金(ゴールド)を買って消費税を戻してもらうつもりが…裁判所が「NO」を出した理由

「金を買えば消費税が戻ってくる」――そんな話を聞いたことがあるかもしれません。しかし、今回ご紹介する令和6年12月5日の神戸地方裁判所の判決は、そうした甘い考えに警鐘を鳴らす内容となりました。

どんな事件だったのか?

ある株式会社(原告)が、大量の金地金(ゴールド)を購入しました。日本の税金ルールでは、ビジネスのために仕入れをすると、支払った消費税分を後から返してもらえる(還付される)仕組みがあります。この会社も「金を買ったから消費税を返してください」と税務署に申告しました。

しかし、税務署は「この取引は会社ではなく、代表者個人が勝手にやっているものだ」と判断し、還付を認めないだけでなく、ペナルティ(過少申告加算税)を含む厳しい処分を下しました。これを不服とした会社が、処分の取り消しを求めて裁判を起こしたのが今回の事件です。

裁判の大きな争点「誰の取引か?」

裁判で注目されたのは、消費税法13条の「実質行為者課税の原則」という難しいルールです。これは、「名義が誰であっても、実際に利益を得たり指示を出したりしている『実質的な主役』に課税する」という考え方です。

消費税法13条(資産の譲渡等又は特定仕入れを行つた者の実質判定)
 法律上資産の譲渡等を行つたとみられる者が単なる名義人であつて、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者がその資産の譲渡等に係る対価を享受する場合には、当該資産の譲渡等は、当該対価を享受する者が行つたものとして、この法律の規定を適用する。
2 法律上特定仕入れを行つたとみられる者が単なる名義人であつて、その特定仕入れに係る対価の支払をせず、その者以外の者がその特定仕入れに係る対価を支払うべき者である場合には、当該特定仕入れは、当該対価を支払うべき者が行つたものとして、この法律の規定を適用する。

裁判所は以下のポイントを厳しくチェックしました。

  • お金の出どころ: 金を買う資金はすべて代表者個人の口座から出ていた。
  • 利益の行き先: 金を売って得た利益も、最終的には代表者が管理していた。
  • 決定権: 会社としての組織的な判断はなく、代表者が一人で決めて動かしていた。

裁判所の判断:それは「会社の仕事」ではない

結果として、神戸地裁は原告側の訴えを退けました。 裁判所は、「会社は単に代表者のための『名義』を貸しただけで、取引の実態は代表者個人にある」と結論づけました。会社としての仕入れ(課税仕入れ)とは認められず、消費税の還付を受ける権利はないとされたのです。

神戸地裁は、代表者は、本件各金地金の仕入れについて自己の消費税等の納税を免れる一方で、原告において消費税等の還付金を得ることができるという仕組みを利用するため、本件各金地 金の仕入れに原告を介在させたことが推認される。

この判決から学べること

この判決は、形だけ法人格を使って節税や還付を狙っても、「お金の流れ」や「ビジネスの実態」が伴っていなければ通用しないことを明確に示しています。

特に最近は、金地金取引を利用した消費税還付スキームが厳しく監視されています。「書類さえ整っていれば大丈夫」というわけではなく、「その取引が本当に会社としての事業なのか」が厳格に問われる時代になっています。

一般の方々にとっても、節税対策や投資を考える際には、表面上の名義だけでなく「実態」がどう評価されるかを理解しておくことが非常に重要です。

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