平成31年3月20日第198回国会・参議院財政金融委員会のやりとり
平成31(2019)年3月20日の第198回国会・参議院財政金融委員会において、暗号資産(仮想通貨)の譲渡所得該当性や分離課税の適用等について、藤巻健史議員議員と政府参考人(麻生太郎財務大臣、星野次彦財務省主税局長、並木稔国税庁次長)との間で次のようなやりとりが続きました。
181 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 今回も、暗号資産の税制、そして外貨預金の税制についてお聞きしたいと思うんですが、現在、暗号資産は雑所得ですね。雑所得というのは、他の九分類と違いまして、他の九種類の所得区分にいずれにも該当しない所得と規定されているわけです。ですから、暗号資産を雑所得として国税当局が主張している限り、譲渡所得であるとか一時所得であるということを否定するのは私ではなくて、私がそれを立証する必要はなくて、国税当局が、譲渡所得ではないよ、一時所得ではないよ、だから、それに当てはまらないから雑所得だよというロジックをおっしゃらなくてはいけないはずだと思います。 そこで、前回の質疑を振り返ってみると、結局、私が暗号資産の譲渡益というのは譲渡所得ではないかというふうに申し上げたときに、国税当局の方は、暗号資産は改正資金決済法上もそれから消費税上も支払手段であるから、だから譲渡所得という資産ではないよと、こういうロジックだったと思うんですよね。 ちょっと確認をしたいんですけれども、要は、暗号資産というのは支払手段であり、資産ではない、だから譲渡所得ではないよと、こういう主張かと思いますが、いかがでしょうか。
182 並木稔発言URLを表示○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。 前回の繰り返しになる部分もございますが、所得税法上、譲渡所得は資産の譲渡による所得と定義されておりまして、当該所得に対する課税は、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨と解されております。 この点、ビットコインなどのいわゆる暗号資産は、資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されており、消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられていることから、暗号資産の譲渡益は資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられるところでございます。 このため、国税当局としては、暗号資産は、資産ではあるものの、譲渡所得の起因となる資産には該当せず、その譲渡所得による所得は一般的に譲渡所得には該当しないものとして取り扱っているところでございます。
183 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 ちょっと議論の論点が明確になりました。要するに、暗号資産というのは、資産としては認められるけれども、譲渡資産に起因する資産ではないという説明でよろしいんでしょうか。
184 並木稔発言URLを表示○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。 今答弁したとおりでございまして、そのとおりでございます。
185 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 じゃ、ちょっとその後、これは後でまた申し上げますけれども、暗号資産というのは支払手段でもあるというふうにおっしゃっていましたけれども、支払手段というのはキャピタルゲイン、値上がり益とか値下がり損というのは生じるんでしょうか。
186 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。 ただいま国税庁からお答えしたとおり、暗号資産は資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されております。消費税法上も、支払手段に類するものとされているところでございます。 こうした現行法令を踏まえれば、暗号資産につきましては、外国通貨と同様に本邦通貨との相対的な関係の中で換算上のレートが変動することはあっても、それ自体が価値の尺度とされており、資産の価値の増加益を観念することは困難と考えております。このため、国税当局においては、暗号資産の譲渡による所得は一般的に譲渡所得には該当せず、雑所得に該当するものとして取り扱っているというふうに承知をしております。
187 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 アメリカでは、暗号資産を支払手段と定義して、かつ、それでいながらキャピタルゲインを認めているわけですけれども、日本とはどうしてそれが違うんでしょうか。
188 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) アメリカの税法上の扱い、日本とはかなり立て付けが違っております。税法上、所得区分がそもそもなくて、原則総合課税になっているわけですけれども、総所得に含まれる所得を列挙しています。この中には給与とか資産の譲渡益とかいろんなものが列挙されていて、この資産の譲渡益から資本資産に当たるもの、それは除いて、それ以外の通常所得というものに対して総合課税をするというようなことになっています。 ちなみに、為替差益は原則通常所得の中に含まれているわけですけれども、資本資産の中にまさにこの暗号資産が含まれているというようなことでございます。具体的にはアメリカの内国歳入庁の指針で規定されておりまして、連邦政府における暗号資産の課税上の取扱いは資産、プロパティーとされております。為替差益を生じさせる通貨としては取り扱われないというふうに規定をされているところでございます。 それから、暗号資産の売買又は譲渡によって生じた所得の性格は、当該資産が納税者にとって資本資産か否かによって決定されるというふうに規定されておりまして、例えば納税者が株式、債券、その他投資資産のように投資目的で所有しているのであれば、納税者にはキャピタルゲインが発生するという、そういう立て付けになっているということでございます。
189 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 アメリカの税制は分かりましたけれども、ちょっと議論を脇道に一回それますけれども。 前回、暗号資産の譲渡益とかそれから外貨資産の為替益というのは、損益通算とかそれから翌年への損失のキャリーオーバーができない。その理由として、これらは、為替とかそれから暗号資産というのは、時期を選んで実現損ができる、実現益が出る、出られると、恣意的に時期が決定できる、だから、譲渡、暗号資産とか為替、外貨預金というのは雑所得、キャリーオーバー、損のキャリーオーバーとか損益通算ができないよという御回答があったと思うんですけれども、これやっぱり違うと思うんですよね。 今おっしゃったように、暗号資産の譲渡益とか外貨預金の為替益というのは雑所得である、雑所得だからキャリーオーバー、損のキャリーオーバーはできないし、損益通算はできない、これがロジックだと思うんですが、いかがでしょうか。
190 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) 先生おっしゃっているとおりだと思いますけれども、これまでこの話については当委員会でも何度か議論になっておりまして、それで、先生からその他の所得との損益通算や損失の繰越しを可能とすべきではないかといったような御趣旨の質問もこれまであったものですから、それで先ほど申し上げたような一定程度取引のタイミングを調整して損益の発生時期を選ぶことが可能であるので、その損益通算を認めない方が適当なんだといったような御答弁もしたわけでございますけれども、この前の委員会で先生がおっしゃっている、まさにその所得区分がどうだという、そこのその定義をめぐっての話につきましては、これは、これが雑所得に入るかどうか、雑所得についてなぜ損益通算が認められないのかということで整理をするのが正しいと思っております。 その上で申し上げますと、その雑所得の中には様々な態様のものがその所得区分の性質上含まれておりますので、その損失についても様々な経費によるものがあると考えております。 したがいまして、総合所得の課税ベースの計算に当たってこうした様々な経費を広く勘案することは税負担の公平性等の観点から慎重な対応が必要であるということから、雑所得の損失の金額を他の各種所得の金額から控除することや、雑所得の損失を繰越控除とすることは認めていないということでございます。その上で、これまでの議論どおり、雑所得に所得分類として入るということを申し上げているわけでございます。
191 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 今の議論に関しては、これも前回申し上げたと思うんですけれども、税区分を考えるときに、そういうように毎年大きいボラティリティー、損をしたり得をしたりするボラティリティーあるものが雑所得に入るなんて思ってもいなかったからそういう区分になっているんじゃないかなと、私は逆にそう思っています。 今、もう一つそれに関して申し上げちゃうと、昨日、風間議員の株式の質問に対して星野局長は、株式売却などその時期を今おっしゃったように選べる、だからこそ分離課税の二〇%にしたとおっしゃったと思うんですけれども、だったらば、暗号資産の譲渡益もそれから外貨預金もまさに時期を選べるんだから、分離課税二〇%にしてしまえばそういう恣意的な操作ができなくなる、だから二〇%にしろという議論もできるんじゃないかと思うんですが、いかがですかね。
192 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) 上場株式の税制をめぐりましては、昨日の質疑でも申し上げましたけれども、個人の資産を貯蓄から投資に向かわせるという、そういう政策判断の下に個人のリスクをなるべく低減させ、またその金融市場に対するゆがみをなるべく少なくするという、そういう観点から一律の課税にしております。 これによって、いつ売っても買っても、どういう金融商品であってもある意味中立性が補完されるような制度になっていると、そういう趣旨で申し上げたわけでございまして、今般のこういった暗号資産についての損の取扱いについてどうするかというのは、これは雑所得に分類されるというふうに整理をしておりまして、雑所得について損が、繰越しなり損益通算が認められないというのは、先ほど申し上げたような雑所得の性質からきているというふうに考えているところでございます。
193 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 最初の質問に対するお答えで、暗号資産というのは、資産ではあるけれども譲渡所得に該当する資産ではないというお答えだったと思うんですが、それは一応、コンファーム的なことなんですけれどもね。 〔委員長退席、理事三木亨君着席〕 今、改正案、所得税法第二条第一項十六号の改正案ではこう述べているわけです。卸売資産のところで、事業所得を生ずべき事業に係る商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(有価証券、第四十八条の第二第一項(仮想通貨の譲渡原価等の計算及びその評価の方法)に規定する仮想通貨及び山林は除く。)で棚卸しをすべきものとしては政令で定めるものをいう、こう書いてありますから、これはもう確実に国税当局が、資産であると、後で譲渡所得の起因する資産かどうかは別として、資産であるということは確実にここで認められたわけですよね。 なぜかというと、ここで卸売資産ではないというふうに明言しているということは、資産であることを認めている証左だと思うんですけれども、一応そういうことで、そういう理解でよろしいですね、資産で。
194 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。 御指摘のとおり、今回、所得税法の改正案におきまして、棚卸資産の範囲から仮想通貨、すなわち暗号資産を除くこととしておりますけれども、これは所得税法の改正案におきまして、暗号資産の必要経費に算入する金額の計算方法、これを法令上明確化するに当たりまして、所得税法、現行の所得税法において既に規定されている棚卸資産の原価等の計算方法に関する規定が重複して適用されないことを明らかにするために行う改正でございます。 お尋ねになられましたように、暗号資産の売却益等が資産の譲渡による所得として定義される譲渡所得に該当しないとされていることに関しまして、財務省、国税庁は暗号資産が税法上の資産になること自体を否定しているのか、資産として認めているのかという御趣旨であると受け止めましたけれども、この点については暗号資産は資産ではあるということでございまして、これは今回の改正でも明確でございます。 繰り返しになりますけれども、譲渡所得の起因となる資産には該当せず、その譲渡による所得は一般的には譲渡所得に該当しないということを説明させていただいております。
195 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 そうしますと、前回も申し上げましたけど、租税法の大家である金子先生ですね、金子宏先生。この先生が書いていらっしゃる代表的教科書に、これ一か月ぐらい前に第二十三版というのが出て新しい書きぶりに変わったわけですけれども、「租税法」二十三版、二十三版の第二百六十一ページですけれども、譲渡所得における資産とは、譲渡性のある財産権を全て含む概念で、ビットコイン等の仮想通貨などがそれに含まれると書いていらっしゃるわけですよね。確かに仮想通貨と書いて、ビットコインというふうには書いてはありますけれども、その大家の先生が、資産であり、かつ国税当局が否定している譲渡所得になり得る資産であるということを明言されているわけです。学説でそうあるわけですよね。 〔理事三木亨君退席、委員長着席〕 先ほども申しましたように、雑所得であるというふうに国税当局が主張するためには、こういう先生のことを明確に否定しない限り駄目なわけですよ。だって、雑所得というのはそういう譲渡所得とかいうものに含まれていないものであるというふうに規定されているわけですから。明らかに学説の、その租税法の大家の先生が言おうと何だろうと、これは違うんだ、だから雑所得だというふうな論法をしていただかないと、これは納得できないですね、やっぱり法律上ね。いかがですか。
196 並木稔発言URLを表示○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。 いわゆる租税法に関しましては大学教授など多くの有識者の方による研究が行われておりまして、委員御指摘の金子先生の「租税法」のほかにも様々な御意見があることも承知しておりますが、国税当局として租税に関する個々の学説についての見解を述べることは差し控えさせていただきたいと思います。 その上で、いわゆる暗号資産の譲渡益に係る所得区分について国税当局としての見解を申し上げるとすれば、先ほど来御答弁申し上げている内容となるところでございます。
197 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 ちょっと時間がなくなってきたのでちょっとはしょりますけれども、最初にちょっとお聞きしたんですけど、最終的な結論は、今おっしゃったように、学者の先生が譲渡所得の可能性もあるというふうにおっしゃっている、あと私は一時所得の可能性もあるかなと思っているんですけれども、もしこの暗号資産の譲渡益が雑所得の可能性もある、一時所得の可能性もある、そして、まあ雑所得の可能性もあると、こういう可能性があるんであるならば、これはやっぱりあとは政治判断でいいと思うんですよね。これは確かに、暗号資産の所得がこれが例えば利子所得であるなんといったら、これは絶対否定されるんですけれども、大家の先生までも言っている学説の一つであるならば、それはあとは国税当局が主張するんじゃなくて、政治的にもこういうものだというふうに言っていいんじゃないかと思うんですよ。 特にまた、これは暗号資産の話もそうなんですけれども、時間がないのでちょっと外貨預金の方の話もしますけれども、外貨預金って、この前もちょっと申し上げましたけど、雑所得ですけれども、雑所得である限り最高税率五五%で、損失はキャリーできないし、それから損益通算もできない。そんな税制だったらば、誰も外貨預金なんかしないですよ。私だって絶対嫌だもんね。ドルのMMFとか、そういう方はまだ源泉分離二〇%ありますけれども、そんな税制であるならドル預金しないですよ。 もしドル預金をするようになれば、やっぱりドル高円安になりますよね。これ、この前も申し上げた繰り返しになりますけれども、そうであるならば、わざわざ出口のないと言われている異次元緩和なんかはしなくてもいいわけですよ、こんな副作用のどでかいね、やらなくても、ドル預金の税制を変えるだけでもうドル高は進行して、デフレ脱却できちゃうんですから。 そういうことを考えてやっぱり税制というのは考える。それはもう国税当局がそれを判断できることじゃないということは十分分かっています。国税当局としては、分かっていますけれども、それはやっぱり麻生大臣なりそれから総理が主導して、そういう範疇にあるのならばこれでいこうという政治判断できておかしくないと思うんですが、それについて、麻生大臣、ちょっとお聞かせ願えますでしょうか。
198 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) 外国為替の話が出ましたので、これが雑所得に入っている理由でございます。 これは、暗号資産についてもるる述べましたのと同様でございますけれども、外国通貨については、通貨という位置付けのほかに物という性格があるのではないかという、そういう御意見もあります。物としての価値の変化を捉まえて譲渡所得課税すべきという議論もございますけれども、やはり譲渡所得という所得区分は、資産が一定期間保有されて、その間に経済的価値が累積していった場合に、それをまさに手放す際にまとめて生ずる税負担を二分の一課税や五十万円の特別控除を通じて緩和をするといったような趣旨で区分が設けられているという、こういった制度趣旨に鑑みましても、外為法上の対外支払手段として随時様々な資産の対価の弁済に用いることができる、こうした外国通貨について一般的な資産と異なる課税方式としていることは、それは税負担の求め方としては合理性はあるのではないかというふうに考えているところでございます。
199 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 今の話も、円という通貨であるならば何となく分かるんですけれども、外貨の場合には、特に外貨の場合には、円との関係においてやっぱり値上がり益、値下がり損というのがあると思うんですよね。だから、やっぱり値上がり益、値下がり損のある資産として考えてもおかしくないんじゃないかと私は思うんですが。 そう思っているのは私だけじゃなくて、先ほど申し上げました租税法の権威である金子先生が、やっぱりこの「租税法」第二十三版の二百六十二ページに、外貨も資産の一種であり、外貨と円貨との交換からは資産の譲渡損益として為替差損益が生じると記載してあるわけですよ。やっぱり大家の先生が、為替の譲渡益というのは、譲渡益、譲渡損というのは、別に雑所得でなくていいという、じゃないという感じですかね、譲渡益だというふうにおっしゃっているわけですから、それを完璧に否定するというのはどうかなと思うんですよね。 先ほど申しましたように、雑所得というのはそういう範疇に、要するに譲渡所得とか一時所得に入っていないということを説明責任があるのは国税当局なんですからねと私は思うんですけど、いかがですか。
200 並木稔発言URLを表示○政府参考人(並木稔君) 繰り返しになりますけれども、いわゆる租税法に関しては多くの有識者の方による研究がございまして、委員御指摘のものも含めて様々な意見があることは承知しておりますけれども、当局として個々の学説について見解を述べることは差し控えさせていただきたいと存じます。 その上で、外国通貨と邦貨との交換による、生じる為替差損益に係る所得区分について、国税当局としての見解を申し上げれば、為替差損益は外国通貨を邦貨などの他の通貨と交換する際の交換レートの変動により生ずるものでありまして、外国通貨自体の価値が変動したものとは考えられず、資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられるところであります。 このため、国税当局といたしましては、外国通貨は資産ではあるものの、譲渡所得の起因となる資産には該当せず、外国通貨と邦貨との交換により生ずる為替差損益、つまり外国通貨の譲渡による所得でございますけれども、これは一次的に譲渡所得には該当しないものとして取り扱っているところでございます。
201 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 もう時間がないので国税当局との話はここで終わりにしたいかと思うんですけれども、国税当局のロジックというのは十分分かります。国税当局というのは、別に政治判断をするべきところではなくて、やはり税の論理で物事を進めるというのが皆さんの役目ですから、これ以上、だからどうだと責める気はないんですけれども。 ここで一つ、財務大臣にお聞きしたいんですが、政府が十五日に閣議決定した改正案では、暗号資産は新たに金融取引上の規制対象になると聞いております。金商法の網が掛かるということだと思うんですけれども、これで金融商品として位置付けられるならば、仮想通貨を他の金融所得同様に二〇%の源泉分離で考えてもよろしいんじゃないかと、それこそ投資の中立性ということを考えますと、まさに租税法で分離課税二〇%ということを導入してもいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
202 麻生太郎発言URLを表示○国務大臣(麻生太郎君) 委員御指摘がありましたように、これは資金決済法の一部改正法というんですけれども、これは暗号資産の交換という業務につきましては引き続き資金決済法の対象ということにしておりまして、法令上の呼称は確かに仮想通貨から暗号資産に変更することとしておりますけれども、その定義を変更するということではありません。 すなわち、いわゆる暗号資産というものが、いわゆる資金決済法上、引き続きこれまでの仮想通貨と同様に、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値として規定されることになります。したがって、消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられているということから、外国通貨と同様に、その売却益等は資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にするものと考えておりまして、一般的に雑所得に該当するという現行の取扱いを変更する必要はないと考えております。
203 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 余りちょっと納得できないんですけど、支払手段だけじゃないというから金商法で縛りを掛けるんだと私は理解するんですけれども、支払手段のままであれば金商法なんか関係ないですよね。いかがですか。
204 麻生太郎発言URLを表示○国務大臣(麻生太郎君) そういう御見解もあろうかと思いますが、私どもの答弁は先ほど申し上げたとおりです。いろいろ御見解はありますから。
205 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 あと二分ほど時間があるので、ちょっとまた戻させていただきますけれども、カジノの所得ですが、これは何所得になりそうなんですか。
206 並木稔発言URLを表示○政府参考人(並木稔君) お答え申し上げます。 御質問のカジノ収入による所得につきましては、いわゆるIRにおけるカジノに関して現時点で制度設計の詳細が明らかでないため、その課税関係についての確たることは申し上げられませんが、そういう意味で、一般論で申し上げますと、日本国内に住んでいる居住者がいわゆるカジノにより得た所得については一時所得に区分されるものと考えておるところでございます。
207 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 以前、麻生大臣が私の質問に対して、給与所得と暗号資産での利益とで不平等じゃないかというお話をしたんですけれども、カジノでもうけたものが一時所得、一時所得というのは五十万を引いた後、それを半額にして税率を掛けるわけですから、支払う税金というのは半分になるわけですよ。一方、暗号資産でもうかった利益は最高五五%まで行くと。これ、それこそ不平等感ないですか。カジノでもうけたら税金半分、暗号資産でもうけたのはそのままというのは非常に不公平じゃないかという気がするんですけど。
208 麻生太郎発言URLを表示○国務大臣(麻生太郎君) 御指摘は、多分雑所得とされている為替取引とかいわゆる暗号資産取引というのとは異なって、一時所得とされている、いわゆるカジノですかね、そういったものの利益というのは、所得金額の五〇ですから、二分の一だけに課税されることは不公平だという話をされておられるんですか、そういう御意見のように見えました、聞こえましたけれども。 その点につきましては、先ほど国税庁の方から説明があっておりましたけれども、一時所得につきましては所得金額の二分の一として課税する仕組みとなっているんです、というのは御存じのとおりですが、これは一時所得が一時的とか偶発的とかそういった所得なんで、一度にまとめていわゆる生じる税負担への配慮というのが必要になるために設けられている仕組みなんだと思っておりますので、一時所得というと例えば競馬とか競輪とか公営ギャンブルなどもありますけれども、競馬では払戻金の課税については原則として外れ馬券の購入費用は必要経費として控除できないというのは御存じのとおりだと思いますが、この暗号資産については、為替と同様に、売り越し、買い越し等々を繰り返した場合でも、年間を通じた損益ベースとして課税が行われるという違いが基本的にあるんだと思っております。 したがいまして、一時所得、雑所得、どちらが得かとかいう話ではなくて、それぞれの所得の性質、性格を踏まえて異なる課税方法が取られているということなんだと理解しておりますが。
209 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 競馬とかそっちの方は分かるんですけど、カジノとの不平等感がないような税制を考えていただければと思います。 終わります。
上記の税制等に関する政府参考人の答弁にあたり、当局はどのような資料を用意していたのでしょうか。以下では、当局が、藤巻議員の質問に対して用意していた税金に関する答弁の内容を確認していきます。
問「暗号資産が支払手段だとキャピタルゲインは生じないのか。」
(注)秘書は、財務省・国税庁は「支払手段である暗号資産について「値上がり・値下がり」を認識しない」という立場なのか確認する趣旨で質問すると言つていた。
〇 (国税庁からお答えしたとおり)暗号資産は、資金決済法上、「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値」と規定されており、消費税法上も「支払手段に類するもの」とされている。
〇 こうした現行法令を踏まえれば、暗号資産については、外国通貨と同様に、本邦通貨との相対的な関係の中で、換算上のレートが変動することはあっても、それ自体が価値の尺度とされており、「資産の価値の増加益」を観念することは困難と考えられる。
〇 このため、国税当局においては、暗号資産の譲渡による所得は、一般的に譲渡所得には該当せず、雑所得に該当するものとして取り扱っているところと承知している。
問「暗号資産の譲渡益や外貨資産の為替益の損益通算や損失のキャリーオーバーが認められない理由に関し、前回の答弁では「これらは時期を選んで損益を実現できるからだ」との回答があったが、法律には雑所得の定義にそのようなものは入っていない。雑所得とは他の9種類の所得区分に「いずれにも該当しない所得」であり、雑所得だから損益通算ができないに過ぎないと思うがいかがか。」
〇 前回の質疑の際、暗号資産取引や為替取引について、
・一定程度、取引のタイミングを調整し、損益の発生時期を選ぶことが可能であるため、
・広く損益通算を認めた場合、他の所得の状況を踏まえた税負担の調整が可能となるとの懸念があることから、損益通算を認めていない
とご答弁したのは、委員のご指摘が、これらの取引について、「他の所得との損益通算や損失の繰越しを可能とすべきではないか」とのご趣旨であることを踏まえたもの。
なお、「現行制度において、暗号資産取引や為替取引について、なぜ他の所得との損益通算等が認められていないのか」という点に関して申し上げれば、(ご指摘のように)これらの所得が雑所得に該当するものとして取り扱われているためである。
更問「なぜ雑所得の損失については、他の所得との損益通算や繰越損失が認められていないのか。」
〇 雑所得は、その所得区分の性質上、様々な態様のものが含まれており、その損失についても、様々な経費によるものがあると考えられる。総合所得の課税ベースの計算にあたり、こうした様々な経費を広く勘案することは、税負担の公平性等の観点から慎重な対応が必要であることから、
① 雑所得の損失の金額を他の各種所得の金額から控除することや、
② 雑所得の損失を繰越控除することは、
認めていないところである
(参考1)雑所得については、
① 仮想通貨や外国通貨の取引のように損失が生じうるものもあれば、
② 公的年金や個人年金のように、そもそも損失が生じることが見込まれ
ないものもあり、
一概に損失の発生を想定するのは難しい。
(参考2)現在、雑所得に含まれており、損益通算を認めた場合、問題があると考えられるものの例
・副業として行っている物品販売
・趣味で行っている音楽活動や執筆活動
※ 雑所得については、帳簿保存義務が課されておらず、給与所得・事業所得等の所得を圧縮するため、こうした取引等を通じて損失を計上する懸念があるほか、申告された損失が真実かどうかの確認も困難。なお、様々な態様のものが含まれ、かつ、多くの納税者が有する雑所得について、帳簿等保存義務を課すことは、慎重な検討が必要。
(参考3)福岡高裁昭和54年7月17日判決(昭和52年(行コ)第28号:所得税更正処分取消請求控訴事件)(抄)
判旨
(ii)「所得税法が立法政策として所得分類制を採用しているのはt所得がその性質により担税力を異にし、担税力に即した公平な課税を行うために所得をその性質ごとに分類したうえその担税力に適した計算方法と課税方法を定める必要があることに由来し、雑所得と他の所得の間には所得の発生する状況差異があり、雑所得においては、多くは余資産の運用によって得られるところのものであり、その担税力の差に着目すれば、雑所得に他の所得との損益通算の規定がないことにはそれ相当の合理性を認めることができるから、それをもって憲法第29条、第22条に違反するとの見解は採用できない。」
(参考4)衆・大蔵委員会昭和43年3月25日
○田中(昭)委員 いわゆる今度の税法改正で、雑所得の損益算ができないような改正になっておりますが、その改正をした理由、並びに改正をしなければならないという根本の原因、特にこの問題が起こつてきた発生原因といいますか、そういうものについて御説明願いたいと思います。
○吉國(二)政府委員 雑所得の計算上生じました損失を他の所得から控除するいわゆる損益通算の制度につきましては、御承知のとおり雑所得という所得は前に並べてあります九つの所得以外の所得ということでございまして、いわば全く雑所得、したがって内容的にはいろいろな所得があるわけでございます。その中には事業所得等に類似したものもございますけれども、大体は全体として必要経費のないもの、あるいは必要経費がきわめて少ないものが多いわけでございます。またその中には、必要経費があっても、家計の、家事関連経費に非常に近いものがあって、はたして損益通算が妥当であるかどうかというような点もあったわけでございます。そこで、従来からこの雑所得の損益通算につきましては問題があるということで、御記憶と思いますけれども、競馬の所得、いわゆる競争馬を持って賞金を獲得した場合の所得につきましては、その損益はその収入からは引けるけれども、他の所得からは控除できないことにするということをやってまいりました。(以下略)」
問「外貨の為替差損益が雑所得に入つている理由は何か。」
〇 外国通貨の売買に伴う為替差損益については、異なる通貨の間の相対的な換算レートの変化に
より生じるものであり、外国通貨の価値自体が変化したものではないと考えられることから、「譲渡所得」には当たらず、その他の所得区分にも該当しないため、「雑所得」としているところである。
なお、外国通貨については、通貨という位置づけのほか、「物」という性格があるとし、「物」としての価値の変化を捉えて譲渡所得課税すべきという議論もあるが、そもそも譲渡所得という所得区分は、
①資産が一定期間保有され、その間に経済的価値が累積していた場合に
② 当該資産を手放す際にまとめて生じる税負担を「2分の1課税」や「50万円の特別控除」を通じて緩和するものであり、こうした制度趣旨に鑑みても、(外為法上の対外支払手段として、)随時さまざまな資産の代価の弁済に用いることができる外国通貨について、一般的な資産と異なる課税方式としていることは、税負担の求め方として合理性があると考える。
問「米国では暗号資産を支払い手段として位置づけているかいないのか。また、暗号資産のキャピタルゲインを認めているか否か。」
〇 米国歳入庁の指針では、連邦政府における暗号資産の課税上の取扱いは「資産(property)」と
されており、為替差益を生じさせる通貨として取り扱われないと規定されている。
また、暗号資産の売買又は譲渡によつて生じた所得の性格は、当該資産が納税者にとつて資本資産か否かによって決定されると規定されている。すなわち、例えば、納税者が株式、債券、その他投資資産のように投資目的で所有しているのであれば、納税者にはキャピタル・ゲインが発生すると承知している。
(注)ただし、キヤビタル・ゲインは、 1年超の長期保有の場合は分離課税、 1年以下の短期保有の場合は総合課税として課税される。
〇 一方、例えば雇用主から被雇用者に対して賃金として支払われた暗号資産は、源泉所得税の対象となると承知している。
(参考1)仮想通貨に対する税務上の取扱いに関する指針(抄)
2指針の概要
(1)連邦税の課税上、「仮想通貨」はどのように取り扱われるか。
連邦税の課税上、「仮想通貨」は試算(property)として取り扱われ、「仮想通貨」を使った取引に対しては資産取引に関する一般の課税原瞑i」が適用される。
(2)連邦税法上、為替差益(差損)の対象となる通貨として取り扱われるか。
現行の連邦税法では、「仮想通貨」は、為替差益(差損)を生じさせる通貨として取り扱われない。
(7)「仮想通貨」の売買または譲渡において、どのような種類の所得(損失)が実現するか。
一般的に、「仮想通貨」の売買または譲渡によって生じた所得(損失)の性格は、当該『仮想通貨」が納税者にとって資本資産 (capital assets)か否かによって決定される。例えあ、株式、債券、その他投資資産のように資本資産とされるならば、納税者にはキャピタル・ゲイン(ロス)が発生する。他方、棚卸資産、その他資産のように、取引または事業の中で主に顧客に売却するような資産であれば、納税者には通常所得(損失)(ordinary income{loss))が発生する。
(11)雇用主から被雇用者に対して報酬として支払われた「仮想通貨」は、給与所得課税における給与に該当するか。
一般的に、報酬の支払い媒体は、その報酬が給与所得における給与に該当するか否かの決定に関しては重要でなく、賃金として支払われた「仮想通貨」の市場価額は、源泉所得税、社会保険料、失業保険料の対象となる。
(参考2)資本資産(capital assets)について
一般的には、株式、債券、その他投資資産のように、「投資目的で保有されている財産」や、住宅や家財道具などの「個人的な使用目的で保有されている財産」と解されている。
なお、条文上は、次の財産等を除く財産と定義されている。
・棚卸資産
・事業用の固定資産
・著作権等の権利を創作した者により所有されているもの
・通常の営業過程から取得された受取債権
更問1「諸外国の課税では暗号資産の譲渡による損益をキャピタルゲイン・ロスとして取り扱っているのではないのか。」
〇 諸外国において、暗号資産を譲渡した際の所得税の取扱いについては、例えば、
・アメリカ、イギリス、フランスにおいては、原則、分離課税となる株式譲渡益等と同じ課税上の取扱いとしている一方、
・ドイツにおいては、分離課税となる株式譲渡益等とは異なりt原則、総合課税として課税される
など、課税の取扱いは、さまざまであると承知している。
更問2「日本の譲渡所得は諸外国のキャピタルゲインと性格が異なるのか。」
○ お尋ねは、財産的価値のあるものを売却した場合の課税関係について、日本とその他の国々では違いがあるのではないか、というご趣旨であると考える。
〇 この点、例えば、イギリスでは、「キャピタルゲイン税」として、金融資産の譲渡益のほか、土地や暗号資産も含めて財産的価値のあるものの売却益等を分離課税している。
(注)イギリスは、為替差益も原則キャピタルゲイン税の対象(分離課税)
〇 他方、日本やドイツは、金融資産の譲渡益は分離課税として取り扱う一方で、土地や暗号資産についてはそれとは課税上の取扱い必ずしも一致させていない。
(注)ドイツの為替差益の取扱いは分離課税(金融所得)とされる場合と総合課税(土地や暗号資産も原則該当)とされる場合がある。
〇 いずれにせよ、(暗号資産に限らず)財産的価値のあるものを売却した場合の課税関係については、(日本だけが諸外国と異なるというよりも、)日本を含む各国によってさまざまであると認識している。
詳しくは、以下の参考資料をご確認ください。