本記事の紹介

この記事では、国税庁が令和6年6月に策定した「✅データ活用推進第三次中期計画」の内容を紹介します。

この計画は、税務行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するため、
✅AI(人工知能)や機械学習による予測モデルの活用
✅税務調査・徴収業務の高度化・効率化
✅職員のデータリテラシー向上と研修体制の整備
✅次世代基幹システム「KSK2」導入を見据えた体制強化
などを柱としたものです。

税務調査でAIをどう活用するのか、今後の税務行政がどのように変わっていくのかに関心がある方にとって、非常に示唆に富む資料となっています。

以下、国税庁「データ活用推進第三次中期計画」(令和6年6月20 日)の紹介です。

背景・経緯


経済社会や技術環境が目まぐるしく変化する中、国税庁は、引き続き「納税者の自発的な納税義務の履行を適正かつ円滑に実現する」という使命を的確に果たし、国民の負託に応えていく必要がある。特に、情報通信技術の普及・高度化により、データの活用は、課題の認識・解決や新たな価値創造のために不可欠な取組となってきているところ、国税組織においては、平成30 事務年度に「データ活用推進第一次中期計画」を策定し、システム環境の整備、体制整備及び人材育成を一体として進めながら、データ活用を推進することとした。
具体的には、国税組織におけるデータ活用の推進に当たり、平成30 事務年度から令和8事務年度までの9年間を、離陸期(平成30~令和2事務年度)、普及期(令和3~5事務年度)、発展期(令和6~8事務年度)の3期に分け、各期に対応した中期計画を策定し、取組を着実に推進していくこととした。普及期においては、令和3年7月1日付官参1-45 ほか30 課共同「データ活用推進第二次中期計画について」(指示)に基づき、データ活用を担う人材の育成に焦点を当て、職員のデータリテラシーの向上を図ってきたところである。
その結果、これまでに、データ活用に係る人材の育成、体制及びインフラ環境の整備が進むことにより、特に、国税庁及び国税局(沖縄国税事務所を含む。以下同じ。)の課税・徴収部署を中心に各種予測モデル(以下「各種モデル」という。)の構築及び構築したモデル等の活用が進むなど、データ活用の取組は着実に進展している。とりわけ、人材の育成については、データリテラシーレベルに応じた研修体制が整備されたほか、国税専門官試験における新試験区分(理工・デジタル系)の創設など、環境面も含めてデータ活用の取組は、普及期にふさわしい進展を遂げたといえる。
また、令和5年6月に公表した「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション‐税務行政の将来像2023‐」においては、課税・徴収事務の効率化・高度化等に向けたデータの活用の徹底に加え、事業者のデジタル化の促進を通じた社会全体のDX推進を新たに掲げているところであり、経済取引のデジタル化の進展に伴う活用可能なデータの増大により、国税組織におけるデータ活用の推進の重要性は一層高まっていくものと考えられる。
今後、令和8年度のKSK2(次世代システム)の導入等を受け、国税組織のシステム環境及び執務環境は、大きな転換点・変革期を迎えることとなる。こうした環境変化も見据えつつ、これまでの取組過程で培ってきたデータ活用に関する技術・知見等を最大限継承しながら、把握された課題等にも的確に対応し、国税組織におけるデータ活用の更なる定着・発展につながる効果的な施策を講じていくため、今般、発展期(令和6~8事務年度)を対象とした「データ活用推進第三次中期計画」(以下「本計画」という。)を定め、本計画に基づいた取組を推進する。

データ活用の意義・基本的考え方等


データ活用を推進することの意義は、客観的なデータという根拠に基づくことで、判断のスピードと正確性を向上させ、施策の成果を高めていくことにある。この点は、EBPM(Evidence-Based Policy Making)(注1)の推進の観点からも望ましい取組といえる。データ活用の取組を通じて、属人的な経験則といった暗黙知を形式知・組織知とするだけでなく、新たな因果関係や相関関係等の事実を発見することにもつながり、職員・組織における判断・意思決定に当たっての新たな羅針盤とすることが期待される。


また、データは電子的に収集・蓄積されることで初めて大量のデータを機械的・一元的に処理することが可能となり、これにより大幅な業務の効率化・省力化が期待できるだけでなく、AI 技術等を活用した高度な分析も可能となることから、データの電子的な収集・蓄積に取り組む必要がある


さらに、経済社会のデジタル化の進展も踏まえながら、効果的・効率的なデータの活用を念頭に置いた業務フローの改善に向けて不断に見直していくBPR(Business Process Reengineering)の取組も重要である。


国税組織がデータ活用の取組を推進することは、収集・蓄積される膨大なデータの有効活用を通じて、国税組織のパフォーマンス向上が図られ、税務行政の効率化・高度化という目的の達成に大きく貢献することが期待されるという点で望ましい取組であるだけでなく、保有するデータは基本的には納税者等の協力と負担の下で収集・蓄積されているという点に鑑みれば、その有効活用は組織に課せられた責務といえるものであり、組織全体に根付かせていくべき取組である。


前述のとおり、これまでの取組を通じて、データ活用に係る職員の意識醸成や人材育成、環境の整備等について一定の進展が認められるものの、今後、データ活用の取組の裾野を広げるとともに、一層の高度化を図り、その効果・効用をこれまで以上に組織的に享受できるようにしていくためには、全ての職員が、全ての業務において、データを活用するという共通認識を醸成し、国税組織を挙げたデータ活用の定着を追求していく必要がある。


そこで、本計画においては、「データ活用の実装(ビルトイン)」を基本コンセプトとして、効果的・効率的なデータの活用を前提とした事務運営の企画や業務遂行の更なる加速化、組織のパフォーマンス最大化を追求していくために、データ活用を推進し各種取組を試行する段階から、データに基づく事務運営や業務遂行が浸透・常態化した、データドリブン(注2)型の組織を志向するための各種取組を推進することとする。
(注1)政策の企画をその場限りのエピソードに頼るのではなく、政策の目的を明確化した上で合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすること。
(注2)経験や勘だけでなく、収集したデータを基に意思決定をする手法。

本計画における施策


本計画においては、前述の基本コンセプトを踏まえ、これまでの施策の骨格を基礎としつつ、事務運営への実装(基軸1)、効果的・効率的なデータ活用(基軸2)、データリテラシーの向上・人材の効果的活用(基軸3)、推進体制の整備等(基軸4)の4点を基軸に据えた施策を講じていく。
なお、本計画に基づく施策の実施に当たり必要となる実施要領や報告等については、別途定めるところによる。

事務運営への実装(基軸1)
〇 国税組織におけるデータ活用の取組は、税務行政の効率化・高度化を達成する手段の一つとして位置付けられるものであり、取組自体が自己目的化することのないよう、実務上の課題を踏まえた取組を実施すること、その成果物を実務において適時的確に活用し、国税組織の各種業務における判断・意思決定に資する材料とすること、そして、こうした取組のプロセスを確立し、事務運営の一部として定着させること(事務運営への実装)が重要となる。


〇 国税庁及び国税局の各課(以下「庁局各課」という。)は、事務運営への実装を推進する観点から、一定の効果が期待できる取組については、試行を含め積極的に実務における活用を検討し、成果物の活用方法を具体的に指示するほか、取組の実施・評価・改善のサイクルの確立、運用マニュアルや通達等の整備、ツール化に向けた検討などを進め、より持続可能な取組とすることに留意する。


〇 とりわけ、機械学習等により構築された各種モデル等の成果物の運用においては、庁局各課は、当該成果物のユーザーからのフィードバック等を通じて、運用方法の見直しや学習データの追加等によるモデルの再学習・再構築を行い、継続的に活用効果の精度の維持・向上を図る。また、国税庁データ活用推進室及び国税局情報システム課は、各種モデルの適正な管理・運用の観点から、必要となる技術的支援を行うとともに、庁局各課における運用状況も踏まえつつ、各種モデルの管理・メンテナンスや、開発手順・運用マニュアルの整備等に関する所要の事項・ルール等を別途整備する。


〇 また、データ活用の一連のフロー(①データの収集・蓄積、②データの加工・分析、③成果物の活用)を円滑に実施するためには、保有するデータの適切な管理・運用(データマネジメント)にも十分配慮する必要がある。
特に、法定外資料をはじめとする各種資料情報については、その管理・活用方法が確立されていないものも含め膨大なデータが存在していることや、データ活用を実施する上で、既存のデータだけでなく新規データの取得・分析も効果的であると考えられ、今後、国税組織において保有・管理・活用すべきデータ量は継続的に増大していく見込みであること等を踏まえ、データマネジメントに係る基本的なルールや方針を整備するとともに、必要となる機器・ソフトウェア等のインフラ環境を検討する。


〇 なお、本計画の対象期間中には、KSK2(次世代システム)の導入を含むインフラ面での大きな環境変化が予定されていることから、こうした環境変化を踏まえた各種施策の適切な実施方法や時期等、当該環境への移行作業等について検討する必要がある点に留意する。


効果的・効率的なデータ活用(基軸2)
〇 庁局各課は、データ活用の取組の効果を最大化するため、取組の目的や進め方等について、あらかじめ可能な限り明確化し、事務運営への実装を見据えながら、取組内容の選定、進捗管理及び評価(注)を適切に実施する必要がある。
(注)例えば、具体的な実施計画を策定し、実施状況を適時確認した上で、期待した効果が得られなかった取組については、その原因を解明し、将来の取組又は他の庁局各課の取組に資するように当該取組を評価すること等が想定される。


〇 とりわけ、データ活用の取組のうち、大規模かつ広範なデータを利用した、機械学習等の高度な分析手法によるデータ分析プロジェクト(注)の実施には多大な事務量投下が見込まれる場合も多いことから、より効果的・効率的な実施となるよう留意する。
(注)「データ活用推進第二次中期計画」において、高度なデータ分析に関する取組を一層充実させるため、国税庁及び国税局において実施してきたAI を用いた先端的な取組
(パイロット・プロジェクト)については、取組の定着状況等を踏まえ、本計画における名称は、「データ分析プロジェクト」とする。


〇 データ分析プロジェクトの実施に当たって、庁局各課は、情報システム部署(国税庁データ活用推進室及び参事官並びに各国税局情報システム課)と緊密に連携しながら、取組の優先度や難易度等を踏まえ、実施の要否や実施主体、実施スケジュール等に係る検討・調整を行うとともに、プロジェクトの進捗状況等を適時適切に把握し、取組の評価等を行う。
また、情報システム部署は、庁局各課と共同して、分析に必要なデータの取得や分析手法の検討、分析作業の実施に係る業務を行うほか、国税庁データ活用推進室及び各課は、必要に応じて、重点的に取り組むべき分野を設定するなどにより、効果的・効率的にデータ活用を推進する。
なお、税務大学校においては、税務統計データ等を基に、機械学習及び統計手法を活用した効果的・効率的な事務運営等に資する研究を、外部の研究者とのネットワークも活用しながら行う。


〇 このほか、AI 技術等の急速な進展等を適時的確に把握し、利用可能なデータ分析手法等のアップデートを図るため、国税庁データ活用推進室並びに東京国税局及び大阪国税局の情報システム課において、より先端的・高度なデータ分析手法に関する情報収集や活用可能性の検討等を実施する。

データリテラシーの向上・人材の効果的活用(基軸3)
〇 国税庁データ活用推進室は、職員が備えるべきデータリテラシーについて、別紙1のとおり、レベル(「エキスパート」、「アドバンスト」、「スタンダード」及び「ベーシック」)(注)を設定し、国税庁各課、各国税局及び税務大学校と連携・協力しながら、各レベルに応じたデータリテラシー研修を実施するとともに、各データリテラシー研修の内容や実施方法等について、研修受講者からの意見等を踏まえつつ、研修内容が実務において効果的に活用できるよう、随時、所要の見直しを図る。
(注)「データ活用推進第二次中期計画」において設定したデータリテラシーレベル(「エキスパート」、「アドバンスト」、「スタンダード」、「ベーシック」及び「エントリー」)については、リテラシーレベルの底上げを図る観点から、「エントリー」を「ベーシック」に統合する。


〇 また、各国税局は、情報システム課が中心となって、特に、税務署等における自発的なデータ活用の推進を図る観点から、各国税局の実情に応じて、税務署等職員を対象としたデータリテラシー向上に資する技術的な研修等の企画・実施に努める。


〇 職員が備えているデータリテラシーの状況を把握するとともに、データリテラシー向上に資する施策の見直しや改善に活用すること等を目的として、全職員を対象にデータリテラシーを把握する取組(データリテラシーチェック)を定期的に実施する。
なお、その実施方法の概要については、別紙2のとおりとする。


〇 データ活用を通じた業務課題の改善・解決、及び効果的な人材育成を推進するため、庁局各課の職員と情報システム部署の職員との積極的な人事交流を実施するとともに、高いデータリテラシーを有する人材(特に、研究科(実証研究)修了者やデータ活用研修修了者等)を高いデータリテラシーが求められるポストに配置する等、人材の効果的な活用に十分配意する。

推進体制の整備等(基軸4)
〇 各国税局の情報システム課は、データ活用担当を置き、各国税局におけるデータ活用に係る取組の総合調整、国税局各課との共同によるデータ分析プロジェクトの実施、職員への研修の企画・実施等を担当する。また、各国税局は、実情に合わせて、情報システム課以外の職員も含めた部署横断的なデータ活用推進に係る検討体制を整備する。


〇 国税庁データ活用推進室並びに東京国税局及び大阪国税局の情報システム課(データ活用担当)を、国税組織全体のデータ活用推進に係る基幹部署とする。基幹部署は、データ活用推進に係る取組の統括や総合調整、他の国税局に対する支援、国税庁、税務大学校及び国税局間の連携強化施策(情報連携や情報発信等)を実施するとともに、特に高度な分析手法等を用いたデータ活用の取組や全国活用が見込まれるデータ分析等の取組の集約化等を検討・実施することとする。


〇 各国税局は、その実情に応じて、税務署等職員を対象としたデータリテラシー向上に資する技術的な研修等の企画・実施に努めるとともに(再掲)、税務署等における自発的なデータ活用の推進のために必要となる支援等を実施する。


〇 上記に掲げる施策等を推進するため、本計画における各部局の主な役割については、別紙3のとおりとする。

その他


〇 データ活用の取組を効果的・効率的に実施するためには、データの取扱いや管理等を柔軟かつ機動的に実施する必要があるが、その場合においても、データの性質等に応じた適切なアクセス制御や分析終了後のデータの管理等、情報セキュリティの確保についても十分留意する。

AI・機械学習等の活用に当たっては、「人間中心のAI 社会原則」(平成31 年3月29 日統合イノベーション戦略推進会議決定)に規定する公平性、説明責任及び透明性の確保をはじめ、AI の利用に関する包括的な枠組みやその動向にも留意する
〇 本計画については、データ活用の取組状況等を適切に見極めた上で、必要に応じて、見直しを実施する。
〇 本計画の終了を見据えて、本計画終了後におけるデータ活用の在り方や、本計画終了時点までのデータ活用に係る各種施策を基礎としつつ、データ活用に関する基本的事項、取組内容等を定めた事務運営指針の策定を検討する。

データリテラシーレベル

データリテラシーチェックの実施方法の概要

データ活用推進第三次中期計画における各部署の主な役割


1 情報システム部署

国税庁長官官房企画課データ活用推進室
・ データ活用の推進に関する全庁的な統括、データ活用の推進に当たり準拠すべき各種規程の整備の統括
・ データ分析プロジェクト(庁)の実施(国税庁各課と共同)、分析手法・分析テーマの提案、分析テーマの総合調整
・ 職員のデータリテラシー向上に資する施策の企画、立案及び実施(全庁的に実施するもの)
・ その他、国税庁各課への技術的な支援
国税庁長官官房参事官
・ データの分析に必要となるデータ取得や機器・ソフトウェア等のインフラ環境の整備等
国税局情報システム課(データ活用担当)
・ 各国税局におけるデータ活用の推進に関する統括
・ データ分析プロジェクト(局)の実施(国税局各課と共同)、分析手法・分析テーマの提案
・ 職員のデータリテラシー向上に資する施策の企画、立案及び実施(局単位で実施するもの)
・ その他、国税局各課及び税務署等への技術的な支援
また、基幹部署である東京国税局及び大阪国税局の情報システム課(データ活用担当)においては、次に掲げる役割を併せて担う。
・ データ活用の推進に関する全庁的な統括(国税庁データ活用推進室と共同)
・ データ分析プロジェクト(局)を含む、特に高度な分析手法等を用いたデータ活用の取組の集約化等の検討・実施(国税庁データ
活用推進室と共同)
・ 他の国税局情報システム課(データ活用担当)への技術的な支援や職員の育成(例:他局職員との人事交流や短期OJT 等)

2 税務大学校(研究部税務情報センター)
・ データリテラシーの向上・人材の効果的活用に向けた連携・協力
・ 効果的・効率的なデータ活用及び推進体制の整備等に関する連携・協力

3 庁局各課
国税庁各課

・ 所掌事務におけるデータを活用した事務運営の企画・立案(全庁的に実施するもの)
・ 所掌事務におけるデータ活用の推進に係る統括(局単位で実施するもの)
・ 機械学習等による各種モデル等の運用
・ データ分析プロジェクト(庁)の企画、立案及び実施(国税庁データ活用推進室と共同実施)
・ 所掌事務における職員のデータリテラシー向上に資する施策の企画、立案及び実施(全庁的に実施するもの)
国税局各課
・ 所掌事務におけるデータを活用した事務運営の実践(全庁的又は局単位で実施するもの)
・ 所掌事務におけるデータを活用した事務運営の企画・立案(局単位で実施するもの)
・ 機械学習等による各種モデル等(局構築分)の運用
・ データ分析プロジェクト(局)の企画、立案及び実施(国税局情報システム課と共同実施)
・ 所掌事務における職員のデータリテラシー向上に資する施策の企画、立案及び実施(局単位で実施するもの)
・ その他、税務署等への技術的な支援

4 税務署等
・ データを活用した事務運営に基づく業務遂行
・ 簡易的なデータ分析(例:個別事案や署内事績の分析・可視化、署内運営の検討)及びそれに必要となるデータリテラシーの習得

参考資料(ダウンロード可)

国税庁「データ活用推進第三次中期計画」(令和6年6月20 日)