第208回国会、令和4(2022)年4月19日付けで、浜田聡議員は「暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問主意書」を提出しました。
これに対して、政府は、同年4月28日付けで、「参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問に対する答弁書」を送付しました。
以下、質問と答弁の要約、原文を記載し、最後に、この質問に対する答弁を作成した際の当局の決裁資料をアップしておきます。
質問と答弁の要約
1. 財産債務調書に記載する財産の価額について、財産評価基本通達の方法に基づく評価額を使用して差し支えないか。
- 答弁:財産評価基本通達で定める方法に基づく評価額として差し支えないとされている。
2. 贈与により取得した暗号資産の価額を、所得税法施行令第119条の2に基づき、贈与者が選定する評価方法に準じた方法で評価することができるか。
- 答弁:相続税法上、贈与による暗号資産の価額は、外国通貨の評価方法に準じ、暗号資産交換業者の取引価格で評価する。
3. 贈与により取得した外国通貨の取得価額は、贈与者の評価方法に基づいて評価され、平成30年以前に取得した外国通貨の評価も当時の時価で行うか。
- 答弁:所得税法施行令第119条の6第2項第1号に基づき、贈与者の評価方法で評価され、平成30年に譲渡した場合も当時の評価方法が適用される。
4. 暗号資産について、支払手段や価値の増加性を考慮しても、資産としない政府の取扱いは法令解釈上誤りではないか。
答弁:支払手段としての性質や価値増加の可能性があっても、独立した経済的価値が取引対象とされていると認められないため、「資産」とは扱わない政府見解に法令の誤りはないと考える。
令和4年4月19「暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問主意書」
質問主意書
質問第三九号
暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問主意書
右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。
令和四年四月十九日
浜田 聡
参議院議長 山東 昭子 殿
暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問主意書
今般、私が提出した「暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する質問主意書」(第二百八回国会質問第三四号)に対する答弁書(内閣参質二〇八第三四号)を踏まえ、更に質問する。
一 国税庁が公表する「財産債務調書の提出制度(FAQ)」二十二頁によると、財産債務調書に記載する財産の価額については、財産評価基本通達で定める方法により評価した価額として差し支えないと解してよいか。
二 所得税法上、同法第四十条に規定する棚卸資産の譲渡による所得は、事業所得又は雑所得に区分され、暗号資産の譲渡による所得も、事業所得又は雑所得に区分されることから、所得税法施行令第八十七条は、暗号資産について、「贈与等の場合の棚卸資産に準ずる資産」と位置付けている。
そのため、相続税法上、贈与により取得した暗号資産の価額は時価であるところ、その時価は、棚卸資産の評価方法に準じて、所得税法施行令第百十九条の二に定める方法のうち贈与者が所得の金額の計算上選定している方法によって評価することができると解してよいか。
三 贈与により取得した外国通貨の取得価額は、所得税法施行令第百十九条の六第二項第一号の規定を踏まえると、贈与の時において、贈与者が当該外国通貨につきよるべきものとされていた評価の方法により評価すると解してよいか。
また、同号の規定は、平成三十年以前には施行されていないものと承知している。贈与又は相続により取得した外国通貨を、平成三十年に譲渡した場合において、平成三十年分の所得税の計算上、当該外国通貨の取得価額は、贈与又は相続の時における時価により評価すると解してよいか。
四 モナコインを含む暗号資産については、支払手段としての性質を持つものの、資産の価値の増加益が生じる性質を、法律上の規定によって、ただちに否定することは困難であると考えられる。個別具体的な資産の性質を判断することなく、一律に暗号資産が所得税法第三十三条第一項に規定する「資産」に該当しないとする政府の取扱いは、法令の解釈適用を誤った違法なものであるとも考えられるが、政府の見解を問う。
なお、本質問主意書については、答弁書作成にかかる官僚の負担に鑑み、転送から七日以内での答弁は求めない。国会法第七十五条第二項の規定に従い答弁を延期した上で、転送から二十一日以内には答弁されたい。
令和4年4月28日「参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問に対する答弁書」
答弁書
内閣参質二〇八第三九号
令和四年四月二十八日
内閣総理大臣 岸田 文雄
参議院議長 山東 昭子 殿
参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問に対する答弁書
一について
財産債務調書に記載する財産の価額については、財産評価基本通達で定める方法により評価した価額として差し支えないこととしている。
二について
お尋ねについては、相続税法(昭和二十五年法律第七十三号)上、贈与により取得した暗号資産の価額は時価であるところ、その時価は、外国通貨の評価方法に準じて、その贈与により取得した暗号資産に係る暗号資産交換業者が公表するその贈与の時における取引価格によって評価することとなる。
なお、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)上、同法第四十条第一項第一号に掲げる贈与により取得した暗号資産の取得価額は、所得税法施行令(昭和四十年政令第九十六号)第百十九条の六第一項第二号の規定に基づき、その贈与の時におけるその暗号資産の取得のために通常要する価額で評価することとなる。
三について
所得税法上、贈与により取得した外国通貨の取得価額は、所得税法施行令第百十九条の六第二項第一号の規定を踏まえ、その贈与の時においてその贈与者がその外国通貨につきよるべきものとされていた評価の方法により評価するものとして取り扱っている。
また、贈与又は相続により取得した外国通貨を、平成三十年に譲渡した場合のその外国通貨の取得価額は、同令第百九条第二項第一号の規定を踏まえ、その贈与又は相続の時においてその贈与者又は被相続人がその外国通貨につきよるべきものとされていた評価の方法により評価するものとして取り扱っている。
四について
現時点では、御指摘の「モナコイン」を含む暗号資産について、仮に、支払手段としての性質のほかに、資産の価値の増加益が生じる性質があるとしても、当該性質については、一般に独立した経済的価値が認められて取引の対象にされているとは考えていないところである。こうしたことから、暗号資産について、所得税法第三十三条第一項に規定する「資産」には該当しないものとして取り扱っており、「法令の解釈適用を誤った違法なもの」との御指摘は当たらないものと考えている。
参考資料(ダウンロード可)
以下の決裁資料には、国税庁が上記答弁案を作成する際に参照した参考資料が付いています。
令和4年4月26日 参議院議員浜田聡君提出暗号資産モナコインの譲渡等に係る税務上の取扱いに関する再質問に対する答弁書 国税庁決裁資料.pdf