平成30年3月22日第196回国会・参議院財政金融委員会のやりとり
平成30(2018)年3月22日の第196回国会・参議院財政金融委員会において、藤巻健史議員は、次のような質問を行いました。
「日本維新の会の藤巻です。よろしくお願いいたします。 一月の末にコインチェック社から仮想通貨NEMの不正流出事件がありましたですね。そのときに被害を受けた方が二十六万人、二十六万口座と言われているんですけれども、それがコインチェック社でいうと一〇%にしかならないと。これ換算すると、ダブっている方いらっしゃるかもしれませんけれども、二百六十万人、口座ぐらいが、もしダブっていなかったらですけれども、この一社だけで利用者がいるというわけですね。これはもうかなり多くの仮想通貨の投資家がいるという、取引している方がいらっしゃるということだと思うんですね。特に、仮想通貨の場合、我々高齢者ではなくて、多くの投資家が若者であると、若者文化のような感じになっているという認識が私はあります。 その中で、十一月に国税当局が、この実現益を総合課税である雑所得であると、こういう通達を出したわけです。これでかなりの若者たちが驚きまして、いろいろ反応があったんですけれども、これ実は、配付資料にありますけれども、ある方が署名を募集したんですね。それもツイッターだけで募集して、そうしたら即座に一万三百人の方の署名、それも電子署名という形で集まったわけです。
この電子署名というのは、これは確かに世界で二億三千万人ぐらい使っていますけれども、日本ではそれほど浸透してはいないですよ。それでも一万三百人がすっと集まった。特にまた、ツイッターだけでしか募集というかお願いしていないのにもかかわらずこれだけのものが集まったということは、若者の間では物すごいこの不満というかフラストレーションがたまっている証拠だと私は思うんですよね。
だからといって、これ、私は、駄々をこねて、税金高いから安くしろよと、こういうように駄々をこねるつもりはなくて、これはやっぱり建設的にこの税制というものを考えていかなくちゃいけないと思うんですよ。こういう問題で若者がこれだけの声を上げたということは、これは余り税制の変更でないことであって、非常に今まで声を上げていなかった若者たちがこの税制に対して物すごい興味を持っているということの現れだと思うんですね。それがゆえに、このニッチな産業ではなくなった仮想通貨の税制というのは、極めて重要な問題になるかと思います。 特にブロックチェーン、これ、今まで私、本会議と、それから予算委員会、それから財政金融委員会でいろんな方にお聞きしました。総理も、それから麻生大臣も。そして経産省も、ブロックチェーンは将来の技術として極めて有望で、非常に期待していると、こうおっしゃっていましたよね。特に、経産省、一昨年にレポートを出しまして、影響ある業界というか分野は七十兆円ぐらいになるんじゃないかというようなことを、レポートを出しているわけです。極めて重要な、ひょっとすると日本経済が再上昇する起爆剤になるかもしれない技術というのが私はブロックチェーンだと思うんですね。その裏側にある、表と裏にあるのが仮想通貨なわけです。
御存じのように、ブロックチェーンというのは仮想通貨をつくるために、発展させるためにできた技術ですし、特に、今後ともオープン型のブロックチェーンだとすると、仮想通貨なしにはブロックチェーンの発展というのはないかと思うんですね。そういう意味で、税制がブロックチェーン、日本の将来の飯の種になるかもしれないそのブロックチェーンを殺しちゃいけないと思うんですよ。ということで、非常に建設的に議論をして、あるべき仮想通貨の税制というのをつくっていかなくちゃいけないかなと私は思っています。
ですから、そういう意味では、駄目だ駄目だじゃなくて、駄々をこねるわけでもなくて、建設的な議論をさせていただきたいと思っているんですけれども。特に、非常にいい税制ができれば、これ、全てがウイン・ウインになると思うんですよ。若者たちも喜んで納税すると思いますし、それからブロックチェーンが日本経済を押し上げていくであろうし、それがゆえに税収も引き上がるということで、全てがウイン・ウインになると思うので、非常に健全な税制をつくるということは非常に重要なことかと思います。 で、質問に入りますけれども、まず金融庁にお聞きしたいんですが、二〇一七年に仮想通貨の時価総額がどのくらい増えたかということをお教えいただけますでしょうか。」
これに対して、佐々木清隆金融庁総務企画局長は、次のとおり、答弁しました。
「お答え申し上げます。
民間の調査情報によりますと、仮想通貨の時価総額は、二〇一七年一月一日時点で約一兆九千億円、二〇一七年十二月末時点で約六十兆五千億円と、約三十倍増加したものと承知しております。」
また、税務調査や分離課税などを含む仮想通貨(暗号資産)の税制等について、藤巻議員と政府参考人(星野次彦財務省主税局長、藤井健志国税庁次長)との間で次のようなやりとりが続きました。
「203 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 このうちの、ちょっとこれ質問通告していなかったんですけれども、かなりの部分が仮想通貨、日本が今最先端走っていると思うんで多いと思うんですけれども、そうすると、一兆九千億円から六十兆円、これ物すごい評価が上がった、時価総額が上がったということは、実現益と、そして未実現益を含めた部分というのは物すごく大きいと思うんですね。 特に日本の場合、今度は仮想通貨同士の交換によって、これでもう課税ということになっていますから、本来きっと、ちょっと割合を聞くのを忘れましたけれども、例えば、もうかなり行っているといいますよね、物すごい利益が上がっている。そうすると、当然のことながら、今年度の三月十五日に締切りになった確定申告ですけれども、物すごい金額の税収、雑収入が計上できると思うんですけれども、それはどのくらいを予想されているのか。そして、国税庁そして財務省ですけれども、それをきちんと捕捉できるのかどうか、その辺についてお聞きしたいと思います。
204 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) 税収の見込みについて、私から御説明させていただきます。 仮想通貨の実現益、所得分類上は原則として雑所得に含まれることとなるわけでございますけれども、雑所得は各種所得の金額を合算した上で申告所得税として課税所得金額に応じて限界税率が課せられることになりますので、雑所得のみに係る税収を切り分けて算出することはできないということでございます。 一応、統計としてこちらとして把握しておりますのは、雑所得以外の各所得に比べまして雑所得の金額の一番大きい者、例えば公的年金の大きい者は雑所得者と呼ばれますけれども、税収見積りに際しましては、雑所得者に係る税収について見積りを行っておりまして、例えば直近、平成二十九年度の申告所得税における雑所得者に係る税収は五百八十億円になるものと見込んでいるところでございます。 ただ、御説明しましたとおり、雑所得を切り分けて算出することはできません。申告所得税の税収見通しについては、まだ申告が終わったところでございまして、今後その収納状況を見ないと現時点で確たることを申し上げることはできないという状況でございます。
205 藤井健志発言URLを表示○政府参考人(藤井健志君) 実現益の捕捉についてでございます。 仮想通貨により得た所得の捕捉はどの程度なのかということについてなかなか確たることは申し上げられませんけれども、私どもの基本的なスタンスといたしまして、適正に納税を行っている方々が不公平感を抱くことのないよう、税務調査を含めまして様々な取組を行い、しっかりと対応していくことが重要と考えております。 ちなみに、他の金融商品等に係る取引情報として法定調書となっているものといたしまして、金融商品の特定口座年間取引報告書ですとか先物取引に関する支払調書など、こういうものがございますが、仮想通貨取引については支払調書制度など直接的、悉皆的に所得を捕捉する仕組み、制度は今のところ整備されていない状況にございます。 そうした状況の中で、国税当局においては様々な機会を捉えて課税上有効な資料情報の収集に努めております。これによりまして、申告のなかった方も含め必要性の高いものについては重点的に税務調査を実施するとともに、仮想通貨に係る取引実態の研究を行っているところでございます。 今後とも、適正、公平な課税の実現に向けまして、仮想通貨に係る取引情報をどのように収集していくかについて、仮想通貨の取引実態や課税上の必要性を検討しながら、制度当局、主税局ともよく相談しながら検討していきたいと考えております。
206 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 雑所得がどのくらいかというのは切り分けられないという星野局長のお話だったんですけれども、少なくとも申告所得税がどのくらい増えるかというのは非常に注目できますですね。これからの数字を見て、この仮想通貨から考えられる税収と申告所得税の伸びが一致していなかったらば、それは課税当局が税をきちんと捕捉できていないということになるかと思うんです。 別にこれは国税庁を非難しているわけじゃなくて、そういうような税制の仕組みはおかしいんじゃないかということなんですよね。要するに、脱税されている方もいるかもしれないし、きちんと正直者がいる。それが、きちんと皆が、正直者が損をするような税制はまずいということで、確かに予想どおりの税収が上がるなら、それは皆さん同じように公平な税制だろうと。だけれども、脱税を許すような、正直者がばかを見るような税制は、簡素、公平、中立という基本原則に反しちゃうわけですよ。要するに、公平でなくちゃいけない。ということであるならば、やはりもし、今年の結果を見なくちゃいけませんけれども、きちんとしたものが出て税収が上がっていないのであるならば、やはり税制自身を変えるべきだろうと私は思っております。 次に、ちょっと確認をしたいんですけれども、国税庁若しくは主税局にお聞きしたいんですけれども、仮想通貨を物と考えれば、これ譲渡所得という考えも考えられたわけですけれども、結局、原則雑所得となったのは、改正資金決済法でこれは仮想通貨を支払手段と位置付けたせいだというふうに理解しておりますが、それでよろしいんでしょうか。
207 藤井健志発言URLを表示○政府参考人(藤井健志君) お答え申し上げます。 結論は委員御指摘のとおりでございます。所得税法上、譲渡所得につきましては、最高裁判決などにおきまして、資産の値上がりによりその資産の所有者に帰属する増加益を所得として、その資産が所有者の支配を離れて他に移転するのを機会にこれを清算して課税する趣旨と解されておりまして、法令上は資産の譲渡による所得と、こういうことでございます。 ビットコインなどの仮想通貨につきましては、御指摘の資金決済法上、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができる財産的価値と規定されており、消費税法上も支払手段に類するものとして位置付けられておりますので、外国通貨と同様に、その売却又は使用により生ずる利益は、資産の値上がりによる譲渡所得とは性質を異にするものであるというふうに考えられるところでございます。 そういうふうに考えられるところでございますので、資金決済法の改正によって位置付けがなされたことも考慮の上、仮想通貨の売却又は使用により生じた利益は譲渡所得には該当せず、どの所得にも属さないということで雑所得に該当するというふうに解しているところでございます。
208 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 今のお話を聞いていると、黒田日銀総裁とか麻生大臣がよく仮想通貨じゃなくて仮想資産だとおっしゃっていますけど、そうすると、将来的には譲渡所得になってもおかしくないのかなという気がしないでもないんですが、それは別としまして。 国内FX取引というのはこれ同じく雑所得ですけれども、雑所得でありながら特措法によって、租税特別措置法によって申告分離二〇%が採用されているわけですけれども、同じ雑所得であっても今のところは雑所得である総合課税なんですけれども、FXと同じように将来的に申告分離になる可能性もあるのかどうか、お聞きしたいと思います。
209 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) 仮想通貨を売却又は使用することによる損益、原則として雑所得に区分され総合課税の対象となるわけでございますけれども、この取扱いは日本円と外貨を交換した場合の為替差益が雑所得として総合課税の対象となることとのバランスを考えれば適当なものと考えております。 一定のFXを含む先物取引による所得につきましては、御指摘のとおり、先物取引が価格変動リスクの回避、公正かつ透明な価格指標の提供等、重要な役割を担っていることを踏まえて、幅広い投資家の市場参加を促すことが重要であるとの観点から分離課税が適用されているところでございます。仮想通貨は、これと同列に論ずることはなかなか難しいのではないかと考えているところでございます。
210 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 今の星野局長のお話によりますと、要は市場を育てたいかどうかという話だったと思うんですが、その観点からすると、私が先ほども言いましたように、ブロックチェーンを育てるためには仮想通貨育てなくちゃいけないという意味で、市場を育てるというのは極めて重要な話かなというふうに私は思います。 もう一つ、違う観点からすると、国内FX取引は分離課税ですけれども、海外FX取引というのは総合課税ですよね。ただし、海外FX取引であっても金融庁の認可を受ければ、許可を受ければ申告分離課税になると、こういう話になっているかと思うんです。ということは、商品先物取引法とか、それから金融商品取引法などの国の規制を受けていれば、言い換えれば、国の監督下に入れば特措法によって申告分離の適用の可能性があると、これが私は税の公平性だと思うんですよね。要するに、FX取引は二〇%だったならば、当然のことながら仮想通貨の取引も二〇%にしても、これは税の公平からするとそうであるべきではないかというふうに思うんですね。 特に、前回の財政金融委員会で私がお呼びした経産省の木村参考人。マネーロンダリングや消費者保護に関する議論もあるものと承知してございます。我が国におきましては、資金決済法の改正によりまして、取扱業者が登録制とされますなど、国の監督下で仮想通貨を活用できる環境が整えられているものと認識してございますと、こうお答えになっているわけです。 既に経産省では国の監督下の下で仮想通貨の取引が行われているというふうにおっしゃっているわけですから、先ほどのFX取引の国内取引、そして国外取引、海外取引での差を考えますと、国の監督下に入るもっときちんとしたルールができれば、当然のことながら申告分離というふうにするのが妥当かと思うんですが、いかがでしょうか。
211 星野次彦発言URLを表示○政府参考人(星野次彦君) お答え申し上げます。 海外のFX取引の関連でございますけれども、一定のFXを含む先物取引による所得につきましては二〇%の分離課税が適用されているところでございますけれども、近年、金融商品取引業の登録をすることなく投資家を勧誘するケースが多発し、投資家とのトラブルが生じていたことを踏まえまして、平成二十八年度改正において、投資家保護規制が講じられていない無登録業者を相手方として行う取引については分離課税の特例から除外したところでございます。 このように、分離課税の特例を設けるに当たって、投資家保護規制が十分に講じられていることが重要であるということはそのとおりであると考えておりますけれども、必ずしもそれだけで十分というわけでもなく、そもそもその取引をやはり国として強く支援、保護する政策的要請が存在することが前提であると考えております。 先ほど申し上げましたとおり、一定のFXを含む先物取引による所得につきましては分離課税が設けられておりまして、こういった国による保護の必要性のその判断に鑑みますと、仮想通貨をこれと同列に現時点で論ずることはなかなか難しいのではないかと考えているところでございます。
212 藤巻健史発言URLを表示○藤巻健史君 今お聞きしていますと、申告分離課税にするための必要条件としては強く政策的支援が必要かどうかということが重要だということは今分かりましたけれども、これはまた今後とも議論いたしますけれども、ブロックチェーンというのは極めて重要な技術、日本の将来を背負うような技術だと思うんですね。そうしたらば、やっぱり表裏の関係にある仮想通貨を、これを政策支援するというのは国のあるべき姿であって、まさに、そうしないとせっかく世界のトップに走っている日本のブロックチェーン技術を殺してしまうことになると思うんですね。最初に申し上げましたけど、税制で日本の将来を殺しては絶対いけないと思うんですね。その点において、仮想通貨というものをやはり政策的に支援する、要するに、ブロックチェーンを政策的に支援するということを是非考えることを強く政府に申し上げたいと思います。」
上記の税制等に関する政府参考人の答弁にあたり、当局はどのような資料を用意していたのでしょうか。以下では、当局が、藤巻議員の質問に対して用意していた税金に関する答弁の内容を確認していきます。
その中には、「マイニング時の課税はどうなっているのか」という質問のほか、「パスワードを忘れた場合には、仮想通貨を換金等できないにもかかわらず、相続税を課税することは、納税者にあまりに酷ではないか。」、「仮想通貨の相続税の評価はどのように行うのか。」など、相続税に関する質問に対する答弁案の記載もあります。