📌 この記事でわかること

本記事では、ゲームソフトのダウンロード番号(DLコード)等を国外事業者に転売する取引に消費税の輸出免税が適用されるかが争われた国税不服審判所裁決(令和6年6月24日)を解説しています。

  • ゲームDL番号・オンラインサービス登録用番号の法的性質(「著作権」か「無形の資産」か)
  • 消費税法第7条《輸出免税等》の適用要件と「著作権」の譲渡の意義
  • 所在場所が特定できない無形資産の内外判定ルール(消費税法施行令第6条第1項)
  • メーカーの利用規約が「著作権の不譲渡」を明記している場合の税務上の取扱い
  • デジタルコンテンツ転売ビジネスにおける輸出免税の適用可否と実務上の留意点
記事の紹介

本裁決は、ゲームソフトのダウンロード番号(DLコード)等を海外事業者に転売する取引について、消費税の輸出免税が適用されるかどうかが争われた重要な事例です。

請求人は、インターネット上で取得したDL番号等を中国の個人事業主に販売し、この取引は「非居住者に対する著作権の譲渡」にあたるため、消費税法第7条に基づき免税されると主張しました。しかし審判所は、メーカーの利用規約において「ソフトウェアは使用許諾されるものであり、知的財産権は譲渡されない」と明記されている点に注目。DL番号等はあくまで「サービスを利用するための無形の資産」であり、著作権そのものの譲渡には該当しないと判断しました。

また、所在場所が特定できない無形資産の譲渡については、「譲渡人の事務所所在地」で国内取引かどうかが判定されます。本件では請求人の事務所が国内にあるため、国内課税取引となり、輸出免税の要件も満たさないと結論づけられました。

デジタルコンテンツの二次流通や並行輸出入を行う事業者にとって、「使用権の移転」と「著作権の譲渡」の税務上の違いを改めて浮き彫りにした裁決です。

裁決要旨

国税不服審判所ホームページの裁決要旨

請求人は、インターネット上で取得した、ゲームソフトのダウンロード番号及びオンラインサービスの登録用番号(本件ダウンロード番号等)の国外事業者に対する譲渡は、非居住者に対する著作権の譲渡であるから消費税が免除される旨主張する。

しかしながら、本件ダウンロード番号等はゲームソフトのダウンロード及びオンラインサービスを利用し得る無形の資産であって著作権には該当せず、その譲渡は国内において行う課税資産の譲渡であり、消費税法第7条《輸出免税等》第1項各号に掲げるもののいずれにも該当しないことから、消費税は免除されない。(令6. 6.24 東裁(諸)令5-133)

事案の概要

国外事業者へ譲渡した、ゲームソフトのダウンロード番号及びオンラインサービスの登録用番号(本件ダウンロード番号等)の売上金額について、課税標準額に含めずに消費税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該譲渡は消費税法第7条《輸出免税等》第1項の規定の適用がなく消費税が免除されないとして消費税等の更正処分等を行った。これに対し、当該譲渡は著作権の譲渡であり、同項の規定の適用により消費税が免除されるとして、原処分の全部の取消しを求めた。

基礎事実

請求人の概要

請求人は、平成31年3月22日に設立された、総合輸出入貿易業務及び貿易仲介業等を目的とする法人である。請求人の事務所の所在地は、肩書地と同一である。
請求人は、消費税課税事業者選択届出書及び消費税課税期間特例選択届出書を提出している。

取引の内容

請求人は、ウェブサイト上のゲーム&PCソフトダウンロードストアにおいて、発売者が発売したゲーム機用のゲームソフト及び追加コンテンツに係るダウンロード番号(本件ダウンロード番号)並びにオンラインサービスに係る登録用番号(本件登録用番号)を購入し、中国で事業を営む個人事業主(本件国外事業者)に販売していた。本件国外事業者は、請求人から仕入れた本件ダウンロード番号等を中国の一般消費者に販売していた。

取引の流れ

本件国外事業者から仕入予定が送られてくる。請求人担当者がこれに基づきストアで本件ダウンロード番号等の購入手続を行う。支払完了後、ストアから本件ダウンロード番号等が記載された購入完了メールが送信される。請求人と本件国外事業者はメールアカウントを共有しており、当該メールが到達した時点で本件国外事業者でも番号等を確認でき、本件国外事業者はその後、中国の一般消費者に販売していた。

本件ダウンロード番号等の性質

本件ダウンロード番号は、オンラインショップにおいて入力するとゲームソフト等をダウンロードできるものであり、当該ダウンロードしたゲームソフト等は、ダウンロードしたゲーム機でのみ使用できる。
本件登録用番号は、オンラインサービスを利用するための登録用番号であり、登録した利用者のアカウントでのみ利用できる。

規約等の位置付け

利用規約には、ソフトウェアは使用許諾されるものであり顧客に譲渡されるものではないこと、利用により知的財産権に関する権原又は権利が顧客に譲渡されることはないこと、明示的に付与する権利を除く全ての権利を留保すること等が記載されている。

申告・処分等の経緯

請求人は、各課税期間の確定申告書において、本件各譲渡に係る売上金額を、課税資産の譲渡等の対価の額のうち免税売上額に含めて申告した。
原処分庁は、本件各譲渡は消費税法第7条第1項の規定の適用により消費税が免除される取引には該当しないとして、更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を行った。再調査決定を経た後、審査請求に至った。

争点

本件各譲渡は、消費税法第7条第1項の規定の適用により消費税が免除されるか否か。
具体的には、本件各譲渡は、消費税法施行令第6条第1項第7号に規定する「著作権」の譲渡に該当するか否か。

争点についての主張

請求人

本件各譲渡の実体はソフトウェアであるゲームソフトの譲渡であり、コンピュータのソフトウェア等は消費税法上の「著作権等」に該当する旨の記載等も踏まえると、本件各譲渡は消費税法第7条第1項第5号の規定により消費税が免除されるべきである。

原処分庁

本件各譲渡は、本件ゲームソフト等又は本件オンラインサービスの提供を受けるために必要となる無形の資産の譲渡であり、消費税法施行令第6条第1項第7号に規定する「著作権」の譲渡には該当しない。よって、消費税は免除されない。

審判所の判断

法令解釈

消費税法第7条第1項は、事業者が国内において行う課税資産の譲渡等のうち、同項各号に掲げるものに該当するものについて消費税を免除する旨を規定し、同項第5号は政令で定めるものを掲げる。政令で定めるものとして、消費税法施行令第17条第2項第6号は、同令第6条第1項第4号から第8号までに掲げる資産の譲渡又は貸付けで非居住者に対して行われるものを規定し、同項第7号に「著作権」を掲げる。
消費税法基本通達5-7-6は、施行令第6条第1項第7号の「著作権」とは、著作権法の規定に基づき著作者が著作物に対して有する権利をいう旨定めており、この取扱いは相当である。

当てはめ

本件ダウンロード番号等は、電気通信回線を介して提供されるゲームソフト等をダウンロードするため又はオンラインサービスを利用するために要する無形の資産である。
利用規約の内容からすれば、無形の資産である本件ダウンロード番号等を取得したとしても、著作権を含む知的財産権が譲渡されるとは認められない。
請求人が本件ダウンロード番号等を取得するに当たり著作権が譲受けされたものとは認められない以上、請求人が取得した本件ダウンロード番号等を国外事業者に譲渡したとしても、国外事業者に対し著作権が譲渡されたものとは認められない。よって、本件各譲渡は「著作権」の譲渡には該当しない。
本件ダウンロード番号等は、所在場所を特定することができない無形の資産であり、請求人の事務所の所在地は国内であることから、本件各譲渡は国内において行われたものとなる。
以上により、本件各譲渡は国内において行う課税資産の譲渡等であり、消費税法第7条第1項各号に掲げるもののいずれにも該当しないことから、消費税は免除されない。

請求人側の指摘事項の位置付け

参照される質疑応答事例等は、当該照会に係る事実関係を前提として「著作権等」とされているにすぎず、本件各譲渡については、著作権の譲渡には該当しない以上、消費税が免除されることにはならない。

更正処分等・加算税

本件各譲渡は消費税法第7条第1項が適用されず、これに基づく課税標準額及び納付すべき税額の算定は、更正処分の額と同額であると認められる。
過少申告加算税についても、正当な理由があるとは認められず、賦課決定処分は適法である。

結論

審査請求は理由がないから、棄却される。

📋 本裁決の注目ポイントまとめ

  • DL番号等は「著作権」ではなく「無形の資産」:ゲームソフトのダウンロード番号及びオンラインサービスの登録用番号は、ゲームソフト等をダウンロードし又はオンラインサービスを利用し得る無形の資産であって、著作権には該当しないと判断された。
  • 利用規約が決め手:メーカーの利用規約に「ソフトウェアは使用許諾されるものであり顧客に譲渡されるものではない」「知的財産権に関する権原又は権利が顧客に譲渡されることはない」と明記されており、著作権の譲渡は認められなかった。
  • 所在場所不特定の無形資産は「譲渡人の事務所所在地」で内外判定:所在場所を特定することができない無形の資産の譲渡については、譲渡人の事務所等の所在地が判定基準となる。請求人の事務所が国内にあるため国内取引と判定された。
  • 消費税法第7条の輸出免税は不適用:本件各譲渡は、著作権の譲渡には該当せず、消費税法第7条第1項各号に掲げるもののいずれにも該当しないことから、消費税は免除されない。

✅ 実務上の留意点

  • ゲームソフトやデジタルコンテンツのDLコードを仕入れて転売する場合、転売者は著作権を取得しているわけではなく、あくまで「サービスを利用するための無形の資産」を取得・移転しているにすぎません。輸出免税を主張する場合は、著作権の譲渡が実質的に発生しているかを慎重に検討する必要があります。
  • メーカー・販売元の利用規約に「著作権・知的財産権は譲渡されない」旨の記載がある場合、その規約内容が課税関係の判断において重要な証拠となります。取引開始前に利用規約の内容を確認し、税務上のリスクを把握することが不可欠です。
  • 所在場所が特定できない無形資産(デジタルコンテンツのアクセス権・利用権など)の譲渡については、内外判定の基準が「譲渡人の事務所等の所在地」となります(消費税法施行令第6条第1項)。国内事業者が譲渡人である場合は原則として国内取引となるため、輸出免税の適用は認められません。
  • 本裁決は令和6年6月24日付(東裁(諸)令5-133)の非公表裁決ですが、裁決要旨は国税不服審判所ホームページに掲載されています。同種の取引を行う事業者は本裁決の射程を十分に確認してください。

❓ よくある質問

Q1. ゲームのDLコードを海外事業者に売っても消費税の輸出免税は使えないのですか?

本裁決によれば、使えません。ゲームソフトのダウンロード番号(DLコード)やオンラインサービスの登録用番号は、著作権そのものではなく「ゲームソフト等をダウンロードし又はオンラインサービスを利用し得る無形の資産」と判断されています。消費税法第7条の輸出免税が適用されるのは、著作権等の権利そのものを非居住者に譲渡する場合ですが、DLコードの譲渡は著作権の譲渡には該当せず、消費税法第7条第1項各号に掲げるもののいずれにも該当しないことから、消費税は免除されません。また、所在場所が特定できない無形資産は、その譲渡を行う者の当該譲渡に係る事務所等の所在地が国内にある場合は国内課税取引となります。

Q2. メーカーの利用規約に「著作権は譲渡されない」と書いてあると、税務上どう影響しますか?

審判所はメーカーの利用規約の内容を重視し、「知的財産権に関する権原又は権利が顧客に譲渡されることはない」旨の記載を根拠に、DLコード等の取得は著作権の譲受けには当たらないと判断しました。つまり、利用規約に著作権の不譲渡が明記されている場合、その取引が「著作権の譲渡」として輸出免税の対象となる余地は実質的にないといえます。デジタルコンテンツの転売ビジネスを行う場合は、事前に各プラットフォームの利用規約を精査することが重要です。

Q3. 所在場所が特定できない無形資産の内外判定はどのように行うのですか?

消費税法施行令第6条第1項の規定により、所在場所を特定することができない無形の資産の譲渡又は貸付けについては、その資産の譲渡又は貸付けを行う者の当該譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地で内外判定を行います。本裁決では、請求人(国内法人)が国内に事務所を有していることから、本件各譲渡は国内において行われたものと判定されました。国内事業者がデジタルコンテンツのアクセス権・利用権等を海外事業者に転売する場合、この規定により原則として国内課税取引となる点に注意が必要です。

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