税務調査の通知が来た方へ。法令、通達その他の公開資料、情報公開請求で入手した東京国税局の調査実施要領等に基づき、税理士・東洋大学法学部教授の泉絢也がQ&A形式で解説します。

結論

  • 税務調査の事前通知を受けたら、まず調査日程・調査項目・対象年分を確認してください。
  • 日程の変更は合理的理由があれば可能です。慌てる必要はありません。
  • 調査には誠実に対応する義務はありますが、調査官の言うことをすべて認める義務はありません。
  • 調査に不安がある場合は、調査前の段階で税理士に相談することが最も効果的な対策です。

本記事は、法令、通達その他の公開資料、情報公開請求で入手した東京国税局の調査実施要領等に基づき、税理士・東洋大学法学部教授の泉絢也が解説しています。

この記事でわかること

  • ✔ 税務調査の通知が来た際に確認すべき項目と本人確認の方法
  • ✔ 調査日程を変更してもらうための「合理的な理由」
  • ✔ 「任意調査」を拒否した場合に発生する罰則のリスク
  • ✔ 事務室やパソコン、プライバシー空間をどこまで見せるべきか
  • ✔ 調査中の録音が認められる法律上の根拠と実務上の注意点
  • 重加算税を回避するために納税者が知っておくべき防御策
  • ✔ 調査終了後の流れと不服申立ての方法
Q1. 税務調査の日時は事前に通知されるの?

税務調査には、原則として事前に通知されるルールがあります。これは法律(国税通則法)で決まっていることなので、基本的には安心してくださいね。

この通知は通常、税務署から電話で行われます。法律上、必ずしも文書で通知しなければならないわけではありません。電話で伝えられる項目は、「調査開始の日時」「場所」「調査の目的」「対象となる税目(所得税や法人税など)」「対象期間(過去何年分か)」「見せてほしい帳簿書類」などです。

また、最近は税務職員を騙った詐欺も発生していますから、電話が来たらまずは調査官の氏名・所属部署・連絡先をメモしましょう。本人確認のために「一度切ってから、税務署の代表番号に掛け直す」という対応をしても、何ら失礼なことではありません。その後、税務署の代表電話から内容に身に覚えのない電話がかかってきた場合でも、上記と同じように「一度切ってから、税務署の代表番号に掛け直す」という対応をとった方が安全です。

なお、顧問税理士がいる場合は、まず税理士に連絡(事前通知)がなされるのが通常です。


Q2. 日程を変更できる?

税務署から指定された日時が、どうしても都合が悪いということもあるでしょう。その場合は、「合理的な理由」があれば変更を求めることができます。

法律には、税務署側も納税者と「日程を協議するよう努める」といった趣旨の内容が書かれています。例えば、仕事の繁忙期や決算作業の真っ最中である、あるいは冠婚葬祭などの予定があるといった理由は「合理的」といえますね。

実務上、2〜3週間程度の延期であれば、一般的に認められるケースが多いので、無理をして当日の仕事に支障をきたす必要はありません。落ち着いて代わりの候補日を提案してみてください。交渉しづらいときは、税理士経由で日程調整すればよいでしょう。


Q3. 税務調査を拒否できる?

結論から言うと、事実上、拒否は非常に難しいです。

一般の税務調査は「任意調査」と呼ばれますが、だからといって「受けたくないから断る」という自由はありません。正当な理由なく質問に答えなかったり、検査を拒否したりすると、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という重い罰則が科される可能性があるからです。

ただし、注意してほしいのは、任意調査の調査官には「強制的に事務所に上がり込む権限」まではないということです。裁判所の令状を持って強制的に踏み込んでくる「査察(強制調査)」とは、この点が根本的に違います。

過去の有名な判決(荒川民商事件)でも、税務調査は「罰則を伴う間接的な強制」であるとされています。つまり、物理的な強制力はないけれど、断ると罰則があるから実質的には受けざるを得ない、という仕組みですね。


Q4. 事前通知なしで調査に来ることはある?

残念ながら、事前通知なしで突然調査に来る「無予告調査」というものは存在します。これも法律上認められている手続きです。

どのような場合に行われるかというと、例えば「事前に通知してしまうと、脱税の証拠となる帳簿を隠したり、改ざんしたりする恐れがある」と税務署長が判断した場合などです。現金商売を行っている業種などでは、その場で現金のあり高を確認するために無予告で行われることがあります。

ただし、無予告調査はすべての人に対して行われるわけではありません。適用されるのは一定の要件に該当する場合に限定されています。もし突然来られた場合でも、すぐに税理士に連絡して対応を相談することが大切です。なお、無予告で調査に来たことに不満を持ち、帳簿書類を見せない、税務調査に応じないという頑な態度をとると、結果的に多額の課税処分につながる可能性がありますので注意してください。


Q5. 調査官に机の中やパソコンを見せないといけない?

これはケースバイケースで、判断が難しい部分ですね。

まず、会社の事務室や店舗は基本的にプライバシーが強く守られる場所とはみなされません。そのため、調査に必要な範囲であれば、机の引き出しを開けたり、パソコンの中身を確認したりする要請には応じるべきだと考えられています。

しかし、何でもかんでも自由に見せてよいわけではありません。調査の必要性と、納税者のプライバシーのバランスが重要です。例えば、「夫婦の寝室」や「明らかに仕事と関係のない私物」のように、明らかにプライバシー空間であり、かつ事業内容と関係が薄い場所や物件については、提示を拒否することができます。調査官の要求が「社会通念上、相当な限度」を超えていると感じたら、毅然と対応する必要があります。


Q6. 調査中に録音してもよい?

これについて不安に思う方は多いですが、法律上、納税者が調査の内容を録音することを禁止する規定はありません。実際、スマホで調査官との会話・通話を録音されている方もいらっしゃいます。プラウドノート(Plaud Note)で自動録音している方も見かけます。

情報公開請求で判明した東京国税局の内部資料によると、調査官は録音を嫌がり「中止してほしい」と要請してくることがあります。しかし、彼ら自身も「強制的にデータを消去させる権限はない」ことを知っています。ただし、調査官に課せられている守秘義務違反を理由に「録音するならこれ以上調査はできない」という方向に話が進み、徹底的な取引先・金融機関等への調査(反面調査)に移行する可能性があります。

録音は、後で「調査官がああ言った、こう言った」というトラブル(言った言わないの争い)を防ぐための非常に有効な手段です。ただし、録音に固執しすぎると調査官の心象が悪くなり、調査がスムーズに進まなくなるリスクがあることも頭の片隅に置いておいてくださいね。


Q7. 税理士以外の人に立ち会ってもらえる?

税務調査には、税理士や弁護士に立会いを依頼するのが基本です。

家族や従業員が同席すること自体は場面によりますが、彼らは税金や法律の専門知識を持っていないため、調査官のペースに巻き込まれてしまう恐れがあります。

調査官にも「調査件数・不正発見件数」や「増差税額・重加算税額」といったノルマ的なプレッシャーがかかっていることがあります。そのため、法律的にグレーな部分でも「無理やり数字を作ろう」と修正を迫ってくるバイアスが働くことがあるのです。納税者の権利を守り、対等に議論するためには、やはり専門家の存在が不可欠といえます。


Q8. 調査当日までに何を準備すればよい?

調査の日が決まったら、まずは以下の書類を整理しておきましょう。

1. 申告書と決算書の控え(対象となる数年分)
2. 総勘定元帳・仕訳帳などの帳簿
3. 領収書、請求書、契約書などの証拠書類
4. 銀行口座の入出金記録

特に領収書などは、日付順や科目順に整理されていると、調査がスムーズに進み、調査官に「しっかり管理している」という良い印象を与えることができます。

また、もし過去の申告内容に自分でも気づいた誤りがあるなら、調査が始まる前に「修正申告」を検討するのも一つの手です。調査通知後に自主的に提出すれば、ペナルティ(加算税)が軽減される場合があります。

絶対にやってはいけないこと:資料の廃棄や改ざん。これは重加算税や刑事罰の対象になり、状況を最悪にするだけです。絶対に避けてください。

Q9. 調査官から「修正申告してください」と言われたら従うべき?

調査の終盤に調査官から「間違いがあるので、修正申告を出してください」と言われることがあります。これについては、修正申告はあくまで「任意」であり、強制ではないということを覚えておいてください。

修正申告を提出するということは、自分から「間違っていました」と認める行為です。そのため、提出した後はその内容について不服を申し立てる(争う)ことが難しくなります。

法律上、調査官は修正申告を「勧奨(おすすめ)」できますが、その際には「不服申し立てはできなくなるけれど、更正の請求はできる」といった法的効果を説明し、書面を渡す義務があります。もし指摘内容に納得がいかないのであれば、安易に修正申告は出さず、税務署長から正式な処分(更正処分)を受けてから争うという選択肢もあります。

早く調査を終わらせたいという心理はわかりますが、納得いかないまま応じるべきではありません。


Q10. 重加算税を課されないためにはどうすればよい?

税務調査で最も恐ろしいのが「重加算税」です。これは通常のペナルティ(過少申告加算税10%)とは桁違いに重く、「35%」(無申告の場合は40%)もの税率が課されます。

重加算税が課されるのは、単なるミスではなく「隠蔽(隠すこと)」や「仮装(でっち上げること)」があったと認定された場合です。ここだけの話ですが、「調査官は三度の飯よりも重加算税が好き」と言われるほど、彼らにとっては重加算税を課すことが大きな評価につながるバイアスがあるのです。

そのため、例えば、売上の計上が漏れているという事実が、ミスによるものなのか、隠蔽・仮装に基づくものなのかが問題となった場合に、彼らは「質問応答記録書」という書類を作成し、あなたが「わざとやりました」と認めたかのような証拠を作ろうとすることがあります。署名を求められた際は、内容を隅々まで確認し、自分の意図と違う表現があれば修正を求めてください。納得いかなければ、署名を拒否することも選択肢の一つです。

最大の防御は、日頃から帳簿や証拠書類を正確に保存し、いつでもその内容を論理的かつ証拠に基づいて説明できる状態にしておくことに尽きます。


Q11. 調査が終わったらどうなる?

調査が終了すると、結果は主に3つのパターンに分かれます。

1. 申告是認(問題なし):申告が正しかったと認められるケースです。後日、書面で通知が届き、これで完全に終了です。

2. 修正申告の勧奨:誤りを指摘され、納税者がそれを認めて修正申告を行う場合です。

3. 更正処分:納税者が指摘を認めず修正申告に応じない場合、税務署長が「これが正しい税額だ」と一方的に処分を下します。

更正処分に不服がある場合は、「再調査の請求」→「審査請求(国税不服審判所)」→「訴訟(裁判所)」というステップで争うことができます。

また、いったん調査が終わった後に、同じ年度の同じ税目について再調査ができるのは、「新たに得られた情報に照らし、非違があると認めるとき」という非常に限定的な場合に限られています。一度終われば、基本的にはその年度の調査はもう来ないと考えてよいでしょう。


Q12. 調査手続に違法があった場合、課税処分は無効になる?

「調査官の手続きが法律違反だったから、税金を払わなくていいはずだ!」と考える方もいるかもしれませんが、現実はそれほど甘くありません。

裁判所の考え方では、「調査手続きの違法」と「課税処分の効力」は別の問題とされています。手続きに多少の不備があっても、算出された税額そのものが正しいのであれば、課税処分は有効とされるのが一般的です。

ただし、例外もあります。「同意なしに勝手に夫婦の寝室に立ち入る」といった、社会通念上許されないような「著しい違法性」がある場合は、その調査に基づく課税処分が違法とみなされる可能性があります。また、違法な調査によって損害を受けたとして、国家賠償が認められたケースもあります。このあたりの判断は非常に専門的なので、おかしいと感じたらすぐに税理士に相談してください。


Q13. 税務調査が不安で眠れない。誰に相談すればよい?

税務調査の通知が来て、不安で夜も眠れないという方はたくさんいらっしゃいます。最も効果的なのは、すぐに税理士に相談することです。

顧問税理士がいない場合でも、この段階でスポット依頼を受けてくれる税理士を探して依頼することを強くお勧めします。事前通知を受けた直後が、準備の時間を確保できる最高のタイミングです。

誤解しないでほしいのは、「税務調査=脱税の疑い」ではないということです。適正に申告していれば、何も恐れることはありません。しかし、調査官の独特な質問攻めや威圧感に一人で立ち向かうのは大変なストレスです。専門家の立会いなしで調査に臨むことは、丸腰で戦場に行くようなものですから、推奨しません。

専門家の視点:税務調査における納税者の権利

税務調査と聞くと、多くの人が「犯罪者扱いされるのではないか」と身構えてしまいます。しかし、本来の税務調査はあくまで「申告が正しく行われているかの確認」の場です。法律(国税通則法74条の8)にも、調査官の権限は「犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」とはっきりと明記されています。

しかし、現実の調査現場では、調査官がノルマのプレッシャーから強引な質問や誘導を行ったり、何でもかんでも「重加算税」に結びつけようとしたりするバイアスが存在することも否定できません。

最近では、AI(人工知能)による調査対象の選定も進んでいます。納税者には、「なぜ自分が選ばれたのか」について正当な説明を受ける権利があるはずです。AIの判断がブラックボックス化する中で、納税者の権利をどう守るかが、これからの時代の大きな課題となっています。

私たち税理士は、こうした場面で納税者の正当な権利を守り、不当な調査には毅然と対応する「最後の防壁」でありたいと考えています。自分の権利を知り、適切に対応すれば、税務調査は決して怖いものではありません。

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