外国法人に対して使用料や役務提供の対価を支払う場合、どの時点で源泉徴収義務が生じるのでしょうか。とくに、契約上の支払期日前に送金した場合でも、「国内源泉所得の支払」に当たるのかは、実務上しばしば問題となります。
本件は、外国法人への使用料の送金について、支払期日前であっても源泉徴収義務が成立するのか、また、源泉所得税の法定納期限や不納付加算税の取扱いが争われた事案です。国税不服審判所令和6年8月6日裁決は、契約の成立時期、債務の発生・消滅の関係、国内源泉所得該当性などを踏まえ、源泉徴収義務の成立時期や納付義務の有無を具体的に判断しました。
本記事では、本裁決の内容を、事案の概要から争点、当事者の主張、審判所の判断まで、実務に役立つ形で整理して提供します。
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裁決要旨
| 国税不服審判所ホームページの裁決要旨 請求人は、請求人が外国法人の預金口座に送金する方法で支払った(本件支払)使用料(本件使用料)について、本件使用料の支払期日前には請求人の支払債務が生じておらず、また、契約期間開始日前には外国法人に国内源泉所得が生じることはないため、本件支払は国内源泉所得の支払に当たらないから、請求人には本件支払の際に本件使用料に係る源泉徴収に係る所得税及び源泉徴収に係る復興特別所得税(本件源泉所得税等)を徴収する義務がない旨主張する。 しかしながら、請求人には本件使用料に係る契約の締結により本件使用料を支払う債務が生じていたところ、本件支払により当該債務は消滅しており、支払期日前に請求人が本件支払をしたことは、請求人が期限の利益の放棄をしたものにすぎず、また、本件使用料は、外国法人が国内において行う役務の提供の対価であって、国内源泉所得に該当するから、本件支払は国内源泉所得の支払に当たり、請求人は本件支払をする者であるから、本件支払の際に本件源泉所得税等を徴収する義務がある。(令6. 8. 6 大裁(諸)令6-7) |
事案の概要
本件は、原処分庁が、審査請求人(以下「請求人」という。)の令和5年7月分の源泉徴収に係る所得税等が法定納期限までに納付されなかったとして、不納付加算税の賦課決定処分をしたのに対し、請求人が、当該納付については国税通則法第67条第3項の規定(不納付加算税を課さない特例)が適用されるとして、当該処分の全部の取消しを求めた事案です。
請求人は、外国法人の預金口座に送金する方法で支払った使用料(本件使用料)について、
- 本件使用料の支払期日前には支払債務は発生していない
- 契約期間開始日前には国内源泉所得は生じない
- よって、本件支払は国内源泉所得の支払に当たらない
- したがって、源泉徴収義務はない
と主張しました。
これに対し、審判所は、
- 契約締結により支払債務はすでに成立していた
- 支払期日前の支払は、期限の利益の放棄にすぎない
- 本件使用料は、外国法人が国内において行う役務提供の対価であり、国内源泉所得に該当する
として、
本件支払は国内源泉所得の支払に当たり、請求人には源泉徴収義務がある
と判断し、請求人の主張を退けました(令6.8.6 大裁(諸)令6-7)
| 区分 | 対象 | 納付日 | 法定納期限 | 取扱い |
|---|---|---|---|---|
| 本件使用料 | 外国法人への使用料 | 令和5年8月10日 | 令和5年7月10日 | 延滞税のみ |
| 令和5年7月分給与等 | 給与・非居住者所得 | 令和5年8月25日 | 令和5年8月10日 | 不納付加算税賦課 |
基礎事実
当事者
- 請求人は、化学工業製品の製造、売買、輸出入等を目的として設立された株式会社である。
- 相手方は、所得税法第2条第1項第7号に規定する外国法人(以下「本件外国法人」)である。
使用許諾契約の締結
請求人は、平成29年6月20日、請求人の???にある工場で使用するため、本件外国法人が有するソフトウェア製品の使用ライセンスを付与する契約(本件使用許諾契約)を締結した。
この契約では、インボイス発行日から30日以内が支払期日と定められていた。
更新契約とインボイス発行
- 請求人は、令和5年5月19日、本件外国法人に対し、本件プログラム(継続的サポート等を受ける有償プログラム)の更新(提供期間を令和5年7月1日から令和6年6月30日までとするものであり、この契約を「本件更新契約」という。)を申し込んだ。
- 本件外国法人は、令和5年6月1日、本件更新契約に係る本件プログラムの使用料(本件使用料)を???、支払期日を令和5年7月1日とするインボイスを発行した。
使用料に係る源泉所得税等の本件支払
- 請求人は、令和5年6月30日、本件使用料から源泉所得税等相当額を差し引いた残額を、本件外国法人の預金口座に送金する方法で支払った(本件支払)。
- 請求人は、令和5年8月10日、本件使用料に係る源泉所得税等(本件源泉所得税等)を納付した。
この納付は、納税の告知を受けることなくされたものであり、調査を予知してされたものではない。
使用料に係る源泉所得税等に係る原処分
原処分庁は、令和5年10月2日付で、本件源泉所得税等が法定納期限後に納付されたとして、請求人に対し、「延滞税のお知らせ(令和5年8月10日納付分)」欄のとおり、本件源泉所得税等に係る延滞税(本件延滞税) が???となる旨の「延滞税等のお知らせ」を送付した。
本件源泉所得税等として納付された税額については、通則法67条3項が適用されるとして不納付加算税は課されていない。
本件源泉所得税等が法定納期限までに納付されなかったとして、令和5年9月27日付で、不納付加算税の賦課決定処分を行った。
令和5年7月分の給与等に係る源泉所得税等について
請求人は、別表2の「納付(源泉所得税等の額)」欄のとおり、
- 令和5年7月分の給与
- 非居住者の所得
に係る源泉所得税等(令和5年7月分源泉所得税等)の合計額を、法定納期限(令和5年8月10日)後の同月25日に納付した。
この納付についても、
- 納税の告知を受けることなくなされたものであり、
- 調査があったことにより納税の告知があるべきことを予知してされたものではない
令和5年7月分源泉所得税等に係る不納付加算税の賦課
原処分庁は、令和5年7月分源泉所得税等が法定納期限までに納付されていないとして、通則法67条3項の規定の適用はない(通則法施行令27条の2第2項2号に該当しない)と判断した。
そして、令和5年9月27日付で、別表2の「給与所得」及び「非居住者所得」の「賦課決定処分(不納付加算税の額)」欄のとおり、令和5年7月分源泉所得税等に係る不納付加算税の賦課決定処分(本件賦課決定処分)を行った。請求人は、令和5年11月14日、本件源泉所得税等は法定納期限までに納付されているから、令和5年7月分源泉所得税等の納付について、通則法67条3項の規定が適用されるなどとして、本件賦課決定処分及び本件延滞税に対する審査請求をした。
争点
令和5年7月分源泉所得税等の納付について、通則法第67条第3項の規定が適用されるか否か(具体的には、本件源泉所得税等が法定納期限までに納付されたか否か。)。
争点についての主張
請求人の主張
本件使用料の支払期日は令和5年7月1日であり、請求人には本件支払を行った同年6月30日においで本件外国法人に対する本件使用料の支払債務が生じていないから、本件支払は、本件使用料の前払金の支払にすぎず、本件支払の際に本件源泉所得税等を徴収する義務はない。
また、所得税法第212条第1項は、外国法人に対して国内源泉所得の支払をする者に源泉徴収の義務を課しているところ、本件更新契約に係る契約期間は令和5年7月1日からであり、当該契約期間の開始前に本件外国法人に国内源泉所得が生じることはあり得ない。所得税法第5条第4項は、外国法 人の納税義務の成立について所得の支払の時としており、国内源泉所得として成立していないものの支払について、本件外国法人の納税義務は成立しないことからも、同年6月30日に行った本件支払は、本件外国法人に対する国内源泉所得の支払には当たらない。
これらのことからすれば、本件源泉所得税等について源泉徴収の義務が生じるのは、本件外国法人の国内源泉所得として成立する本件更新契約の開始日であり、本件使用料の支払期日である令和5年7月1日となるから、本件源泉所得税等の法定納期限はその翌月10日である同年8月10日である。
原処分庁の主張
源泉徴収すべき時期は、本件支払が前払金として行われたものであるとしても、飽くまでも所得税法第212条第1項の「支払」が行われたか否かで判断すべきである。
審判所の判断
審判所は、法令の文言を厳格に解釈し、請求人の主張を退けました。なお、延滞税については、次のとおり、処分が存在しないにもかかわらずされた不適法なものであると判断しています。
「請求人は、本審査請求において、本件延滞税の取消しを求めているが、延滞税は、通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第3項第7号及び同法第60条《延滞税》の規定により、所定の要件を充足することによって法律上当然に納税義務が成立し、その成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税であって、国税に関する法律に基づく処分によって確定するものではない。
したがって、本件延滞税の取消しを求める審査請求は、通則法第75条《国税に関する処分についての不服申立て》第1項に規定する国税に関する法律に碁づく処分が存在しないにもかかわらずされたものであって、不適法なものである。」
法令解釈等
所得税法第212条第1項は、外国法人に対して国内源泉所得の支払をする者に対し、支払の際に源泉徴収を行い、その翌月10日までに国に納付する義務を課している。
また、同法第161条第1項第6号は、国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業に係る対価を国内源泉所得とし、施行令第282条は、その内容として、科学技術、経営管理等の分野における専門的知識又は特別の技能を活用して行う役務の提供を挙げている。
さらに、所得税法第212条第1項にいう「支払」とは、現実に金銭を交付する行為に限られず、債務が消滅する一切の行為を含むと解されており、元本への繰入れや預金口座への振替なども含まれる。
本件における検討の枠組み
本件では、令和5年7月分源泉所得税等の納付について、国税通則法第67条第3項が適用されるか否かが争われた。
具体的には、
・本件使用料の支払が国内源泉所得の「支払」に当たるか
・その結果、請求人に源泉徴収義務が生じるか
・本件源泉所得税等が法定納期限までに納付されたといえるか
・よって、通則法施行令第27条の2第2項第2号に該当するか
が問題とされた。
本件使用料について
審判所は、遅くとも令和5年6月1日までに、請求人と本件外国法人との間で本件更新契約が成立していたと認定した。
これにより、請求人には、令和5年7月1日までに本件使用料を支払う債務が発生していたとされた。
また、請求人は、令和5年6月30日に、本件使用料から源泉所得税相当額を控除した残額を送金しており、この支払によって支払債務は消滅したとされた。
さらに、本件使用料は、外国法人が国内において専門的知識又は特別の技能を活用して行う役務提供の対価であり、所得税法第161条第1項第6号に規定する国内源泉所得に該当するとされた。
その結果、本件支払は、所得税法第212条第1項に規定する国内源泉所得の支払に当たり、請求人は、当該支払の際に源泉徴収義務を負うと整理された。
「イ 法令解釈等
所得税法第212条第1項は、外国法人に対し、国内において同法第161条第1項第4号から第11号まで若しくは第13号から第16号までに掲げる国内源泉所得の支払をする者は、その支払の際、これらの国内源泉所得について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月10日までに、これを国に納付しなければならない旨規定し、同項第6号は、国内において人的役務の提供を主たる内容とする事業で政令で規定するものを行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価は国内源泉所得である旨規定し、所得税法施行令第282条柱書及び第3号は、上記政令で規定する事業として、科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業を挙げている。
そして、所得税法第212条第1項に規定する「支払の際」の支払とは、現実に金銭を交付する行為のほか、元本に繰り入れ又は預金口座に振り替えるなどその支払の債務が消滅する一切の行為が含まれると解され、これと同旨の取扱いを定めた所基通181~223共-1は、当審判所においても相当であると認める。」
本件源泉所得税等の法定納期限
本件支払は令和5年6月30日に行われていることから、本件源泉所得税等の法定納期限は、令和5年7月10日とされた。
しかし、実際の納付日は令和5年8月10日であったため、本件源泉所得税等は法定納期限までに納付されていなかったとされた。
小括
以上から、本件源泉所得税等は法定納期限後に納付されたものであり、通則法施行令第27条の2第2項第2号に規定する場合には該当しないとされた。
その結果、令和5年7月分源泉所得税等の納付について、国税通則法第67条第3項の規定は適用されないと結論づけられた。
「ロ 検討
通則法第67条第3項は、法定納期限後に納付された源泉徴収による国税について、その納付が法定納期限までに納付する意思があったと認められる場合として政令で規定する場合に該当してされたものであるなどの、一定の要件を満たすものであるときは、同条第1項の不納付加算税に係る規定を適用しない旨規定し、当該政令で規定する場合として、通則法施行令第27条の2第2項第2号には、通則法第67条第3項に規定する納付に係る法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収による国税について、納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付された事実がない場合(別紙の2の(2)参照)が規定されている。
本件は、令和5年7月分源泉所得税等の納付に係る通則法第67条第3項の適用について、本件源泉所得税等が法定納期限までに納付されているか否か(通則法施行令第27条の2第2項第2号に規定する場合に該当するか否か)に争いがあることから、以下検討する。
(イ)本件使用料について
上記1の(3)のロの(イ)のとおり、請求人は、令和5年5月19日、本件外国法人に対して、本件プログラムの更新を申し込み、本件外国法人は、同年6月1日、請求人に対して、同年7月1日を支払期日として同日までに本件使用料を支払うことを請求するインボイスを発行しているところ、この事実によると、遅くとも同年6月1日には、請求人と本件外国法人との間で本件更新契約が成立したと認められる。
本件更新契約の成立により、請求人には、本件外国法人に対して令和5年7月1日までに本件使用料を支払う債務が生じていたところ、請求人は、上記1の(3)のロの(ハ)のとおり、本件使用料から本件源泉所得税等相当額を差し引いた残額を本件外国法人に支払っている。そして、当審判所の調査及び審理の結果によっても、かかる支払が、本件更新契約に基づく請求人の本件使用料の支払債務の履行以外の目的でされたものとは認められないから、請求人の本件使用料の支払債務は令和5年6月30日の本件支払によって消滅している。
また、上記1の(3)のロの(イ)及び(ホ)で認定したところによれば、本件使用料は、本件外国法人が、国内において科学技術、経営管理その他の分野に関する専門的知識又は特別の技能を有する者の当該知識又は技能を活用して行う役務の提供を主たる内容とする事業を行う者が受ける当該人的役務の提供に係る対価であるから、所得税法第161条第1項第6号に規定する国内源泉所得に該当する。
したがって、本件支払は、所得税法第212条第1項に規定する当該国内源泉所得の支払に当たり、請求人は当該支払をする者であるから、本件支払の際に本件使用料から本件源泉所得税等を徴収する義務がある。
(ロ)本件源泉所得税等の法定納期限について
請求人は、徴収した本件源泉所得税等を、上記イのとおり、その徴収の日(令和5年6月30日)の属する月の翌月10日までに納付する義務があるから、本件源泉所得税等の法定納期限は令和5年7月10日となる。
(ハ)小括
上記(ロ)のとおり、本件源泉所得税等の法定納期限は令和5年7月10日であるところ、上記1の(3)のロの(二)のとおり、請求人が本件源泉所得税等を納付したのは令和5年8月10日であるため、本件源泉所得税等が法定納期限までに納付されなかったことは明らかである。
そうすると、令和5年7月分源泉所得税等の納付に係る通則法第67条第3項の規定の適用については、請求人において、令和5年7月10日に法定納期限が到来している本件源泉所得税等を法定納期限後に納付した事実があるため、通則法施行令第27条の2第2項第2号に規定する場合に該当しない。
したがって、令和5年7月分源泉所得税等の納付について、通則法第67条第3項の規定は適用されない。」
請求人の主張に対する判断
請求人は、本件支払が支払期日前に行われた前払金にすぎないとして、源泉徴収義務は生じないと主張した。
しかし、支払期日前に支払われたという事情は、単に期限の利益を放棄したにすぎないとされた。
また、契約の成立により支払債務はすでに発生していたこと、実際に源泉所得税相当額を控除して送金していることから、請求人の主張は採用されなかった。
さらに、外国法人側の納税義務の成立時期を理由とする主張についても、源泉所得税の納税義務は、受給者の申告所得税とは別個の義務であるとされ、これも退けられた。
「(3)請求人の主張について
イ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)のとおり、本件使用料の支払期日は令和5年7月1日であり、請求人には、本件支払を行った同年6月30日において本件外国法人に対する本件使用料の支払債務が生じていないから、本件支払は、本件使用料の前払金の支払にすぎず、本件支払の際には本件源泉所得税等を徴収する義務はない旨主張する。
しかしながら、本件支払が本件使用料の支払期日の前に行われたとの事情は、単に、請求人が期限の利益を放棄して本件使用料を支払ったことをいうものにすぎず、本件更新契約の成立により、請求人に本件使用料の支払債務が生じたこと、また、令和5年6月30日の本件支払により当該支払債務が消滅したことは、上記(2)のロの(イ)のとおりである。
また、上記(2)のロの(イ)のとおり、請求人は本件支払の際に、本件源泉所得税等を徴収する義務があるところ、上記1の(3)のロの(ニ)のとおり、請求人は、令和5年6月30日の本件支払の際に、本件使用料に係る源泉所得税等相当額を差し引いて本件外国法人の預金口座に送金しており、現に、本件支払の際に本件源泉所得税等を徴収しているにもかかわらず、これを、その徴収の日の属する月の翌月10日までに納付しなかったものにすぎない。
したがって、請求人の主張には理由がない。
ロ 請求人は、上記3の「請求人」欄の(1)のとおり、所得税法第212条第1項は、外国法人に対して国内源泉所得の支払をする者に源泉徴収の義務を課しているところ、本件更新契約に係る契約期間は令和5年7月1日からであり、契約期間の開始前に本件外国法人に国内源泉所得が生じることはあり得ず、所得税法第5条第4項は、外国法人の納税義務の成立について所得の支払の時としており、国内源泉所得として成立していないものの支払について、本件外国法人の納税義務は成立しないことからも、同年6月30日に行った本件支払は、本件外国法人に対する国内源泉所得の支払には当たらない旨主張する。
しかしながら、本件使用料が、所得税法第161条第1項第6号に規定する国内源泉所得に該当することは、上記(2)のロの(イ)のとおりであるところ、所得税法上、源泉所得税について徴収・納付の義務を負う者は源泉徴収の対象となるべき所得の支払者とされ、その納税義務は当該所得の受給者に係る申告所得税の納税義務とは別個のものとして、成立、確定し、これと併存するものであり、源泉所得税と申告所得税の各租税債務の間には同一性がないものと解されている(最高裁平成4年2月18日第三小法廷判決・民集46巻2号77頁)。
そうすると、外国法人に対して国内源泉所得の支払をする者の当該国内源泉所得に係る源泉所得税の徴収・納税の義務についても、当該国内源泉所得の受給者である外国法人の納税義務とは別個の義務として、成立、確定するものであるから、本件外国法人の納税義務の成立時期いかんにかかわらず、本件支払が、所得税法第212条第1項に規定する国内源泉所得の支払に当たることは、上記(2)のロの(イ)のとおりである。
したがって、請求人の主張には理由がない。」
本件賦課決定処分の適法性
通則法第67条第3項の適用は否定され、請求人には「正当な理由」は認められず、不納付加算税の額にも誤りはないとされた。
その結果、本件賦課決定処分は適法とされた。
「令和5年7月分源泉所得税等の納付について、通則法第67条第3項の規定の適用がないことは、上記(2)のロの(ハ)のとおりであり、請求人が令和5年7月分源泉所得税等を法定納期限までに納付しなかったことについて、同条第1項ただし書に規定する「正当な理由」があるとは認められない。令和5年7月分源泉所得税等に係る不納付加算税の額については、計算の基礎となる金額及び計算方法につき請求人は争わず、当審判所においても、令和5年7月分源泉所得税等に係る不納付加算税の額は、本件賦課決定処分における不納付加算税の額と同額であると認められる。
また、本件賦課決定処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。
したがって、本件賦課決定処分は適法である。」
結論
以上により、原処分に対する審査請求は棄却され、その他の審査請求は却下された。
