概要・争点

本件は、美容業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、所得税等の修正申告書及び消費税等の期限後申告書を提出したところ、原処分庁が、所得税等及び消費税等に係る過少申告加算税又は無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該賦課決定処分は調査結果の内容の説明を欠く違法な処分であるなどとして、原処分の全部の取消しを求めた事案です。

争点
(1) 本件各賦課決定処分は、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を欠いた違法な処分であるか否か(争点1) 。
(2) 本件無申告加算税各賦課決定処分の理由の提示に不備があるか否か(争点2) 。
(3) 本件各修正申告書は、通則法第65条第5項又は同法第66条第6項に規定する調査通知の前に提出されたか否か(争点3) 。

裁決要旨

国税不服審判所のホームページの裁決要旨

請求人は、無申告加算税の各賦課決定処分(本件各処分)に係る各通知書(本件各通知書)に記載された処分の理由が、法令のどの部分に該当し、どのような根拠で処分されたのか詳細が分からず、その判断過程も記載されていないことから、理由提示に不備がある旨主張する。

しかしながら、本件各通知書には、処分の理由として、修正申告書又は期限後申告書の提出年月日や当初申告の状況、賦課決定の根拠となる法令及び具体的な金額を挙げているほか、調査通知の有無など具体的に明示されており、これらの記載内容に照らせば、本件各処分の理由となった事実等を具体的に示しているというべきであり、原処分庁の判断の慎重と合理性を担保し、その恣意を抑制するとともに、不服申立てに便宜を与えるという行政手続法第14条《不利益処分の理由の提示》第1項の趣旨に照らし、同項の要求する理由の提示としては十分である。したがって、本件各通知書に記載された処分の理由は、同項の要求する理由の提示として不備はない。(令5.12.14 札裁(所・諸)令5-6)

 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(本件調査担当職員)から実地の調査を行う旨の通知(本件通知)の際に、本件調査担当職員から帳簿と通帳を用意しておくようにと伝えられただけで調査対象税目の通知はされていないため、修正申告書(本件修正申告書)の提出は、国税通則法第65条《過少申告加算税》第5項に規定する調査通知がある前に行われた旨主張する。しかしながら、本件調査担当職員が本件通知の際に作成した調査手続チェックシート(本件チェックシート)の記載内容には不自然なところはなく、偽造されたことを示す形跡等も認められず、その信用性に疑義を抱かせる特段の事情もないことから、本件チェックシートの記載内容は信用できるため、本件調査担当職員は、本件チェックシートに基づき請求人に対し適法な調査通知を行ったものと認められる。したがって、本件修正申告書の提出は、同項に規定する調査通知がある前に行われたものには該当しない。(令5.12.14 札裁(所・諸)令5-6)

請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(本件調査担当職員)が実地の調査を行う旨の通知(本件通知)の際に、本件調査担当職員から帳簿と通帳を用意しておくようにと伝えられただけで調査対象税目の通知はされていないため、請求人が国税通則法第66条《無申告加算税》第1項第2号に規定する修正申告書(本件修正申告書)を提出したのは、同条第6項に規定する調査通知がある前に行われた旨主張する。しかしながら、本件調査担当職員が本件通知の際に作成した調査手続チェックシート(本件チェックシート)の記載内容には不自然なところはなく、偽造されたことを示す形跡等も認められず、その信用性に疑義を抱かせる特段の事情もないことから、本件チェックシートの記載内容は信用できるため、本件調査担当職員は、本件チェックシートに基づき請求人に対し適法な調査通知を行ったものと認められる。したがって、本件修正申告書の提出は、同項に規定する調査通知がある前に行われたものには該当しない。(令5.12.14 札裁(所・諸)令5-6)

請求人は、原処分庁の行った過少申告加算税又は無申告加算税の各賦課決定処分(本件各処分)が、質問検査等を行わない調査に基づき行われたものであることから、国税通則法第74条の11《調査の終了の際の手続》第2項に規定する調査結果の内容の説明が必要であるため、本件各処分は、調査結果の内容の説明を欠いた違法な処分であると主張する。しかしながら、同法第7章の2《国税の調査》の各規定における調査は、全体として、同法第74条の2《当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権》から同法第74条の6《当該職員の航空機燃料税等に関する調査に係る質問検査権》までの各条に規定する質問検査権を行使し得る調査が対象となっているものと解され、同法第74条の7《提出物件の留置き》から同法第74条の11までの各条の規定は、同法第7章の2に規定する質問検査権を行使し得る調査以外の調査には適用されないものと解される。請求人は、原処分庁所属の調査担当者(本件調査担当職員)から実地の調査を行う旨の通知を受け、修正申告書又は期限後申告書を提出して本件各処分がされるまで、本件各処分に係る質問検査等を受けていなかったと認められることから、本件調査担当職員は、請求人に対し、調査結果の内容の説明を行う必要はない。したがって、本件各処分は、同法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を欠いた違法な処分ではない。(令5.12.14 札裁(所・諸)令5-6)

審判所の判断

争点1 (本件各賦課決定処分は、通則法第74条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を欠いた違法な処分であるか否か。)について


「イ 法令解釈等
通則法における「調査」とは、「課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切を意味し、課税庁の証拠資料の収集、要件事実の認定、租税法令の解釈適用を経て課税処分に至るまでの思考、判断を含むものをいう」と解される。ところで、通則法第7章の2《国税の調査》は、平成23年12月の改正(平成23年法律第114号)により新設されたものであり、それ以前は、質問検査権については、所得税法、法人税法、相続税法等の各税法に規定が設けられていたが、「事前通知」や「調査終了の際の手続」などの具体的な税務調査手続については法令上の定めはなく、実務上の取扱いが通達において定められてきた。そのよう
なことから、税務調査手続について、調査手続の透明性や納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と申告納税制度の一層の充実・発展に資する観点及び課税庁の納税者に対する説明責任を強化する観点から、こうした従前の取扱いが通則法において明確化
され、併せて、この前提となる「質問検査権」についても、同法において一連の手続として、各税法から集約して横断的に整備されたものである。したがって、通則法第7章の2の各規定における調査は、全体として、同法第74条の2から同法第74条の6までの各条に規定する質問検査権を行使し得る調査が対象となって
いるものと解され、同法第74条の7 《提出物件の留置き》から同法第74条の11までの各条の規定は、同法第7章の2に規定する質問検査権を行使し得る調査以外の調査には適用されないも
のと解される。このことから、本件通達1- 1の(3)において、同(1)に掲げる調査のうち、修正申告書の提出があった場合に、部内の処理のみで更正を予知してなされたものには当たらないものとして過少申告加算税又は無申告加算税の賦課決定を行うときの一連の行為のように、一連の判断過程において、課税庁が納税義務者に対して質問検査等を行うことがない行為については、それら一連の行為の性質上、通則法第74条の9から同法第74条の11までの各条の規定は適用されないことに留意する旨定められていることは、上記の平成23年12月改正の趣旨に鑑みれば、当審判所においても相当と認められる。」

当てはめ
「原処分庁は、・・・本件各賦課決定処分を行うに先立ち、請求人に対して調査結果の内容の説明を行っていないものの、請求人は、同(イ)及び(口)のとおり、本件通知を受け、質問検査権に基づく調査がある前に、本件各申告書を提出しており、その後に行われた質問検査権に基づく調査においても、本件調査担当職員から本件各賦課決定処分に係る質問検査等は受けていなかったと認められる。これらのことからすると、本件各賦課決定処分は、質問検査権に基づく調査の結果によることなく、本件各申告書の内容のみに基づいて行われたもので、本件通達1- 1の(3)に定められた、部内の処理のみで更正を予知してなされたものには当たらないものとして過少申告加算税又は無申告加算税の賦課決定を行うときに該当する。
したがって、本件調査担当職員は、請求人に対し、調査結果の内容の説明を行う必要はないから、本件各賦課決定処分は、通則法第7.4条の11第2項に規定する調査結果の内容の説明を欠いた違法な処分ではない。」

争点3 (本件各修正申告書は、通則法第65条第5項又は同法第66条第6項に規定する調査通知の前に提出されたか否か。)について

「本件チェックシートの記載内容は信用することができるところ、・・・本件調査担当職員は、本件チェックシートのうち調査開始日時及び調査開始場所以外の項目を入力して統括官の決裁を受けた後、通則法第74条の9に規定する納税者に通知すべき事項を網羅した原稿を予め作成し、請求人に電話連絡して、当該原稿を読み上げる形で本件通知を行い、その履行の結果も本件チェックシートの履行確認欄のチェックボックスにチェックマークをすることで残しており、本件チェックシート等に基づき通知事項の脱漏やそごがないように慎重に手順を踏んだ上で、本件通知を行っているものと認められるから、令和4年8月23日の本件通知の際、本件調査担当職員は、本件チェックシートの履行確認欄にチェックがある通則法第74条の9第1項に規定される各事項について、請求人に対して通知を行っていると認められる。
そして、通則法第65条第5項及び同法第66条第6項に規定する調査通知の対象は、調査の対象となる税目、調査の対象となる期間、実地の調査において質問検査等を行わせる旨の各事項であるところ、当該各事項は本件チェックシートに記戟され履行確認欄にチェックもされている事項であることからすれば、本件調査担当職員は、本件各修正申告書の提出前である令和4年8月23日に、請求人に対し適法な調査通知を行ったものと認められる。
以上のことからすれば、本件各修正申告害は、通則法第65条第5項又は同法第66条第6項に規定する調査通知を行った後に提出されたものと認められる。」

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