国税庁では、事前照会に対する文書回答手続に関する事務運営指針に基づき、納税者の皆様の予測可能性の一層の向上に役立ててもらうため、特定の納税者の個別事情に係る事前照会について、一定の要件に該当しない限り、文書による回答を行っています。

この文書回答手続を利用できるのは、照会者が自ら取引等を行うケースに限定されています。ただし、照会者が自ら取引等を行わない場合であっても、業界内に共通する取引等で事実認定を要しないものに関する税務上の一般的取扱いについて、業界団体や中央省庁が照会を行う場合に限り、国税当局としての一般的な見解を文書により示すための手続として、同業者団体等からの照会に対する文書回答手続が容易されています。

国税庁及び国税局では、同業者団体等から、傘下の構成事業者等に共通する「取引等に係る税務上の取扱い」に関して、文書による回答を求める旨の申出があった場合に、その照会が一定の要件に該当し、かつ、多数の納税者の皆様の予測可能性の向上等に役立つと認められるときは、文書により一般的な回答を行うとともに、その照会及び回答の内容等を公表するという手続(一般文書回答手続)を設けています。

上記については、平成16年2月17日付課審1-3ほか8課共同「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)が発遣されています。

以下では、平成16年2月の事務運営指針発遣から令和5年6月の事務運営指針改正の概要や趣旨等について、国税庁から開示された決裁資料に基づいて確認します。また、当該決裁資料を記事の最後にアップしておきます。

平成16年2月の事務運営指針発遣

決裁資料の「伺い」文

文書回答手続は、納税者サービスの一環として、具体的な取引等に係る税法の適用等に関して、文書による回答を求める納税者からの申告期限前の照会(以下「事前照会」という。)に対して、一定の要件の下、回答を文書で行うとともに、その内容を公表することにより、他の納税者に対しても税法の適用等に関する予測可能性を与えることを目的として実施している。


今回、納税者の予測可能性の一層の向上の観点から、同業者団体等からの文書による回答を求める照会に関する事務処理手続等を別案のとおり定め、各国税局長及び沖縄国税事務所長あてに事務
運営指針を発遣することとしたい(概要については、次ページのとおり)。


(注)なお、本文中で引用している平成14年6月28日付課審1-14ほか8課共同「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)については、本事務運営指針の制定と併せて一部改正中であり、本事務運営指針の発遣と同時に改正することを予定している。

同業者団体等からの照会に対する文書回答手続案の概要


1 基本的な考え方
(1)平成14年6月28日付課審1-14ほか8課共同「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)(以下「個別文書回答に係る事務運営指針」という。)に基づく文書回答手続は、納税者サービスの一環として、具体的な取引等に係る税法の適用等に関して、文書による回答を求める納税者からの申告期限前の照会(以下「事前照会」という。)に対して、一定の要件の下、回答を文書で行うとともに、その内容を公表することにより、他の納税者に対しても税法の適用等に関する予測可能性を与えることを目的として実施している。


(2)今回、個別文書回答に係る事務運営指針の一部改正により、文書回答に係る照会者については、自ら実際に取引等を行う者(その代理人を含む)に限定することとしている。
ただし、照会者が自ら取引等を行わない場合であっても、業界内に共通する取引等で事実認定を要しないものに関する税務上の一般的取扱いについて、業界団体や中央省庁が照会を行う場合に限り、国税当局としての一般的な見解を文書により示すための手続を新たに別途の事務運営指針(以下「本件事務運営指針」という。)で定めることとする。


2 本件事務運営指針と個別文書回答に係る事務運営指針との主な相違点等
(1)特定の事業者の個別の取引等に係るものでなく、同様の業種・業態に共通する取引等に係る照会で、当該業種・業態の多数の納税者から照会されることが予想されるものであることを要件とする。
(注)特定の事業者の個別の取引等に係るものについては、個別文書回答に係る事務運営指針に基づき処理する。
(2)形式要件を充足していることに加え、税務上の取扱いに関する予測可能性の向上の観点等からみて有用である等、税務当局が適当と考える場合に限り文書回答を行う。
(3)照会の受付、内容の具体的審査及び回答については、庁(審理室)又は局(審理課(官)、酒税課)とする。
(4) 照会・回答の内容は速やかに公表することとし、照会者の申出による公表時期の延期措置は設けない。


3 留意事項
(1)文書回答の回答内容は、あくまで照会に係る事実関係を前提にした一般的な回答であり、個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、改めて当該取引等に係る具体的な事実関係等を審査した上で判断する。なお、こうした文書回答の性質については各々の回答文書に明記することとする。
(2)本件事務運営指針による取扱いは、所得税の確定申告期限後の平成16年3月29日より実施する。

平成18年5月の事務運営指針改正(原則3か月以内回答)

決裁資料の「伺い」文

文書回答手続は、納税者サービスの一環として、具体的な取引等に係る税法の適用等に関して、文書による回答を求める納税者からの照会(以下「事前照会」という。)に対して、一定の要件の下、回答を文書で行うとともに、その内容を公表することにより、他の納税者に対しても税法の適用等に関する予測可能性を与えることを目的として実施している。
今回、この文書回答手続について、事務処理の適正化及び納税者利便の一層の向上の観点から、照会文書が受付窓口に到達した日から原則3か月以内に行うよう努めることとし、所要の整備を行い、現行の事務運営指針を別案のとおり改正することとしたい。
(注)なお、「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」の一部改正について(事務運営指針)については、本事務運営指針の改正と同時に発遣することを予定している。

平成20年3月の事務運営指針改正(原則3か月以内の極力早期回答努力)

決裁資料の「伺い」文

文書回答手続は、納税者サービスの一環として、具体的な取引等に係る税法の適用等に関して、文書による回答を求める納税者からの照会(以下「事前照会」という。)に対して、一定の要件の下、回答を文書で行うとともに、その内容を公表することにより、他の納税者に対しても税法の適用等に関する予測可能性を与えることを目的として実施している。
今回、この文書回答手続について、納税者利便の一層の向上及び事務処理の適正化の観点から、所要の整備を行い、現行の事務運営指針を別案のとおり改正することとしたい。
(注)なお、「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について」の一部改正について(事務運営指針)については、本事務運営指針の改正と同時に発遣することを予定している。

改正の概要


1 平成20年度税制改正審議を踏まえ、「事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について(事務運営指針)」を次のとおり改正する。


(主な改正点)
①文書回答を行う対象となる事前照会の範囲に、将来行う予定の取引で個別具体的な資料の提出が可能なものを加える。
②照会・回答内容の公表に関して、事前照会者名などの事前照会者を特定する情報は原則非公表とする。
なお、事前照会者から申出があった場合は事前照会者名を公表することができることとする。
③ 回答文書等は、原則として、その回答後60日以内に公表することとしているが、事前照会者の申出があり、その申出に相当な理由がある場合には、180日以内(現行120日以内)の期間、公表を延期できることとする。

④ 文書回答は、照会文書が到達した日から原則3か月以内に行うよう努めることとしているが、原則3か月以内の極力早期に行うよう努めることとする。


(参考)現行の事務運営指針中に「複数の選択肢がある事実関係に基づくものではないこと」との要件があるが、その意味は、「一つの照会文書において前提となる事実関係が選択的なものとなつていないことである」旨注記し、明確化を図ることとする。


2 「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について(事務運営指針)」についても、上記l④と同様の改正を行う。


3上記改正は、いずれも平成20年4月1日以後に受け付けたものから適用する。

平成29年5月の事務運営指針改正(同業者団体等の範囲の拡大、記名押印要件の簡素化)

決裁資料の「伺い」文

同業者団体等からの照会に対する文書回答手続は、納税者サービスの一環として、税法の適用等に関する同業者団体等からの事実認定を要しない一般的な照会について文書により回答を行うとともに、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用等について予測可能性を与えることを目的として実施している。
今回、この文書回答手続について、納税者利便の一層の向上の観点から、所要の整備を行い、現行の事務運営指針を別案のとおり改正することとしたい。
(注)「『事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について』の一部改正について(事務運営指針)」については、本事務運営指針の改正と同時に発遣することを予定している。

改正の概要

1 文書回答手続の概要
同業者団体等からの照会に対する文書回答手続は、納税者サービスの一環として、税法の適用等に関する同業者団体等からの事実認定を要しない一般的な照会について文書により回答を行うとともに、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用等について予測可能性を与えることを目的として実施している。


改正点
納税者利便の一層の向上の観点から、「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について」を次のとおり改正する。


① 同業者団体等の範囲の拡大
現行の事務運営指針においては、照会者を○○中央会のような国内最上部団体である同業者団体等に限定している。そのため、
・地方同業者団体がその地域独自の取引等について照会したい場合
・ 取引の当事者ではないものの当該取引と密接な関連を有する業務を行う者が当該取引について照会したい場合(例えば、商品先物市場の開設者が市場参加者の行う取引について照会したい場合など。)
に、これらの者が照会当事者とはなれないことから、利便性を高めるために同業者団体等の範囲を拡大する。


② 納税者の照会に係る事務手続の簡素化
現行の事務運営指針においては、照会文書には一律に代表者の記名押印を求めているところ、大企業においては記名押印のための代表者への説明等の事務手続が煩雑であり、照会する上での負担になつているとの意見があることから、記名押印を行うべき者について担当役員でも差し支えないこととする。


3 適用時期
平成29年7月1日以後に受け付けるものから適用する。


2 「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について(事務運営指針)」についても、上記l④と同様の改正を行う。


3上記改正は、いずれも平成20年4月1日以後に受け付けたものから適用する。

令和2年10月の事務運営指針改正(押印廃止)

決裁資料の「伺い」文

同業者団体等からの照会に対する文書回答手続は、納税者サービスの一環として、税法の適用等に
関する同業者団体等からの事実認定を要しない一般的な照会について文書により回答を行うととも
に、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用
等について予測可能性を与えることを目的として実施している。

今回、この文書回答手続について、照会者の事務負担の軽減及び行政事務の効率化を図る観点から、所要の整備を行い、現行の事務運営指針を別案のとおり改正することとしたい。
(注)「『事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について』の一部改正について(事務運営指針)」については、本事務運営指針の改正と同時に発遣することを予定している。

改正の概要

1 文書回答手続の概要
同業者団体等からの照会に対する文書回答手続は、納税者サービスの一環として、税法の適用等に関する同業者団体等からの事実認定を要しない一般的な照会について文書により回答を行うとともに、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用等について予測可能性を与えることを目的として実施している。

2 改正点
照会者等の事務負担の軽減及び行政事務の効率化を図る観点から、照会文書への押印を不要とするなど、平成16年2月17日付課審1-3ほか8課共同「同業者団体等からの照会に対する文書回答の事務処理手続等について」(事務運営指針)に定める様式等を改正する。

3 適用時期
令和2年10月26日以後に受け付けるものから適用する。

令和3年6月の事務運営指針改正(「税の軽減を主要な目的とするもの」要件削除)

決裁資料の「伺い」文

同業者団体等からの照会に対する文書回答手続は、納税者サービスの一環として、税法の適用等に
関する同業者団体等からの事実認定を要しない一般的な照会について文書により回答を行うととも
に、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用
等について予測可能性を与えることを目的として実施している。

今回、この文書回答手続について、照会者の事務負担の軽減及び行政事務の効率化を図る観点から、所要の整備を行い、現行の事務運営指針を別案のとおり改正することとしたい。
(注)「『事前照会に対する文書回答の事務処理手続等について』の一部改正について(事務運営指針)」については、本事務運営指針の改正と同時に発遣することを予定している。

改正の概要

1 文書回答手続の概要
同業者団体等からの照会に対する文書回答手続は、納税者サービスの一環として、税法の適用等に関する同業者団体等からの事実認定を要しない―般的な照会について文書により回答を行うとともに、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用等について予測可能性を与えることを目的として実施している。


2 改正点
文書回答の対象となる同業者団体等からの照会の範囲については、照会内容を公表することにより納税者の予測可能性を向上させるという文書回答手続の趣旨や濫用防止の観点から、複数の要件が定められている。
この要件については、①項目が多く、類似するものがある、②抽象的な表現もあり、文書回答の対象になるかどうかの判断が難しい、といった意見が寄せられていたところ。
このような意見を踏まえ、今般、この要件のうち、類似する要件を統合するともに、「税の軽減を主要な目的とするもの」のように、照会の段階において確定的に判断が困難な要件を削除するなど、要件の整理・合理化を行うこととしたい。


3 適用時期
令和3年7月1日以後に受け付けるものから適用する。

令和5年6月の事務運営指針改正(沖縄国税事務所への審理官設置)

この改正は、単に、令和5年度機構改正による沖縄国税事務所への審理官設置等に伴い、所要の整備を行うものです。

参考裁判例(東京高判平成18年11月30日税資256号順号10589)

(控訴人らの主張)

「原判決は、東京国税局が本件文書回答の内容を公表しないまま本件注意文書のみを掲載したことについて、平成16年2月17日以前になされた本件文書回答については、これを公開するという運営指針はなかったから、東京国税局に、これを公開すべき法的義務は肯定できない旨判示する。しかしながら、運営指針は、あくまでも国税庁内部における、単なる事務処理上の「事務取扱方針」であって法規的性質を有しないから、納税者との関係においても絶対的に通用する基準とすべき根拠はない。東京国税局の文書回答は、それを公表すると事前照会をした納税者の不利益になることが明らかであるなど、公表してはならない特段の理由がない限り、回答主文の如何にかかわらず、これを公表すべきものである。本件において、事前照会の様式(甲2号証)には、回答文書の公表について、照会者の事前の同意がなされているのであるから、回答文書を公表してはならない特段の理由が認められない限り、回答文書は、当然に公表する義務があるというべきであり、本件において特段の理由は認められないから、東京国税局は、本件文書回答を公表すべきであった。」

(裁判所の判断)

「事前照会に対する文書回答は、国説庁が、納税者サービスの一環として、個別の取引、事実等に係る税法上の取扱い等に関する事前照会に対する回答を文書により行うとともに、その内容を公表することにより、同様の取引等を行う他の多数の納税者に対しても税法の適用等について予測可能性を与えることを目的として平成13年6月22日付け事務運営指針により同年9月から実施されている制度であること、平成16年2月17日付けで同事務運営指針が一部改正され、「貴見のとおり取り扱われるとは限らない。」という回答を行った事前照会であっても、照会文書及び回答文書のうち同様の取引等を行う他の納税者に対しても国税に関する法令の適用等について予測可能性を与えることになる場合には、原則として公開することとなったことが認められる。
 ところで、事前照会に対する文書回答制度、その一環としての照会文書及び回答文書の公表制度は、本質的に納税者サービスの一環として位置付けられるべきものであり、更には、「貴見のとおり取り扱われるとは限らない。」という回答を受けた納税者がそのような回答を自ら公表することはなんら禁止されていないことなどから、東京国税局が本件文書回答を公表しなかったことについて、権利侵害、違法の問題が生じることはない。控訴人らの同主張は理由がない。」

参考資料(ダウンロード可)

国税庁 同業者団体文書回答事務運営指針決裁資料 平成16年2月~令和5年6月

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