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法人の金庫から盗まれた現金、個人の「雑損控除」は認められるか?

会社経営者の中には、法人の金庫に個人の現金を保管しているケースもあるかもしれません。しかし、盗難被害に遭った際、その損失を個人の所得から差し引く「雑損控除」として認めてもらうには、極めて高い立証の壁があることが示されました(令和6年5月22日裁決)。

事案の背景:金庫から6,500万円が盗難

請求人(法人の代表者)は、事務所の金庫内にあった現金等が盗まれたとして、約6,500万円の損失につき雑損控除の適用を求め更正の請求を行いました。しかし、税務署は「調査の結果、更正の理由がない」として却下。請求人は「調査が不十分で違法である」こと、および「現金は個人資金である」ことを主張し、争われました。

審判所の判断:立証責任は「納税者」にある

審判所は以下の2点において、請求人の主張を退けました。

1. 税務調査の妥当性 請求人は「調査官の助言がなかった」と不服を訴えましたが、審判所は「いかなる調査方法を採るかは税務職員の裁量」であり、資料提出の依頼や聴取が行われている以上、調査は適法であったと判断しました。

2. 資産の帰属(個人か法人か) 最も重要なポイントは、盗まれた現金の「所有権」です。

  • 金庫が法人の事務所にあり、従業員も出入りできたこと
  • 当初の被害届に所有者が「法人」と記されていたこと

これらの事実から、現金は「法人のものという外観」を呈しており、それを覆して「個人の資産である」と証明する証拠が不足していると断じられました。

実務上の注意点

本裁決は、更正の請求において「申告が誤りであることの立証責任は納税者側にある」という原則を再確認するものです。特に現金のような帰属が曖昧になりやすい資産については、日頃から帳簿や保管状況で個人・法人の区分を明確にしておくことが不可欠です。

裁決要旨

国税不服審判所ホームページの裁決要旨

請求人は、①原処分庁所属の職員(本件職員)が請求人に対して立証方法に関し何らの助言を与えず、容易に行うことのできる請求人からの事実関係の聴取も行わなかったものであるから、原処分は調査がなく行われたものに等しく、国税通則法第23条《更正の請求》第4項に反して違法であること、②本件職員が自ら事実関係を明らかにするための能動的な行動を一切することなく、請求人の立証が不十分であるという結論ありきで行った原処分は著しく不合理なものであって取り消されるべき不当がある旨主張する。

しかしながら、同項が規定する調査とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切、すなわち、課税庁の証拠資料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令解釈の適用を経て更正をし、又は更正をすべき理由がない旨を請求人に通知するに至るまでの思考、判断を含め極めて包括的な概念であり、いかなる調査方法を採るかは権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解されるところ、①同項に規定する調査においては助言や事実関係の聴取を行わなければならないものではなく、本件職員が請求人に対して事実関係の聴取を行っていること、②本件職員は、請求人に対する質問調査及び書類の提出依頼並びに請求人から提出された証拠等の検討等を行っており、同項に規定する調査として、本件職員の合理的な裁量の範囲内で適法に行われたものであると認められる。したがって、原処分に同項に反する違法又は不当はない。(令6. 5.22 東裁(所)令5-108)

事案の概要

請求人は、金庫内に保管していた現金等が盗難に遭ったとして、当該盗難により生じた損失につき、所得税法第72条第1項に規定する雑損控除の適用があることを前提に、更正の請求を行った。

これに対し、原処分庁は、更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。

請求人は、当該通知処分について、①原処分庁の職員による調査が不十分であり、通則法第23条第4項に反する違法があること、②本件盗難による損失は請求人の有する資産について生じたものであり、雑損控除の対象となることを主張し、当該通知処分の取消しを求めて審査請求をした。

当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

請求人は、???(令和4年1月6日の商号変更前は???。以下、商号変更の前後を通じて「???」という。)の代表取締役である。

???は、令和2年1月30日から同年7月17日までの間、???に支店(以下「本件事務所」という。)を設置していた。

???が業務のために使用する本件事務所の社長室内には、現金のほか、通帳及び印鑑等が保管されている金庫(以下「本件金庫」という。)が設置されており、当該本件金庫は、令和2年6月26日、盗難に遭った(以下「本件盗難」という。)。

???は、令和2年6月26日、本件盗難に係る被害届を受理し、当該被害届には、「被害者の住居、職業、氏名、年齢」欄に「???」と記載され、「被害金品」欄には「金庫」と記載されていた。

また、当該金庫の「在中金品」として、いずれも「所有者」欄を「???」とする「現金6500万円位」、「通帳」、「印鑑」等が記載されていた。

さらに、当該被害届について、令和3年6月3日、請求人により、「???」との会社名を「???」に訂正する旨の被害届訂正願いが提出されている。

???は、令和2年7月1日から令和3年6月30日までの事業年度の損益計算書及び雑益、雑損失等の内訳書において、雑損失の金額を5,000,000円と記載するとともに、当該雑損失について、雑益、雑損失等の内訳書の「取引の内容」欄に「盗難損失」、「相手先」欄に「???」と記載していた。


審査請求に至る経緯

請求人は、令和2年分の所得税及び復興特別所得税について、確定申告書に所定の事項を記載して、令和3年12月10日に申告をした(以下「令和2年分確定申告」という。)。

当該確定申告書の第二表には、「雑損控除に関する事項」の項目のうち、「損害の原因」欄に「盗難」、「損害年月日」欄に「令2.6.26」、「損害金額」欄に「15,000,000円」と記載されていた。

また、請求人は、令和3年分の所得税及び復興特別所得税についても、確定申告書に所定の事項を記載して、法定申告期限までに申告をした(以下「令和3年分確定申告」という。)。

請求人は、令和2年分確定申告において、本件盗難による損失の金額が65,000,000円であるにもかかわらず、その一部である15,000,000円のみを損失の金額とし、所得税法第72条第1項第1号に規定する総所得金額の合計額の10分の1に相当する金額を超える部分についてのみ雑損控除として控除していたとした。

また、令和3年分確定申告については、令和2年分確定申告の雑損控除の額の更正の請求に伴う必要があるとして、請求人は、令和4年10月17日、令和2年分及び令和3年分(以下、これらを併せて「本件各年分」という。)の所得税等について、各更正の請求(以下「本件各更正請求」という。)をした。

なお、令和2年分の所得税等の更正の請求書には、「令和2年分の確定申告書(再計算したもの)」が添付されており、その第二表の「雑損控除に関する事項」の項目のうち、「損害の原因」欄に「盗難」、「損害年月日」欄に「令2.6.26」、「損害を受けた資産の種類など」欄に「現金」、「損害金額」欄に「65,000,000円」と記載されていた。

原処分庁は、所属の職員(以下「本件職員」という。)による調査の結果に基づき、本件各更正請求に対し、令和5年5月26日付で、更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)をした。

請求人は、本件各通知処分に不服があるとして、令和5年5月29日、審査請求をした。

その後、請求人は、令和5年9月8日、審査請求において原処分の取消しを求める範囲について、令和2年分の更正の請求において雑損控除に追加した盗難に遭った金額50,000,000円から、請求人が???に帰属すると認める5,000,000円を除いた部分を認めなかった部分につき取消しを求めると変更した(以下、当該認めなかった部分の45,000,000円を「本件損失」という。)。




争点

争点1:原処分に通則法第23条第4項に反する違法又は不当があるか

争点2:本件盗難により請求人の有する資産について損失が生じたといえるか(雑損控除の可否)


争点についての請求人の主な主張

請求人は、原処分庁の担当職員が、請求人に対して立証方法に関する助言を何ら行わず、また、容易に行うことのできる事実関係の聴取も行わなかったから、原処分は調査がないのに等しく、通則法第23条第4項に反して違法である旨主張する。

また、当該職員は、自ら事実関係を明らかにするための能動的な行動を一切行うことなく、請求人の立証が不十分であるという結論ありきで調査を行ったものであり、当該調査に基づく原処分は著しく不合理であって取り消されるべき不当がある旨主張する。

さらに、請求人は、本件金庫内の現金は暗号資産関連取引により得た資金や役員報酬等に由来する個人資金であり、(一部を除き)請求人個人に帰属するものであるから、当該損失は雑損控除の対象となる旨主張する。


審判所の判断

原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。
(イ)本件職員は、本件各更正請求を受け、令和4年11月10日付で、請求人に対し、①警察署に提出した被害届の写し、②本件盗難による損失額の内訳書(個人、法人に分けての作成を依頼)、③法人の帳簿・申告書の写し(本件盗難による損失金額を計上している部分)及び④本件盗難の事実が確認できる資料(被害届に詳細な記載があれば提出不要との記載を付記)の提出を求める書面を送付した。
(ロ)本件職員は、令和4 年12 月1 日付で、請求人に対し、同日以前に請求人から提出のあった書類では本件盗難に係る雑損控除を適用できるか判断ができなかったとして、追加で①???発行の警察証明、② 確認書( 資産ごとの金額及びその資産に係る個人・法人別の内訳を記載する項目のある書面)及び③盗難品ごとの損失金額及び当該資産が個人に帰属する資産であることを証明する書類の提出を求める書面を送付した。
(ハ)本件職員は、令和4年12月7日、同月9日及び令和5年1月24日に請求人から電話にて、本件盗難による、被害の状況や内訳、被害場所の状況及び法人の被害金額の根拠等について聴取した。
(二)本件職員は、令和5年1月16日に請求人から追加の書類を収受し、同月26日に、請求人に対し、提出済みの書類からは本件盗難に係る盗難品の帰属が個人であると判断できない旨を伝えたところ、請求人から個人の帰属とする現金を本件金庫に入れていた理由について申述を受けるとともに、追加の書類を提出する旨の申出を受けた。
(ホ)請求人は、令和5年2月20日及び同月27日に本件職員に対し、追加書類を提出した上、同年3月2日、代理人を通じて警察署から返還された本件盗難に係る盗難品を本件職員に持参した。

原処分に通則法第23条第4項に反する違法又は不当があるか

通則法第23条第4項が規定する「調査」とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切、すなわち、課税庁による証拠資料の収集、証拠の評価、経験則を通じた要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈・適用を経て、更正をし、又は更正をすべき理由がない旨を通知するに至るまでの思考及び判断を含む、極めて包括的な概念であると解するのが相当である。

そして、いかなる調査方法を採るかは、権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解される。

もっとも、同項が更正処分等について「調査し」て行う旨規定している以上、当該処分が何らの調査もなく行われた場合には、当該処分の取消事由となり得るものと解される。

本件においては、原処分庁の担当職員は、請求人に対し、提出を求める書類を具体的に明示した書面を送付し、また、盗難による被害の状況、内訳、被害場所の状況、法人の被害金額の根拠等について電話による聴取を行い、さらに、請求人から提出された資料の検討等を行っている。

これらの対応は、通則法第23条第4項に規定する「調査」として、担当職員の合理的な裁量の範囲内で行われたものと認められる。

したがって、本件調査が何らの調査もなく行われたものに等しいとする請求人の主張は採用することができず、原処分に同項に反する違法又は不当があるとは認められない。

また、請求人は、担当職員が助言を行わず、事実関係の聴取も行わなかった旨主張するが、通則法第23条第4項に規定する「調査」において、助言や聴取を必ず行わなければならないと解することはできない。

その点を措くとしても、本件においては、担当職員は、請求人に対し、被害の状況等について聴取を行っているのであり、請求人の主張は事実に反する。

さらに、本件調査が結論ありきで著しく不合理であるとする請求人の主張についても、上記のとおり、本件調査は合理的な裁量の範囲内で行われたものと認められるから、原処分が不合理であるとはいえず、取り消されるべき不当があるとも認められない。

「イ 法令解釈
通則法第23条第4項が規定する調査とは、課税標準等又は税額等を認定するに至る一連の判断過程の一切、すなわち、課税庁の証拠姿料の収集、証拠の評価あるいは経験則を通じての要件事実の認定、租税法その他の法令の解釈適用を経て更正をし、又は、更正をすべき理由がない旨を請求者に通知するに至るまでの思考、判断を含め極めて包括的な概念であり、いかなる調査方法を採るかは権限ある税務職員の合理的な裁量に委ねられていると解される。
もっとも、通則法第23条第4項が更正処分等について、「調査し」て行う旨規定しているから、当該処分が何らの調査なしに行われた場合には、当該処分の取消事由となるものと解される。」


本件盗難により請求人の有する資産について損失が生じたといえるか

申告納税方式を採用する所得税においては、納税者のする申告によって具体的な租税法律関係が形成されることから、通則法は、申告内容に過誤があることを理由として更正の請求をなし得る場合を限定的に列挙している。

そして、更正の請求をする場合には、請求人において、自己の申告内容が真実に反するものであることを立証すべきであり、当該立証がなされない限り、申告に係る所得金額等を正当なものと認めるのが相当である。

また、所得税法第72条第1項に基づく雑損控除についても、当該損失に関する具体的な事実及びその金額は、納税者において立証すべきものと解するのが相当である。

本件においては、盗難があったこと自体は認められるものの、更正の請求が認められるためには、本件盗難によって請求人の有する資産について損失が生じたといえるか否かが問題となる。

この点については、

  • 本件金庫内に存在していた現金の金額がいくらであったか
  • 当該現金が請求人個人に帰属するものであったか

が検討されるべきである。

審判所は、実行犯らの供述内容等を踏まえ、本件金庫内に少なくとも約???円の現金が存在していたことは認められるものの、それを超える金額の現金が存在していたと認めるに足りる証拠はないとした。

また、本件金庫は法人の業務にも使用されていた事務所内に設置され、管理状況や被害届の記載内容等からすれば、当該金庫内に保管されていた現金は、法人に帰属していたような外観を呈しているといえる。

そうすると、当該現金が請求人個人に帰属するものであると主張するのであれば、その帰属を裏付ける具体的な事実について、請求人において立証すべきであるところ、本件においては、そのような事実を裏付ける証拠は提出されていない。

したがって、本件金庫内に存在していた現金が請求人個人に帰属するものであったと認めるに足りず、本件盗難によって請求人の有する資産について損失が生じたとは認められない。

以上によれば、本件損失について雑損控除を認めることはできず、本件各年分の確定申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が法令に従っていなかった、又は誤りがあったとは認められない。

したがって、本件各更正請求は、いずれも更正の請求ができる場合に該当しない。

「所得税法第72条第1項は、居住者の有する資産について、災害又は盗難若しくは横領による損失が生じた場合には、その一定額をその者の総所得金額等から控除する旨規定しているところ、これは資産について損失が生じた場合には、担税力が減少することが一般的であることから所得控除を認めることとした規定である。上記(イ)のとおり、更正の請求では、納税者側において自ら記載した申告内容が真実に反するものであることの立証をすべきであり、当該損失に関する具体的な事実及び損失の金額は、納税者において立証しなければならないものと解される。」

「ロ 認定事実

請求人提出資料、原処分関係資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によれば、以下の事実が認められる。

(イ)本件金庫が設置されていた本件事務所は、本件盗難があった当時???のほか請求人が代表取締役を務める???及び???も業務に使用していた
なお、???及び???-の本店所在地は、本件盗難があった当時、いずれも、本件事務所が所在する???であった。

(ロ)本件金庫は、本件金庫の鍵の開閉を???の代表取締役である請求人が行うことで管理していた。そして、請求人が社長室に在室している時は、本件金庫については施錠しておらず、従業員が本件金庫内の印鑑等を自由に出し入れできる状況であった。

(ハ)???の総勘定元帳の現金勘定(以下、総勘定元帳の現金勘定を単に「現金勘定」という。)において、本件盗難の直前に売上代金として受領したとされる5,000,000円に関する記載はない。

(二)???の現金勘定には、令和元年7月1日以降、預金口座からの引出し及び各種支出等により現金残高が増減し、令和2年6月26日時点での現金残高が1,259,393円となったことを示す記載がある。

(ホ)???の現金勘定には、令和元年6月3日以降、資本金の払込み、小口現金からの「つり銭回収」、普通預金口座からの引出し及び各種支出等により現金残高が増減し、令和2年6月26日時点での現金残高が6,169,869円となったことを示す記載がある。

(へ)???の現金勘定には、令和2年2月21日以降、現金残高は0円又はマイナスであり、同年6月26日時点の現金残高が、△232,633円であることを示す記載がある。

(卜)本件各法人の現金勘定において、令和2年6月26日に現金残高が0円となったことを示す記載はない。

(チ)請求人名義の???普通預金口座の取引推移一覧表には、平成31年4月10日から令和元年8月23日にかけて、多額の入金及び出金が複数回あったことが記載されている。

(リ)本件盗難に関与した実行犯及び共犯者は、令和3年10月ないし同年11月に行われた本件盗難に関する検察庁の取調べにおいて、本件金庫内には約45,000,000円の現金があった旨を供述した。


ハ  検討

(イ)はじめに
本件においては、上記1の(3)の口のとおり、本件盗難により所得税法第72条第1項に規定する「盗難」があったことは認められるものの、上記イで述べたとおり、通則法第23条第1項に規定する更正の請求をするためには、本件盗難によって請求人に生じた損失が15,000,000円であるとする令和2年分確定申告の内容が真実に反するものであったことについて、請求人において、当該損失に関する具体的な金額を立証する必要がある。

そして、本件損失が本件盗難により請求人の有する資産について生じたものであるかを検討するに当たり、①本件金庫内にあった現金の金額がいくらであったか、②本件金庫内にあった現金は、請求人が所有するものであったか否かを以下順次検討する。

(n)本件金庫内にあった現金の金額はいくらであったか
上記1の(3)のハのとおり、???から金庫の「在中金品」として「現金6500万円位」との被害届が提出され、上記口の(リ)のとおり、本件盗難に関与した実行犯及び共犯者が検察庁の取調べにおいて、本件金庫内に約45,000,000円の現金があった旨を供述しているところ、実行犯及び共犯者の供述が一致すること並びに被害届の記載金額がこれを上回ることから、本件金庫内に少なくとも45,000,000円の現金があったことが認められる

しかし、45,000,000円を超える現金が本件金庫内にあったことを裏付ける証拠はなく、本件金庫内に45,000,000円を超える現金があったとは認めるに足りない。

(ハ)本件金庫内にあった現金は、諸求人が所有するものであったか否か
請求人は、上記(ロ)の45,000,000円の現金のうち、5,000,000円は???に帰属すると主張し、15,000,000円は令和2年分確定申告において雑損控除の損害金額として記載している(上記1の(4)のイ及びへ)。

そこで、残りの25,000,000円について、請求人が所有するものであったか否かを検討する(以下、この残額の25,000,000円を「本件現金」という。)。

上記1の(3)のイないしハ、同(4)のへ及び上記口の(ロ)のとおり、本件金庫は???が業務に使用する本件事務所内の社長室に設置されていたこと、本件金庫内には、請求人が社長室に在室している時は、本件金庫については施錠しておらず、従業員が印鑑等を自由に出し入れできる状態であったこと、請求人は???の代表者の立場であったこと、「被害金品」欄に「現金6500万円位」、「所有者」欄に「???」と記載された???を被害者とする被害届が本件盗難直後に提出されていること並びに本件金庫内に???に帰属する現金が保管されていたことを請求人も認めていることからすれば、本件金庫は請求人が???の機関である代表者として管理し、本件金庫内に保管されていた本件現金が法人に帰属していたような外観を呈しており、本件現金が請求人個人に帰属すると主張する場合には、請求人個人への帰属に係る事実を立証する必要があるが、その事実を裏付ける証拠はない。

そうすると、本件現金は請求人個人が所有すると認めるには足りない。

(二)小括
以上によれば、本件盗難当時、本件金庫内に少なくとも45,000,000円の現金があったことは認められるところ、本件現金は請求人個人が所有すると認めるには足りないから、本件損失は、請求人の有する資産について生じたものであるとは認められず、所得税法第72条第1項に規定する雑損控除はできない。

したがって、本件各年分の確定申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかった又は当該計算に誤りがあったとは詔められないから、本件各更正請求は、いずれも通則法第23条第1項各号に規定する更正の請求ができる場合に該当しない。」


結論

原処分に通則法第23条第4項に反する違法又は不当があるとは認められず、また、本件盗難による損失が請求人の有する資産について生じたものとは認められない。

したがって、本件各通知処分はいずれも適法であり、審査請求はいずれも理由がないから、棄却されるべきである。

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