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📌 この記事でわかること 東京国税局「所得税・消費税 誤りやすい事例(令和7年12月版)」の全内容を解説します。令和7年分確定申告(申告期限:令和8年3月16日)に向けて、特定親族特別控除の新設基礎控除の引上げ(非居住者への誤適用)インボイス制度の2割特例の誤解など、本資料に掲載された具体的な誤りやすい事例を網羅しています。

東京国税局「所得税・消費税 誤りやすい事例」令和7年版とは何か

東京国税局の個人課税課・消費税課が作成した「所得税・消費税 誤りやすい事例(令和7年12月版)」は、確定申告において実際に誤りが多く見られる事例をまとめた実務資料です。東京国税局が毎年公表しており、令和7年12月版は令和7年分の確定申告(令和8年2月16日〜3月16日)に対応しています。

📅 対象申告年分
令和7年分の所得税・消費税
(申告期限:令和8年3月16日)
🆕 令和7年版で追加された事例
配当所得(4頁)・特定親族特別控除(49頁)・基礎控除(50頁)・確定申告等(63頁)・消費税課税仕入れ(71頁)・適格請求書等保存方式(80頁)
📖 資料の性格
東京国税局が情報公開請求等により公表。実際の申告・調査で見られた誤りに基づく実務資料

令和7年版で新たに追加された6つの誤りやすい事例

令和7年12月版では、以下の6つの事例が新たに追加されました。いずれも令和7年分の申告で実際に誤りが生じやすい内容です。

ℹ️ 令和7年版 新規追加事例一覧
  • 配当所得(4頁):外国上場株式等の配当について申告不要制度を選択できるかどうか
  • 特定親族特別控除(49頁):所得58万円超の子への控除適用・扶養控除との重複適用の誤解
  • 基礎控除(50頁):年を通じて非居住者の者への基礎控除引上げの誤適用
  • 確定申告等(63頁):年途中出国後・準確定申告(出国)と確定申告の関係
  • 消費税 課税仕入れ(71頁):生計を一にする親族からの建物賃借と課税仕入れ・仕入税額控除
  • 消費税 適格請求書等保存方式(80頁):R5.10.1登録事業者のR7年分2割特例の適用可否・相続による承継

所得税の誤りやすい事例(令和7年版・詳解)

① 配当所得(4頁)― 外国上場株式等の申告不要制度R7新規
⚠️ 誤りやすいポイント
  • 外国の証券会社等に預けている外国上場株式等の配当等について、申告不要制度を選択できると考えている。
ℹ️ 正しい取り扱い

申告不要制度を選択できるのは、国内における支払の取扱者(証券会社等)を通じて交付を受けるものに限られます措法8の5①、9の2⑤。外国の証券会社等に預けている外国上場株式等の配当等については、申告不要制度を選択することができず、総合課税または申告分離課税により確定申告が必要です。

💡 事例①のポイント
  • 申告不要制度の対象は「国内の支払取扱者経由」のものに限定
  • 外国証券会社経由の配当は申告不要制度を選択できない
  • 確定申告では総合課税か申告分離課税で申告する必要がある
② 特定親族特別控除(49頁)― 扶養控除との関係と2つの誤解R7新規
📌 特定親族特別控除の概要(令和7年分〜)

対象:生計を一にする19歳以上23歳未満の親族等で、合計所得金額が123万円以下かつ控除対象扶養親族に該当しない者所法84の2

子の合計所得金額 扶養控除 特定親族特別控除
48万円以下(給与収入103万円以下) ✅ 38万円〜63万円 ❌ 適用不可(扶養親族に該当するため)
48万円超〜58万円以下 ✅ 扶養控除(逓減) ❌ 適用不可(同上)
58万円超〜123万円以下 ❌ 対象外 ✅ 適用可(所得に応じた控除額)
123万円超 ❌ 対象外 ❌ 適用不可
⚠️ 誤りやすいポイント①
  • 20歳の子の合計所得金額が58万円を超えることから、令和7年分の確定申告で控除を受けていない
  • 子の合計所得金額が58万円超123万円以下であれば特定親族特別控除(所法84の2)の適用を受けられる。扶養控除の対象外=控除ゼロ、という誤解に注意。
⚠️ 誤りやすいポイント②
  • 20歳の子の合計所得金額が58万円以下であることから、扶養控除と特定親族特別控除の両方の適用を受けられると考えている。
  • 合計所得金額が58万円以下の場合、子は控除対象扶養親族に該当するため、特定親族に該当しない。したがって特定親族特別控除は適用不可。両者の重複適用はできない。
💡 事例②のポイント
  • 子の所得が58万円超123万円以下なら、扶養控除の対象外でも特定親族特別控除を確認する
  • 扶養控除と特定親族特別控除は重複適用不可(どちらか一方のみ)
  • 「扶養控除の対象外=控除ゼロ」は令和7年分以後は誤解
③ 基礎控除(50頁)― 非居住者への誤適用R7新規
⚠️ 誤りやすいポイント
  • 令和7年中を通じて非居住者である者が、納税管理人を通じて確定申告を行うとき、基礎控除額を(引上げ後の額で)加算している
ℹ️ 正しい取り扱い

措法41条の16の2による基礎控除額の加算(最大95万円への引上げ)は、居住者についてのみ適用されます。年を通じて非居住者となる者については適用されません措法41の16の2

ただし、年の中途で出国して非居住者となった場合は居住者期間があるため、納税管理人を通じて行う確定申告においても引上げ後の基礎控除の適用を受けることができます。

💡 事例③のポイント
  • 年を通じて非居住者→ 基礎控除の引上げ(措法41の16の2)は適用されない
  • 年の中途で出国(居住者期間あり)→ 引上げ後の基礎控除の適用を受けられる
  • 納税管理人経由での申告でも、非居住者期間だけか否かが判定の分岐点

参考:国税庁HP「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」

④ 確定申告等(63頁)― 年途中出国と準確定申告・確定申告の関係R7新規
⚠️ 誤りやすいポイント
  • 年の途中で納税管理人を定めず出国し、出国前に準確定申告書(出国)を提出した場合、その後に所得が発生しても同年分の確定申告書を提出できないと考えている。
ℹ️ 正しい取り扱い

納税管理人を指定せずに出国する場合、出国前に準確定申告書(出国)を提出します所法127。しかし、出国後も不動産所得等の国内源泉所得が発生する場合は、その所得を含めた確定申告書の提出が別途必要です所法120②、164、165

確定申告書には出国後12月31日までの国内源泉所得を含め、準確定申告(出国)で申告した内容も含めて申告し、差額を精算します。つまり準確定申告(出国)と確定申告の両方を提出することになります。

💡 事例④のポイント
  • 準確定申告(出国)を提出しても、出国後に国内源泉所得がある場合は確定申告も必要
  • 準確定申告(出国)と確定申告の両方を提出し、差額を精算する
  • 「準確定申告を出したから同年はもう申告不要」という誤解が典型的な誤り

参考:国税庁HPタックスアンサー「No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合」

消費税の誤りやすい事例(令和7年版・詳解)

⑤ 消費税 課税仕入れ(71頁)― 生計一親族からの建物賃借R7新規
⚠️ 誤りやすいポイント
  • 生計を一にする親族から、店舗用として建物を借り受け賃料を支払ったが、課税仕入れに該当しないと考えている。
ℹ️ 正しい取り扱い

消費税法上の「他の者」には課税事業者・免税事業者のほか消費者も含まれます消基通11-1-3。生計を一にする親族からの建物賃借も課税仕入れに該当します消法2①十二

ただし、適格請求書発行事業者でない者(親族が非登録の場合)からの課税仕入れは、原則として仕入税額控除(消法30①)の適用を受けられません。「生計一親族=課税仕入れに該当しない」という誤解と、課税仕入れ該当性と仕入税額控除の適用可否を混同するケースに注意が必要です。

💡 事例⑤のポイント
  • 生計一親族からの建物賃借は課税仕入れに該当する(消法2①十二)
  • 仕入税額控除が受けられるかは、貸主(親族)のインボイス登録状況で判断する
  • 「課税仕入れ該当性」と「仕入税額控除の適用可否」は別々に判断する
⑥ 消費税 適格請求書等保存方式(80頁)― 2割特例の適用可否と相続承継R7新規
⚠️ 誤りやすいポイント① ― R5.10.1登録事業者のR7年分2割特例
  • 令和5年10月1日から適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者が、令和5年10月〜12月の課税売上高が1,000万円以下なので、令和7年分の消費税申告で2割特例を適用できると考えている。
ℹ️ 正しい取り扱い

令和7年分の消費税申告における基準期間は令和5年分(1月〜12月)全体で判定します。インボイス登録前に免税事業者であった令和5年1月〜9月の課税売上高も含めて計算し、合計が1,000万円超であれば課税事業者となるため2割特例は適用できません。

なお、免税事業者であった期間の課税売上高は税抜処理を行わず、その売上(非課税売上等を除く)がそのまま課税売上高となります。

⚠️ 誤りやすいポイント② ― 相続による適格請求書発行事業者の承継
  • 令和7年中に相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人が、被相続人の令和5年分課税売上高が1,000万円以下なので、令和7年分の消費税申告は不要と考えている。
ℹ️ 正しい取り扱い

適格請求書発行事業者でない相続人が、相続により適格請求書発行事業者である被相続人の事業を承継した場合、みなし登録期間(※)中は相続人を適格請求書発行事業者とみなして消費税法の規定が適用されます消法57の3③

みなし登録期間中は相続人は課税事業者とみなされ、消費税の申告納税が必要となります。被相続人の基準期間の課税売上高だけで判断することはできません。

(※)みなし登録期間:相続のあった日の翌日から、相続人が適格請求書発行事業者の登録を受けた日の前日、または被相続人の死亡日の翌日から4か月を経過する日のいずれか早い日までの期間

💡 事例⑥のポイント
  • R7年分2割特例の基準期間はR5年1〜12月全体(免税事業者期間も含む)で判定
  • 「R5年10〜12月だけの課税売上高」で判定するのは誤り
  • 相続によるインボイス承継:みなし登録期間中は課税事業者とみなされ、消費税の申告が必要
  • 被相続人の基準期間の課税売上高だけで判断できない

📋 まとめ:令和7年版の新規事例・実務チェックポイント

  • 【所得税①】外国証券会社経由の外国上場株式配当 → 申告不要制度は選択不可、確定申告が必要
  • 【所得税②】子の合計所得金額58万円超 → 扶養控除対象外でも特定親族特別控除(最大63万円)を確認
  • 【所得税③】特定親族特別控除と扶養控除の重複適用は不可(所得金額で適用される控除が決まる)
  • 【所得税④】年を通じて非居住者の場合 → 基礎控除の引上げ(95万円)は適用不可
  • 【所得税⑤】年途中出国後に国内源泉所得あり → 準確定申告(出国)に加え確定申告も必要
  • 【消費税①】生計一親族からの建物賃借 → 課税仕入れに該当する(仕入税額控除の可否は登録状況で判断)
  • 【消費税②】R5.10.1登録事業者のR7年分2割特例 → 基準期間はR5年1〜12月全体で判定
  • 【消費税③】相続による適格請求書発行事業者の承継 → みなし登録期間中は課税事業者とみなされ申告必要

本記事は東京国税局「所得税・消費税 誤りやすい事例(令和7年12月版)」の内容に基づいて解説しています。税制改正の詳細・個別事案については所轄税務署または税理士にご確認ください。

📥 ダウンロード資料

Q
外国の証券会社に預けている外国上場株式等の配当は、申告不要制度を選択できますか?
A

選択できません。申告不要制度を選択できるのは、国内における支払の取扱者(証券会社等)を通じて交付を受けるものに限られます(措法8の5①、9の2⑤)。外国の証券会社等に預けている外国上場株式等の配当等については、申告不要制度を選択することができず、総合課税または申告分離課税により確定申告が必要です(資料4頁)。

Q
子の合計所得金額が58万円を超えると、令和7年分の確定申告で控除はゼロですか?
A

控除ゼロではありません。令和7年分から特定親族特別控除(所法84の2)が新設されており、子の合計所得金額が58万円(給与収入103万円相当)超123万円以下の場合、その所得金額に応じた控除額が適用されます。合計所得金額が58万円以下の場合は控除対象扶養親族に該当するため特定親族特別控除は使えませんが、扶養控除の適用が受けられます。「58万円超だから控除なし」という誤解が典型的な誤りです(資料49頁)。

Q
年を通じて非居住者である場合、令和7年分の基礎控除の引上げ(最大95万円)は適用されますか?
A

適用されません。措法41条の16の2による基礎控除額の加算は居住者のみに適用され、年を通じて非居住者となる者には適用がありません。ただし、年の中途で出国して非居住者となった場合は居住者期間があるため、納税管理人を通じて行う確定申告においても引上げ後の基礎控除が適用されます(資料50頁)。

Q
生計を一にする親族から店舗用建物を借りた賃料は、消費税の仕入税額控除の対象になりますか?
A

賃料は課税仕入れに該当しますが、仕入税額控除が受けられるかは貸主の登録状況によります。消費税法上の「他の者」には消費者も含まれるため、生計を一にする親族からの建物賃借も課税仕入れとなります(消基通11-1-3)。ただし、貸主(親族)が適格請求書発行事業者でない場合は、原則として仕入税額控除(消法30①)の適用を受けられません(資料71頁)。

Q
令和5年10月1日にインボイス登録した事業者は、令和7年分の2割特例を適用できますか?
A

基準期間(令和5年分)の課税売上高が1,000万円超であれば適用できません。令和7年分の基準期間は令和5年1月〜12月全体の課税売上高で判定します。令和5年1月〜9月は免税事業者であった期間ですが、その期間の課税売上高(税抜処理なし)も含めて計算します(資料80頁)。

Q
相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した場合、消費税の申告は必要ですか?
A

みなし登録期間中は申告が必要です。適格請求書発行事業者でない相続人が被相続人の事業を承継した場合、みなし登録期間中は相続人を適格請求書発行事業者とみなして消費税法が適用されます(消法57の3③)。みなし登録期間中は課税事業者とみなされるため、被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも消費税の申告納税が必要となります(資料80頁)。