はじめに ― 法人税調査は「ICT前提」の段階に入っている
法人税の税務調査において、帳簿や証憑を紙で確認するだけの調査は、すでに過去のものとなりつつある。
東京国税局が作成した本研修資料は、ICT(Information and Communication Technology)を活用した法人税調査の基本構造と具体的手法を体系的に整理したものであり、現行の税務調査実務を理解するうえで極めて重要な資料である。
本資料は、これまで蓄積されたICT調査事例を整理・分析し、法人課税部門の調査担当者向け研修教材として作成されたものである点に特徴がある。
ICT調査の概要 ― なぜICT調査が必要とされるのか
資料の冒頭では、近年の企業活動において、
- 電子データ化の進展
- ペーパーレス化の加速
- 会計・販売管理システムの高度化
が進んでいることを前提に、従来型の調査手法だけでは十分な事実認定が困難となっている現状が指摘されている。
このような環境下で、パソコンやサーバ、各種システムに保存された電子情報を適切に把握・分析することが、法人税調査において不可欠となっている。
ICT調査の流れと位置付け
本資料では、ICT調査を単独の特別な調査手法としてではなく、通常の実地調査の一部として位置付けている点が重要である。
調査の流れの中で、
- 事前準備
- 利用システム等の把握
- データの取得
- データの検証・分析
を段階的に行うことにより、課税上の問題点を的確に把握することが目的とされている。
利用システム等の把握 ― 調査初期段階の重要性
ICT調査において最初に行われるのが、納税者が利用しているシステムや業務処理の実態把握である。
資料では、次のような事項を把握対象としている。
- パソコンを利用している業務内容
- 利用しているソフトウェア(会計・販売管理等)
- データの入力・処理・出力の流れ
- データの保存場所(PC、サーバ、外部媒体等)
これらを整理することで、その後のデータ確認・分析が効率的に進められるとされている。
現物確認(データの把握)とパソコン調査
資料では、パソコン内のデータ確認(いわゆるパソコン調査)についても詳細に言及されている。
パソコン内には、
- 帳簿データ
- 請求書・見積書等の証憑
- Excel・Wordで作成された内部資料
- USB等の外部記録媒体
が保存されている可能性があり、これらを総合的に確認することで、紙資料だけでは把握できない事実関係が明らかになることがある。
法的根拠 ― 電子データはどのように位置付けられるか
本研修資料の重要なポイントの一つが、電子データと質問検査権との関係である。
資料では、
- 法人税法等に基づく質問検査権
- 帳簿書類に該当する電磁的記録
- 電子計算機処理により作成された関係書類
について整理がなされ、電子データであっても調査対象となることが明確に示されている。
Windows・Excel・電子メール調査の具体化
本資料の後半では、
- Windows調査
- Excel調査
- 電子メール調査(Outlook、Gmail 等)
といったテーマごとに、調査の着眼点や具体的操作方法が整理されている。
特にExcel調査では、
- フィルター機能
- 並べ替え
- オートフィルター
- SUBTOTAL関数
などを用いたデータ検証方法が示されており、実務的な分析手法が重視されていることが分かる。
まとめ ― 本資料が示す法人税調査の現在地
本研修資料から明らかになるのは、法人税調査がすでに、
- 電子データを前提とし
- ICTを活用した分析を行い
- 事実認定の精度向上を図る
段階に入っているという点である。
法人経営者や経理担当者、税理士にとっても、「どのような視点で電子データが見られているのか」を理解することは、調査対応の前提知識となりつつある。
