ICOを行って資金調達した法人の課税関係については、課税当局は、発行されるトークン(証票)の性質が様々であるため、一概に回答することは困難であるが、「一般的に資本金とは、株式の発行に際して、株主となる者から払い込まれた財産の額をいい(会社法445)、仮想通貨の受入れがこのような資本金に該当するかどうかは、会社法などの税法以外の法令等に基づいて判断されるものと承知している」と考えていることがわかりました。

結局、ICOで得た資金は、その全額が法人税を課税される可能性が高いと当局は考えているということです。

平成30年3月22日第196回国会・参議院財政金融委員会のやりとり

平成30(2018)年3月22日の第196回国会・参議院財政金融委員会において、ICOの課税関係について、藤末健三議員と政府参考人(藤井健志国税庁次長)との間で次のようなやりとりが続きました。

藤末健三君 国民の声の藤末健三でございます。  私は、所得税法につきまして様々な細かい指摘をさせていただきたいと思っております。  まず、一つにございますのが、前回の財政金融委員会で御指摘申し上げましたけれど、仮想通貨、そしてトークンに対する課税につきまして聞かせていただきたいと思います。  仮想通貨につきましては、基本的に、投機的なものであれば雑所得ベースで課税する、また、これから企業がICO、イニシャル・コイン・オファリングなどで、事業がまだ確立、走っていないのにトークンでお金を集めた場合には売上計上されるという形で議論が進んでいるわけでございますが、特にこのICOに関しましては、事業の資金を集め、それから事業を始めるという中で、トークンを出してお金を集めた時点で課税をされますと、そのお金の支払だけでも非常に大きな負担になり、事業を展開する上で大きなマイナスになると思いますが、その点につきまして、現状の解釈を財務省に、そしてまた金融庁、経産省共にこの問題をどう考えるかについて御回答ください。お願いします。

253 藤井健志発言URLを表示○政府参考人(藤井健志君) 御説明いたします。  いわゆるイニシャル・コイン・オファリング、ICOとは、トークンと呼ばれる電子的な証票を発行して仮想通貨等の資金調達を行う行為の総称であると承知しております。  それで、ICOによって仮想通貨を得た場合の課税関係については、発行されるトークン、証票の性質が様々であるため一概にお答えすることは困難でございますけれども、例えば、資金調達者がイベント参加権を表象したトークンを販売して、そのトークンの対価としてビットコインなどの仮想通貨を受領した場合には、その受領した財産的価値はトークンを販売した収益として法人税や所得税の課税対象となります。  あるいは、資金調達者が発行するトークンが何の権利も表象しない場合、資金提供者が行うビットコインなどの仮想通貨の拠出は反対給付を伴わない寄附と認識される場合がございます。そうした場合には、その寄附が例えば個人間で行われるときは、その寄附を受けた財産的価値は贈与税の課税対象となります。その寄附が今度は法人間で行われるときは、その寄附を受けた資金調達者は収益として法人税の課税対象となり、寄附をした側の資金提供者、この場合は法人ですけれども、それは寄附金として損金算入限度額の範囲内において損金となると、こういう取扱いと現行法ではなります。

254 藤末健三発言URLを表示○藤末健三君 じゃ、金融庁と経済産業省にお聞きしたいんですけれど、先ほどの財務省は相当踏み込んで回答いただいたんで、今までの見解よりも、これは。連携してやっていただけるかどうかをちょっとお聞かせいただけますか。恐らく、財務省の今の見解をこのまま進めますとICOは機能しなくなると思うんですよ。  それで、本当に金融庁の方が頑張っていただき、クリプトカレンシーの、仮想通貨のこの法的な枠組みというのは世界の中でも進んでいると言われている中で、恐らくICOも日本でやろうという動きが出ているわけでございますけれど、その点につきまして、金融庁、経産省の見解をお聞かせください。お願いします。

255 池田唯一発言URLを表示○政府参考人(池田唯一君) お答え申し上げます。  ICOのトークンを始めといたしまして、税務上の取扱いについては、最終的には税務当局の所管に関するものであると考えております。また、会計上の処理基準については、民間の基準設定主体として企業会計基準委員会がございます、そちらの方で策定されるものであると考えております。  同時に、金融庁におきましては、今般、仮想通貨交換業等に関する研究会というものを設置させていただいて、仮想通貨交換業等をめぐる諸問題について制度的な対応を検討することとしておりまして、その中で今御指摘のICOをめぐる問題についても議論いただくことを考えているところでございます。こうした研究会における議論を踏まえまして、ICOの会計処理や税務処理の問題についても金融庁としても適切に対応していきたいと考えております。  また、ただいま申し上げました研究会には関係省庁にもオブザーバーとして参加いただくことを予定しておりまして、御指摘の経産省を含め関係省庁とは適切に連携してまいりたいというふうに考えてございます。

上記の税制等に関する政府参考人の答弁にあたり、当局はどのような資料を用意していたのでしょうか。以下では、当局が、藤末議員の質問に対して用意していた税金に関する答弁の内容を確認していきます。

問「法人又は個人がICO(電子コインの発行による資金調達)により仮想通貨を得た場合の課税関係如何。」

〇 いわゆるイニシャル・コイン・オファリング(I CO)とは、トークンと呼ばれる電子的な証票を発行して仮想通貨等の資金調達を行う行為の総称であると承知している。


〇 ICOにより仮想通貨を得た場合の課税関係については、発行されるトークン(証票)の性質が様々であるため、一概にはお答えすることは困難であるが、

〇 一般論で申し上げれば、例えば、資金調達者がイベント参加権を表象したトークンを販売して、そのトークンの対価としてビットコインなどの仮想通貨を受領した場合には、その受領した財産的価値は、トークンを販売した収益として法人税や所得税の課税対象となる。

(注1) 資金調達者が発行するトークンが何の権利も表象せず、資金提供者が行うビットコインなどの仮想通貨の拠出が、反対給付を伴わない寄付と認められる場合、その寄付が法人間で行われるときには、その寄付を受けた資金調達者は収益として法人税の課税対象となり、その寄付をした資金提供者は寄附金として損金算入限度額の範囲内において損金となる。

(注2) 資金調達者においてトークン発行の見返りとして受領した仮想通貨について、その仮想通貨の受入れが、いわゆる一般的な資本や負債に該当せず、一時的な仮受金にも該当しない場合には、トークン発行の対価収入として資金調達者の収益となる。

〇いずれにしても国税当局としては、個々の事実関係に基づいて、法令等に照らして適切に取り扱うこととなる。その寄付が個人間で行われるときには、その寄付を受けた財産的価値は、贈与税の課税対象となる。

更問「資本に該当する仮想通貨の受入れとは具体的にどのようなものをいうのか。」

〇 (繰り返しになるが、) ICOにより仮想通貨を得た場合の課税関係については、発行されるトークン(証票)の性質が様々であるため、一概にはお答えすることは困難であるが、

〇 一般的に資本金とは、株式の発行に際して、株主となる者から払い込まれた財産の額をいい(会社法445)、仮想通貨の受入れがこのような資本金に該当するかどうかは、会社法などの税法以外の法令等に基づいて判断されるものと承知している。

○ いずれにしても国税当局としては、個々の事実関係に基づいて、法令等に照らして適正に取り扱うこととなる。

参考資料(ダウンロード可)

平成30年3月22日参議院銀財政金融委員会 国会答弁書及び参考資料(藤巻健三議員からの質問「問1」に係るもの)