記事の紹介

本裁決は、年末調整での控除ミスを法定期限後に「確定申告」で是正した際、無申告加算税が課されるかが争われた重要な事例です。

事案の概要として、請求人は勤務先の年末調整で扶養控除を受けていましたが、後にその適用が誤りであったと気づき、期限を過ぎてから税務署へ申告書を提出しました。請求人は、「年末調整のために提出した扶養控除等申告書や源泉徴収票は納税申告書であり、今回の申告は『修正申告』にあたるため、無申告加算税はかからない」と主張しました。

しかし、審判所は、源泉徴収による所得税は「申告納税方式」ではなく、納税義務の成立と同時に税額が確定する方式であることを指摘しました。したがって、年末調整の書類は通則法上の「納税申告書」には該当せず、期限後に出された申告は「期限後申告書」として扱うのが適法であると判示しました。

給与所得者が「年末調整をしているから、後で直す時は修正申告で済む」と誤解しやすいポイントですが、法定の申告期限(3月15日)を過ぎると無申告加算税のリスクが生じることを再認識させる裁決です。

国税不服審判所ホームページの裁決要旨

請求人は、給与所得の年末調整は申告納税方式による手続であり、年末調整のために勤務先へ提出した給与所得者の扶養控除等申告書等の各控除申告書(各控除申告書)及び源泉徴収票は納税申告書であるから、請求人が法定申告期限後に原処分庁へ提出した納税申告書は修正申告書に該当するものであって、国税通則法第66条《無申告加算税》第1項に規定する期限後申告書に該当しない旨主張する。

しかしながら、国税通則法第15条《納税義務の成立及びその納付すべき税額の確定》第3項第2号及び同法第16条《国税についての納付すべき税額の確定の方式》第2項からすれば、源泉徴収に係る所得税が、申告納税方式及び賦課課税方式のいずれにも該当しないものであり、各控除申告書及び源泉徴収票が納税申告書に該当しないことは明らかである。(令6. 9.10 東裁(所)令6-27)

事案の概要

本件は、審査請求人(以下「請求人」という。)が、所得税等の納税申告書を法定申告期限後に提出したところ、原処分庁が無申告加算税の賦課決定処分をしたのに対し、当該賦課決定処分の全部の取消し等を求めた事案である。

請求人は、年末調整のために勤務先へ提出した給与所得者の扶養控除等申告書等の各控除申告書及び源泉徴収票が納税申告書に該当し、これらを基礎として提出した本件各申告書は修正申告書に当たるから、期限後申告書には該当しないとの立場に立つ。


基礎事実

請求人は、令和??年分及び令和??年分(以下「本件各年分」という。)の所得税及び復興特別所得税(以下「所得税等」という。)について、年末調整のため、勤務先へ各控除申告書等を提出し、扶養控除の適用を受けていた。

その後、請求人は、本件各年分において扶養控除の適用を受けたことが誤りであることを知り、これを是正するため、勤務先から交付された源泉徴収票に記載された金額等を基に、本件各申告書を作成し、令和5年5月24日に提出した。

請求人は、本件各申告書に係る納付すべき税額を全額納付したことから、当該税額に係る各延滞税の額が確定した。

原処分庁は、本件各申告書の提出が、決定があるべきことを予知してされたものではなく、かつ、調査通知後にされたものでもないとして、国税通則法第66条第1項及び第6項の規定に基づき、無申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を行った。


争点

本件各申告書は通則法第19条に規定する修正申告書であるとして本件各賦課決定処分が違法となるか否か。


争点に関する請求人の立場

年末調整は申告納税方式による手続であり、年末調整のために勤務先へ提出した各控除申告書は納税申告書に該当するものと位置付けられる。

また、源泉徴収票には、課税標準、課税標準から控除すべき金額、納付すべき税額等が記載されていることから、これも通則法第2条第6号に規定する納税申告書の定義に当てはまるものと整理される。

そうすると、本件各申告書は、これらを基礎とする修正申告書に当たり、期限後申告書には該当しないこととなる。


審判所の判断

源泉徴収制度と所得税債務の法的性質

所得税法第120条第1項第4号にいう「源泉徴収をされた又はされるべき所得税の額」とは、所得税法第4編の源泉徴収の規定に基づき、正当に徴収をされた又はされるべき所得税の額を意味するものであり、給与その他の所得について、その支払者がした正当な所得税の源泉徴収はこれに当たる。

そして、源泉徴収による所得税について徴収及び納付の義務を負う者は、源泉徴収の対象となるべき所得の支払者とされ、その納税義務は、当該所得の受給者に係る申告所得税の納税義務とは別個のものとして成立、確定し、これと併存するものである。

このため、源泉徴収による所得税と申告所得税との各租税債務の間には同一性がなく、源泉徴収による所得税の納税に関して国と法律関係を有するのは支払者のみであり、受給者との間には直接の法律関係を生じない。


本件各申告書の法的性質

請求人は、本件各年分の所得税等について、各控除申告書等を勤務先に提出し、年末調整において扶養控除の適用を受けていた。

その後、扶養控除の適用を受けたことが誤りであることを知り、これを是正するため、勤務先から交付された源泉徴収票に記載された金額等を基に、本件各申告書を作成し、提出したものである。

請求人が本件各申告書を提出したのは、扶養控除の適用がなくなったことにより、年末調整で給与等の全部について所得税の徴収をされたこととはならなくなり、所得税法第121条に規定する所定の要件を欠くこととなったためである。

そうすると、本件各申告書は、所得税法第120条の規定に基づき提出された確定申告書にほかならない。

そして、本件各申告書はいずれも法定申告期限後である令和5年5月24日に提出されているから、通則法第18条に規定する期限後申告書に該当する。

したがって、本件各申告書は通則法第19条に規定する修正申告書に該当するものではない。


各控除申告書及び源泉徴収票の位置付け

通則法第16条第2項は、国税についての納付すべき税額の確定の方式が申告納税方式と賦課課税方式のいずれであるかを規定するに当たり、通則法第15条第3項各号に掲げる国税を除くとしている。

そして、同項第2号は、納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで納付すべき税額が確定する国税として、源泉徴収による所得税を掲げている。

このことから、源泉徴収による所得税が申告納税方式により確定されるものではないことは明らかである。

また、通則法第2条第6号は、納税申告書とは、申告納税方式による国税に関し、国税に関する法律の規定により所定の事項を記載した申告書をいうと定めている。

しかしながら、源泉徴収による所得税は申告納税方式によるものではないから、源泉徴収による所得税に関して作成された各控除申告書及び源泉徴収票は、同号に規定する納税申告書に該当しない。

したがって、本件各申告書が、各控除申告書及び源泉徴収票の修正申告書に当たらないことは明らかである。


無申告加算税の適法性

以上のとおり、本件各申告書は修正申告書に該当するものではなく、期限後申告書に該当する。

当審判所においても、本件各申告書の提出に係る無申告加算税の額は、本件各賦課決定処分における無申告加算税の額と同額であると認められる。

また、本件各賦課決定処分のその他の部分についても、これを不相当とする理由は認められない。

したがって、本件各賦課決定処分は適法である。


結論

以上のとおり、審査請求には理由がないから、これを棄却する。

ダウンロード資料