この記事では、国税通則法への編入後の犯則調査の規定、租税犯の罰則、課税調査と犯則調査の関係、供述拒否権の適用範囲、査察調査の手続き、強制調査の法的要件など、国税査察に関する基本事項から実務上のポイントまでを解説しています。

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以下、国税査察官(いわゆるマルサ)研修資料(「令和6年度短期研修 査察(新任)教材」)より抜粋。

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①国税犯則取締法は、平成29年度税制改正により国税通則法に編入されたが、編入後の国税通則法において、犯則調査の規定は、課税調査における質問検査権の規定と同じ第7章の2 (国税の調査)に規定されている
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②犯則調査の対象となる租税犯(脱税犯等)の罰則は、各税法に規定されているほか、一部は国税通則法にも規定されている。
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③国税通則法には、課税調査に関して、「質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」と規定されていることから、課税部門の調査により犯則事実を発見したとしても、これを脱税の情報として査察部門に連絡することは許されない。
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④平成29年度税制改正においては、納税環境整備の一環として、経済活動のICT化の進展等を踏まえて国税犯則調査手続の見直しを行い、その規定を現代語化した上で通則法に編入したが、これと併せて各税法に規定する罰則の法定刑を引き上げる改正が行われた。
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⑤犯則事件の調査における質問の相手方は、犯則嫌疑者又は参考人であるが、犯則事件につき質問できる参考人の範囲には制限がなく、未成年者への質問であっても、原則として証拠能力が認められる。
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⑥課税調査における質問・検査については、不答弁・虚偽答弁、検査拒否等に対する罰則の定めがあるが、間接国税以外の国税に関する犯則調査における任意調査(質問・検査)においても、同様に不答弁・虚偽答弁、検査拒否等に対する罰則規定がある。
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⑦犯則嫌疑者の質問調査については、憲法38条l項が「何人も、自己に不利益な供述を強要されない。」と規定する供述拒否権の保障が及ぶと解されているため、査察官が質問調査を行う場合には、必ず供述拒否権の存在を告知しなければならない。
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⑧国税犯則調査手続は、国税に関する犯則事件を対象とするため、脱税犯のほかに、不納付扇動罪等の犯罪についても対象となる。
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⑨強制処分である差押により対象物件の占有を取得した場合は、提出者より返還の請求があっても必ずしも返還する必要はないが、任意処分である領置により対象物件の占有を取得した場合には、提出者より返還の請求があれば返還せざるを得ない。
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⑩通則法131条2項は任意規定であるから、犯則事件の調査にあたり、査察官から必要な事項の照会を受けた官公署は、多忙などを理由に回答を拒否できる。
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⑪通則法132条の強制調査については、捜索のみについて立会人の立ち会いが法定要件とされているが、実務においては臨検、差押えにおいても立会人を置くこととしている。
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⑫査察官は、強制調査を行う間、何人に対しても、許可を受けないでその場所に出入りすることを禁止することができる。
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⑬査察官は、裁判官から許可状を得れば、犯則事件の調査に必要な物件はすべて差し押さえることができる。
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⑭査察官は、犯則嫌疑者が使用しているメールアカウント等を把握した場合には、裁判所が発付した許可状に基づき、当該メールデータを保管するプロバイダ等にCD-R等の記録媒体にメールデータを複写することを命じ、当該記録媒体を差し押さえることができる。
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⑮目録謄本の交付は相手方の請求がある場合には必ず交付しなければならないが、請求のない場合も可能な限り行うべきである。
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⑯東京国税局査察部では来週、強制調査に着手する予定であるが、調査場所がすべて千葉県内にあることから、許可状を請求するために査察官2名を千葉地方裁判所に行かせた。
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⑰犯則嫌疑者の居宅を捜索していたところ、下宿人の居室が確認されたが、捜索に立ち会っていた犯則嫌疑者が承諾したため、そのまま捜索を行った。
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⑱同一事件で同一の機会になされる捜索であっても、場所が異なる場合には各別の令状が必要であるが、同一の場所における臨検・捜索・差押えの三者の許可を1通の令状に記載することは違法ではない。
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⑲処分を受ける者が不在のため、立会人に許可状を提示して開始した捜索の途中で処分を受ける者が現場に戻ってきた場合、改めて許可状を処分を受ける者に提示しない場合、捜索を続行することはできない。
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⑳立会人又は質問を受けた者が調書に署名押印しない場合、その旨を調書に付記しなければならないが、被質問者の署名又は押印のどちらもない調書であっても、当事者が証拠とすることに同意する場合は証拠とすることができる。
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㉑関東信越国税局の査察官が、東京国税局管内の納税者が関東信越国税局管内で不正を行っている事実を把握したが、納税地が東京国税局管内であるため、関東信越国税局の査察官は当該納税者の犯則事件の調査をすることはできない。
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㉒間接国税以外の犯則事件を調査した結果、査察官が犯則ありと思料した場合、査察官は情状等を考慮して告発を行うか否かを判断することとなる。
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㉓検察官は、国税局長等の告発がなければ、間接国税(申告納税方式を除く)に関する犯則事件について、公訴を提起(起訴)することができない。