育英目的でも「金銭貸付業」?公益法人の貸付利息が課税された理由

公益法人等は、すべての儲けに法人税がかかるわけではなく、法律で限定的に決められた「収益事業(34業種)」から出た利益にだけ税金がかかる仕組みになっています。

今回の裁判(東京地裁令和6年12月18日判決)では、奨学金事業などを行う「一般財団法人岩崎育英文化財団」が、グループ会社へ貸し付けたお金の「利息」に税金がかかるかどうか、つまり収益事業の1つである金銭貸付業に該当するかどうかが争われました。

育英事業が目的でも、なぜ課税されたのか?

財団側は、「この利息は教育支援などの公益事業に使うためのもので、金儲けが目的ではない」と主張しました。しかし、裁判所は以下の理由から、この貸し付けは収益事業の一つである「金銭貸付業」にあたると判断しました。

  • ビジネスとしての形: 4年半で合計27億円以上という巨額の融資を繰り返し、1.6%や0.9%といった利率で利息を得ていました。これは銀行などの金融機関が行う融資と何ら変わりません。
  • 民間企業との競合: 公益法人が無税でこれを行うと、同じようにお金を貸して税金を払っている民間企業との間で不公平が生じます。
  • 「使い道」は関係ない: 法律上、その利益を「何に使うか」は関係ありません。事業自体の「やり方」がビジネス(収益事業)であれば、課税されるルールなのです。


「1 争点1(本件各貸付けが収益事業に該当するか否か)について
(1)本件各貸付けが法人税法施行令5条1項3号の「金銭貸付業」に該当するか否か
ア 法人税法が、公益法人等の所得のうち収益事業から生じた所得について同種の事業を行うその他の内国法人との競争条件の平等を図り、課税の公平を確保するなどの観点からこれを課税の対象としていることに鑑みれば、公益法人等が行う貸付けが法人税法施行令5条1項3号の「金銭貸付業」に該当するか否かは、当該事業が公益法人等以外の法人の一般的に行う事業と競合するものか否か等の観点を踏まえた上で、当該事業の目的、内容、態様等の諸事情を社会通念に照らして総合的に検討して判断するのが相当である(最高裁平成18年(行ヒ)第177号同20年9月12日第二小法廷判決・裁判集民事228号617頁参照)。

イ 本件各貸付けは、原告が、平成28年4月から令和2年10月までの4年6か月の間に、6回にわたり、??に対し、2億円から6億9000万円(1回当たりの平均額は約4億6167万円)、合計27億7000万円の金銭を年利率1.6%又は0.9%の利息の特約を付して貸し付けたものであり、本件各貸付利息の合計額は、1581万7721円となる(前提事実(2))。
 そして、本件各貸付けは、原告が行っている非収益事業(前提事実(1)ア(ア))に関連して行われたものではなく、グループ会社である??の資金需要に応えるためのものであり(弁論の全趣旨)、また、本件貸付利息は、本件各貸付けの対価として支払われたものであるところ、このように利息の特約を付した上で金銭を継続的に貸し付け、利息を得るという事業の形式は、金融機関が企業に対して通常業務として行う融資と異ならないものであり、公益法人等以外の法人が一般的に行う事業と競合するものである。しかも、上記貸付金額及び本件各貸付利息の金額、利率、回数等を踏まえると、本件各貸付けは、相応の規模で行われた収益性のある事業であると認められる。
 以上に述べた本件各貸付けの目的、内容、態様等を総合的に検討すると、貸付けの対象が同一企業グループに属する??に限定されていることなど、原告の指摘する事情を考慮しても、本件各貸付けは、法人税法施行令5条1項3号の金銭貸付業に該当すると認められる。
 なお、原告は、本件各貸付けにつき、その利息は原告が実施する教育事業等の公益事業に充てることを目的としており、収益を目的としたものではないから、本件各貸付けは金銭貸付業に該当しないなどと主張するが、仮にそのような目的が併存するとしても、本件各貸付けが金銭貸付業に該当することを左右するものではなく、原告の上記主張は、採用することができない。
ウ また、原告は、法人税基本通達15-1-14の注書きにおいて、「有価証券の現先取引に係る行為」が金銭貸付業に該当しないとされていることをもって、本件各貸付けが金銭貸付業に該当しないなどと主張する。
 そこで検討するに、有価証券の現先取引とは、公社債などを買戻し(又は売戻し)条件付きで売買し、約定期間の満了時点で買戻し(又は売戻し)を行うことにより完了する取引であり、この場合の買戻し(又は売戻し)価格は、当初の売買価格に利息相当額を加算した金額として定められることになるため、実質的には有価証券を担保とする金融的性格を有するといえる(乙28)。
 法人税基本通達15-1-14の注書きが有価証券の現先取引に係る行為について「金銭の貸付け」に含まれないとしたのは、有価証券の現先取引は、法形式上は飽くまでも有価証券の売買であり、しかも「買い現先」によって供給された資金は、現先市場を通じて不特定多数の「売り玉」の出し手に給付され、買い手と売り手とは個々に資金の貸し借りという法律関係に立たないのであるから、単にその性格が金融的であるからという理由だけで直ちにこれを金銭の貸付けそのものであると断定することは困難であるためと考えられる(乙28)。
 以上の趣旨は、法形式においても金銭消費貸借契約であることが明らかな本件各貸付けには当てはまらないから、原告の上記主張は、理由がない。
エ したがって、本件各貸付けは、法人税法施行令5条1項3号の金銭貸付業に該当すると認められる。」

「事業場」がないという反論も退けられる

財団側は、「専用の窓口や店舗(事業場)を設けていないので、業(ビジネス)にはあたらない」とも主張しました。しかし裁判所は、「事務所を拠点としていれば十分であり、特別に店舗を構える必要はない」として、この反論も認めませんでした。

「(2)本件各貸付けが法人税法2条13号の「継続して事業場を設けて行われるもの」に該当するか否か
ア 法人税法2条13号に規定する「継続して事業場を設けて行われるもの」とは、通常相当期間にわたり継続して行われるもの又は定期的に若しくは不定期に反復して行われる事業であって、一定の場所・施設を設けて行うものをいい、この要件は、臨時的、一時的に行われる事業を収益事業から除く趣旨で定められたものと解される。したがって、上記要件にいう「事業場を設けて」とは、その事業活動にとって拠点となるべき場所があるという意味であり、当該事業を行うために特別の施設を設けることまでを要するものではなく、既存の施設を利用して収益事業を行う場合も含まれると解するのが相当である。(以上につき乙27参照)
イ 前提事実(1)アのとおり、原告は、・・・に本件事務所を設けて事業活動を行っており、原告が提出した収益事業開始届出書においても本件各金銭消費貸借契約書においても、原告(債権者)の住所欄には本件事務所の所在地である上記住所が記載されていることからすると(乙4、15、弁論の全趣旨)、原告は、本件事務所を収益事業の拠点としていると認められる。
 したがって、原告には、金銭貸付業を行うに当たり、拠点となるべき物的施設である「事業場」があるといえるから、本件各貸付けは、法人税法2条13号に規定する「継続して事業場を設けて行われるもの」に該当する。」

「昔は指摘されなかった」は通用しない

もう一つの大きな争点は、「半世紀以上も同じことをしてきたのに、なぜ今さら?」という点です。財団側は、過去の税務調査で一度も指摘されなかったことを根拠に「今さら課税するのは信義則(ルール違反)だ」と訴えました。

しかし裁判所は、「過去の調査で見逃されていただけで、税務署が『非課税でOK』という正式な約束(公的見解)をしたわけではない」と一蹴しました。過去にお咎めがなかったことは、将来の免罪符にはならないという厳しい現実が示された形です。

まとめ:公益法人が気をつけるべきこと

この判決は、「善意の活動資金を集めるためであっても、事業の形がビジネスであれば課税される」という原則を改めて強調しました。特にグループ会社間での資金融通を行っている法人は、たとえ1%未満の低い利息であっても「金銭貸付業」とみなされるリスクを強く意識する必要があります。

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