論文の概要

暗号通貨、特にビットコインのキャピタルゲインに対する課税の可能性とその経済的影響を分析した論文です。Chainalysisのデータを活用し、2020年のEUにおけるビットコインからのキャピタルゲインによる税収をシミュレーションしています。国レベルのデータを用いて、EUにおけるビットコインからのキャピタルゲインの税収ポテンシャルを実証的に評価した初の論文であるとしています。

主な調査結果は次のとおり。

  • 2020年のEUでのビットコインのキャピタルゲインは推定総額127億ユーロ(実現利益36億ユーロを含む)。
  • 株式のキャピタルゲイン課税をビットコインに適用した場合、税収は約8億5,000万ユーロと試算。

暗号通貨課税は、潜在的に大きな税収源であり、今後市場が成長するにつれてさらに重要性を増すとしています。

構成

1. Introduction

2. The Evolution of The Cryptocurrencies Market

3. Who Owns Cryptocurrencies?

4. The Distribution of Bitcoin Capital Gains and Tax Simulation

5. Conclusion

コメント

この論文の執筆者も自認しているとおり、結局、暗号資産サービスプロバイダーがビットコインのかなりのシェアを保持していることが多いため、個々人レベルでのビットコインの分布を決定することは困難であるという問題があります。

この論文が依拠しているChainalysisの調査は、ブロックチェーン上に記録されたトランザクションを各国のウェブトラフィックデータに従ってサービスプロバイダーのウェブサイトに割り当てることで、ビットコインに係るキャピタルゲインを推定しています。

このような推定の信頼度について、私は意見を有していませんが、この論文は、日本でも暗号資産の税務調査や分離課税税等の議論を進めるにあたり、暗号資産の利益に対する日本の税収ポテンシャルを算出するような研究が有益であることを気付かせてくれます。