暗号資産は多種多様ですし、様々なサービスや取引が日々生み出されており、納税者も税理士も、そして国税職員もその税金の取扱いについて頭を悩ましています。暗号資産の税務調査においては、いずれの当事者も「このように申告すべきだ、税額を計算すべきだ」と確たることを言えない取引も珍しくありません。

国税庁は納税申告の現場が混乱しないように暗号資産の税務上の取扱いを明らかにしたFAQを公表していますが、それでも新しいサービスや取引に追いつくことはできません。FAQは、暗号資産の貸借やステーキングなどわりとオーソドックス取引でさえ、その税金の処理についてカバーしきれていません。

それでも国税庁は努力を続けていると思います。

以下では、そんな国税庁の暗号資産FAQの制定と改訂の歴史を部内資料も利用しつつ、確認してみます

平成29年12月の仮想通貨FAQの制定

国税庁の「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」は、タックスアンサー「No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係」が平成29(2017)年9月に公表された後の、同年12月に個人課税課情報第4号として公表されたものがその始まりです。

FAQの冒頭には「ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却又は使用することにより生じる利益について
は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分され、所得税の確定申告が必要となります。
この情報(FAQ)は、確定申告の対象となる仮想通貨の損益やその具体的な計算方法等について、取りまとめたものです。」と記載されていました。

このように、当初の仮想通貨FAQは個人の税金である所得税の取扱いのみをカバーするものであったため、担当課は個人課税課のみでした。

平成29年12月の仮想通貨FAQの目次

1 仮想通貨の売却………………………………………… …1
2 仮想通貨での商品の購入………………………………… 1
3 仮想通貨と仮想通貨の交換……………………………… 2
4 仮想通貨の取得価額………………………………………3
5 仮想通貨の分裂(分岐)………………………………… 4
6 仮想通貨に関する所得の所得区分……………………… 4
7 損失の取扱い………………………………………………5
8 仮想通貨の証拠金取引……………………………………5
9 仮想通貨のマイニング等………………………………… 6

20171201国税庁仮想通貨FAQ