令和6(2024)年10月25日に、国内暗号資産ETF勉強会「国内における暗号資産ETF等の組成等に向けた提言」から、暗号資産ETF等および暗号資産の現物取引について申告分離課税とすべきであるという提言が出されました。
税制に関するもの含めて、上記勉強会の提言の内容は次の3つです。
提言①:暗号資産ETF等の組成等に係る議論の対象として主要な暗号資産(ビットコインおよびイーサリアム)を優先すべきである。
提言②:暗号資産ETF等の組成等を可能とする諸制度の整備を進めるべきである。
提言③:暗号資産ETF等及び暗号資産の現物取引について申告分離課税とすべきである。
以下、簡単にその内容をまとめました。
提言①:暗号資産ETF等の組成等に係る議論の対象として主要な暗号資産(ビットコインおよびイーサリアム)を優先すべき
暗号資産には、時価総額だけでなく、その性質や提供する機能も含めて様々な種類があるなかで、中長期的な資産形成に資するかという観点や産業政策的な意義という観点から、暗号資産ETF(国内において暗号資産を投資対象とするETF)等の投資対象とする暗号資産については、おのずと強弱がつけられる。
このため、より暗号資産ETF等の投資対象としての適格性が高いと考えられる暗号資産(以下「特定暗号資産」という。)に絞って国内における暗号資産等の組成等に必要な諸制度の整備に係る議論を進めることが適切であると考える。本提言では、一定の課題整理のもと、ビットコイン等を優先して特定暗号資産とすることを提言する。
提言②:暗号資産ETF等の組成等を可能とする諸制度の整備を進めるべき
特定暗号資産については、中長期的な資産形成に資する資産としての性質を有するとともに、実態として一定の投資家層を中心に分散投資の投資対象のひとつとして捉える動きが広がっている。このため、一定の課題整理のもと、より幅広い個人投資家に特定暗号資産への投資を容易にする暗号資産ETF等の組成等を可能とする諸制度の整備を速やかに進めることを提言する。
提言③:暗号資産ETF等及び暗号資産の現物取引について申告分離課税とすべき
中長期的な資産形成に資するという政策効果を高めるうえでは、暗号資産等の組成等を可能とするための諸制度の整備だけでなく、税制面における資産形成を促す措置も必要不可欠である。このため、一定の課題整理のもと、暗号資産ETF等および少なくとも特定暗号資産の現物取引に係る所得について、申告分離課税とすることを提言する。
改正理由は次のとおり。
①暗号資産ETF等に係る所得について、申告分離課税とすることが適切である理由:
・特定暗号資産は、中長期的な資産形成に資する資産としての性質を有していること
・特定暗号資産の現物取引において、すでに一定の投資家層を中心に中長期的な資産形成における投資対象資産としての理解が広がっていること
②暗号資産の現物取引に係る所得について、申告分離課税とすることが適切である理由:
・特定暗号資産について、十分な時価総額や安定して良好なトラックレコードを残しているなど、中長期的な資産形成に資する資産としての性質を有していること
・暗号資産について、すでに一定の投資家層を中心に中長期的な資産形成における投資対象資産としての理解が広がっていること
・暗号資産等に係る所得について申告分離課税とする場合、すでに暗号資産現物の保有を通じた投資が広がっているという実態を踏まえ、所得税制上の平仄をとる必要があること
産業政策的な観点からも、国内における暗号資産を含むデジタルアセット取引の活性化が重要であり、特定暗号資産以外の暗号資産についても暗号資産等との所得税制上の不整合を極力是正する必要がある。