暗号資産を使った国税の納付は物納として認められておらず、原則として金銭での納付が求められます。また、暗号資産は差押えが可能であり、電子記録債権としても扱われません。政府の公式な答弁(暗号資産による納税に関する質問に対する答弁書)を基に解説します。
ポイント
- 国税の納付は原則として金銭で行う
国税通則法により、国税は基本的に金銭で納める必要があります。 - 例外的に物納が認められるケース
証券や印紙、または税務署長の許可を得た場合に限り、物納が認められます。 - 暗号資産は物納に使えない
暗号資産(仮想通貨)は、相続税の物納に使用できる財産として認められていません。 - 暗号資産は差押えが可能
暗号資産は、差押禁止財産には該当せず、現行法上で差押えが可能とされています。
政府答弁の要旨
国税の納付について
国税の納付は、原則として金銭で行うことが、国税通則法(34条1項)で定められています。納税者は税額に相当する金銭を納付書(または納税告知書)に添えて、日本銀行や税務署の職員に納付しなければなりません。
証券や印紙による納付、物納について
国税は原則として金銭で納付しますが、例外として以下の方法も認められています:
- 証券での納付
- 印紙での納付
- 税務署長の許可を得た場合の物納
物納は、相続税の支払いが困難な場合に許可され、不動産や有価証券など相続財産が対象となります。
暗号資産の取り扱いについて
資金決済法上の「暗号資産」は、相続税法における物納に利用できる財産には該当しないため、物納として使うことはできません。
暗号資産の差押えについて
「暗号資産」は、国税徴収法に基づく差押禁止財産には該当しません。また、その他の法律でも差押えが禁止されていないため、現行法では差押えが可能です。
暗号資産と電子記録債権について
国税徴収法第62条1項では、「電子記録債権」は、電子記録債権法に基づいて記録される金銭債権を指します。しかし、「暗号資産」は電子記録債権に該当せず、電子記録債権として扱うことはできません。
政府答弁内容(原文)
以下、令和元年11月26日付け「暗号資産による納税に関する質問に対する答弁書」の原文です。
第200回国会(臨時会)
答弁書
内閣参質二〇〇第六一号
令和元年十一月二十六日
内閣総理大臣 安倍 晋三
参議院議長 山東 昭子 殿
参議院議員熊谷裕人君提出暗号資産による納税に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員熊谷裕人君提出暗号資産による納税に関する質問に対する答弁書
一について
国税の納付については、国税通則法(昭和三十七年法律第六十六号)第三十四条第一項において「国税を納付しようとする者は、その税額に相当する金銭に納付書(納税告知書の送達を受けた場合には、納税告知書)を添えて、これを日本銀行(国税の収納を行う代理店を含む。)又はその国税の収納を行う税務署の職員に納付しなければならない。」と規定されており、金銭による納付が原則とされている。
二及び四について
国税の納付は、金銭によるほか、国税通則法第三十四条第一項ただし書に規定する、証券をもつてする歳入納付に関する法律(大正五年法律第十号)に定めるところによる証券による納付、同条第二項に規定する、印紙で納付すべきものとされている国税又は印紙で納付することができるものとされている国税の印紙による納付、同条第三項に規定する、物納の許可があった場合の物納が認められているところである。
その上で、当該物納については、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)第四十一条の規定により、納税義務者が相続税額を金銭で納付することを困難とする事由がある場合において、税務署長の許可を得て、相続財産のうち不動産や有価証券など管理又は処分に適した財産として同条第二項に列挙されているものによることができる。
お尋ねの「暗号資産」については、その意味するところが必ずしも明らかではないが、令和元年六月七日に公布された、情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第二十八号)第一条の規定により「暗号資産」に改めることとされている、資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第五項に規定する「仮想通貨」である場合は、相続税法第四十一条第二項に規定する物納に充てることができる財産に該当しないため、物納することはできない。
三について
お尋ねの「暗号資産」については、二及び四についてで述べたとおりである場合は、国税徴収法(昭和三十四年法律第百四十七号)第七十五条から第七十八条までの差押禁止財産に該当せず、また、他の個別の法律の差押禁止規定の対象に該当しないため、現行法上差押えを禁じられていない。
五について
国税徴収法第六十二条第一項に規定する電子記録債権は、電子記録債権法(平成十九年法律第百二号)第二条第一項に規定する電子記録債権をいい、同項及び同法第三条の規定により電子債権記録機関が作成する記録原簿に電子記録をしなければ発生又は譲渡の効力が生じない金銭債権であるところ、お尋ねの「暗号資産」については、二及び四についてで述べたとおりである場合は、その発生又は譲渡の効力は電子債権記録機関作成の記録原簿への電子記録によるものではなく、当該電子記録債権には含まれない。