情報公開請求により、国税庁から、暗号資産交換業者に対する国税滞納者の暗号資産の差押えに関する資料を入手しましたので、紹介します。暗号資産(仮想通貨)の返還請求権を徴収法上の「債権」として差し押さえること、暗号資産(仮想通貨)の受入れ方法は確立しておらず、金銭として受け入れる必要があることなどが明らかにされています。
以下は、国税庁作成の「差押財産の表示例(暗号資産(仮想通貨)の返還請求権(令和2年11月))」です。
暗号資産(仮想通貨)の返還請求権
差 押 債 権 の 表 示
滞納者が、債務者の行う暗号資産(仮想通貨)交換業の利用者(アカウントID:○○○○)として有する下記の金銭及び暗号資産(仮想通貨)の返還請求権。
ただし、暗号資産(仮想通貨)の価額については、当税務署が支払請求した時点における債務者の暗号資産(仮想通貨)相場により換算した日本円の金額とする。
記
1 金銭 JPY ○○円
2 暗号資産(仮想通貨) BTC ○○
XRP ○○
履行期限 当税務署から請求あり次第即時
(留意事項等)
1 暗号資産(仮想通貨)は、所有権の客体にはならないと解されているため(東京地裁平成27年8月5日判決)、滞納者が暗号資産(仮想通貨)交換業者を介して暗号資産(仮想通貨)を保有している場合には、当該交換業者に対する暗号資産(仮想通貨)の返還請求権を徴収法上の「債権」として差し押さえる。
2 暗号資産(仮想通貨)の受入れ方法は確立しておらず、金銭として受け入れる必要があることから、第三債務者である暗号資産(仮想通貨)交換業者が行う暗号資産(仮想通貨)交換業に関する利用規約等や、当該交換業者から次の点を確認した上で差し押さえる。
① 徴収職員による取立ての際に、差し押さえた暗号資産(仮想通貨)を金銭にして返還できるか。
② ①の価額は、どの時点の何を基準に決定するか(確認した内容に従い、表示例のただし書き部分の記載を変更する。)。
③ 最終的な差押債権の表示をもって、財産(返還請求権)の特定ができているか。
(消滅時効)
1 起算点及び期間 権利を行使することができる時から10年又は権利を行使することができることを知った時から5年のいずれか早い時
2 権利を行使することができる時 最終取引時
3 根拠条文等 民166①