(公開:2026年9月23日)

本記事は令和8年度税制改正の内容を一般的に解説したものであり、個別の取引に対する税務上の助言ではありません。記載は公開時点の法令に基づいており、今後の政省令・通達により取扱いが変わる可能性があります。

この記事の結論

暗号資産の譲渡が消費税の非課税である点は変わりませんが、令和8年度税制改正により、譲渡対価の5%が課税売上割合の分母に算入されることになり、暗号資産を売買する事業者の仕入控除税額が減少します。

  • 変わらないこと:暗号資産の譲渡は引き続き非課税です。消費税がかかるようになるわけではありません
  • 変わること:これまで課税売上割合の計算から外されていた暗号資産の譲渡について、譲渡対価の5%が分母に算入されます。レンディングの利用料は課税から非課税に変わります
  • 影響がない人:免税事業者、簡易課税の事業者、暗号資産の売買しか行っていない事業者には、影響が生じません
  • 問題点:5%という数値は、少なくとも一定の暗号資産との関係では実態に合っているとはいえません。電子決済手段(一定のステーブルコインを含む)との間に税制上の有利不利も生じます
Q1 暗号資産を売ると、消費税はかかるのですか。改正で変わりますか

かかりません。暗号資産の譲渡が非課税であることは、令和8年度税制改正の前後で変わりません。変わるのは、非課税とする理由づけです。

消費税は、国内における消費一般に対して広く公平に負担を求める税であり、原則としてすべての財貨・サービスの国内における販売、提供などを課税対象としています。ただし、支払手段および支払手段に類するもの(以下「支払手段等」といいます。)の譲渡については、消費に負担を求めるという税の性格上、課税することになじまないものとして非課税とされています(消法6①、消法別表2二)。暗号資産の譲渡は、このうち支払手段に類するものの譲渡として非課税とされてきました(消令9④。財務省「令和8年度税制改正の解説」850頁。以下「解説」といいます)。

そのように位置づけられたのは平成29年度税制改正です。暗号資産(当時の名称は仮想通貨)に対する規制導入時に決済手段としての利用が念頭に置かれ、その取引に係る業規制が決済関連サービスを提供する業者に対するものとして資金決済法において規定されたこと、および諸外国における取扱いを踏まえたものでした(解説850頁)。

改正後、暗号資産はこの位置づけから外れ、「有価証券に類するもの」として非課税とされます(消法別表2二、消令9①一、解説851頁)。

条文の置かれ方も見ておきます。改正後の消令9条1項1号は、券面が発行されていない有価証券に表示されるべき権利(電子決済手段に該当するものは除かれます)を掲げたうえで、その末尾に「並びに暗号資産」を加える形になっています。除外の括弧書きがかかるのは前段の権利であって、暗号資産ではありません。なお、ここでいう電子決済手段は、資金決済法2条5項に規定するもので、いわゆるステーブルコインのうち一定のものがこれに該当します。暗号資産とは別の概念です。支払手段に類するものを定める同条4項に残るのは、電子決済手段と特別引出権です。

変更の背景は、次のように説明されています。近年の暗号資産取引の実態としては、一般の経済活動における決済手段としての利用は限定的であり、投資対象としての利用が一層拡大している。こうした状況に鑑み、金融審議会「暗号資産に関するワーキング・グループ」において議論が行われた結果、投資対象として暗号資産を取引している利用者保護の観点から、金商法等改正法により、暗号資産の取引については資金決済法による規制ではなく、金商法において有価証券等の金融商品と並んだ規制を及ぼすこととされた。あわせて、暗号資産の定義に係る規定も資金決済法から金商法に移された。こうした取引実態の変化と規制の変更を踏まえ、消費税の非課税取引における暗号資産の位置づけを変更することとされた、というものです(解説850〜851頁)。

ここで押さえておきたいのは、今回の改正が、平成29年度税制改正で採られた方針の転換にあたるという点です。平成29年度税制改正では、暗号資産の譲渡を課税売上割合の計算に含めない取扱いが採用されました。今回、それが改められます。

結論が同じである以上、暗号資産を売買するだけの個人にとっては、この変更による影響はありません。影響が出るのは、消費税の申告をする事業者です。理由はQ2以降で説明します。

Q2 そもそも課税売上割合とは何ですか

その課税期間中の国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに、その課税期間における課税資産の譲渡等の対価の額の合計額が占める割合をいいます(消法30⑥)。この割合がどの程度であるかは、その課税期間における仕入控除税額を算出する上で重要な要素になります(解説850頁)。

算式にすると、次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.6405 課税売上割合の計算方法)。

課税売上割合 = 課税期間中の課税売上高(税抜き) 課税期間中の総売上高(税抜き)

分母の総売上高は、国内における資産の譲渡等の対価の額の合計額です。課税売上高に、輸出による免税売上高と非課税売上高を足したものと考えてください。分子の課税売上高は、課税資産の譲渡等の対価の額の合計額で、こちらにも輸出による免税売上高が含まれます。ただし、分母は単純な合計ではありません。取引の種類によっては、全額を入れないもの、一部だけを入れるものがあります。この点はQ3で説明します。

この割合が使われるのは、仕入税額控除の計算です。課税期間中の課税売上高が5億円以下で、かつ課税売上割合が95%以上であれば、仕入れに係る消費税額の全額を控除できます(消法30①②、国税庁タックスアンサーNo.6401 仕入控除税額の計算方法)。どちらかの条件を外れると、個別対応方式か一括比例配分方式で按分することになります。一括比例配分方式では、課税仕入れに係る消費税額に課税売上割合を乗じた額しか控除できません。個別対応方式でも、課税売上げと非課税売上げに共通して要する部分は課税売上割合で按分されます。いずれにせよ、課税売上割合が下がるほど、按分の対象となる部分の控除額は小さくなります。

ここで、5億円かどうかの判定に用いる課税売上高には、暗号資産の譲渡は含まれません。2つの条件のうち、5%の算入が効いてくるのは課税売上割合のほうだけです。

逆にいえば、ここからこの改正の影響が及ばない事業者も見えてきます。免税事業者は、そもそも消費税の納税義務が免除され、仕入税額控除の計算をしません。課税事業者であっても、5%を分母に算入したうえでなお課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上であれば、これまでどおり全額を控除できます。

この改正で不利になるのは、5%の算入によって全額控除の条件から外れてしまう事業者と、もともと外れていて按分計算をしている事業者です。該当するかどうかは、Q5で確認してください。

Q3 「譲渡対価の5%を分母に算入する」とは、どういうことですか

暗号資産を売った金額の5%を、上の算式の分母に加える、という意味です(消令48⑤)。理解のために、まず特例の仕組みから説明します。

課税売上割合の計算の基礎となる資産の譲渡等の対価の額については、有価証券の譲渡や金融取引、支払手段等の譲渡といった取引の特殊性に鑑み、いくつかの特例が設けられています。課税売上割合は、その課税期間中に行った課税仕入れについて課税売上に対応するものとして按分する際に用いる割合であり、売上高の構成に応じて課税仕入れも同様の構成で発生しているものと擬制する考え方に基づいています。この考え方をそのまま適用すると実態と乖離するような特殊な取引について、計算上の特例が置かれているのです(解説850頁(注))。

改正前、暗号資産の譲渡は支払手段等の譲渡として、課税売上割合の計算に含まれていませんでした(消令48②一)。分母にも分子にも入らなかったということです。支払手段等の譲渡を計算に含めないのは、資産の購入等をするための対価の支払いを一般の非課税売上と同じように分母に算入すると、取引の実態が資産の購入等であるにもかかわらず、仕入税額控除が制限されてしまうためです(解説850頁(注))。暗号資産をどれだけ大量に売買しても、課税売上割合は動かなかったのです。

改正後は、暗号資産が決済手段ではなく投資対象として利用されているという実態に鑑み、有価証券の譲渡と同様に、その譲渡対価の額の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額(分母)に算入することとされました(消令48⑤、解説851頁)。分子には入りませんので、暗号資産の譲渡額が大きい事業者ほど課税売上割合が下がります。

項目改正前改正後
譲渡の課否非課税非課税(変わらず)
非課税の根拠支払手段に類するものの譲渡有価証券に類するものの譲渡
課税売上割合分母・分子ともに不算入譲渡対価の5%を分母に算入
貸付け(レンディング)の利用料課税非課税

なお、分母に入るのは譲渡対価の5%であって、売却によって得た利益の5%ではありません。この違いがQ4で効いてきます。

Q4 5%が分母に入ると、何が困るのですか

課税売上割合が下がり、仕入控除税額が減少します。納める消費税は、その分だけ増えます。

はじめに、よくある誤解を解いておきます。「5%」は、消費税の負担が5%増えるという意味ではありません。暗号資産の譲渡は改正後も非課税ですから、売上げに係る消費税額は動きません。動くのは仕入控除税額だけです。そして実際の影響は、5%よりはるかに小さいことも、はるかに大きいこともあります。

影響の大きさを決めるのは、暗号資産の譲渡対価が、他の課税売上げに比べてどれだけ大きいかです。2つの事業者で比べてみます。いずれも、暗号資産のほかに非課税売上げはないものとします。

項目事業者A事業者B
本業の課税売上高5,000万円1億円
暗号資産の譲渡対価(年間の合計)4億円1億円
分母に加わる額(5%)2,000万円500万円
改正前の課税売上割合100%100%
改正後の課税売上割合約71.4%約95.2%

事業者Aは95%を下回りますので、仕入れに係る消費税額の全額控除ができなくなります。仮に課税仕入れに係る消費税額が500万円で、一括比例配分方式による場合、控除できる額は500万円から約357万円に減り、およそ143万円の負担増となります。一方、事業者Bは95%を維持できますので、この改正による影響は生じません。

ここで注意すべきなのは、分母に入るのが利益ではなく譲渡対価だという点です。同じ資金を何度も回転させて売買を繰り返すと、元手が小さくても譲渡対価の合計は際限なく膨らみます。事業者Aの4億円は、1,000万円を40回転させただけでも到達する金額です。

円に換金した場合だけの話ではありません。暗号資産どうしの交換も譲渡にあたり、その対価の額は受け取った暗号資産の時価になります。円に戻していないから関係ない、とはいきません。

利益が出たかどうかも関係ありません。損をしていても、売った金額が大きければ課税売上割合は同じように下がります。

Q5 どのような事業者が影響を受けますか。受けない事業者もいますか

影響を受けるのは、本則課税により申告していて、暗号資産の譲渡に加えて他の課税売上げがある事業者です。逆にいえば、この条件を満たさない事業者には、影響が生じないか、ごく限定的です。

影響が大きい事業者

  • 暗号資産取引業者:顧客との間で大量の売買を行うため、5%算入によって課税売上割合が大幅に下がり、仕入控除税額に重大な影響が生じえます
  • 暗号資産を決済に使っているweb3事業者:暗号資産で支払を受けて円に換金したり、暗号資産で支払ったりするたびに、譲渡対価が積み上がります
  • マーケットメイクやアービトラージを行う事業者:利益率が低くても取引量が大きいため、5%算入の影響が累積的に効いてきます

一方で、次の事業者は、影響を受けないか、限定的です。

影響を受けない、または限定的な事業者

  • 免税事業者:消費税の納税義務が免除されており、仕入税額控除の計算をしませんので、課税売上割合が下がっても関係ありません。暗号資産の非課税売上げは、免税事業者かどうかを判定する課税売上高にも含まれません
  • 簡易課税制度を適用している事業者:仕入控除税額を売上げに係る消費税額とみなし仕入率で計算するため、課税売上割合を使いません
  • 暗号資産の売買しか行っていない事業者:他に課税売上げがなければ、課税売上割合は改正の前後を通じて0%であり、この改正による低下は生じません。改正前は暗号資産の譲渡が計算から除かれるため分母にも分子にも立たず、改正後は分母に5%相当額が立つものの分子はゼロだからです。なお、暗号資産の譲渡以外に非課税売上げもなく分母と分子がともにゼロとなる場合について、国税庁は課税売上割合を0%(95%未満)として取り扱うとしています(照会事例は売上そのものがない場合のものですが、分母と分子がともにゼロとなる点は同じです)。この場合の扱いについては、条文の文理からは全額控除になるという指摘もありますが、実務はこの取扱いによっています
  • 5%を算入してもなお全額控除の条件を満たす事業者:Q4の事業者Bのように、課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上を維持できるのであれば影響は生じません

なお、課税売上割合が0%となる事業者は、売買に直接要した手数料等について仕入税額控除ができません。一括比例配分方式では課税仕入れに係る消費税額に0%を乗じることになり、個別対応方式でも、これらは非課税売上げにのみ要する課税仕入れに区分されるからです(消基通11-2-15)。もっとも、これは暗号資産の売買に要した課税仕入れの話です。これとは別に、課税売上げのためにのみ行った課税仕入れ(たとえば、今後始める課税事業で販売する商品の仕入れや、その事業専用の設備の購入)があれば、課税資産の譲渡等にのみ要するものとして控除の対象になります。その課税仕入れに対応する課税資産の譲渡等が、その課税期間にあったかどうかは問いません(消基通11-2-10)。この点は改正の前後で変わりません。

Q6 レンディングの非課税化で、損をする人と得をする人がいるのですか

はい。同じ改正でも、立場によって向きが逆になります。

令和8年度税制改正により、暗号資産の貸付けが非課税取引の範囲に加えられました。有価証券の貸付けが非課税とされていることを踏まえたものです(消令10③十一、解説851頁)。電子決済手段の貸付けも、同じ号で非課税とされました。近年、国内の事業者による電子決済手段の貸付け取引が開始されている実態があること、および他の支払手段等の貸付けが非課税とされていることを踏まえたものです(解説851頁)。

損をする側から見ます。レンディングサービスを提供する事業者にとって、利用料はこれまで課税売上げでした。改正後は非課税売上げになりますので、分子からは外れるのに、分母には全額が残ります。5%で済む譲渡と違い、貸付けの対価は5%算入の対象ではないため、全額が分母に入るのです。売買とレンディングの両方を行う事業者は、課税売上割合を二重に押し下げられることになります。

得をする側は2つあります。

第1に、利用料を支払う側のうち、仕入税額控除ができない立場の人です。免税事業者や、非課税売上げが中心の事業者、事業者でない個人は、これまで利用料に含まれていた消費税相当額を控除できませんでした。非課税になれば、その負担はなくなります。

ただし、これは利用料の水準がその分だけ下がることを前提とした話です。実際には、従来と同じ利用料が据え置かれることも十分に考えられます。その場合、負担が軽くなるのは支払う側ではなく、消費税を納めなくてよくなる貸し手側ということになります。非課税化が誰の利益になるかは、価格がどう動くか次第です。

第2に、レンディングによって意図せず課税事業者になっていた人です。現行法では、個人であっても反復継続して独立に暗号資産の貸付けを行っていれば、消費税法上「事業として」行う資産の貸付けに当たる場合があり、その利用料は課税売上げになります。基準期間における課税売上高が1,000万円を超えれば、原則として課税事業者となります。この改正により、このリスクは解消されます。

ただし、解消されるのは施行と同時ではありません。免税事業者かどうかは原則として2年前の課税期間の課税売上高で判定しますので、判定に用いる期間が施行後のものに入れ替わるまでは、それまでの利用料が課税売上げとして残ります。

これは個人に限った話ではありません。レンディングを主な事業とする法人でも、利用料が課税売上げから非課税売上げに変わることで基準期間における課税売上高が減り、免税事業者に該当することがありえます。個人を先に挙げたのは、事業として行っているという自覚のないまま課税事業者になっている例が想定されるためです。

なお、施行前の課税期間については現行法のままです。過去にさかのぼって非課税になるわけではありませんので、これまでの取扱いについては引き続き確認が必要です。

Q7 課税売上割合が大きく下がってしまう場合、対策はありますか

個別対応方式において、課税売上割合に代えて「課税売上割合に準ずる割合」を用いる方法があります。税務署長の承認が必要です(消法30③)。

準ずる割合は、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れの性質に応じた合理的なものでなければなりません。使用人の数または従事日数の割合、消費または使用する資産の価額、使用数量、使用面積の割合などが挙げられています(国税庁タックスアンサーNo.6417 課税売上割合に準ずる割合、消基通11-5-7)。実務では、従業員数の割合、事業部門ごとの割合、床面積の割合、取引件数の割合といったものが用いられています。暗号資産の売買を行う部門について独立採算制がとられているなど、他の部門と独立した会計単位になっているのであれば、事業部門ごとの割合が検討に値します。

手続には期限があります。適用しようとする課税期間の末日までに承認を受けておくのが原則です。末日までに承認申請書を提出し、その翌日から1か月以内に承認を受けたときは、その課税期間の末日において承認があったものとみなされ、その課税期間から適用できます(消法30③、消令47⑥)。一定期間が過ぎれば承認されたものとみなす仕組みはありませんので、審査の期間を見込んで早めに提出する必要があります。

ただし、次の3点には注意してください。

  • 一括比例配分方式には使えません。準ずる割合は個別対応方式のためのものです
  • 95%以上かどうかの判定には使えません。全額控除ができるかどうかの判定は、準ずる割合の承認を受けているかどうかにかかわらず、本来の課税売上割合によって行います(消費税法基本通達11-5-9)
  • 申請すれば必ず認められるものではありません。自社の事業の実態に照らして合理的であることを説明できる必要があります

対策として、簡易課税制度の選択も比較対象になります。簡易課税では、売上げに係る消費税額にみなし仕入率を乗じて仕入控除税額を計算しますので、課税売上割合を使いません(国税庁タックスアンサーNo.6505 簡易課税制度)。暗号資産の非課税売上げは、簡易課税の適用判定に用いる課税売上高にも含まれません(消法9②)。改正後は、簡易課税が本則課税に比べて相対的に有利になる場合が生じえます。

ただし簡易課税にも制約があります。基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること、適用しようとする課税期間の初日の前日までに消費税簡易課税制度選択届出書を提出すること、いったん選択すると、事業を廃止した場合を除き、原則として2年間は取りやめられないことの3つです(消法37①⑥)。適用開始の直前に気づいても間に合いません。試算は早めに行ってください。

Q8 取引所に支払う売買手数料は、仕入税額控除の対象になりますか

手数料そのものは課税仕入れです。ただし、控除できるかどうかは別の問題です。

暗号資産の譲渡は非課税ですが、取引所に支払う仲介手数料は、仲介という役務の提供の対価ですので消費税が課されます。そのうえで、個別対応方式による場合、この手数料は非課税売上げにのみ要する課税仕入れに区分されます。暗号資産の譲渡しか行っていない事業者では、控除の対象になりません。

一括比例配分方式による場合は、課税仕入れ全体に課税売上割合を乗じますので、手数料に係る消費税額も課税売上割合の分だけしか控除できません。改正後は5%算入によって課税売上割合が下がりますので、手数料に係る控除額も、その低下に連動して減ることになります。

取引回数が多い事業者ほど手数料の総額も大きくなりますので、5%算入の影響は、譲渡対価の積み上がりと手数料の控除減という2つの経路であらわれます。

Q9 この改正は、いつから適用されますか

事業者に一定の準備期間が必要となることを踏まえ、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(以下「金商法等改正法」といいます。)の施行の日の属する年の翌年の1月1日(施行日)以後に国内において行う資産の譲渡等および課税仕入れについて適用されます。施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等および課税仕入れについては、なお従前の例によることとされています(改正消令附則3①、解説851頁)。

この施行の日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています(解説851頁)。同法は令和8年7月23日に公布されました(令和8年法律第64号)。適用の起点が「施行の日」ではなく「施行の日の属する年の翌年の1月1日」である点に注意してください。年の途中で施行されても、消費税の取扱いが変わるのはその翌年の初日からです。

所得税の分離課税も、金商法等改正法の施行の日の属する年の翌年1月1日以後に行う特定暗号資産の譲渡から適用されます。消費税の改正も同じ日に始まります。施行期日を定める政令は本記事の公開時点では確認できていませんが、事業者の準備期間を踏まえると令和9年中の施行、すなわち令和10年(2028年)1月1日からの適用が見込まれます。所得税の改正については、暗号資産の税金が分離課税20%へをご覧ください。

重要なのは、施行日が来るまでは現行法で申告するということです。改正が決まったからといって、先取りして5%を分母に入れる処理はできません。

Q10 そもそも、暗号資産に株式と同じ5%を当てはめてよいのですか

疑問が残ります。まず、立案担当者の説明を確認しておきます。

有価証券の譲渡等については、取引の性質上繰り返して売買されることが想定される一方で、譲渡対価に対応するコスト(課税仕入れ)は僅少です。それなのに譲渡対価を全額分母に算入すると、必要な課税仕入れに係る税額についても控除制限を受けることとなる。そのため、課税売上割合の計算上、その譲渡対価の5%相当額を資産の譲渡等の対価の額に算入することとされています(解説850頁(注))。暗号資産についても、決済手段ではなく投資対象として利用されているという実態に鑑み、有価証券の譲渡と同様の扱いとされました(解説851頁)。

そのうえで申し上げると、有価証券の5%という数値は、もともとは、株式を売ったときの所得をその売却代金の5%とみなしていた古い制度を参照したものであるといわれています。つまり、株式市場における売買の利益の水準をおおまかに置き換えた数値です。暗号資産について、その売買の利益率を独自に検証した結果が公にされた形跡はありません。

筆者は、この問題を3つの段階に分けて考えるべきだと思います。第1に、暗号資産の譲渡対価を課税売上割合の計算に含めるかどうか。第2に、含めるとして、譲渡対価の全額を入れるのか、一定割合にとどめるのか。第3に、一定割合にとどめるとして、その割合を5%とするのが妥当か。この3つは別の問いであり、混ぜて論じると、数値の当否だけの議論になってしまいます。

【1】 そもそも計算に含めるべきか

支払手段としての実態は消えていません。暗号資産は、ブロックチェーン上で代替性を持つトークンとして流通するよう設計されており、現に物品やサービスの決済に使われています。規制法上の位置づけが変わっても、使われ方が変わるわけではありません。位置づけの変更だけを根拠に取扱いを変えれば、実態に合わない税制ができあがります。現に暗号資産を決済に使っている事業者は、その分だけ不利に扱われることになります。従来どおり課税売上割合の計算から除外する余地もあったはずです。

電子決済手段との間で扱いが分かれます。電子決済手段の譲渡は、改正後も支払手段等の譲渡として非課税のまま(消令9④)、課税売上割合の計算からも除外されます(消令48②一)。同じように決済に使えるものであるのに、暗号資産を使えば課税売上割合が下がり、電子決済手段を使えば下がらない、という差が生じます。事業者が税制上の有利不利によって決済手段を選ぶようになるとすれば、取引に対する中立性の観点から望ましいことではありません。これも、計算に含めるか含めないかという差から生じるものです。

【2】 含めるとして、全額か一定割合か

仮に、【1】で計算に含めるという結論を採用する場合には、全額ではなくその一定割合を含めるという取扱いを採用することは一定の理由があるでしょう。繰り返し売買される資産について譲渡対価の全額を分母に算入すれば、事業に必要な課税仕入れに係る税額まで控除が制限されてしまうからです。問題は、次の第3にあります。

【3】 一定割合とするとして、その割合は5%でよいか

なぜ5%なのかについて、立案担当者から積極的な説明は示されていません。そして、少なくとも一定の暗号資産との関係では、5%が実態に合っているとはいえません。ここでの問題は、負担が重いか軽いかではなく、5%という数値が売買差益の近似として妥当かという点です。「一定の暗号資産」には、方向の異なる2つのものが含まれます。

  • 投機性が高く、価格変動の大きい暗号資産。売買差益が譲渡対価の5%を大きく超える銘柄や局面は珍しくありません。5%では小さすぎます
  • 現に決済手段として使われている暗号資産。こちらは、投資対象としての売買差益を前提とする5%という発想そのものが当てはまりません

暗号資産と株式・債券とでは、発行体の有無、価値の裏付け、表章する権利、流動性、投機性、保有目的のいずれにおいても相当の差があります。株式を念頭に置いて定められた数値を、有価証券のルールを経由して機械的に持ち込むことが、売買差益相当額の合理的な近似という5%算入本来の目的と整合するのかは、検討されるべき点です。

【4】 これらを政令で定めてよいか

以上の3つとは層の異なる論点として、これらが政令で定められている点も問題になりえます。非課税の範囲は消法別表2二が、課税売上割合の計算方法は消法30⑥が、それぞれ政令に委任していますので、委任の規定自体は置かれています。もっとも、納税額に直結する計算方法を、その委任の範囲内でどこまで政令で定めうるかには、なお検討の余地があります。

暗号資産は、支払手段としての性格と投資対象としての性格をあわせ持っています。そのうちの一面だけを取り出して、他の資産の枠に当てはめる方法は、立法の作業としては簡明ですが、実態からは離れていきます。規制法に依拠した税制は立案する側にとって都合がよいのかもしれませんが、多面的な性格を持つ資産について硬直的な取扱いを定めるアプローチには、慎重な検討が求められるものと考えます。

📝 まとめ

  • 暗号資産の譲渡が非課税であることは変わらない。変わるのは課税売上割合の計算
  • 譲渡対価の5%が分母に入り、課税売上割合が95%を下回れば全額控除ができなくなる
  • 分母に入るのは利益ではなく売った金額。売買の回数が多いほど影響が大きい
  • 免税事業者、簡易課税の事業者、暗号資産の売買しか行っていない事業者には影響が生じない
  • レンディングの利用料は非課税になる。貸す側の課税売上割合は下がる。支払う側が得をするかどうかは、利用料の水準が下がるかどうか次第
  • 準ずる割合の承認申請には期限がある。95%の判定には使えない
  • 5%という数値は、値動きの大きい暗号資産にも、決済に使われている暗号資産にも、うまく当てはまらない

出典