本記事では、令和3年度に提案された全37項目を一覧化し、改正が実現したか否かにかかわらず、特に注目される主要29項目を要約しました。

この改正意見を振り返ることは、単なる過去の記録を確認することではありません。「国税庁がどの取引を租税回避とみなし、どのように網を広げようとしているのか」という、現在も続く当局の着眼点を理解することに他なりません。当時の貴重なダウンロード資料も掲載しておりますので、税務コンプライアンスの強化や実務の理論武装にぜひご活用ください。

(参考) スケジュール
主に8月下旬主税局に対する当庁意見の提出
9~10月 主税局との事務的な調整
11月上旬~ 与党税制調査会(当庁意見を踏まえた改正事項は「納税環境整備」の分野で議論)
12月上中旬 与党税制改正大綱
12月中下旬 政府税制改正大綱(閣議決定

目 次

令和3年度税制改正意見 37項目

1 所得税法関係

  1. 申告会場における3密を防止するための措置の導入 デジタル化を推進するためのインセンティブ措置の創設
  2. 保険契約の名義変更があった場合の課税の見直し
  3. 非居住者の脱退一時金に係る源泉徴収の見直し
  4. 金地金等の譲渡の対価の支払調書の提出範囲の見直し
  5. 居住者の範囲の見直し
  6. 措置法第40条に係る不当減少要件のうち株式保有割合の見直し
  7. 有償ストックオプションの課税の適正化
  8. 総合課税の対象となる社債の利子の範囲の見直し

2 法人税法関係

  1. 公益法人等に係る課税所得の範囲拡大
  2. 公益法人等に係るみなし寄附金制度の見直し
  3. 帳簿書類の保存がない場合の損金不算入規定の創設及び適正性が客観的に担保される納税者に対する帳簿書類の保存に係る事務負担の軽減措置の導入

3 間接税関係

  1. 消費者向け電気通信利用役務の提供に係る納税義務者の見直し
  2. 国際郵便による輸出免税における証明書類の保存要件の見直し
  3. 課税売上割合に準ずる割合の適用開始時期の見直し

4 国税通則法関係

  1. 後発的事由に基づく更正の請求の更正期間の見直し
  2. 質問検査権及び更正又は決定の所轄庁の改正
  3. スマホアプリによる新たな納付手段の導入
  4. 海外からの納付手段の拡充
  5. 無申告加算税に係る税率の見直し
  6. 納税管理人制度の拡充

5 国税徴収法関係

  1. 無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の対象拡大
  2. 滞納処分免脱罪の適用場面の拡大
  3. 滞納者が国外に有する財産に係る引渡命令の創設

6 国際課税関係

  1. 更正の請求に係る提出期間の延長
  2. 相互協議の合意による源泉所得税の還付の根拠規定の見直し
  3. 外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額の損金不算入措置の整備
  4. 外国子会社合算税制(外国法人税の範囲)の適正化
  5. 控除対象外国法人税の額から除かれるものの範囲の見直し
  6. 事業譲渡類似株式の譲渡の該当要件の改正
  7. 国内不動産を取得した外国法人に対する届出書等の提出義務化
  8. 相互協議に係る納税の猶予の適用対象の拡大
  9. 移転価格税制における推定課税規定の見直し
  10. 徴収共助に係る徴収権の時効に関する規定の改正

7 その他

  1. カーポート(簡易車庫)及びガスメーター(計量器)の耐用年数の見直し
  2. 法定調書のクラウドサービス等を活用した新しい提出方法の整備
  3. 申請・届出等の提出方法の拡充
  4. 処分通知等の電子化の拡充

令和3年度税制改正意見 29項目の要約

【2】保険契約の名義変更があった場合の課税の見直し

改正意見: 保険契約の名義変更があった場合の課税を解約時に繰り延べるとともに、勤務先などが支払った保険料に対応する解約返戻金については給与所得その他の所得とする。

理由:

  • 名義変更時には納税者にキャッシュフローが生じない
  • 近年、保険契約の時価と解約返戻金相当額に乖離のある保険商品が存在し、時価計算が困難
  • 個人間の名義変更の場合の贈与税は、名義変更時ではなく解約時に課税が行われる

【3】非居住者の脱退一時金に係る源泉徴収の見直し

改正意見: 非居住者が支払を受ける国民年金保険や厚生年金保険の脱退一時金について、居住者と同様の源泉徴収制度とする。

理由:

  • 現在は20%の税率による源泉徴収が行われるが、確定申告において退職所得の選択課税制度を選択して退職所得控除を適用することにより、全額還付となるケースが多い
  • 納税者の利便性向上の観点から改正が必要

【4】金地金等の譲渡の対価の支払調書の提出範囲の見直し

改正意見: 黒塗りのため詳細不明

理由: 平成23年度税制改正により創設されて以降、???(黒塗りのため詳細不明)


【5】居住者の範囲の見直し

改正意見: 居住者の範囲を次のとおり見直す。

  • 日本に住所を有する者(住民登録をしている者は住所を有すると推定)
  • 日本にその年において183日以上居所を有する者

理由:

  • 現行の居住者・非居住者の判定は、住所(生活の本拠地)を有するかどうかによることとされており、居住者・非居住者の判定の予見性が確保できない
  • 納税者の予見性を高める観点から改正が必要

【6】措置法第40条に係る不当減少要件のうち株式保有割合の見直し

改正意見: 措置法第40条の非課税承認に係る要件のうち、贈与等により受贈法人が有することとなる株式数がその発行済株式総数に占める割合が2分の1を超えないこととする旨の要件を見直す。

理由:

  • 現行の株式保有割合要件は、非課税承認申請に係る受贈法人が有することとなる株式数のみが対象とされている
  • 株式保有割合要件は、公益法人等が他の団体の意思決定に関与できる株式の保有を禁止されている場合が多いことに鑑み、平成26年度税制改正により措置法第40条の非課税承認要件に同様の制限を追加したもの
  • 黒塗り部分により詳細不明だが、当該スキームの防止にも資するため、措置の必要性は高い

【7】有償ストックオプションの課税の適正化

改正意見: 従業員が勤務先から購入したストックオプション(有償ストックオプション)について、権利行使時課税を行うための改正を行う。

理由: 従業員が勤務先から購入したストックオプションについて、以下の場合でなければ、権利行使時に課税されず、権利行使により取得した株式の譲渡をした時に課税される(税制適格ストックオプションと同様の課税関係)ため、課税適正化が必要:

  • ストックオプションを購入した者に特に有利な条件若しくは金額である場合
  • 役務の提供その他の行為による対価の全部若しくは一部である場合

【8】総合課税の対象となる社債の利子の範囲の見直し

改正意見: 総合課税の対象となる社債の利子の範囲に、特殊関係のある法人の株式を保有している者が支払を受けるものを追加する。

理由:

  • 社債の利子に対する課税については、大口株主の配当に対する課税(総合課税)を踏まえ、社債を発行する法人の同族株主に対する社債の利子は総合課税とされている
  • 他方、社債を発行する法人の株式を100%保有する法人の株主(間接支配の株主)については、同族株主に該当しないことから、社債の利子が源泉分離課税となる
  • 社債の利子に対する課税の公平性の観点から改正が必要

【9】公益法人等に係る課税所得の範囲拡大

改正意見: 公益法人等に係る課税所得の範囲について、現行の「収益事業から生じた所得」に限定されているものを、収益事業を広く対価性のある事業全てとした上で、「対価性のない寄附金、補助金に係る所得」についてのみ非課税とする。また、みなし寄附金の損金算入限度額について、非収益事業である公益目的事業を実施するために必要な資金を支出したと認められる場合に限り、その必要な金額の範囲内で損金の額に算入する制度とする。

理由:

  • 宗教法人をはじめとする公益法人等が課税逃れに利用される途を閉ざすとともに、収益事業と非収益事業との区分が曖昧であるとの指摘を受ける問題や類似事業間に課税上の不公平が生じる問題を排除する必要がある
  • 技芸教授業の範囲は法人税法施行令第5条第1項第30号に限定列挙されており、これに掲げられた技芸教授以外は課税されないため、類似の技芸教授であっても課税対象とされるものとされないものとの間に課税上の不公平が生じている(例:エアロビクスは課税、水泳は非課税)
  • 現行のように、公益法人等について収益事業を行う場合のみ申告義務があるとすると、非課税とされた法人は、税法上の帳簿書類の記載、保存義務が及ばず、質問検査権の行使にも支障がある
  • 現行のみなし寄附金制度では、黒塗り部分により詳細不明だが、制度の趣旨に立ち返り、非収益事業である公益目的事業を実施するために必要な資金を支出したと認められる場合に限り、その必要な金額の範囲内で損金の額に算入する制度とすべき

【10】公益法人等に係るみなし寄附金制度の見直し

改正意見: 公益法人等のみなし寄附金制度について、不正経理等により収益事業に係る収入を収益事業以外の事業に係る収入に仮装等していた場合は、みなし寄附金制度を不適用とする。

理由:

  • みなし寄附金制度は、公益法人等が収益事業を営む場合、その収益事業から生じた利益の一部は本来の公益事業のために充てられることに配慮し、同一法人内の経理の振替を寄附金とみなし、普通法人より広範囲の金額を寄附金として損金に算入することを認めている
  • 現行制度では、収益事業に係る収入について非収益事業に係る収入であるかのような外形を作出すること又は除外することにより、収益事業に計上せず、納付すべき法人税額を免れていた場合であっても、その後修正申告等により収益事業から収益事業以外の事業に計上されていれば、当該収益事業に係るみなし寄附金として損金算入限度額の範囲内で損金の額に算入されることとなる
  • このため、不正計算により法人税額を免れた場合であっても、損金算入限度額までは損金に算入して計算できることとなり、適正公平な課税を妨げる誘因となっている
  • 隠蔽又は仮装により収益事業に計上せず、納付すべき法人税額を免れていた場合には、その増加した収益事業に係る収入の金額はみなし寄附金による損金算入限度額の計算から除外する制度とすべき

【11】帳簿書類の保存がない場合の損金不算入規定の創設及び適正性が客観的に担保される納税者に対する帳簿書類の保存に係る事務負担の軽減措置の導入

改正意見: (1) 法人又は個人が支出した費用のうち、当該費用に係る帳簿書類の保存がない場合は、損金又は必要経費に算入しない規定を創設する (2) 上記(1)の改正に合わせて、適正申告の蓋然性の高い納税者については保存すべき帳簿書類の範囲を消費税と同様とするなど、帳簿書類の保存に関する事務負担の軽減に資する措置を導入する

理由:

  • 申告納税制度においては、納税者はその取引の過程で集積された客観的な資料による裏付けのある所得金額をもって申告することが求められるため、帳簿書類の保存は適正な申告水準を維持、確保するための納税者の責務である
  • しかし現状、帳簿書類の保存義務を履行していない納税者と履行している納税者との比較において、適正申告という果たすべき責務を担保するための制度的な対応がされているとはいい難い状況にある
  • 国税犯則事件の調査においては、刑事訴訟における有罪立証の一般原則である「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証」が必要とされており、黒塗り部分により詳細不明
  • 現行の所得税及び法人税の保存書類については、保存すべき書類が広範囲に及び、かつ、同一の取引に関して作成される書類の全てに保存義務が及ぶことから、帳簿書類の保存に対する負担は大きい。加えて、消費税の軽減税率の導入や、将来的にはインボイス方式の導入など、納税者に対する事務負担は今後も増加することが見込まれる
  • 悪質な納税者に対しては適正申告を促すために税負担という観点からの措置を創設する必要がある一方で、大半の納税者は申告納税制度に従い適正に申告していると考えられることから、そのような善良な納税者に対しては、適正申告が担保される範囲内で事務負担等の軽減を図ることも必要
  • 具体的には、法人会が推奨している自主点検チェックシートの確定申告書への添付、関与税理士による書面添付制度を活用した経理処理の適正性の確認、銀行の融資や国等の補助金の申請に当たり会計基準の順守の確認など、複数の客観的な視点から適正申告の蓋然性が高いと考えられる納税者に対しては、帳簿書類の保存義務を消費税と同様とする措置を創設する

【12】消費者向け電気通信利用役務の提供に係る納税義務者の見直し

改正意見: 国外事業者が消費者向け電気通信利用役務の提供をインターネット上のプラットフォームを介して行う場合には、当該プラットフォームを運営する事業者に当該役務の提供に係る消費税の納税義務を課すこととする。また、申告書の提出に際しては、当該役務の提供に係る明細書の添付を要することとする。

理由:

  • 平成27年度税制改正において、国境を超える電気通信利用役務の提供に係る消費税は、当該役務の提供を受ける者の所在地で課税をすることとし、消費者向け役務の提供である場合には国外事業者を納税義務者とすることとされ、「登録国外事業者制度」も併せて導入された
  • 制度施行当初は28件(平成27年10月1日)であった登録件数は、現在94件(令和2年5月29日)まで増加している
  • 消費者向け電気通信利用役務の提供を行う国外事業者に対し、申告納税義務の適正な履行を求めていくことについては、様々な課題等に直面している。特に、課税に関する執行管轄権が国際法により制約され、それをオーバーライドする国際約束(条約)がない中では、国外事業者への対応には限界がある
  • 諸外国においても、プラットフォーム運営事業者に一定の義務の履行を求めるといったような、付加価値税制度自体のあり方にも影響するような新たな制度を導入する動きも出てきている
  • 我が国においても、国外事業者が消費者向け電気通信利用役務の提供をプラットフォームを介して行うような場合について、当該プラットフォーム国外事業者に対して当該役務の提供に係る消費税の納税義務を課すというような抜本的な改正を検討することも必要

【14】課税売上割合に準ずる割合の適用開始時期の見直し

改正意見: 課税売上割合に準ずる割合について、適用を受けようとする課税期間の末日までに承認申請書を提出し、同日から一定の期間(例えば1月)内に税務署長の承認を受けた場合についても、当該課税期間から適用できることとする。

理由:

  • 課税売上割合に準ずる割合については、その承認を受けた日の属する課税期間から適用することとされている
  • このため、承認申請書を課税期間の末日間際に提出した場合には、適用を受けようとする課税期間中に承認が受けられず、事業者にとって不利益となる場合がある
  • 例えば、「たまたま土地の譲渡があった場合」における課税売上割合に準ずる割合の承認申請の場合、当該土地の譲渡があった課税期間の末日までに承認が受けられなければ、課税売上割合に準ずる割合を適用する意義がないこととなる

【15】後発的事由に基づく更正の請求の更正期間の見直し

改正意見: 後発的事由に基づく更正の請求について、税務当局が更正できる期間と齟齬が生じている一部の事由に係る更正の請求について、その見直しを行う。

理由:

  • 後発的に減額事由が発生した場合には、後発的事由が発生してから2か月以内に限り、更正の請求をすることができ、その具体的な後発的事由については通法23条2項各号及び通令6条1項各号において定められている
  • これらの後発的事由に関する更正は通法71条1項2号において、法定申告期限から5年を経過した後においても、更正決定等をすることができることとされている
  • しかし、この更正、決定等の期間制限の特例の範囲については、通法23条2項2号及び通令6条1項5号に定める事由が除かれており、結果的に、更正の請求をすることができる旨の規定がある一方で、一部の事由に係る更正請求については、更正することができないこととされている

【16】質問検査権及び更正又は決定の所轄庁の改正

改正意見: 質問検査や更正又は決定の所轄庁について、事前通知の実施又は無予告調査の着手後、納税地の異動があった場合でも、当該事前通知等の実施時における納税地を所轄する税務署長等において、質問検査権の行使、更正又は決定をすることができる旨の規定を設ける。

理由:

  • 質問検査権の行使は、法人税にあっては法人の納税地、消費税にあっては事業者の納税地の所轄税務署等の当該職員に限られている。また、更正又は決定は、これらの処分をする際における納税地の所轄税務署長が行うこととなっている
  • このため、調査着手後に納税地の異動があった場合、調査に着手した際の納税地の所轄税務署長等は質問検査権の行使や更正又は決定をすることができないこととなる
  • この規定を悪用し、調査中に納税地を異動して調査忌避を行う事例が認められるため、こうした事例に対しては納税地指定等の対応を行っているが、納税地指定を行うためには、異動先が納税地として不適当であることを要することから、納税地の確認調査等に時間を要することとなる
  • また、異動先が納税地として不適当とは言えない場合であっても、当該所轄署等に調査の引継ぎ等を行うために時間を要するなど、一定期間調査が中断することとなり、その間に調査対象者による資料の隠匿、取引先との通謀等のおそれが高まる

【19】無申告加算税に係る税率の見直し

改正意見: 期限後申告又は決定を行った場合の無申告加算税の税率について、現在の15%から30%へと引上げする。ただし、当初期限後申告があった後に修正申告又は更正があった場合における無申告加算税については、現状の15%のままとする。

理由:

  • 申告納税制度の趣旨を鑑みれば、無申告者に対しては相応の経済的負担を課すことによって、適正な申告へと誘導すべきところ、現在の加算税率では、その機能が果たされていない
  • 適正申告を担保するために経済的負担を課すという加算税制度の趣旨を鑑みれば、悪質な無申告者と、隠蔽仮装を行い税負担を免れようとする者については、同様の負担を課しても良いのではないか
  • 無申告事案の調査に係る行政コストは、当初(期限後)申告内容の調査に比して高い傾向があるにも関わらず、加算税率は同一でありコストパフォーマンスを低下させる一因となる
  • 経済社会の多様化・国際化の進展による申告義務者数の増加、事案の複雑化・困難化が進む中で、限られた人員で最大限のパフォーマンスを発揮するためには、行政指導による効率的な対応が必要。現在でも、行政指導で応じる(5%)か調査事案として処理される(15%)かで、加算税率に差があるものの、その開差(5%か30%)が大きくなることで、行政指導の実効性を高められる
  • 無申告加算税に係る税率を、現在より15%加算する根拠は、期限内申告をしたが納付が遅れた者と比して、期限後申告をした者の方が、延滞税と併せた税負担が小さいことを是正する観点から設定している

【20】納税管理人制度の拡充

改正意見: 国内に拠点を有しない外国人又は外国法人(Non-PE外法)が納税管理人を自主的に指定しない場合には、 ①税務署長等は期限を定めて納税管理人の指定を求めることができることとし、 ②当該要請に応じない場合において当該納税者に国内関連者(親族、資本関連法人等)又は国内において納税者の資産を管理する関係者(不動産管理会社、固定資産税に係る納税管理人等)があるときは、その者を納税管理人として指定する ③指定期限までに指定しない納税者については、更正決定期限等を7年に延長する。また、完全支配関係子会社など一定の納税管理人に対して第二次納税義務を負わせることとする

理由:

  • Non-PE外法に係る調査実施、課税処分及び徴収手続に関して、以下のような問題がある:
    • 納税管理人等の指定がされない場合、海外住所の解明などにより、調査着手までに相当な時間を要している
    • Non-PE外法に係る関係会社や親族等が国内に所在する場合が散見されるが、納税者が納税管理人に指定しないときは、国税当局からの対応手段がない
    • 国内に納税管理人など納税者本人との取次役がいなければ、調査が長期化し、情報交換等により取引情報を解明するほかないが、時間を要し、必ずしも十分な情報が得られない
    • 更正・決定通知等について、公示送達によらざるを得ない
    • 徴収手続についても課税手続と同様の問題があり、文書送達及び納税者との接触ができない、又は相当な時間を要する
  • 上記のような問題点については、平成27年度改正で導入されたクロスボーダー消費税やデジタル課税の創設など今後拡大が見込まれる

【21】無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務の対象拡大

改正意見: 徴収共助可能国に対する徴収共助の要請がされた後(又は要請がされた日の一年前の日以後)に、滞納者が徴収共助可能国に所在する財産を無償譲渡等した場合で、滞納国税の徴収不足が当該無償譲渡等に基因すると認められるときについても、その無償譲渡等の譲受人等は第二次納税義務を負うこととする。

理由:

  • 近年、経済取引の国際化が進展する中、滞納者(居住者)が徴収共助要請により徴収されることを予期して徴収共助可能国に所在する財産を第三者に無償譲渡している事案が顕在化している
  • 無償譲渡等の譲受人等の第二次納税義務が成立するためには、滞納者が行った無償譲渡等により滞納国税の徴収不足が生じたといえる関係が必要とされる
  • この徴収不足は、滞納者の財産で滞納処分により徴収することのできるものの価額と納税者の国税の総額を比較し判定することとなるが、滞納者の国外財産については滞納処分ができないことから、この判定には国外財産は含まれないこととされている
  • そのため、国外財産の無償譲渡等がされた場合において、滞納者の国税の徴収不足が生じているとしても、当該無償譲渡等により生じたとはいえず、第二次納税義務を賦課することができない
  • しかしながら、その国外財産について徴収共助の要請による徴収が可能であった場合は、当該国外財産の無償譲渡等により徴収することができなくなったといえるところ、これは、国内財産の無償譲渡等により徴収不足が生じる関係と同様である

【22】滞納処分免脱罪の適用場面の拡大

改正意見: 徴収共助の執行を免れる目的で、国内からの指図により、徴収共助可能国に所在する財産を徴収共助不可国に移転させる行為を滞納処分免脱罪の対象とする。

理由:

  • 近年、経済取引の国際化が進展する中、徴収共助の要請による徴収を免れる目的で、徴収共助可能国に所在する財産を、徴収共助不可国へ移転する事案が顕在化している
  • 滞納処分免脱罪成立のためには、「滞納処分の執行を免れる目的」が必要であるが、この「滞納処分の執行」には、徴収共助の要請による徴収は含まれないと考えられている
  • このため、滞納者が、国内からの指図により、徴収共助可能国に所在する財産を、徴収共助不可国に移転する場合は、徴収共助の要請による徴収を免れるだけでなく、滞納処分免脱罪の適用もされない
  • しかしながら、徴収共助の要請による徴収を免れる目的で行われる行為は、滞納者が税務当局による徴収を免れるため財産移転をしている点につき、滞納処分免脱罪と同様である

【23】滞納者が国外に有する財産に係る引渡命令の創設

改正意見: 滞納者が徴収共助不可国に財産を有しており、他に滞納国税の全額を徴収可能な財産を有していないと認められるなど一定の要件を充足する場合に、滞納者に対し、滞納額を限度として、徴収共助不可国に所在する滞納者の財産(又はその価額に相当する金員)を徴収職員に引き渡すよう書面で命じることができることとする。また、滞納者が指定された期限までに財産を徴収職員に引き渡さない場合には、罰則を科すこととする。

理由:

  • 近年、経済取引の国際化が進展する中、滞納者が徴収共助不可国に財産を有しながら納付をしない事案が散見される
  • このような事案においては、滞納者の自主的な納付が見込めないにもかかわらず、滞納処分や徴収共助の要請により滞納者の財産からの強制的な徴収を図ることができない
  • 滞納者の動産等を滞納者の親族等以外の第三者が占有して引渡しを拒む場合に、当該第三者に対し当該動産等を徴収職員に引き渡すべきことを書面により命じることができるとする徴収法58条の手続を参考とする
  • 徴収法58条においては、引渡命令を受けた第三者が指定された期限までに徴収職員に滞納者の動産等の引渡しをしない場合にも、その動産等を差し押さえることができるが、徴収共助不可国に所在する滞納者の財産については、滞納処分や徴収共助の要請による徴収ができないことから、滞納者が指定された期限までに財産を徴収職員に引き渡さない場合には、引渡しを間接的に強制するため罰則を科すこととする

【26】外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額の損金不算入措置の整備

改正意見: 外国子会社合算税制の対象となる特定課税対象金額又は間接特定課税対象金額(以下「特定課税対象金額等」という。)がある場合に、外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額については、その全額の損金算入が認められているところ、その損金算入額をその特定課税対象金額等に係る部分までの金額に限定する。

理由:

  • 外国子会社から受ける配当等の額について、外国子会社配当益金不算入制度の適用がある場合には、当該配当等の額に係る外国源泉税等の額は、損金不算入とされている。この趣旨は、当該外国源泉税等の額は、外国子会社から受ける配当等のみに関連して発生した費用であることから、その収益たる配当等の額が益金の額に含まれない以上、その費用たる外国源泉税等の額も損金の額に含めないとすることが、費用収益対応の観点から整合的であるためである
  • 一方、外国子会社合算税制の適用がある場合(特定課税対象金額等がある場合)には、外国子会社から受ける配当等の額に係る外国源泉税等の額は、その全額が損金算入とされている
  • このため、特定課税対象金額等の額が極めて少額であったとしても、その配当等の額に係る外国源泉税等の額の全額が損金の額に算入されることとなるため、費用収益対応の趣旨に則した金額に制限する必要がある

【27】外国子会社合算税制(外国法人税の範囲)の適正化

改正意見: 黒塗りのため詳細不明

理由:

  • 外国子会社合算税制における租税負担割合の分子である「外国法人税」は、法人税法69条第1項の「外国法人税」と規定されている
  • 法人税法施行令第141条第3項第1号において、この外国法人税に含まれないものとして、「税を納付する者が、当該税の納付後、任意にその金額の全部又は一部の還付を請求することができる税」が掲げられており、外国法人税として捉えることが適当でないものは、外国法人税に含まれないこととされている
  • 今般、黒塗り部分により詳細不明だが、実質的に税負担の著しく低い国に所在する外国子会社が外国子会社合算税制の対象とならない事例を把握した

【28】控除対象外国法人税の額から除かれるものの範囲の見直し

改正意見: 法人税法施行令第142条の2第7項に「前各号に掲げるもののほか内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課される外国法人税の額」を追加し、国際的二重課税の排除という制度趣旨に即した課税関係を実現する。

理由:

  • 現状、控除対象外国法人税の額から除かれる「内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課されるものとして政令で定める外国法人税の額」は、法人税法施行令第142条の2第7項において限定列挙されている
  • 同項に列挙されたもの以外にも、諸外国には様々な外国法人税が存在することから、その制度趣旨からすると外国税額控除の対象とすべきではないものがある
  • 同項に「前各号に掲げるもののほか内国法人の法人税に関する法令の規定により法人税が課されないこととなる金額を課税標準として外国法人税に関する法令により課される外国法人税の額」を追加し、制度趣旨からして外国税額控除の対象から除外すべきものを包括的に除く規定を設ける必要がある

【29】事業譲渡類似株式の譲渡の該当要件の改正

改正意見: 黒塗りのため詳細不明

理由:

  • 法令178条6項の規定は、「大株主が相当の数の株式を譲渡する場合」には、当該譲渡は、単に株式の譲渡というよりも、発行法人の「事業の譲渡」の実態があるとする考え方に基づくものであり、要件として、「所有割合要件」及び「譲渡割合要件」が定められている
  • 所有割合要件(発行済株式等の25%以上を保有していること)は、25%以上の株式を保有する大株主を判定する要件であり、その趣旨は、当該株式を譲渡した株主が、当該株式の発行法人を「支配する関係」にある株主(大株主)であるかを判定する要件である
  • 会社法(第308条第2項)においては、黒塗り部分により詳細不明だが、議決権総数の4分の1以上を有する株主は、発行法人を「支配する関係」としている
  • それを受けて、法人税法においても、同族会社の判定や支配関係の判定などにおいて、黒塗り部分により詳細不明

【30】国内不動産を取得した外国法人に対する届出書等の提出義務化

改正意見: 不動産関連法人(総資産価額に占める国内不動産の価額の割合が50%以上の法人)の株式の譲渡に対する課税の適正化を図るため、国内不動産を取得した外国法人に対し、取得不動産及び当該外国法人の株主情報等を記載した「不動産の取得等に関する届出書」(仮称)を、不動産取得時及び取得後の毎事業年度末に提出する義務を課す。また、外国法人に対する当該届出制度の実効性を担保するため、未提出の場合に、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する規定を設ける。

理由:

  • 不動産関連法人(総資産価額に占める国内不動産の価額の割合が50%以上)の株主である外国法人又は非居住者が、当該不動産関連法人の株式(不動産化体株式)を譲渡した場合、当該譲渡による所得は、国内源泉所得に該当し、当該外国法人等が恒久的施設を有していなくても申告義務がある
  • 当局が不動産化体株式の譲渡を把握するためには、①株式発行法人が不動産関連法人であること、②当該不動産関連法人の株主が株式を譲渡したことを把握する必要があるところ、国内不動産を保有している法人が外国法人(特に、法人税申告義務のない外国法人)である場合、これらを把握することは困難である
  • 国内不動産を取得した外国法人に「不動産の取得等に関する届出書」の提出を義務化し、外国法人、取得不動産、株主(最終株主まで)情報の記載及び貸借対照表を添付させることによって、不動産関連法人該当性や不動産化体株式の譲渡の有無についての検討及び当該外国法人への接触を可能とする

【31】相互協議に係る納税の猶予の適用対象の拡大

改正意見: 相互協議の申立てをした場合、移転価格税制等に係る更正等の事案に限らず、全ての相互協議事案について、その納期限から、相互協議の合意に基づく更正等があった日の翌日から1か月を経過する日までの期間、納税の猶予を可能とするために、関連法令の改正を求める。

理由:

  • 相互協議が実施されている期間における二重課税に伴う負担は移転価格課税に係る事案に限らず生じる
  • BEPS行動14最終報告書は、ベストプラクティスとして納税者が国内の救済措置を求める場合と同様の基準で相互協議に係る事案についても納税の猶予を求めることができるよう関連法令の手当を求めている
  • (参考1)ベストプラクティスとは、相互協議の効果的かつ効率的な実施の障害を取り除くために採ることが望ましいとされている措置をいう
  • (参考2)2020年末までにミニマムスタンダード(効果的かつ効率的な実施の障害を取り除くために最低限採るべき措置)に格上げするための議論がOECDにおいて行われている
  • 納税の猶予の適用対象を全ての相互協議事案とすることにより、二重課税に伴う納税者の負担を軽減するのが望ましい

【32】移転価格税制における推定課税規定の見直し

改正意見: 移転価格税制における推定課税規定について、以下の見直しを行う:

  • 黒塗り部分により詳細不明
  • 推定課税の方法として、①再販売価格基準法に類する方法及び原価基準法に類する方法(第一順位)、②利益分割法に類する方法及び取引単位営業利益法に類する方法(第二順位)、③ディスカウント・キャッシュ・フロー法に類する方法(第三順位)が規定されているところ、適用上の優先順位を廃止し、各方法のうち、最も適切な方法を適用するよう改正する

理由:

  • 平成23年度税制改正により、措法66条4項2号に規定された独立企業間価格の算定方法(以下「原則法」という。)の適用順位の見直しが行われ、従来の基本三法の優先適用が廃止となり、個々の事案の状況に応じて独立企業原則に一致した最も適切な方法を選定することとなった
  • しかしながら、措法66条4項12号・14号については、依然として、いわゆる基本三法のうちの再販売価格基準法に類する方法及び原価基準法に類する方法を優先適用することとされている
  • 黒塗り部分により詳細不明

【33】徴収共助に係る徴収権の時効に関する規定の改正

改正意見: 現行の実特法11条の2第1項によれば、徴収共助の相手国(被要請国)が行った行為により、我が国(要請国)の租税債権の徴収権の時効が完成せず、若しくは新たにその進行を始め、又は進行しないこととみなされるのは、「(当該)租税条約等の規定に基づき、当該行為により国税の徴収権の時効が完成せず、若しくは新たにその進行を始め、又は進行しないこととなるとき」との要件が付されているが、租税条約等の規定がない場合であっても、かかる効果が生じるように措置する。

理由:

  • 我が国が締結している二国間租税条約では、徴収共助に関し、被要請国がとった徴収のための措置であって、要請国の法令によれば、要請国が当該措置をとった場合に要請国において租税債権の徴収権の時効の完成猶予、更新又は停止の効果を生じることとなる措置がとられた場合には、要請国において時効の完成猶予等の効果が生じることとし、被要請国は、当該措置について要請国に通知しなければならないとする規定が盛り込まれている
  • しかし、我が国が二国間租税条約の締結を予定する国の中には、法制度上、時効の完成猶予等の措置が存在しない国、時効制度そのものが存在しない国もあるため、租税条約に当該規定を含めることについて、相手国から同意が得られず、交渉が難航するケースが存在する
  • 相手国の主張は、上記の規定は我が国が要請国である場合に我が国国内において意義を有する一方、相手国が要請国である場合には相手国において何ら意義を有さないというものである。これがネックとなって、相手国と徴収共助を行うこと自体に合意できないおそれも生じている
  • 我が国における租税債権の時効をどのように取り扱うかについては、我が国国内法上の問題であり、必ずしも租税条約に定める必要はない。それにもかかわらず、交渉上、この規定を租税条約に置くことに拘る結果として徴収共助の規定自体が導入できない、あるいは、交渉次第でこの規定を置かないという結果として条約ごとに時効の取扱いが異なるという状況は避けるべき
  • このため、実特法を改正し、租税条約等における規定の有無にかかわらず、国内において同様の効果が認められるものとする
  • なお、現在、条約に規定している時効完成猶予等の措置をとったことを被要請国が要請国に通知する手続は、別途、外国当局と合意している実施取決めや情報交換の枠組みにより担保できるものと考えられる

【36】処分通知等の電子化の拡充

改正意見: ①電子で通知することのできる処分通知等に次の通知を追加する:

  • 所得税の予定納税通知(予定納税の減額承認申請に係る承認通知及び却下通知を含む)
  • 加算税の賦課決定通知
  • 国税還付金振込通知書 ②電子で通知される処分通知等の受領者に、申請者が指定した税務代理人・納税管理人を追加する

理由:

  • 財務省デジタル・ガバメント中長期計画においては、「官民データ活用推進基本法」の基本理念や「デジタル手続法」、「デジタル・ガバメント推進方針」及び実行計画に示された、デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップの3原則等を踏まえ利用者の立場に立った行政サービスの実現を目指すこととされている
  • 行政手続の一層の電子化推進の観点から、本措置が必要である

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