INFTやDeFiの普及と課税の問題について、課税当局は、NFTやDeFi(ディファィ)については、暗号資産のように取引業者から年間取引報告書の提供がないことから、納税者ご自身で所得金額を計算することになると承知しています。そのため、納税計算が複雑との御指摘については、まずは、関係省庁において申告に関する情報の広報周知を行い、納税者の方が適正に申告できる環境整備を図ることが重要」と考えていることがわかりました。

令和4年3月16日第208回国会・参議院財政金融委員会のやりとり

令和4(2022)年3月16日の第208回国会・参議院財政金融委員会において、NFTやDeFiの普及と暗号資産少額決済非課税・暗号資産同士の交換非課税の問題について、藤末健三議員と政府参考人(住澤整財務省主税局長等)との間で次のようなやりとりが続きました。

115 藤末健三発言URLを表示○藤末健三君 続きまして、NFT、ノンファンジブルトークンについて御質問したいと思います。  これは、先ほど、フリーランスという新しい働き方が普及する中で、その税務のいろんなコミュニケーション、納税者とのコミュニケーションを変えてほしいというお願いでございますが、もう一つございますのが、このノンファンジブルトークンという、NFTというものでございます。  お手元に資料をお配りさせていただいていますけれど、今、ウエブ三・〇ということでございまして、新しいその技術の、ブロックチェーンという技術の普及により、今までは、ウエブ二・〇では、どこかに大きなデータセンターがあってそこにみんながアクセスすることによっていろんなウエブ、ネットワークのサービスを受けれるような仕組みになっていたものが、ここにありますようにGAFAなどの独占の問題があると。一つの大きなサーバーを持った企業が様々なデータを集中管理して扱うというところから、ウエブ三・〇におきましては、ブロックチェーン技術、分散して情報を管理する技術に移ってくると。そうしますと、集中型ではなく分散してデータを持つことによって、このデータの保管の安全性が増しますし、あとは透明性が大きく増すということで、大きくこの社会構造が変わるという状況でございます。  しかしながら、新しいこのウエブ三・〇に対してまだ税制が追い付いていないんではないかという疑問がございまして、それを質問させていただきたいと思います。  このノンファンジブルトークンは何かと申しますと、四と書いた資料がございますが、特にアートにおける世界において使われつつあるということであります。例えば漫画の絵とかアニメの絵とかをデジタル化すると、そして、そのデジタル化されたそのアートをこのブロックチェーン技術を用い、価値を付け、そして販売をすると、そして、仮想通貨と言われています例えばイーサリアムというものなどで決済を行い、これは何かと申しますと、世界中に販売できるというのがございます。  今までこのクールジャパンという議論があって、例えば日本のコミックの売上げは海外で五千億円を超えていると言われていますし、また、日本のアニメーションの海外での売上げは一兆円を超えている。当然、ゲームはもう数兆円です、規模が。そういう漫画やアニメ、そしてゲームのキャラクターといったものをデジタル化した価値としてブロックチェーンで管理をして世界中に流通させることができるようになっているという状況が生まれていると。  私自身が、私は今クリエーター大国というのを掲げているんですが、やはり日本には様々な絵を描く能力が高い方が圧倒的に多いです、はっきり言って。そういう方々が、今まではある事業者を通してつくられたその価値を販売、出しているわけですけれど、やはり直接そのクリエーターの方々が、このウエブ三・〇、特にNFTを使うことによって、国際市場において自分の作った創作物を価値に変えることができるわけでございますけれど、そこにつきまして、例えば何が問題かと申しますと、その納税計算のハードルというのがございます。このNFTで、例えば自分で絵を描いて海外で売ったり国内で売ったりする、そうすると、その利益はどういうふうに計算されるかというと、イーサリアムや暗号資産でやり取りをしますのでなかなか計算が難しいと。実際に、税務署と相談してもなかなか、その税務署の方もなかなか理解されていなくて、非常に煩雑になっていて、逆にもう諦めちゃう事例もあると聞いております。  このNFTがより健全に機能するためにもこの税制の整備が必要だと思うんですが、その点、どのようにお考えでしょうか、教えてください。

116 住澤整発言URLを表示○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。  委員御指摘のこのNFTにつきましては、従来からあります暗号資産の場合のように、この取引業者が年間における取引報告書というのをこの納税者に提供をして、それに基づいてその納税者が申告をするという仕組みが整備されていないというのが現状でございます。そのために、このNFTを使っていらっしゃる納税者の方が御自身で所得金額を計算して納税するということで、その辺のこの対応が難しいという御指摘かと思います。  こういった点については、その暗号資産の例なども参考に、この関係省庁におかれて、例えばその申告に関する情報の広報、周知を行っていただき、納税者の方が適正に申告できる環境整備というのが検討されるということがまず必要ではないかなというふうに考えております。  さらに、この国税庁の方におきましては、このNFTの取引に係る課税関係についてきちんと分かりやすく示そうということで、丁寧にこの周知、広報を行っていく方向で検討しているものと承知をいたしております。

117 藤末健三発言URLを表示○藤末健三君 恐らく、周知、広報をしてもなかなか分かりにくいと思います、私自身も思いますが。やっぱり制度を変えなきゃいけないと思っておりまして、二つ提案をさせていただきたいと思います。  一つは、その暗号資産、そのNFTを含む暗号資産の税制について分離課税にできないかということで、これよく言われる話でございますけれど、今は所得税に、あっ、所得に総合課税されると、で、最大税率は五五%となってしまいますんで、多くの暗号資産関係のビジネスを行う方々がシンガポールなどに行っているという状況。是非、株式投資やFX投資と同じ分離課税方式、最大二〇%としてはどうかということ。  そしてもう一つは、このNFT、仮想通貨で決済されるパターンがあるんですけれど、アメリカでは今年の二月に、少額の暗号資産決済は免税するという法案が提出されております。二百ドルですから、二万円以下の決済については非課税にすると。是非、少額の決済については非課税化ということを考えるべきだと思いますが、その点、いかがでしょうか、お願いいたします。

118 住澤整発言URLを表示○政府参考人(住澤整君) お答え申し上げます。  まず、ファンジブルトークンのこの一種であります暗号資産の取引に係る所得につきましては、外国通貨の為替差益と同様に、原則として雑所得に区分されて総合課税の対象となるというのが現在の扱いでございます。  上場株式等の譲渡益等につきましては、税制の中立性ですとか簡素性、それから執行の適正な確保といった観点から、あるいはその貯蓄から投資への政策的要請でありますとか一般投資家が投資しやすい税制を構築するといった観点から二〇%の分離課税が採用されているわけでございます。  一方、この暗号資産の取引による所得に二〇%の分離課税を採用することにつきましては、給与所得や事業所得などのほかの所得とのバランスについて御理解が得られるかといったようなことですとか、株式のようにこの家計が暗号資産を購入することについて国として政策的にどういうふうに考えていくのかといった辺りについて、所管省庁等において考えていただいた上での検討が必要であるというふうに考えております。  また、米国で暗号資産の少額な決済を免税とする法案が提出されているということでございますが、これについても、そういった非課税措置を講じる必要性について関係省庁においてまず御検討いただいた上で、暗号資産から生じた他の所得とのバランスなど、課税の公平性との観点も踏まえた検討が必要であるというふうに考えております。

119 藤末健三発言URLを表示○藤末健三君 今ちょうど局長から他省庁で検討しろという話だったんで、経済産業省にお聞きしたいんですけれど、まさしくこのウエブ三・〇の中で、特に今日はトークンエコノミー、NFTの話を申し上げましたけど、是非経済産業省で議論していただけませんでしょうか。恐らく、規制官庁である財務省、税の規制官庁である財務省、また金融などを規制する金融庁では恐らく前向きな議論はできないと思うんですよね。是非、産業を振興するという観点から、経済産業省で、コンテンツ課やファッション室、情報経済課とか、情報産業課とか、まあ特許庁も含めてだと思うんです、知財室も、そういうところを統合して議論を進めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。お願いします。

120 龍崎孝嗣発言URLを表示○政府参考人(龍崎孝嗣君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、ブロックチェーン技術の進展によりまして、暗号資産やNFTなどを活用したトークンエコノミーと称される新たな経済活動が生まれてきておりまして、その結果、商取引や資金調達の在り方、それから企業組織、ひいては産業構造自体が大きく変わり得るという見方もございます。  実際に、インターネット上で提供されるサービス分野では、分散型金融サービスを提供する韓国のスタートアップなど、GAFAMなどの既存のプラットフォーマーを介さずに付加価値を生み出す様々な事業、スタートアップが生まれつつございます。  また、トークンの一部であるNFTは、委員御指摘のアートなどデジタルコンテンツの市場創造だけではなくて、ファッションやスポーツ、地域の観光資源などのリアル資産の価値の顕在化、それから、新たな収益分配実現の観点から活用が期待されております。  それから、代替性のあるトークンにつきましても、決済手段としてだけではなくて、海外のスタートアップなどでは株式に代わる新たな資金調達手段としても利用され始めております。  一方で、これらの領域は世界的にも非常に新しいものでございまして、その発展に向けて障害となり得る課題が様々あれば、経済産業省としてもしっかりと対応する必要があると思ってございます。例えば、ファッションとかスポーツの分野におきましては現在実証事業等を行っておりまして、制度的な課題を含め整理をしているところでございます。  今後とも、こうした新しい動きを経済成長のチャンスと捉えまして、民間による様々な創意工夫を促進していけますように、関係省庁と連携して取り組んでまいりたいと思ってございます。

121 藤末健三発言URLを表示○藤末健三君 是非、経済産業省を中心に、産業としての、産業の育成として、振興として議論を進めていただきたいと思います。  現在、今年の一月に自民党内につくりましたNFT政策検討プロジェクトチーム、これ座長は平さん、衆議院議員がしていただいているんですけれど、もうすぐレポート、提言書を出すという方向で動いているので、それを是非経済産業省、受けていただきたいと思います。  もう一つございますのは、文化庁にお聞きしたいんですけれど、このウエブ三・〇、ここで御説明しましたように、GAFAのくさびから、独占から個人を解放していく。特に、先ほど申し上げましたように、絵などを描いておられますクリエーターの方々がこのNFTを通じて自分たちの作った創造物を海外に展開でき、きちんとした価値をもらうと。実際に、先ほど申し上げましたように、クールジャパンで漫画、アニメ、ゲーム業界は大きく売上げを伸ばしていますけれど、それを担う若手のクリエーターの方々は、何か搾取されているようなイメージになっています。  是非とも、クリエーター育成や企業に予算を付けている他国はそうしていますので、日本は大きく差を付けられていると思います。実際に人材の流出を招くおそれもあるんではないかというふうに言われておりますので、その特定の企業へ支出するんではなく、実際に価値を創造するクリエーター個人への支援を行うべきと考えますが、その対策をどうするか、これ文化庁、あと経済産業省、お答えください。

122 中原裕彦発言URLを表示○政府参考人(中原裕彦君) お答え申し上げます。  委員御指摘のとおり、近年、我が国のコンテンツ分野におきまして、いわゆるNFTを活用した取組が増えており、例えば、デジタルアートに証明書を付して流通させ、デジタルコンテンツを高付加価値化するといった取組が展開されているものというふうに承知をしております。  こうした取組について、ブロックチェーンを活用することによりまして、デジタルコンテンツの公表や取引機会の拡大などの観点から意義があるというふうに考えられるものの、一方で、権利関係が明らかではないコンテンツに関するNFTが流通している等、信頼性における課題も指摘されているというふうに認識しております。  文化庁としましては、こうした課題なども踏まえつつ、NFTを活用したクリエーターへの収益還元や文化財を活用した地域活性化に関する取組など、文化芸術の振興の観点から有効な活用策の促進について前向きに検討してまいりたいというふうに存じてございます。  そして、漫画やアニメ、ゲームは、世界に誇る日本文化であるとともに、我が国のコンテンツ産業においても重要な位置を占めておりまして、これを支えるクリエーターへの支援というのは、御指摘のとおり、重要な課題というふうに認識してございます。  このため、文化庁におきましては、文化の質の向上と発展に資することを目的に、コロナ禍からの文化芸術活動の再興支援によりまして、これまで延べ四十八万人の関係者の皆様にその支援をお届けするとともに、若手のアニメーターのための実践的な人材育成プログラムの実施を通じたスキルアップの支援、創作機会の提供を通じた我が国のメディア芸術の将来を担うクリエーターの育成、水準向上などの事業に取り組んでいるところでございます。  引き続きこうした取組を進めることによりまして、我が国のソフトパワーとしての漫画やアニメ、ゲームの更なる発展に向けまして、メディア芸術分野の振興を図ってまいりたいというふうに存じております。

123 藤末健三発言URLを表示○藤末健三君 中原審議官、力強いお言葉ありがとうございます。びっくりしたのは、龍崎審議官も中原審議官も一緒に昔働いていたお二人なので、是非ともNFTやこのクリエートの振興をやっていただきたいと思います。  最後に、私、DXの税制、DX推進税制のお話をさせていただこうと思ったんですが、時間がないので、一つだけ申し上げて終わらさせていただきます。  是非とも、今DXということで進めておりますけれど、是非とも国産のソフト、アプリケーションの技術を入れてほしいというお願いです。今、DXが進む中で、海外のどんどん技術が入ってきていると。果たしてそれで本当にDXが進むかというと、恐らく、外国のシステムが入り、外国と同じようなワークスタイルが入ってくる。それをすごく懸念していますし、実際にそういうことを言う方がおられます。  是非とも、財務大臣におかれましても、大家副大臣におかれましても、国産のシステムをやっぱり技術開発を進め、そして導入を進め、我が国のきちんとしたDXを進めなければ、恐らく外国のワーク、働き方が日本に入ってきて終わるということになりかねませんので、そのことを申し上げまして、私の質問を終わらさせていただきます。  本当に、機会をいただき、ありがとうございました。

上記の税制等に関する政府参考人の答弁にあたり、当局はどのような資料を用意していたのでしょうか。以下では、当局が、藤末議員の質問に対して用意していた税金に関する答弁の内容を確認していきます。

問「NFT(非代替性トークン)やDeFi(分散型金融)については、納税計算が複雑であることから、計算のハードルを下げるためにも、「少額決済の非課税」や「異なる仮想通貨間の売買の非課税」などの税制改正を行うことで、NFTとDeFiの認知普及が促進されるようにするべきと考えるが、見解如何。」

〇 委員ご指摘のNFTやDeFi(ディファィ)については、暗号資産のように取引業者から年間取引報告書の提供がないことから、納税者ご自身で所得金額を計算することになると承知しています。
そのため、納税計算が複雑との御指摘については、まずは、関係省庁において申告に関する情報の広報周知を行い、納税者の方が適正に申告できる環境整備を図ることが重要と考えております。

(注1)NFT(Non―Funglble―Token)とは、日本語では「非代替性トークン」と訳されるもの。デジタル資産は容易にコピーを作成できることから、オリジナルであることの証明が課題とされていたところ、ブロックチェーン技術を活用して発行されるNFTにより、オリジナルであることが証明されることとなる。
(注2)DeFi(Decentra Hzed Finance)とは、FT(代替性トークン)の一種であり、ブロックチエーンのネットワーク上に構築される金融エコシステムのことを指す。


〇 加えて、これらの取引に係る課税関係については、国税庁において、引き続き、丁寧に周知・広報を行っていくものと承知しております。
○ その上で、ご指摘のような非課税措置を創設することについては、まずは関係省庁において、その必要性等について検討していただく必要がありますが、NFT等以外から生じた他の所得とのバランスなど課税の公平性等の観点も踏まえた慎重な検討が必要であると考えております。

(参考)タックスアンサー( 本年4月1日国税庁HPに掲載予定)
1 いわゆるNFT(非代替性トークン)やFT(代替性トークン)が、暗号資産などの財産的価値を有する資産と交換できるものである場合、そのNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となります。
※ 財産的価値を有する資産と交換できないNFTやFTを用いた取引については、所得税の課税対象となりません。

2 所得税の課税対象となる場合の所得区分は、概ね次のとおりです。
(1)役務提供などにより、NFTやFTを取得した場合
・ 役務提供の対価として、NFTやFTを取得した場合は、事業所得、給与所得又は雑所得に区分されます。

・臨時・偶発的にNFTやFTを取得した場合は、一時所得に区分されます。
・上記以外の場合は、雑所得に区分されます。


(2)NFTやFTを譲渡した場合
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当する場合(その所得が譲渡したNFTやFTの値上がり益(キャピタル・ゲイン)と認められる場合)は、譲渡所得に区分されます。
(注)NFTやFTの譲渡が、営利を目的として継続的に行われている場合は、譲渡所得ではなく、雑所得又は事業所得に区分されます。
・ 譲渡したNFTやFTが、譲渡所得の基因となる資産に該当しない場合は、雑所得(規模等によっては事業所得)に区分されます。

問「暗号資産の売却による利益についても、株式の売買による利益に対する課税と同じように20%分離課税の対象とすべきではないか。」

〈答弁のポイント〉
暗号資産の取引による所得に20%の分離課税を採用することについては、株式のように、家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当なのかなど、様々な課題がある

〇 暗号資産の取引に係る所得については、外国通貨の為替差益と同様に、原則として雑所
得に区分され、総合課税の対象となります。

○ 上場株式等の譲渡益等については、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点
のほか、

・「貯蓄から投資へ」の政策的要請を受け
・一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な税制を構築する観点から、20%の分離課税が採用されております。

〇 暗号資産の取引による所得に20%の分離課税を採用することについては、
・給与や事業で稼いだ方は最大55%の税率が適用される一方で、暗号資産で稼いだ方は20%の税率で良いとすることについて、国民の理解を得られるか、
・株式のように、家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当なのか、
など、様々な課題があると考えています。


(参考1)FX取引との関係について
○ 一定のFXを含む先物取引による所得については、
・ 先物取引が、価格変動リスクの回避、公正かつ透明な価格指標の提供等、重要な役割を担つていることを踏まえ、
・ 幅広い投資家の市場参加を促すことが重要であるとの観点から分離課税が適用されているところ。
暗号資産をこれと同列に論ずることは難しいのではないかと考えている。

(参考2)政府税制調査会 金融小委員会(平成16年6月15日)
金融所得課税の一体化についての基本的考え方
一 金融所得課税一体化の意義
(2)税制論からみた位置付け
我が国の所得税制は、包括的所得税を基本として構築されているが、金融所得課税については、課税ベース拡大のための取組みの中で、税制の中立性、簡素性、適正執行の確保などの観点から、比例税率による分離課税が導入されてきた。今般の金融所得課税の一体化は、現 下 の 「貯 蓄 か ら投 資 へ 」の 政策的要請を受け、一般投資家が投資しやすい簡素で中立的な制を構築する観点から、現行の分離課税度を再構築するものである

(参考3)平成30年6月25日(月)参口予算委 藤巻 健史議員
(維新)の質問に対する麻生財務大臣の答弁(抄)

  • 184 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 日本維新の会の藤巻健史です。よろしくお願いいたします。(資料提示)  安倍総理は、去年とかおととしに比べて景気が良くなったとか、それから第二次安倍政権が発足してから景気が良くなったとかいうふうにおっしゃるんですけれども、この表を見ていただきたいんですけれども、一九八五年と比べて二〇一五、三十年間で日本の名目GDPって一・五倍にしかなっていないんですよ。この八五年というのはバブルの始まった年なんですけれども、たった一・五倍にしかならない。見ていただくと分かるように、ほかの国に比べると断トツに劣等生なんですよね。名目GDP、要するに国内総生産、国の活力、国の経済規模ですけれども、これが一・五倍にしかなっていないということは、人口は変わっていなかったら国民の富も国民の豊かさも一・五倍にしかなっていないということなんですよね。ほかの国とはえらい差が付いている。  ですから、こういう状態が続いてしまうと日本は二流国、三流国におっこってしまいますので、本当に、我が党はグレートリセットという言葉を使っている、日本維新の会はグレートリセット、大改革が必要であって、単なるちょこまかした改革じゃ、これ大変なことになっちゃうんですよね。我々政治家というのは、こういう現象を見て、どうしてほかの国に比べて遅れたかということを考えてグレートリセットをすることが重要かなと思います。  何をすればグレートリセットになるかということを議論しちゃうともう何日間も掛かっちゃいますので、今日は一つだけちょっとお話ししておきたいんですけれども、やはり日本の産業、未来の日本がどうやって食べていけるか、生きていけるかということを十分国が認識して、それをきちんとサポートしていかなくちゃいけないんですね。この国、とかく何かの産業をリードしていこうというと政府が旗を振っちゃうんですけど、そうじゃなくて、余計なことをするなということが一つ重要、余計な規制とかそういうことをしないということも一つ重要だと思うんです。  私、JPモルガンという、金融界長い、ところにいたんですけれども、実は、一九八〇年代の後半、ウェザストンというJPモルガンの会長が東京に来て演説をやったんです。そのときに彼が言ったことは、五年前に存在しなかったビジネスで今の収益の四〇%たたき出していると言ったんですね。かなりの利益、モルガンありました、四兆か五兆円ぐらいありましたけれども、そのうちの四割は五年前に存在していなかったビジネスで稼いでいると、こう演説したんです。  問題は、そのときに日本の銀行は全く金利スワップ、新しいビジネスというのはデリバティブの中の金利スワップというやつなんですけど、それを日本の銀行は全くやっていなかった。なぜかといいますと、日本にはその当時、長短分離政策というのがありました。運用の長期の金融は興長銀とか信託銀行、短期の方は地方銀行とか都銀がやるということで、まさに垣根があったんです、長期金融と短期金融。金利スワップというのは、その垣根を取り壊しちゃう商品だったものですから、その長短分離政策が、怖いという規制、それをバイオレンス、侵すということが怖いということで、日本の銀行は五年間も非常にもうかるビジネスをやっていなかった。それが、五年の遅れというのはやはり今の日本の銀行とアメリカの銀行の差につながっていると思うんですね。  今のウェルズ・ファーゴとかJPモルガンというのは日本のメガバンクの五倍から十倍の利益を稼いでいます。世界でも断トツに存在感があるんですね。日本の銀行、確かにちょっとは出ていますけれども、全然米銀なんかと存在感が違う。五年間、規制によって日本の銀行は遅れちゃったんですよ。同じように、将来稼ぐような業界というのは、これは政府は規制とか何かでブロックしちゃいけないんですね、妨げちゃいけない。  今、私が一番気にしているのは、やっぱりブロックチェーンなんですよね。ブロックチェーンというのは、インターネットの技術、インターネットの次の日本の成長産業じゃないかなというふうに言われていまして、これは政府が成長というか発展をブロックするということはないと思うんですね。  ブロックチェーン、よく公文書の決裁で安倍総理は電子決裁をしろというふうに御指示しているという話を聞きますけれども、電子決裁というのは、これはやっぱり、確かに改ざん記録というのは残るんですけれども、それを消去しちゃうプログラムってあるんですよ。だから、完璧なものではない。ブロックチェーンだったら改ざん自身ができませんから、まさに公文書の対策、改ざんしないということに対しては非常に優れた技術です。行政だけじゃなくて、先ほどちょっと申し上げましたけれども、インターネットビジネスに次ぐ偉大なる技術だという可能性が非常に強いですから、それを国は守らなくちゃいけない。  で、そこまではいいんですけれども、問題は、ブロックチェーンと表裏の関係にある仮想通貨だと思うんです。それで、ブロックチェーンというのは仮想通貨の発展のための技術なので、ブロックチェーンはいいからこれはサポートしよう、だけど仮想通貨は駄目よということになると、当然のことながら、ブロックチェーンの世界って来ない、世界に遅れちゃうんですよ。日本がこれから非常に期待できるブロックチェーンという技術をブロックしちゃうんですよね。  ということで、やはりブロックチェーンと仮想通貨を一体に発展させなくちゃいけない。そのときに何が仮想通貨の問題になるかというと、これは金融庁がやっている消費者保護とか、これは非常に重要だと思うんですけれども、実は税制なんですよ。今の仮想通貨というのは、もうけは雑所得、総合所得である雑所得なんですね。去年、確かに仮想通貨非常に大きく上がりましたから、非常に大きい税金を払っている人がいる、高い税金を払っている人、五五%税金払っている人もいる。しかし、今年は仮想通貨の値段が落ちている、大損する、何にも補填がないわけです。特に、雑所得ですと、他の給料とか不動産収入というようなものと損益通算できませんし、それから翌年にも繰り越すことができない。  要するに、もうかればごっそり税金もらって、損したら何にもしないというのは、余りにも余りの税制だと思うんですよね。ほかに総合課税でそんなような税制ないですよ、やっぱり。給料とかああいうの、不動産所得、これいろいろ、最高税率行くかもしれませんけれども、大損するということはないですからね。もうけたり大損したりするというような商品というか、ものが総合課税になるというのはない。要は、分離課税みたいに、ほかの株とかFXとかいうのはやはり税率の低い分離課税になっているわけです。  私、財政金融委員会で、参議院の、聞いていますけれども、確かに税務当局からいろいろお話あります。これ、税の論理からいえば、それは納得するところもあるんですよね。それは、税務当局というのは税の論理でいろんなことを考えますから、それは納得することもある。しかし、日本の未来を築くかもしれないブロックチェーン並びに仮想通貨については税の論理でいっちゃいけないと思うんですね。やっぱり、日本の未来の論理、日本のをどうやって食べていくかということの論理で考えなくちゃいけない。ということは、やっぱり税制で日本の未来を殺しちゃいけないと思うんですよね。  そういう意味でいうと、やはり今の税制というのは日本の未来を殺しているんじゃないかと思いますので、仮想通貨については、税の論理じゃなくて、首相がリーダーシップを取ってきちんと改正をしていくということが重要かと思うんですが、いかがでしょう。
  • 185 麻生太郎発言URLを表示○国務大臣(麻生太郎君) このブロックチェーン、まあ仮想通貨、今、仮想通貨ってほとんど使わない言葉になりまして、これは基本的には暗号資産という、クリプトアセッツという言葉がバーチャルカレンシーに代わってほとんど国際金融の社会では使われる言葉になっております。まだそこに、日本はその法改正、まだそこにしておりませんので、そういった意味では、いわゆるこの問題に関しては使う用語が煩雑に変わるほど、短期間に変わるほど、世の中でまだ極めてどうなるかよく分からぬものの一つなんだと思っております。  少なくとも、このブロックチェーンにつきまして、仮想通貨、クリプトアセットにつきましては、中国では禁止、韓国でも禁止になっておりますのは御存じのとおりです。これはハッシュ関数というのを使っていろいろやっていくのはもう御存じのとおりで、ちょっと、御存じなんだと思いますが、こういうのをやっていくんですが。  今、私どもとしては、こういった中にあって、少なくとも、これを使った利用者の方々がいわゆる詐欺に遭ったみたいとか損したみたいとかそういったようなことが出ることによって、利用者の利益というものに関しましてはこれは引き続ききちんと見守っていかねばならぬというのが私は金融庁の立場ですが、その上で、これの取引について今二〇%の分離課税せいと、簡単に言えばそういうことを言っておられるんだと思いますが、これは、同じ一億円を稼いだという話であって、給与や事業をやっていた方で稼いだ方はこれは大体最大五五%ぐらいの税率が掛かるんだと思いますが、傍ら、この仮想通貨、いわゆる暗号資産を利用した人は二〇%でいいという話が、これは世間で通用しますかね。そちらが政権を取られたらどうか知りませんけれども、私はまずそういったところでは国民の理解が得られるかいなと、まずそう思います。  次に、株と同じように、いわゆる主としていわゆる家計で、いわゆる現金からいわゆる債券とか株買えということで、いろいろ資産運用という形で我々もいろいろ言っておりますけれども、その中の一つに仮想通貨を推奨するということにして税金をどうかするとかいうことになるほど、このクリプトアセットというのは信用が国際社会で得られているであろうか、している国ないと思いますので、そこの点に関しては疑問です。  三つ目は、これは仮想通貨をやるに当たっては、これは間違いなく、このブロックチェーンというコンピューター使った技術というのが間違いなく必要、これがなければ成り立つ話ではありませんから、こういったものがやるに当たって、ブロックチェーンを育成していく、何もこれ仮想通貨以外にもブロックチェーンというのは使えますから、そういった意味では、ブロックチェーンの技術をより育成していくためにいわゆるこの仮想通貨の購入とか利用というのを後押しする、そのために後押しする必要があるのかという点について等々、いろいろ様々な問題があるんだと思っております。  この点に関しましては、これは日本が遅れているというお話ですけど、これ多分、日本が一番進んでいると思っていますけれども、いろんな意味で、私どもとしては、これ慎重な対応をしていきながらも、育成をしていくという方向では考えていくというのは大事なところだと思っております。

問「米国では2022年2月に、少額の暗号資産決済を免税とする超党派法案を再提出した。日本でも、暗号資産が日常的な決済手段として普及するよう、少額の暗号資産決済の非課税化を検討すべきと考えるが、見解如何。
(注)秘書は、質疑の場では、間5と内容が類似するのでまとめて聞く可能性があるが、別々に聞く場合は、間5と答弁内容が重なることは構わない、と言つていた。」

〇 議員ご指摘の暗号資産について少額決済非課税といった措置を講じることについては、まずは関係省庁において、その必要性等について検討していただく必要がありますが、暗号資産以外から生じた他の所得とのバランスなど課税の公平性等の観点も踏まえた慎重な検討が必要であると考えております。

(参考)米国における「Vlrtual Currency Tax Fairness Act of 2022」(「仮想通貨課税公正化法」)の提出について
米国の超党派の議員グループにより、2月3日、個人的取引における仮想通貨の処分から生じる利得について200ドルを超えない場合は総所得から除外し、税務報告の必要性をなくす法案が提出されている(法案は提出されたのみでその後動きなし(3月15日現在))。法案は成立すれば2021年12月31日以降のすべての取引に適用される。共和党のDavid Schweikert議員は声明で、「暗号通貨は日常生活を立て直すためのツールであり、各国政府は税法上これらの通貨を公平に扱うよう努力する必要がある。この法案はデジタル経済を成長させる土台となる」と述べている。


参考資料(ダウンロード可)

財務省開示資料 令和4年3月16日付け参議院財政金融委員会住澤財務省 暗号資産.pdf