東京国税局は、以下の者が、照会者である法人の子会社(本件子会社)から、暗号資産の譲渡契約に基づいて、暗号資産を無償で譲り受けた場合の所得税又は法人税の課税関係がどうなるか、という照会を受けていたようです。「???」は情報公開請求で入手した資料の黒塗り部分です。
①照会者
②照会者の役員及び従業員(本件役員等)
③照会者の個人株主及び法人株主(本件株主)
④照会者及び本件子会社が???を実施するに当たりアドバイザー契約を結んだ個人及び法人(本件アドバイザー)
上記契約により、本件子会社が指定する日まで、暗号資産の売却が制限されているようです。
照会要旨は次のとおりです。
本件子会社と照会者等が本件譲渡契約を締結した日に???が本件子会社から照会者等に移転していること、また???かつ譲渡制限付きである???の時価は0円であることから、???を無償で譲り受けた時点では課税関係が生じず、その後、取得した???を売却した時点で課税関係が生じるものと解して差し支えないか。また、課税関係が生じる場合、個人が譲り受けた???に係る経済的利益の所得区分は、いずれの所得に該当するか。
口頭回答の要旨は次のとおりです。
回答要旨
本照会について、【検討内容】に基づき、照会者に対し、次のとおり口頭回答を行うこととしたい。
なお、本照会は、上記の【事実関係】に基づき、.個別に判断した事例であることから、他の類似事例については、個々の事実関係に基づき、課税関係を判断することに留意する。
(回答要旨)
〔所得税〕
無償で取得した???の収入すべき時期は、???された日の属する年分であり、その所得区分は次のとおりになる。
本件役員等・・・・・・給与所得
本件株主(個人) ・・・雑所得
本件アドバイザー(個人)・ ・・事業所得又は雑所得
〔法人税〕
???の無償譲受けについては、法人税法第61条第1項の規定に従い、本件譲渡契約を契約した日の属する事業年度において、契約した日における???の時価相当額を受贈益として益金の額に算入する。
また、取得後は、法人税法第61条の規定に従うこととなる。
「???」があるため、わからない点もありますが、この点については、以下の検討過程を見ると、ある程度は理解できると思います。
検討
〔所得税〕
(1) 暗号資産の取得に係る所得税法上の取扱いについて
所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価により収入を認識すべきところ(所法36②)、これは、外部から経済価値が流入したことによりその取得時点において所得が実現したとの考えによる。
(2)???。
そうすると、照会者等に配付された???は、その配付の時点においては、???経済的価値が流入したものとは認められず、???照会者等のうち個人については、その時点において外部から経済的価値が流入したものと認められる。
したがって、???については???日の属する年分の所得となり、その取得価額については???され、???に係る経済的価値が流入した時における時価(取得のために通常要する価額)により計上することとなる(所法36、所令119の6)。
(3)???の所得区分について
上記(2)のとおり???は、???時点において所得が生ずることとなるところ、その所得区分については、???を交付した本件子会社との関係に応じて、次のとおりとなる。
イ 本件役員等について
所得税法上、役員又は使用人たる地位に基づき支給されるものは給与所得とされているところ(所法28)、???に基づき定められていることからすると、本件子会社から配付されたものではあるが、照会者の役員又は使用人たる地位に基づき職務遂行の対価として支給されたものと認められ、給与所得に該当する。として職務の遂行に関連を有しないものと認められる場合には雑所得に該当する。)。
???本件役員等の職務遂行との関連性により給与所得又は雑所得となる(???主として職務の遂行に関連を有しないものと認められる場合には雑所得に該当する。)。
ロ 本件株主のうち、個人株主について
法人が株主等に対してその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても、法人の利益の有無にかかわらず供与するものは配当所得には該当せず、雑所得に該当するとされているところ(所基通24-2)、???は、本件子会社の利益の有無にかかわらず本件株主(個人)に配付されたものであるため、雑所得に該当する。
ハ 照会者等のうち、個人の本件アドバイザーについて
居住者である個人が対価を得て役務提供を行う場合、当該役務提供が「事業」に該当する場合には事業所得とされ、当該事業所得には、事業の本来的な収入にとどまらず、事業の遂行による副付随収入等も含まれるものと解されるところ、個人の本件アドバイザーにおいて照会者又は本件子会社に提供する役務が同人の事業所得に含まれる場合には事業所得に該当し、該当しない場合には雑所得に該当することとなる(一時所得には該当しないものと考えられる。)。
(4)???に係る源泉徴収義務について
所得税法上、国内において給与所得の支払をする者は、その支払の際、所得税の徴収をすることとされるところ国内払いには該当しない。したがって、???に係る源泉徴収義務は生じない。
(5)???を売却した場合の所得区分について
所得税法上、譲渡所得は「資産の譲渡による所得J (所法33①)とされ、当該所得に対する課税は、「資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得としてその資産が所有者の支配を離れて外に移転するものを機会にこれを清算して課税する趣旨」と解されているところ、???資産の値上がりによる増加益とは性質を異にするものと考えられる。
したがって???譲渡した???の売却収入については、原則として、雑所得の収入金額に算入する。
〔法人税〕
(1) ??? 暗号資産該当性について
法人税法第22条の別段の定めである法人税法第61条の対象となる暗号資産とは、同条第1項において資金決済に関する法律(資金決済法)第2条第5項に規定する暗号資産と規定されている。この点、???については、???法人税法第61条第1項の暗号資産として取り扱うことが相当である???。
(2)???の無償譲受けについて
法人が暗号資産を無償で譲り受けた場合には、その譲受けによる収益の額(取得価額相当額)が益金の額に算入される(法22②)ところ、その取得価額は法人税法施行令第118条の5第2号において、その取得の時における取得のために通常要する価額、すなわち時価と規定されている(この点、収益に計上すべき時期における時価が取得価額となる点は所得税と同様である)。
また、法人税法上、この「取得の時」については、暗号資産の譲渡損益が譲渡契約をした日(約定日)の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入されること(法法61①)を踏まえ、法人税基本通達2-1-21の12の注1において原則、契約の成立した日となることが明らかにされている。したがって???の無償譲受けについては、法人税法第61条第1項の規定に従い、本件譲渡契約を契約した日の属する事業年度において、契約した日における???の時価相当額を受贈益として益金の額に算入することとなる。
そうすると、上記のとおり、「その取得の時における取得のために通常要する価額」(法令118の5) 、すなわち、時価を適正に算定する必要があるところ、???合理的な計算方法等により時価を算定することを要する。
なお、時価の算定については、確たることは回答できないが、法人税法上はこの無償譲受けにより益金の額に算入すべき金額が生じ得るものと考えられる。
(3)???保有時の課税関係について
???は、上記(1)のとおり、法人税法第61条第1項に規定する暗号資産に該当することから、本件譲渡契約の効力が生じて照会者が保有することとなった以降は、同条の取扱いの対象となる。なお、時価評価(法法61②、法令118の7)の対象となるかについては、法人税法施行令第118条の7に規定する要件に該当するか次第となる(会計上は、いわゆる「活発な市場の有無」により判断される)。
???
個人と法人で、暗号資産を無償で譲り受けた場合の課税時期が異なるという回答でしょうか?法人税は22条2項ではなく、別段の定めである、しかも暗号資産の「譲受け」ではなく「譲渡」に関する定めである61条を起点に解釈論を展開しているのがその根拠?