外貨建てによる海外不動産投資の「為替差益」への課税を巡り、実務上重要な控訴審判決が下されました(東京高裁令和7年9月17日判決)。
争点は、外貨による不動産取得が為替差益の「実現」にあたるかという点です。納税者側は「貨幣自体の価値増減は観念できず、ドル建債務をドルで支払っても所得は発生しない」と主張しました 。
これに対し東京高裁は、所得税法が邦貨(円)を基準とする以上、外貨を円換算して所得を把握すべきと断じました 。具体的には、保有するドルは円との関係で単なる「評価差額」に過ぎませんが、為替リスクから独立した価値を持つ不動産を取得した時点で、その差額は「為替差益」として顕在化(実現)すると判示しました 。特段の事情がない限り、所得の測定尺度は「円」であり、ドルベースでの取引実態があっても課税対象となることが明確に示されました 。
また、ドル建てで購入した不動産の支払いに充てた外貨の「取得価額」をどう計算するかという点も争われました。納税者は、不動産購入のために一時的に借り入れたドルのレート(個別法)を用いるべきだと主張しました。しかし、東京高裁は一審判決を支持し、これを棄却。既に保有していた他のドルと混ぜて平均単価を出す「総平均法に準ずる方法」が合理的であると結論付けました。
裁判所は、外貨が「同一種類である限り代替性を有し、劣化もしない」という性質を重視。暗号資産で認められている個別法の準用についても、「全世界的に交換可能なドルには当てはまらない」と一蹴しました。円安局面で取得した外貨を不動産に変える際、意図せぬ「為替差益」が雑所得として顕在化するリスクを、投資家は改めて認識する必要があります。
一審判決の記事をは以下をご確認ください。
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