以下は、照会者(法人)が、「暗号資産を使用するブロックチェーンゲームにおいてゲームプレイの対価として支払われる報酬に係る消費税法上の取扱い」について照会したものの、東京国税局が、照会者に対し、次のとおり、文書回答の対象とならないことを回答した際の決裁資料からの抜粋です。

文書回答の対象に当たらない旨の東京国税局の回答

本照会については、申告期限が経過したことから、平成14年6月28日付課審1-14ほか8課共同「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)の1に定める文書回答を行う対象となる事前照会の要件(2)「申告期限前(源泉徴収等の場合は納期限前)の事前照会であること」を満たさなくなったため、照会者に対して、「事前照会に対する文書回答の対象とならなくなった旨のお知らせ(通知)」を通知する。
なお、照会者から、引き続き照会を継続したい旨の申出があったため、消費税課と協議の下、以下の検討内容に基づき、審理課から照会者に対して口頭説明を行うこととしたい。

ただし、本件においては、「本件ゲーム内報酬は、照会者の課税仕入れの対価に該当し、ユーザーが本件ゲームを消費税法上の事業として行っている場合は、ユーザーの課税資産の譲渡等の対価に該当する。」旨の口頭回答がなされています。

事実関係の詳細がわからないのが残念ですが、東京国税局の決裁資料には次の点が書かれているため、類似の事案の参考になるでしょう。

ユーザーが獲得するゲーム内報酬の課税関係
消費税法上の事業者であるユーザーが、本件ゲームを事業として行い、所定の条件を満たしたことにより本件ゲーム内報酬を獲得した場合には、本件ゲーム内報酬は、ユーザーの役務提供の対価すなわち課税資産の譲渡等の対価に該当する


運営者が支払うゲーム内報酬の課税関係
本件ゲーム内報酬は、ユーザーが消費税法上の事業者に該当するか否かにかかわらず照会者の課税仕入れの対価に該当する

以下は、照会資料からの抜粋です。「???」は情報公開請求で入手した資料の黒塗り部分です。

照会要旨

本件ゲーム内報酬は、ユーザーが本件バトルを行い所定の条件を満たした場合に、照会者がユー
ザーに対し役務の提供の対価として、また、支払うものであることから、照会者の課税仕入れの対価に該当し、事業者であるユーザーの課税資産の譲渡等の対価に該当すると解してよいか。

事実関係

照会者は、???を行う法人であり、今般、照会者の運営するブロックチェーン(ネットワーク上の分散台帳への記録により、ネットワークに参加している主体間で秘密鍵を用いてデジタル署名を行うことで、当該秘密鍵に係るアドレスから他の特定のアドレスヘの暗号資産の送付を行うことができる技術)上にNFT(「Non-FungibleToken」の略称で、代替可能性のないプロックチェーン上で発行されるデジタルトークン)を、当該NFTキャラクターを用いて???バトル(以下「本件バトル」という。)を行うものである。

また、ユーザーは、本件バトルを行い所定の条件を満たすことでポイントが付与され(以下、かかるポイントを「本件ポイント」という。)、本件ポイントから照会者の合理的な裁最に基づき変換された暗号資産を獲得することができる(以下、かかる暗号資産を「本件ゲーム内報酬」という。)。

本件ゲーム内報酬は、???。また、照会者は、???本件ゲーム内報酬を支払っている。

なお、本件ゲームでは、???

法令の規定等
(1) 資産の譲渡等及び課税資産の譲渡等
消費税法上、国内において事業者が行った資産の譲渡等は、課税の対象とされており(消法4①)、ここでいう資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい(消法2①八)、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、消費税法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいうとされている(消法2①九)。


上記「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいい(消基通5-1-1)、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供とは、資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供に対して反対給付を受けることをいうとされており(消基通5-1-2) 、上記「役務の提供」とは、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供も含まれるとされている(消基通5-5-1)。


また、課税資産の譲渡等の対価の額とは、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額をいうとされている(消法28①)。
そして、事業者が収受する経済的利益が、消費税の課税要件としての資産等の譲渡等における対価に該当するためには、事業者が行った個別具体的な役務提供との間に、少なくとも対応関係がある、すなわち、当該具体的な役務提供があることを条件として、当該経済的利益が収受されるといい得ることを必要とするものの、それ以上の要件は法に要求されていないと解されている(大阪高裁平成24年3月16日判決)。

なお、資金決済に関する法律第2条第5項に規定する暗号資産は、消費税法上、有価証券に類するものに該当するとされている(消法9④)。


(2) 課税仕入れ
消費税法上、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務を提供したとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいい(消法2①十二)、事業者が、国内において課税仕入れを行った場合、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定されている(消法30①一)。
なお、消費税法第2条第1項第十二号括弧書にいう「他の者」とは、課税事業者及び免税事業者のほか消費者も含まれる(消基通11-1-3)。


(3) 消費税法基本通達5-5-8《賞金等》
消費税法基本通達5-5-8は、他の者から賞金又は賞品(以下「賞金等」という。)の給付を受けた場合において、その賞金等が資産の譲渡等の対価に該当するかどうかは、当該賞金等の給付と当該賞金等の対象となる役務の提供との間の関連性の程度により個々に判定するのであるが、例えば、次のいずれの要件も満たす場合の賞金等は、資産の譲渡等の対価に該当する旨の取扱いを明らかにしている。
イ 受賞者がその受賞に係る役務の提供を業とする者であること。
ロ 賞金等の給付が予定されている催物等に参加し、その結果として賞金等の給付を受けるものであること。


検討
(1) ユーザーが獲得する本件ゲーム内報酬について

???

これらのことからすれば、本件ゲーム内報酬は、照会者が、???という便益のために、本件バトルを行い所定の条件を満たしたユーザーに対し支払うものであり、かつ、経済的利益の性質を有しているものと認められる。
ところで、消費税法にいう役務の提供には、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供を含むとされており(上記2(1)) 、受賞者がその受賞に係る役務の提供を業とする者であって、賞金等の給付が予定されている催物等に参加し、その結果として給付を受けた賞金等は資産の譲渡等の対価に該当するとされている(上記2(3)) 。


これを本件についてみると、本件ゲーム内報酬が上記賞金等に該当するかの判断は措くとしても、上記の取扱いを踏まえると、消費税法上の事業者であるユーザーが、本件ゲームを事業として行い、所定の条件を満たしたことにより本件ゲーム内報酬を獲得した場合には、本件ゲーム内報酬は、ユーザーの役務提供の対価すなわち課税資産の譲渡等の対価に該当する(消費税法第6条第1項の規定に該当しないことは明らかであるため検討しない。)。
なお、ユーザーが本件ゲームを消費税法上の事業として行っているか否かについては、事実認定を要するため、事前照会において判断することはできない。


(2) 照会者が支払う本件ゲーム内報酬について
消費税法上、課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から役務の提供を受けること等をいい、消費者が事業として当該役務を提供したとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもの(消費税が免除されるもの以外のものに限る。)も含まれるとされていることからすれば(上記2(2)) 、本件ゲーム内報酬は、ユーザーが消費税法上の事業者に該当するか否かにかかわらず照会者の課税仕入れの対価に該当すると認めることが相当である。


結論等
(1) 結論

本件ゲーム内報酬は、照会者の課税仕入れの対価に該当し、ユーザーが本件ゲームを消費税法上の事業として行っている場合は、ユーザーの課税資産の譲渡等の対価に該当する。
(2) 文書回答の可否
本照会については、申告期限( 一) が経過したことから、平成14年6月28日付課審1-14ほか8課共同「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)の1に定める文書回答を行う対象となる事前照会の要件(2) 「申告期限前(源泉徴収等の場合は納期限前)の事前照会であること」を満たさなくなったため、照会者に対して、「事前照会に対する文書回答の対象とならなくなった旨のお知らせ(通知)」を通知する。

参考資料(ダウンロード可)

東京国税局 暗号資産を使用するブロックチェーンゲームにおいてゲームプレイの対価として支払われる報酬に係る消費税 文書回答.pdf