(公開:2026年4月2日 最終更新:2026年5月2日)

【執筆時点の情報について】

分離課税導入を含む暗号資産の税制を改正する所得税法等の一部を改正する法律が次のとおり、成立等しました。

成立日令和8年3月31日
公布日令和8年3月31日
施行日令和8年4月1日(別段の定めがあるものを除く)

本記事は公布された法律・政令・規則に基づいて記載しています。ただし、国税庁の通達・FAQはまだ公表されていません。解釈が確定していない部分があるため、本記事の内容に基づいて具体的な取引や税務処理を行う際は、事前に税理士にご相談ください。通達等で新たな取扱いが明らかになった場合は、本記事を随時更新します。

この記事の結論

令和8年度税制改正後の暗号資産(仮想通貨)課税では、特定暗号資産について「国内取引所で売るか(分離課税20%)」「海外取引所やDEX、取引所以外で売るか(総合課税、最大55%)」を納税者自身が選択できます。この経路選択により、従来は存在しなかった節税パターンが生まれました。どちらが有利かは、課税所得の水準・所得区分・損失の有無によって変わります。

  • 経路選択の切替点は課税所得330万円(432万円は参照指標):暗号資産の分離課税は20%(復興特別所得税込みで20.315%)の定率、総合課税は超過累進税率です。追加1円の限界税率は330万円超で30.42%となり分離課税を大きく上回るため、経路選択の切替点は330万円です。なお、全額を一方の課税方式で処理した場合の平均税率が一致する点は432万円ですが、これは参照指標にすぎず切替点ではありません
  • 節税パターン1(異なる銘柄の使い分け):異なる種類の特定暗号資産について、利益が出ているもの(例:ビットコイン)は国内取引所で売却して分離課税で確定させ、損失が出ているもの(例:イーサ)は海外取引所やDEXで売却して総合課税の対象とし、同じ雑所得内のマイニング報酬・ステーキング報酬、年金、副業所得等や、譲渡所得内の他の譲渡益との内部通算に使う方法です。同一種類の暗号資産内での振り分けではありません
  • 節税パターン2(330万円切替戦略):「既存課税所得+暗号資産譲渡益」が330万円に収まる部分までは、総合課税(海外取引所・DEX等)の限界税率が分離課税20.315%を下回るため、330万円までは総合課税で売却、超過分は分離課税(国内取引所)で売却するのが税率面では理論上最適です。ただし、海外取引所・DEXの利用コスト等も含めた実務上の判断が必要です(本文Q3参照)
  • 事業所得の場合は総合課税ルートにメリット:暗号資産取引が事業所得に区分される場合、総合課税ルートでは暗号資産の売却損失を給与所得等と損益通算でき(所法69①)、青色申告なら3年間の純損失の繰越控除も使えます。分離課税ルートでは給与所得等との損益通算はできません(措法38の2②二)
  • 譲渡所得・雑所得の場合は分離課税ルートが有利な場面が多い:暗号資産の譲渡による所得が譲渡所得・雑所得に区分される場合、総合課税ルートの損失の使い道が限定的(譲渡所得は所法69②で損益通算排除、雑所得は内部通算のみ)なため、分離課税ルートで3年繰越控除を使う方が有利な場面が多くなります
  • 評価方法との連動:総平均法(届出をしなければ自動適用)では年末まで各売却の損益が確定しないため、年の途中での経路選択の判断が事後的に覆るリスクがあります。経路選択は移動平均法と相性がよく、評価方法の選択と一体で検討する必要があります
  • 20万円申告不要特例との関係:給与所得者で給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であれば確定申告は不要です(所法121①一)。特定暗号資産の所得もこの20万円の判定に含まれます。分離課税、総合課税のいずれを適用しても(つまり、経路選択自体は)20万円の判定結果に影響しませんが、相殺できる損失がある場合は通算後の金額が変わりえます

※均衡点の計算は、暗号資産の所得以外の所得がないものとして算出しています。実際の税額は他の所得・各種控除・個別事情によって変動するため、具体的な判断は税理士にご相談ください。

本記事は、記事A:暗号資産の税金が分離課税20%へ記事B:暗号資産の分離課税と取引経路の続編です。

記事Bでは、特定暗号資産を国内取引所で売れば分離課税(20%)、海外取引所やDEXで売れば総合課税(最大55%)になるという原則を解説しました。

本記事では、この構造を前提に、「分離課税と総合課税のどちらが有利か」を具体的に検討する節税パターンを取り上げます。ただし、今回はわかりやすい2パターンを素材にしています。実際には、ここで紹介するもの以外にも多くの節税パターンが存在しますが、複雑になるため、詳しくは税理士にご相談ください。

⚠ 経路選択は合法的な制度の利用であり、脱税ではありません。ただし、暗号資産取引業者が税務署に提出する報告書には「移入数量」「移出数量」が記載されるため(措法38の2④、措規18の17③④、別表第七の二)、取引の全体像は課税当局に把握されうることを認識しておく必要があります。


Q「経路選択」とは何ですか?
A

分離課税の対象となる特定暗号資産について、国内取引所で売るか(分離課税)、海外取引所やDEXで売るか(総合課税)を、納税者自身が選択することです。

この選択が可能になるのは、次の2つの構造があるためです。

課税方式は譲渡時の経路で決まる:同じビットコインでも、国内取引所で売れば分離課税(20%)、海外取引所やDEXで売れば総合課税(最大55%)になります(措法38の2①)。

ここでいう暗号資産取引業者とは、「金融商品取引法2条9項に規定する金融商品取引業者のうち同法28条5項の暗号資産取引業を行う者」です。

取得価額は種類単位で統一されている:分離課税の対象となる譲渡と総合課税の対象となる譲渡とで、取得価額を別々に計算する定めはありません。同じビットコインであれば、どこで売っても1単位あたりの取得価額は同じです。

この2つが組み合わさることで、従来は存在しなかった節税パターンが生まれます。

経路選択とは、同一時点で保有する同一種類のビットコインの中から、含み益のある単位と含み損のある単位を選り分けて売却先を振り分けることではありません。暗号資産は種類単位で1単位あたりの平均取得価額を計算するため(所令119の2①)、同じビットコインであれば、どこで売っても同一の平均取得価額が適用されます。経路選択が影響するのは、売却時点で生じた損益に対して分離課税と総合課税のいずれが適用されるかという点です。

経路選択とは(現物取引)――特定暗号資産を保有している場合、暗号資産取引業者への売委託・譲渡(国内取引所での売却)なら申告分離課税20%、業者を通じない譲渡(それ以外の場所での売却)なら総合課税最大55%。常に分離課税がお得なわけではない

Q例えば、ビットコインは含み益があるので分離課税にし、イーサは含み損があるので総合課税にする、ということはできますか?(いずれも特定暗号資産に該当すると想定)
A

理論上、可能です。

異なる種類の特定暗号資産(例:ビットコインとイーサ)について、利益が出ているものと損失が出ているものを別々の経路で売却することで、分離課税と総合課税の両方を活用するパターンが考えられます。

パターン1:異なる種類の特定暗号資産で利益が出ているものは分離課税、損失が出ているものは総合課税も選択肢

📈 利益が出る場合:国内取引所で譲渡 → 分離課税(20%)で確定

📉 損失が出る場合:海外取引所やDEXで譲渡 → 総合課税の対象とし、他の譲渡益との内部通算に利用

この方法の効果は、分離課税側では利益のみを低税率(20%)で確定させ、総合課税側では損失を他の譲渡益の圧縮に利用するというものです。

同一種類の暗号資産(例:ビットコイン)の中で振り分けるのではなく、異なる種類の特定暗号資産について、利益が出ているもの(例:ビットコイン)は国内取引所で売却、損失が出ているもの(例:イーサ)は海外取引所で売却するという使い分けがパターン1の基本です。

内部通算の相手方となる総合課税の譲渡益(ゴルフ会員権、貴金属、書画骨董等に係るもの)がある方は総合課税ルートも選択肢に入ります。

ただし、総合課税ルートの暗号資産の譲渡所得の損失について、損益通算(給与所得など他の総合課税の所得や、土地建物・株式等・先物取引といった他の分離課税の所得との相殺)はできません(所法69②)。内部通算で吸収しきれなかった損失を給与所得等と相殺することはできず、切り捨てとなります。

なお、分離課税ルートの特定暗号資産の譲渡損失も、総合課税の所得や他の分離課税の所得との相殺はできません(措法38の2①後段・②二)。

一方、総合課税の対象となる暗号資産の所得が事業所得に区分される場合は、話が変わります。事業所得の損失は損益通算の対象であり、給与所得等から控除できます(所法69①)。この違いはQ4で解説します。


Q課税所得が一定金額以下の場合、総合課税の方が有利ですか?
A

経路選択の最適戦略は「課税所得330万円までは総合課税(海外取引所・DEX等)、330万円を超える追加分は分離課税(国内取引所)」です。330万円を超える部分の追加1円の限界税率は、総合課税30.42%対分離課税20.315%で10ポイント以上の差があるため、税率の面からは、利益を実現する場面では分離課税が有利です(損失が出ている年の判断はQ4参照)。

パターン2:330万円切替戦略――課税所得330万円までは総合課税、超過分は分離課税

所得税は超過累進税率を採用しており、各段階の金額に応じた税率が適用されます。

195万円以下の部分:所得税5%+住民税10% = 15%(復興特別所得税込みで15.105%)

195万円超〜330万円以下の部分:所得税10%+住民税10% = 20%(復興特別所得税込みで20.21%)

330万円超〜695万円以下の部分:所得税20%+住民税10% = 30%(復興特別所得税込みで30.42%)

ここでいう課税所得金額とは、各種所得控除を差し引いた後の金額です。

課税所得金額と所得税の税率の関係については、国税庁の速算表をご覧ください。

追加1円の限界税率は、330万円以下のゾーンでは最高でも20.21%(分離課税20.315%とほぼ同水準または下回る)、330万円を超えると30.42%に跳ね上がります。分離課税の税率は一律20.315%ですので、経路選択の切替点は、限界税率が逆転する課税所得330万円となります。

一方、全体の平均税率で見た場合、330万円以下の部分に低税率が適用される恩恵により、課税所得432万円までは総合課税の平均税率が分離課税20.315%を下回ります(下記テーブル参照)。しかしこれは「全額を一方の課税方式で処理した場合」の平均税率の話であり、経路選択ができる場合の最適戦略を示すものではありません。経路選択の最適戦略は、あくまで330万円までを総合課税、超過分を分離課税とすることです(432万円は参照指標にすぎません)。

課税所得金額総合課税
平均税率
分離課税
税率
有利な方
195万円15.10%20.315%−5.21総合
330万円17.19%20.315%−3.12総合
400万円19.51%20.315%−0.81総合
≈432万円20.32%20.315%±0.00均衡点
500万円21.69%20.315%+1.38分離
600万円23.15%20.315%+2.83分離

(注)総合課税の平均税率は、復興特別所得税(基準所得税額の2.1%)を含む。分離課税の税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で一定。暗号資産の所得以外の所得がないものとして計算。このテーブルは「全額を一方の課税方式で処理した場合」の平均税率を示す参照指標であり、経路選択の切替点を示すものではありません。経路選択の切替点は限界税率が逆転する課税所得330万円です。

総合課税 vs 申告分離課税 平均税率の比較――経路選択の切替点は課税所得330万円(432万円は参照指標)

本記事の前提(暗号資産の所得以外の所得なし)のもとでは、経路選択の最適戦略は「課税所得330万円までは総合課税、超過分は分離課税」です。以下、詳細な整理です。

  • 330万円以下のゾーン:総合課税の平均税率が分離課税を明確に下回ります(差約3〜5ポイント)。総合課税が有利です。暗号資産所得が330万円以下なら、思いがけず他にわずかな所得があったとしても、総合課税の方が有利というケースが多いという意味で、総合課税を選択する1つの目安になるでしょう
  • 330万円超432万円以下のゾーン:総合課税の平均税率がまだ分離課税を下回っていますが、差はわずかです(数ポイント以下)。ただし330万円を超えた追加分の限界税率は30.42%と分離課税20.315%を大きく上回るため、追加的に実現する暗号資産の譲渡益は分離課税の方が有利です。
  • 432万円超のゾーン:総合課税の平均税率が分離課税を上回ります。課税所得が高くなるほど分離課税の優位性が拡大します

以上の整理から、経路選択の最適戦略は「課税所得330万円までは総合課税、超過分は分離課税」となります。「432万円」は全額を一方の課税方式で処理した場合の平均税率が一致する参照指標にすぎず、経路選択の切替点として使うべきではありません。切替点は限界税率が逆転する課税所得330万円です。

実際には、暗号資産以外の所得(給与所得等)がある場合が多く、均衡点は本記事の前提とは異なりえます。具体的な有利不利の判断は、給与所得・事業所得などを含めた課税所得の水準に応じて個別に検討する必要があります。

「分離課税=常に有利」ではありません。逆に、「総合課税=常に不利」でもありません。自分の課税所得その他の事情を考慮して、分離課税と総合課税のどちらが有利かを判断する必要があります。なお、税率面で総合課税の方が有利となるのは、「既存の課税所得+暗号資産譲渡益」のうち330万円に収まる部分に限られます。330万円を超える追加分は、限界税率で比較すれば分離課税の方が10ポイント以上有利です。また、税率面での有利不利だけでなく、海外取引所・DEXの利用コスト(取引手数料・送金手数料・誤送金リスク・損益計算の複雑化等)も判断材料となります。実務上は、国内取引所のみで完結する分離課税を選ぶ方が現実的な場合も少なくありません。


Q所得区分によって損失の使い道は変わりますか?
A

大きく変わります。暗号資産の所得が事業所得・譲渡所得・雑所得のいずれに区分されるかによって、損失の活用方法が異なります。

項目分離課税ルート
(所得区分を問わず共通)
総合課税ルート
(事業所得の場合)
総合課税ルート
(譲渡所得・雑所得の場合)
内部通算3類型(事業・譲渡・雑)間で通算可事業所得内で可譲渡所得内 or 雑所得内で可
損益通算不可(給与所得等との相殺不可)
(給与所得等と相殺可能)
不可(給与所得等との相殺不可)
繰越控除3年間
(分離課税暗号資産所得のみから控除)
青色申告なら3年間
(翌年以後の総所得金額等から控除可能=使い道が多い)
なし
(その年限りで切捨て)

この表が示すとおり、事業所得に区分される場合には、総合課税ルートで損失を活用するメリットがあるのは明らかです。

利益が出る年は分離課税ルート(20%)で確定させ、損失が出る年は総合課税ルートで損益通算に活用する――これが事業所得に区分される方にとっての基本的な判断の方向性です。ただし、具体的にどちらが有利かは、どの種類の課税所得があるかという点のほか、課税所得の水準や翌年以後の相場見通しにも左右されます。

譲渡所得や雑所得に区分される場合は、総合課税ルートの損失の使い道が限定的であるため、分離課税ルートで3年間の繰越控除を使う方が有利な場面が多いです。ただし、雑所得の対象となる暗号資産の譲渡損失は、マイニング報酬・ステーキング報酬、年金所得、副業所得などの他の雑所得と相殺できるというメリットがあります。

分離課税ルートでは、所得区分が事業所得・譲渡所得・雑所得のいずれであっても、税率(20%)は同じであり、3類型間の内部通算も認められています。つまり、分離課税を選ぶ場合は、所得区分が税額にほとんど影響しません。所得区分が大きく影響するのは、総合課税ルートを選ぶ場合です。


Q経路選択を判断するためのチェックポイントは?
A

実際には多くの考慮要素がありますが、まずは簡便的なものとして、以下の5つのチェックポイントに沿って判断してください。

経路選択の5つのチェックポイント

☑ チェックポイント1:その暗号資産は「特定暗号資産」か?

特定暗号資産でなければ、分離課税を選択する余地がなく、総合課税の一択です。経路選択は、特定暗号資産について「国内取引所で売るか」「それ以外で売るか」を選ぶことにほかなりません。


☑ チェックポイント2:課税所得の水準はどの程度か?

経路選択の切替点は課税所得330万円です(Q3参照)。追加1円の限界税率は、330万円以下なら20%以下(分離課税20.315%を下回る)、330万円超なら30.42%(分離課税を上回る)となるためです。なお、「432万円」は全額を一方の課税方式で処理した場合の平均税率が一致する参照指標であり、経路選択の切替点ではありません。


☑ チェックポイント3:利益が出る年か、損失が出る年か?

利益が出る年と損失が出る年とでは、有利なルートが異なりえます。所得区分(事業所得・譲渡所得・雑所得)によっても判断が変わることを踏まえて、検討しましょう(Q4参照)。また、前年以前から繰り越された損失(分離課税の繰越控除や総合課税の純損失の繰越控除)がある場合は、その損失を消化するためにどちらのルートで利益を実現すべきかも検討が必要です。


☑ チェックポイント4:合計所得金額への影響を確認したか?

分離課税・総合課税のいずれを選んでも、利益は合計所得金額に算入されます。繰越控除で税額をゼロにしても、合計所得金額は繰越控除適用前の金額で計算されます(措法38の3④)。扶養控除など各種所得控除・住宅ローン控除の判定、国民健康保険料等に影響します。


☑ チェックポイント5:評価方法は、総平均法か、移動平均法か?

総平均法(届出をしなければ自動適用)では年末まで各売却の損益が確定しないため、年の途中での経路選択の判断が事後的に覆るリスクがあります。対策もとりえますが、法定評価方法が総平均法であるため(所法48の2①、所令119の5①)、届出をしていない大多数の方にはこのリスクが潜在しています。

経路選択の判断は、譲渡時期・評価方法の選択とも切り離せません。経路選択は特定暗号資産の譲渡時に行うものなので、通常は、譲渡時点で譲渡原価が確定している移動平均法と相性がよいです。総平均法を採用している場合、年後半の取得が年前半の売却原価に遡及的に影響するため、経路選択時の思惑と異なる結果につながるリスクもあります。経路の選択と売却時期・評価方法の選択は一体として検討する必要があります。上記のチェックポイントは簡便的なものなので、詳しくは税理士にご相談ください。

本記事は概要です。今後、書籍・雑誌記事・セミナーにおいて、詳細な解説や税理士向けの実務上の注意点についても取り上げる予定です。

Q会社員ですが、特定暗号資産の利益が少額であれば確定申告は不要ですか?
A

1か所から給与の支払を受け、その全部について源泉徴収または年末調整が行われている給与所得者の場合、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」が20万円以下であれば、確定申告書を提出する必要はありません(所法121①一)。特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額もこの20万円の判定に含まれます。

分離課税の所得は確定申告書への明細書の添付を要件として適用されるものであるため、当該特例を適用しないで計算した給与所得及び退職所得以外の各所得の金額を合計した金額を基礎として判定します(所基通121-6参照)。同通達は上場株式等や先物取引等の分離課税について同様の取扱いを示しており、特定暗号資産についても今後、通達改正により明記される可能性があります。

20万円以下である場合には、分離課税の所得も含めて申告不要となります(所法121①、措法38の2①、措令25の15の2③)。特定暗号資産の利益とその他の副収入等を合わせて20万円を超える場合は、確定申告が必要です。

20万円以下でも注意すべき点があります。

第1に、20万円以下であっても非課税となるわけではないので、医療費控除やふるさと納税の寄附金控除を適用するために確定申告をする場合には、当該20万円以下の所得を含めて申告することになります。

第2に、確定申告が不要となる場合であっても、住民税(個人住民税)の申告は別途必要となりうる点にご注意ください。

第3に、繰越損失がある場合は、損益が20万円以下に収まっていても、繰越控除の適用を維持するためには確定申告書(または確定損失申告書)の提出が必要です。繰越控除は申告不要制度と両立しません。

▼ 経路選択との関係

経路選択(国内取引所経由の分離課税ルートか、海外取引所・DEX等経由の総合課税ルートか)は、それ自体では20万円の判定結果を変えません。どちらのルートで売却しても、売却益は「給与所得及び退職所得以外の所得金額」として20万円の判定に含まれるためです。

ただし、相殺できる損失がある場合には、経路選択によって通算後の金額が変わり、20万円を下回るか超えるかが変わりえます。


⚠ よくある誤解

誤解 「改正後は総合課税を選ぶメリットがなくなった」

課税所得が一定金額以下の方は、総合課税の方が税率が低くなる場合があります。また、事業所得に区分される場合は損失の損益通算(給与所得等との相殺)というメリットが総合課税側に残っています。「全員が分離課税を選ぶべき」とは限りません。→ 本記事 Q3Q4


誤解 「分離課税か総合課税かは税務署が決めるもので、自分では選べない」

特定暗号資産については、納税者自身が売却の経路を選ぶことで、事実上、分離課税と総合課税を選択できます。配当所得のように申告書上でチェックを入れて選ぶ制度ではありませんが、「どこで売るか」を自分で決めることが、そのまま課税方式の選択になります。→ 本記事 Q1

経路選択は、改正によって新たに生まれた節税の手段です。「分離課税=常に有利」でも「総合課税=常に不利」でもなく、各人の課税所得・所得区分・損失の有無・翌年以後の相場見通しに応じて判断する必要があります。

一律に「分離課税を選ぶべき」とも「総合課税を選ぶべき」とも言い切れない点が、この問題の難しさであり、税理士の専門性が求められるところです。

次の記事(記事D)では、損失繰越と損益通算の詳細を取り上げます。「上場株式の損失と暗号資産の利益を相殺できるか?」「ステーキング報酬と分離課税の損失を通算できるか?」「繰越控除を使っても合計所得金額は減らないのか?」といった実務上の疑問に回答します。

通達・FAQの公表によって解釈が明確になる論点もあります。本記事は情報が確定次第、随時更新していきます。

【税率の表記について】

本記事では、復興特別所得税(基準所得税額に対する付加税)等を考慮せず、分離課税の税率を「20%」(所得税15%+住民税5%)、総合課税の最高税率を「55%」(所得税45%+住民税10%)と表記しています。所得税額に対する付加税を含めた場合の税率は、それぞれ20.315%、55.945%です。

なお、令和8年度税制改正により防衛特別所得税(所得税額の1.0%)が創設され、令和9年1月1日以後に生ずる所得から課税されます(防衛財源確保特別措置法5の9)。同時に、復興特別所得税の税率は2.1%から1.1%に引き下げられ、課税期間は令和29年12月31日まで10年延長されました。所得税額に対する付加税の合計は2.1%のまま変わらないため、本記事の分離課税20.315%・総合課税55.945%という合計税率および計算結果に影響はありません。


泉絢也(税理士・東洋大学法学部教授)

暗号資産やNFTその他のデジタル財産の高度な損益計算については、カオーリア会計事務所(藤本剛平税理士)と連携しています。

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