「輸出で儲かる」の裏に潜む罠。消費税還付を巡る裁判の全貌

「輸出ビジネスをすれば、消費税が戻ってきて利益が出る」——そんな誘いに乗って、自社の名前を貸してしまった企業の末路を象徴する判決が出されました。

●事件の概要:1億円以上の還付を求めたが… 今回、裁判の舞台となったのは、ある国内法人が行った「香港への輸出取引」です。この会社(原告)は、国内で酒や化粧品を10億円以上仕入れ、それを香港の業者に販売したとして、消費税の還付(約1.2億円)を国に求めました。

日本の消費税制度では、輸出取引は「免税」となるため、仕入れ時に支払った消費税分を国から返してもらう(還付)ことができます。しかし、税務署はこの取引を「原告自身の取引ではなく、他人の取引に名義を貸しただけだ」と判断し、還付を認めず、さらにペナルティとして「重加算税」を課しました。これに納得いかない会社側が、処分の取り消しを求めて裁判を起こしたのです。

●裁判所が「NO」を突きつけた3つの理由 裁判所は、結果として会社側の訴えを退け、税務署の処分を全面的に支持しました。なぜ、実際に輸出書類(インボイス)が存在し、お金の出入りもあったのに「名義貸し」と判定されたのでしょうか?ポイントは以下の3点です。

  1. 「自分では何も決めていない」実態 会社側は、仕入れる商品の選定や、輸出の手続き、代金の回収などをすべて知人(コンサルタントような役割を有する人物)に丸投げしていました。裁判所は「10億円もの取引をしながら、相手企業の信用調査もせず、契約書すら交わさないのは商売として不自然だ」と厳しく指摘しました。
  2. 不自然すぎる価格と重さ 取引内容も異常でした。例えば、市場価格1本5万円程度のシャンパンを、20倍の「105万円」で仕入れたことになっていました。また、輸出書類に記載された商品の重さが、実際の製品重量と何百キロも食い違っているなど、書類自体が「形だけ整えられたもの」であることが露呈しました。
  3. 利益の70%が他人に流れる約束 最も決定的なのは、還付金などの利益のうち、名義を貸した会社には15%しか残らず、残りの70%が知人の会社に流れるという合意があった点です。これでは「自分の責任で商売をしている」とは到底認められません。

●教訓:安易な「名義貸し」は経営を滅ぼす 裁判所は、この会社が「自社が取引の主体ではないと分かっていながら、還付を受けるために嘘の帳簿を作った」として、悪質な「事実の仮装」を認定しました。

今回の判決は、輸出ビジネスを装った還付スキームに対し、国税と裁判所が非常に厳しい目を向けていることを示しています。「名前を貸すだけで手数料が入る」といった甘い言葉は、最終的に多額の追徴課税と信用失墜を招くリスクがあることを、強く認識しなければなりません。

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