(公開:2026年7月7日 / 最終更新:2026年7月23日)

本記事は、公開時点で入手できる情報に基づく一般的な解説であり、意見にわたる部分は筆者の見解です。個別の税務・法務のご判断は、必ず税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。なお、暗号資産の申告分離課税を定める税制改正(所得税法等の一部を改正する法律)は2026年3月31日に成立・公布済みであり、その適用の前提となる金融商品取引法等の改正法も、令和8年7月15日に参議院本会議で可決されて成立し、令和8年7月23日に公布されました(令和8年法律第64号)。暗号資産関係の規定の施行日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされており、その施行期日を定める政令は本記事の最終更新時点では未公布です。

令和8年度税制改正で、暗号資産の譲渡益に一律20%の申告分離課税が導入されました。上場株式やFXと同じ税率です。しかし、「なぜ暗号資産に、株式やFXと同じ分離課税を認めてよいのか」という正当化の問いは、まだ固まっていないのではないか――というのが、本記事の見立てです。

本記事は、衆議院財務金融委員会の附帯決議を紹介した第一報の続報にあたります。附帯決議そのものの内容は、こちらの記事で解説しています。

この記事の結論

政府・与党は、暗号資産を「国民の資産形成に資する金融商品」として前向きに位置づけ、分離課税を推し進めました。ところが、その適用の前提となる金商法改正の法案を可決した衆参両院の委員会は、可決と同時に「お墨付きを与える意図ではない」という附帯決議も付しています。推進する政府・与党の言葉と、国会審議の場で付された附帯決議の留保とで、方向の異なるメッセージが同時に出ているのです。株式やFXと比べて暗号資産に分離課税を導入したことをどう正当化するのかという問いは、この食い違いのなかで、なお残されたままだと筆者は考えます。

  • 推進の理由づけは「資産形成に資する金融商品」:閣議決定や与党大綱は、暗号資産を国民の資産形成に資する金融商品と位置づけ、分離課税の対象とする方針を示しました。
  • 委員会の附帯決議は一歩引いている:金商法改正の法案を可決した衆参両院の委員会が付した附帯決議は、第一項で「お墨付きではない」、第二項で「裏付け資産がない」と述べ、前向きな位置づけと必ずしもそろっていません。
  • 留保には理由がある。しかしそれは優遇の理由も掘り崩す:裏付け資産を持たないこと、規律が事実上、国内の登録業者を通じた取引に集中することが、留保の背景にあると読めます。ところが同じ性質は特定暗号資産にも当てはまるため、なぜそこには分離課税を認めるのかという問いが、正面から残ります。
  • 総合課税に残る暗号資産だけが不利:分離課税は特定暗号資産に限られ、そこから外れる暗号資産は、金の現物などと違い、譲渡所得の2分の1課税・特別控除・損益通算が認められません。その理由は現時点では判然としません。

令和8年度改正で、暗号資産の分離課税は導入されたのですか?

はい。令和8年度税制改正で、暗号資産の譲渡益等を、他の所得と分離して20%(所得税15%・個人住民税5%)で課税する申告分離課税が導入されました。これを定める所得税法等の一部を改正する法律は、2026年3月31日に成立・公布済みです。

ただし、すべての暗号資産取引が分離課税になるわけではありません。対象は、暗号資産取引業を行う金融商品取引業者(国内取引所)を通じた「特定暗号資産」の取引に限られ、そこから外れる取引――海外取引所やDEX、当事者間の取引など――は、引き続き総合課税(原則として雑所得)にとどまります。この金融商品取引法改正は令和8年7月15日に成立し、令和8年7月23日に公布されました(令和8年法律第64号)。実際に適用が始まるのは、その施行日(公布の日から1年を超えない範囲内において政令で定める日)の属する年の翌年1月1日からです。

税率の表記について
本記事では読みやすさのため「20%」と表記していますが、復興特別所得税等を含めた合計税率は20.315%です(所得税15%+復興特別所得税等0.315%+個人住民税5%)。なお、令和8年度税制改正により防衛特別所得税(所得税額の1%相当額。令和9年分以後の所得に課税。防衛財源確保特別措置法5の9)が創設され、あわせて復興特別所得税の税率が2.1%から1.1%に引き下げられましたが、合計税率は2.1%のまま変わらないため、上記の0.315%という数値も変わりません。

分離課税の対象・対象外

対象:暗号資産取引業を行う金融商品取引業者(国内取引所)を通じた特定暗号資産の取引(現物・デリバティブ・ETF)。
対象外:海外取引所、DEX(分散型取引所)、当事者間(P2P)の取引など。これらは引き続き総合課税(原則として雑所得)にとどまります。

これまで当局は、なぜ暗号資産の分離課税に慎重だったのですか?

財務省は、上場株式等やFXを含む先物取引に一律20%の分離課税が認められてきた理由として、税制の中立性・簡素性・適正執行の確保に加え、「貯蓄から投資へ」という政策的要請や、投資家保護の手厚い取引所取引を促進する観点を、繰り返し挙げてきました。そして重要なことに、分離課税を設けるには、そもそもその取引を国として強く支援・保護すべき政策的要請が存在することが前提だ、という説明をしてきました。

暗号資産については、給与や事業で稼いだ人には最大55%の税率がかかる一方で暗号資産は20%でよいのか、株式のように家計が暗号資産を購入することを国として推奨するのが妥当か、といった課題があるとして、株式やFXと同列には論じられない、というのが従来の立場でした。実際の国会答弁を引きます。

国会答弁(抜粋)

星野次彦主税局長(平成30年3月22日・参議院財政金融委員会。会議録
「分離課税の特例を設けるに当たって、投資家保護規制が十分に講じられていることが重要であるということはそのとおりであると考えておりますけれども、必ずしもそれだけで十分というわけでもなく、そもそもその取引をやはり国として強く支援、保護する政策的要請が存在することが前提であると考えております。」

矢野康治主税局長(令和元年11月5日・衆議院財務金融委員会。会議録
「暗号資産の取引による所得につきまして、二〇%の分離課税を同じく採用するということにつきましては、同じ一億円であっても、給与や事業で稼いだお金は最大五五%の税率が適用される一方で、暗号資産の取引で稼いだ方は二〇%の税率でよいとすることについての国民的理解が得られるかどうかですとか、あるいは、株式のように、家計が暗号資産を購入することを国として推奨することが妥当かどうかなど、さまざまな課題があると考えております。」

麻生太郎財務大臣(令和2年6月2日・参議院財政金融委員会。会議録
「この暗号資産というものを家計にも進めろという話と似たようなことになるので、なかなか今の段階としてはまだ難しいんじゃないかなというのが率直な実感です。」

つまり従来は、分離課税を与えること自体が、国による一種の後押しに接続するという理解が前提にありました。分離課税は「国として支援・保護すべき取引」にこそ認められる取扱いであって、暗号資産はその手前にある、という位置づけです。

今回、政府・与党はどんな理由づけで分離課税を推し進めたのですか?

ところが令和8年度改正で、政府・与党は分離課税へと舵を切ります。その際に用いた理由づけの言葉が、「国民の資産形成に資する金融商品」でした。

令和7年6月に閣議決定された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」は、暗号資産を「国民の資産形成に資する金融商品として業法において位置付ける」としたうえで、分離課税の導入を含めた見直しの検討を掲げました。これを受けて、令和8年度税制改正大綱は、登録簿に登録された暗号資産(特定暗号資産)の譲渡益等を、他の所得と分離して20%(所得税15%・個人住民税5%)で課税する方針を掲げ、これが令和8年度の税制改正で措置されました。

「資産形成に資する金融商品」――政府・与党側の主な文言

令和7年6月・閣議決定(新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画)
「暗号資産を国民の資産形成に資する金融商品として業法において位置付ける…分離課税の導入を含めた税制面の見直しの検討も併せて行う」

令和8年度税制改正大綱(与党大綱)
「国民の資産形成に資する暗号資産に限って、その現物取引、デリバティブ取引及びETFから生ずる所得を分離課税の対象とする」

長年ためらってきた「家計に推奨してよいか」という関門に対して、政府・与党は「資産形成に資する金融商品だ」と正面から答える形で、分離課税の導入へと舵を切ったわけです。

附帯決議は、その理由づけとそろっていますか?

必ずしもそろっていません。分離課税の適用の前提となる金商法改正の法案に付された附帯決議の第一項は、分離課税の対象化が「国として暗号資産投資にお墨付きを与える意図ではない」と述べ、第二項は「暗号資産の大部分には裏付け資産が無い」と釘を刺しています。

税制改正大綱で「資産形成に資する金融商品」と前向きに位置づけたのは政府・与党の側、「お墨付きではない・裏付け資産がない」と抑えたのは、金商法改正の法案を審査した衆参両院の委員会が付した附帯決議の側です。推進する政府・与党の側と、それに留保を付ける国会審議の場の側とで、方向の異なるメッセージが同時に出ているのです。厳密にいえば、附帯決議は本会議の議決を経ない委員会の意思表示であり、国会(両院の本会議)全体の意思決定ではありません。しかし、この附帯決議を採択したのは、法案そのものを可決した当の委員会(衆議院財務金融委員会・参議院財政金融委員会)です。分離課税への道を開く法案を通した審議の場の内部から、「お墨付きではない」という留保が同時に発せられた構図に変わりはありません。この食い違いこそが、暗号資産の分離課税の正当化が、いまなお一本の筋に収まっていないことを物語っていると、筆者は受け止めています。

なお、令和8年7月14日には、参議院財政金融委員会も、法案の可決後に附帯決議(全14項)を採択しました。「お墨付きを与える意図ではない」(第一項)、「暗号資産の大部分には裏付け資産が無い」(第二項)という文言は、衆議院の附帯決議と同文のまま維持されています。この留保は、衆議院の一委員会にとどまらず、衆参両院の委員会で共有されたものといえます。

附帯決議が「お墨付きではない」とわざわざ念を押さなければならなかったこと自体が、「分離課税を与えること=国による後押し」という従来の理解の引力の強さを、裏側から示しているともいえます。

なぜ「お墨付きではない」と書かざるをえなかったのですか?

附帯決議第一項の「お墨付きではない」は、それだけを取り出すと唐突にも見えます。しかし第二項・第三項とあわせて読むと、そう書かざるをえなかった背景が見えてきます。

① 商品としての性質
第二項が「暗号資産の大部分には裏付け資産が無いという商品特性」と述べるとおり、暗号資産の多くは、株式のように発行体の事業や資産に価値の裏づけを持ちません。国が「資産形成に資する金融商品」と位置づけたとしても、商品そのものの性質が変わるわけではない――ここに、留保を付けざるをえない理由の一つがあると、筆者は見ています。

② 規制の実効性の限界
第一項は「規制の及ばない暗号資産取引が引き続き存在する」と述べ、第三項は無登録業者による詐欺的被害への対応として、証券取引等監視委員会の犯則調査対象の拡大や、裁判所への緊急差止命令の申立てに係る体制整備を求めています。法的には無登録業者にも規制は及びえますが、海外に拠点を置く業者やDEXに対して執行を貫徹することは容易ではなく、規律の中心は事実上、国内の登録業者を通じた取引に置かれます。制度が守れる範囲が限られている以上、「国が暗号資産投資全般を後押しした」と受け取られては困る――そうした事情が、あの一文の背後にあったのではないでしょうか。

この2点は、税制の側にもそのまま映っています。分離課税の対象が国内取引所を通じた特定暗号資産の取引に絞られたことは、規制と執行が実効的に届く範囲と重なります。分離課税と総合課税の併存という二重構造は、偶然生じたものではなく、規制の実効性の限界が税制の側に投影された結果とも読めるのです。

しかし、そうだとすると、逆向きの問いが立ちます。では、なぜ特定暗号資産には分離課税を認めたのでしょうか。

特定暗号資産もまた、基本的には裏付け資産を持ちません。附帯決議第二項は「暗号資産の大部分には裏付け資産が無い」と述べており、そこから特定暗号資産を除くとは書いていません。税制上の特定暗号資産は登録簿に登録された暗号資産をいうものですが、登録という手続を経たことが、その資産に裏づけを与えるわけではありません。規制についても同じです。同じビットコインでも、国内の登録業者を通じて売買すれば規律が及び、海外取引所やDEXで売買すれば及びにくい。規律の所在は、銘柄そのものではなく取引の経路にあります。

つまり、特定暗号資産を分離課税の対象としたことの実質的な理由は、「その資産が優れているから」ではなく、「その経路なら取引を捕捉できるから」に近いように見えます。ところが、捕捉できることは、対象範囲を画する理由にはなっても、税率を軽くする理由にはなりません。適正な課税ができることと、優遇に値することとは、別の事柄だからです。

したがって、次の問いには正面から答える必要があると、筆者は考えます。

  • 裏付け資産を持たず、規律も取引経路に依存するという性質を前提としてもなお、特定暗号資産への分離課税が国益にかなうといえるのはなぜか。
  • 同じ性質を持ちながら、経路が違うだけで総合課税にとどまる暗号資産との差を、どのように説明するのか。
  • そして何より、給与所得や事業所得への課税より軽く扱う理由は何か。

三つ目は、新しい問いではありません。令和元年の国会で矢野主税局長が自ら立てた問い――同じ1億円でも給与や事業で稼げば最大55%、暗号資産で稼げば20%でよいとすることに国民的理解が得られるか――そのものです。令和8年度改正は「国民の資産形成に資する金融商品」という位置づけを与えましたが、それはこの問いへの答えというより、結論の言い換えにとどまっているのではないか。附帯決議が「お墨付きではない」と念を押したことは、当の立法過程の内部でも、その答えがまだ用意されていないことを示しているように、筆者には見えます。

附帯決議の「お墨付きではない」は、どう読めばよいのでしょうか?

前のQでは、この一文が書かれた背景を見ました。では、書かれた一文そのものは、どう評価すればよいのでしょうか。附帯決議が付されて間もない段階のため、確立した評価があるわけではありません。当事務所として断ずるものでもありませんが、この一文からは、少なくとも次の三つの読み方が成り立つと考えます。

① 矛盾とも読める、という見方
投資者保護を強化し、株式やFXと同じ申告分離課税の対象に加えながら、その適用の前提となる法案の可決と同時に「お墨付きではない」と念を押すのは、矛盾しているようにも読めます。少なくとも、そう読める以上、附帯決議を付した委員会、ひいては立法府は、その整合性をもっと丁寧に説明すべきだ、という見方が成り立ちます。

② 懐疑論の表れと読む見方
暗号資産は結局、有価証券や先物取引と完全に同じ土俵に乗ったわけではありません。分離課税は特定暗号資産に限られ、しかも「お墨付きではない」と留保が付いた――ここに、日本では暗号資産に対する懐疑論がなお根強いことの表れを読み取ることもできます。一部の暗号資産銘柄をめぐる不透明な事案が繰り返し報じられてきた状況を踏まえれば、うなずける読み方です。あわせて、推進に傾きがちな流れのなかで、慎重な視点をあえて決議に残した点に、議員側の良心を見て取ることもできます。

③ 今後の税制への含意と読む見方
この懐疑が続く限り、暗号資産に対する厳しい税制――たとえば総合課税に残る暗号資産に2分の1課税等を認めない扱い――が、今後も存続することを示唆している、とも読めます。

このように複数の読み方が成り立つこと自体が、暗号資産の分離課税の正当化がまだ一つの筋に収まっていないことの表れだと、筆者は受け止めています。

分離課税と総合課税が「併存する状態」は、暗号資産に特有の問題ですか?

いいえ。分離課税と総合課税が併存すること自体は、暗号資産に特有の現象ではありません。たとえば金地金でも、現物を売却した利益は原則として総合課税(譲渡所得)、金の先物取引は申告分離課税という形で、両者は併存しています。ですから、注意すべきなのは「併存している」という形そのものではなく、その中身です。

金の現物であれば、総合課税でも譲渡所得として、5年超保有の場合の2分の1課税や、特別控除、他の所得との損益通算といった通常の取扱いが働きます。ところが令和8年度税制改正大綱は、総合課税の譲渡所得の基因となる暗号資産について、譲渡所得の特別控除を適用しないこと、5年超保有の長期譲渡所得に認められる2分の1課税を適用しないこと、損益通算を適用しないことを、あわせて定めました。

金地金と暗号資産の譲渡所得(総合課税)の取扱い

項目金地金の現物暗号資産(譲渡所得となる場合)
課税方式総合課税(譲渡所得)総合課税(譲渡所得)
長期(5年超)の2分の1課税ありなし
譲渡所得の特別控除ありなし
他の所得との損益通算不可

※ 暗号資産の譲渡益は原則として雑所得ですが、譲渡所得となる場合の取扱いとして、令和8年度税制改正大綱⑥は2分の1課税・特別控除・損益通算を適用しないこととしています。

つまり、同じ「総合課税の譲渡所得」でありながら、暗号資産だけが、金の現物のような通常の取扱いから切り離されているのです。もっとも、この2分の1課税などを暗号資産についてだけ外した趣旨・背景が何かは、現時点の公表資料の文言からは判然としません。ここは断定を避け、今後の政省令や解説資料で明らかにされるべき論点として、なお不明と整理しておきます。

なお、分離課税の対象を特定暗号資産(国内取引所を通じた取引)に絞ったこと自体には、一定の理由が認められます。株式には株主名簿や振替制度など取引を把握しうる仕組みがありますが、暗号資産にはこれに相当するものがありません。そこで、取引業者による報告制度を通じて取引内容が税務当局に届く経路に限って分離課税を適用する、という設計には、適正課税(取引の捕捉可能性)の観点から筋が通ります。ただし、これは分離課税を適用する範囲を画する理由であって、分離課税という優遇を与える理由そのものではありません。この点はQ5で述べたとおりです。

損失の繰越控除や損益通算の詳しい取扱いは、次の記事で解説しています。
暗号資産の損失繰越と損益通算――上場株式との通算はできるのか

結局、暗号資産への分離課税はどう正当化されるのですか?

令和8年度改正は、「株式やFXと比べて暗号資産に分離課税を導入したことをどう正当化するのか」という問いに、決着をつけたわけではない、というのが筆者の見立てです。政府・与党は「資産形成に資する金融商品」と前向きに位置づけて分離課税を推し進める一方、その適用の前提となる金商法改正の法案を可決した衆参両院の委員会は、可決と同時に附帯決議で「お墨付きではない」と一歩引きました。優遇となる分離課税は特定暗号資産という狭い範囲にとどまり、総合課税に残る暗号資産には通常の譲渡所得の取扱いを認めない措置も置かれています。

残された宿題

「なぜ暗号資産に、この形の分離課税なのか」という説明は、今後の政省令の整備や税制改正の議論のなかで、あらためて問われていくことになると、筆者は見ています。とりわけ、総合課税に残る暗号資産についてだけ2分の1課税等を外した理由は、明らかにされるべき論点として残っています。

あわせて、より根本的な宿題が残ります。なぜ特定暗号資産には、給与所得や事業所得より軽い課税でよいのか。裏付け資産を持たず、規律も取引経路に依存するという性質は、特定暗号資産にも当てはまります。捕捉可能性は対象範囲を画する理由にはなりますが、税率を軽くする理由にはなりません。この問いに正面から答えることなしには、暗号資産の分離課税の正当化は完結しないと、筆者は考えます。

なお、附帯決議第十二項・改正法附則92条による施行後5年を待たない見直しは、金商法等の規制の枠組み(改正後の各法律)を対象とするもので、税制そのものの見直し条項ではありませんが、暗号資産をめぐる制度全体が動きうる文脈として、税制の扱いにも影響しうる点は注視すべきです。

公平性という留保は、税制の側にも書き込まれています。ここまで取り上げてきたのは金融商品取引法改正の附帯決議ですが、分離課税そのものを創設した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第12号)の法案についても、参議院財政金融委員会は令和8年3月31日に附帯決議を採択し、その第四項で、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(いわゆるミニマムタックス)の効果を「暗号資産の分離課税化等の影響も含め」検証し、税負担の公平性の観点から必要に応じて見直すよう求めています(衆議院財務金融委員会の附帯決議には暗号資産への言及はありません)。同じ改正法は、このミニマムタックスの計算に用いる基準所得金額に「特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額」を掲げており(措置法41条の19第2項第9号)、暗号資産の分離課税による所得も、極めて高い水準の所得については、ミニマムタックスの計算から外れません。分離課税だからといって高所得層で税負担率が際限なく下がるわけではない、という設計が置かれていることになります。詳細は第一報の該当セクションをご覧ください。

附帯決議の内容や、施行後5年を待たない見直し(第十二項)については、第一報の記事で扱っています。あわせてご覧ください。

出典
・星野主税局長の答弁:参議院財政金融委員会 会議録(平成30年3月22日
・矢野主税局長の答弁:衆議院財務金融委員会 会議録(令和元年11月5日
・麻生財務大臣の答弁:参議院財政金融委員会 会議録(令和2年6月2日
・令和8年度税制改正の大綱(令和7年12月26日閣議決定。分離課税20%・大綱⑥〈特別控除・2分の1・損益通算の不適用〉・適用開始日等の措置)。財務省「税制改正の概要」から各年度分を参照できます。
・与党「令和8年度税制改正大綱」(自由民主党・日本維新の会、令和7年12月19日。「国民の資産形成に資する暗号資産に限って」現物取引・デリバティブ取引・ETFから生ずる所得を分離課税の対象とする旨を明記)
https://www.jimin.jp/news/policy/212129.html(大綱本文PDFは同ページ内にリンク)
・「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」2025年改訂版(令和7年6月13日閣議決定。web3の項で、暗号資産を国民の資産形成に資する金融商品として業法上位置付けるとともに、分離課税の導入を含めた税制面の見直しの検討を行う旨を明記)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/ap2025.pdf
・衆議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(第221回国会・衆議院財務金融委員会)
https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_rchome.nsf/html/rchome/Futai/zaimu0E93ADFCB09C920249258E12001EE85B.htm
・参議院「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(第221回国会・参議院財政金融委員会・令和8年7月14日)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/221/f067_071401.pdf
・参議院「所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(第221回国会・参議院財政金融委員会・令和8年3月31日。第四項で、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置につき暗号資産の分離課税化等の影響も含めた検証を求める)
https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/221/f067_033101_1.pdf
・金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律の公布(令和8年7月23日付官報。令和8年法律第64号)