暗号資産の損益計算ソフトの信頼性について、米国の最新実証研究(Tax Notes Federal掲載)に基づき、税理士・東洋大学法学部教授の泉絢也が解説します。
結論
- 米国の実証研究(Tax Notes Federal掲載)によると、同じ取引データを5~8社の主要な暗号資産損益計算ソフトに入力した場合、ソフト間で計算結果に大きなばらつきが生じることが明らかになりました。
- 差異の規模は、ある実務家の事例で約53万5,000ドル(約8,000万円)に達しています。
- 続く研究(2026年Working Paper)では、エラーが3つのカテゴリに整理されています。(1)税法の不確実な取引(Tax Law Uncertain Transactions)、(2)計算上のエラー(Computational Errors)、(3)ユーザー操作によるエラー(User Generated Errors)です。
- 同じソフトを使っていても、計算した時期によって結果が変わるケースも確認されています。
- 米国では2025年からForm 1099-DA(暗号資産版1099フォーム)が始まっており、当初は年間最大80億件が提出される見込みでした。ただし一部規制の廃止により、この推計値は減少する見込みですが、ソフトウェアのエラーが大規模に影響する可能性は引き続き残ります。
- 日本でも暗号資産の譲渡原価は総平均法が原則とされており、計算方法に関連する内部処理の問題は日本のソフトでも発生しうる論点です。
- 令和8年度税制改正で暗号資産報告書制度(措法38の2④)が創設され、取引業者から税務当局への定型的報告が、分離課税の導入とあわせて整備されました。この制度の信頼性は、損益計算ソフトの精度に依存するため、米国の研究は日本の制度設計にも直接示唆を与えます。
本記事は,Tyler S. Menzer, Pitfalls of Cryptocurrency Service Providers’ Tax Reporting, 187 Tax Notes Fed. 1689 (2025),Tyler S. Menzer, Errors Among Cryptocurrency Tax Experts (Apr. 2026) (unpublished manuscript), https://webdocs.gmu.edu/wp-content/uploads/5-Cryptocurrency-Tax-Errors.pdf,泉絢也「暗号資産(仮想通貨)の税務調査と税務執行上の課題―ブロックチェーン分析と損益計算の重要性―」税大ジャーナル38号(2026年1月)59頁に基づき,税理士・東洋大学法学部教授の泉絢也が解説しています。
この記事でわかること
- ✔ そもそも「損益計算ソフト」とは何をするソフトなのか(日米共通の位置づけ)
- ✔ なぜ暗号資産損益計算ソフトの計算結果はソフトごとに違うのか
- ✔ 米国の実証研究で判明した具体的な差異の大きさ
- ✔ エラーの原因となる3つのカテゴリ(税法の不確実性・計算・ユーザー操作)
- ✔ 計算方法を切り替えた際に発生する過去の取引履歴の再計算問題
- ✔ 米国Form 1099-DA(年間80億件)が抱える制度的リスク
- ✔ 米国の研究が示す日本の納税者・税理士への教訓
- ✔ 複雑な暗号資産取引に備える納税者の自衛策
📖 目次
暗号資産損益計算ソフトの計算結果はなぜソフトごとに異なるのか
暗号資産の損益計算は、専用のソフトに任せれば自動的に正確な計算ができる――そう思われがちです。
本記事が扱う暗号資産損益計算ソフト(米国・日本で提供されている各種ソフト)は、確定申告そのものを完結させるソフトではありません。
これらのソフトの守備範囲は、ウォレットや取引所に接続して取引履歴を自動集約し、取得価額(コストベース)と譲渡損益を計算し、その結果をまとめたレポートや申告用の添付書類を生成するところまでです。
たとえば米国では、損益計算ソフト(Koinly等)は譲渡損益を計算したうえでIRS用のForm 8949・Schedule Dを事前入力して出力し、ユーザーはそれをTurboTax等の確定申告ソフトに取り込んで最終申告を行います。日本では、これらのソフトが出力するのは損益の集計レポートであり、ユーザーはその集計額(現行制度では雑所得、令和8年度税制改正の施行後は特定暗号資産取引業者を通じた取引について譲渡所得等として分離課税)を国税庁の確定申告書等作成コーナーやfreee・マネーフォワード等の税務申告ソフトに入力して申告を完結させます。
つまりこれらのソフトの本質は「譲渡損益を算定する計算エンジン」であり、本記事で問題にするのは、この計算層の信頼性です。日米いずれの制度でも、損益計算ソフトの出力は申告の出発点であって、最終的な申告書の正確性はその計算精度に左右されます。
しかし、米国の最新の実証研究によると、複数の暗号資産損益計算ソフトに同じ取引データを入力しても、計算結果にはソフト間で大きなばらつきが生じることが明らかになりました。
その原因は、暗号資産の損益計算にはソフトウェアの設計判断によって結果が変わる要素が多数存在するためです。具体的には、以下のような要素があります。
▼ 結果を左右する4つの設計判断
| 設計判断の論点 | 内容 |
|---|---|
| (1) 価格データの取得元 | 暗号資産の価格をどの取引所のデータから取得するか。同じ資産でも取引所ごとに価格が異なる |
| (2) 送金タイプの識別 | ウォレットへの入金を、内部送金(自分の別ウォレットからの移動)と外部からの受領(購入・収入・贈与)のいずれと性質決定するか |
| (3) 取引手数料の処理 | 取引手数料を費用として処理するか、取得価額に加算するか |
| (4) 計算方法切り替え時の扱い | 計算方法(FIFO、LIFO等)を切り替えた際に、過去の取引履歴をどう扱うか |
これらの判断は税法上一意に決まるわけではありません。そのため、各社のアルゴリズム(計算手順)の設計によって、結果が変動することになります。
米国実証研究の具体的な結果
複数の主要な暗号資産損益計算ソフトに同じ取引データを入力した実験では、以下のような結果が報告されています(Tax Notes Federal Vol. 187, 2025年6月2日号)。
▼ 同じ取引データでも結果は大きくばらつく
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 真の値 | 1,266ドルの損失(税理士による手計算) |
| 各社の計算結果のレンジ | 1,516ドルの損失 〜 2,696ドルの利益 |
| 対象ソフト数 | 5社(短縮版)/8社(完全版、2026年Working Paper) |
| 結果の比較 | ソフト間で計算結果に大きなばらつき(一部のソフトは近接した値、他は大きく乖離) |
!実務家から報告された衝撃的な事例
米国の実務家から報告された別の事例では、2社のソフト間の差が約53万5,000ドル(1ドル150円換算で約8,000万円)に達したケースがあります。
具体的には、一方のソフトは20万2,252ドルの損失と計算し、他方は33万3,528ドルの利益と計算しました。
同じクライアント、同じ取引データを使っても、これだけの差が生じます。取引件数や取引数の認識すら2社で異なっていました。
▼ 同じソフトでも計算する時期によって結果が変わる
この研究では、さらに同じソフトを使っていても、計算した時期によって結果が変わるケースも確認されています。
たとえば、あるソフトが2023年第1四半期に計算した利益は400ドルでしたが、同じ取引データを2023年第3四半期に再計算したところ、利益は2,696ドルへと跳ね上がりました。
これは、ソフトウェアの提供元がアルゴリズムを内部的に変更・修正しているためと考えられます。
!納税者には通知されない
論文の指摘によれば、テストしたどのソフトも、利用者に対して「計算結果が変わった」という通知を行っていません。
納税者は確定申告時点での計算結果に基づいて申告を行います。しかしソフトが後にアルゴリズムを修正すれば、過去の確定申告内容が現在のソフト計算結果と不一致になっていくことになります。
これは伝統的な証券会社が修正Form 1099を発行する義務を負っていることと対照的です。
エラーの3カテゴリ ― 税法の不確実性・計算・ユーザー操作
続く研究(Tyler S. Menzer, Errors Among Cryptocurrency Tax Experts (Apr. 2026) (unpublished manuscript), working paperはこちらで公開)では、暗号資産損益計算ソフトのエラーが以下の3つのカテゴリに整理されています。
(以下の各カテゴリの詳細記述は、2026年Working Paperおよび2025年Tax Notes短縮版(Section III)の論点を統合したものです。)
1税法の不確実な取引(Tax Law Uncertain Transactions)
取引の税務処理が、根拠となる法令自体の不明確さや曖昧さから、税法上一意に決まらない取引を指します。具体的には、暗号資産の価格をどの取引所のデータから取得するか、ウォレットに入金された暗号資産を購入・受領(収入)・贈与・自分の別ウォレットからの内部移動のいずれと判定するか、といった論点が該当します。論文は、このカテゴリの「エラー」は計算結果に差を生じさせるものの、必ずしも法令違反とは言えないと整理しています。
2026年Working Paperの実証研究では、8社中7社が、Coinbase(米国大手暗号資産取引所)の公式価格より低い proceeds(譲渡対価)を報告していました。
これは結果として、利益の過少報告につながる可能性があります。
2計算上のエラー(Computational Errors)
税法は明確だが、ソフトウェアの実装に誤りがあるエラーです。
たとえば、2026年Working Paperの実証研究では、一部のソフトウェアが、300ドルで購入したUSDC(米ドル連動ステーブルコイン)の取得価額を0ドルと認識する事例が報告されています。なお、2025年Tax Notes短縮版でも、送金された暗号資産の取得価額をゼロと認識するソフトウェアの存在が一般論として指摘されています。
このタイプのエラーは、ユーザーがブロックチェーンや暗号資産の損益計算の専門知識を持っていない場合、発見が困難です。
3ユーザー操作によるエラー(User Generated Errors)
ソフトウェアは、ブロックチェーン上の取引データと矛盾する変更も許容する設計になっています。
たとえば、ブロックチェーン上ではビットコインをイーサに交換した取引であっても、ユーザーがソフトウェア上で「テザーをソラナに交換した」と書き換えることも可能です。
論文はこの点について、「ソフトウェアが提供する書類は改ざんが可能であり、税理士や監査人が依拠することはできない」と指摘しています。
論文は、各カテゴリには異なる政策対応が必要と指摘しています。
(1)税法の不確実な取引については、税法ルールそのものを明確化する立法・規制レベルの対応が必要であり、(2)計算上のエラーはソフト会社の品質管理・IRSによる執行強化が必要であり、(3)ユーザー操作によるエラーはソフトウェアの仕様面(ブロックチェーンと矛盾する変更を許容しない設計など)と、未報告口座の自動検出技術での対応が必要、というように整理されています。
このカテゴリ整理は、「ソフトの問題はソフト会社の責任」と単純に切り捨てられないことを示しています。
計算方法を切り替えると過去の取引履歴も再計算される問題
米国の実証研究では、計算方法切り替え時のエラーが特に深刻な問題として指摘されています。
ユーザーは年度ごとに計算方法(米国ではFIFO、LIFO、specific identification等の選択肢があります)を選択できます。
しかし、米国の一部のソフトウェアでは、ある年に計算方法を変更すると、ソフトウェアが過去の取引履歴全体を新しい計算方法で再計算してしまう仕様になっています。
▼ 論文の具体例:1,250ドルの過少申告
| 時点 | 内容 |
|---|---|
| 2023年 | ユーザーがLIFO(後入先出法)で確定申告(利益500ドル) |
| 2024年 | ユーザーがFIFO(先入先出法)に切り替え |
| 本来の正しい計算 | 2024年に4,250ドルの利益を計上すべき |
| ソフトの計算 | 「ユーザーは過去もFIFOを使っていた」と仮定して再計算し、3,000ドルの利益のみ計上 |
| 結果 | 1,250ドルの過少申告 |
この問題は、ユーザーがソフトウェアの内部処理を知らない場合、気づかぬまま申告誤りにつながる可能性があります。
!日本でも発生しうる論点
日本では暗号資産の譲渡原価は総平均法が原則とされており(所得税法48条の2、所令119条の2)、計算方法の選択肢は米国とは異なります。
しかし、計算方法に関連する内部処理の問題は、日本の損益計算ソフトにおいても発生しうる論点です。
たとえば、過去に評価方法を変更した場合(移動平均法から総平均法、又はその逆)の過去履歴の引継ぎ、複数年にまたがる残高の引継ぎ、複数のソフト間でのデータ移行など、内部処理の透明性が問われる場面は日本にも存在します。
なお、日本では暗号資産の評価方法は銘柄ごとに選定し、変更には所轄税務署長への申請(原則として現在の評価方法の採用から3年経過後)が必要です(所令119条の3、119条の5)。法令上、年の途中での変更は想定されていません。
日本における同種の問題については,泉絢也「暗号資産(仮想通貨)の税務調査と税務執行上の課題―ブロックチェーン分析と損益計算の重要性―」税大ジャーナル38号(2026年1月)59頁が,「同一のデータを取り込んでも利用するソフトによって損益計算の結果が異なる場合があることに注意が必要である」と指摘するなど,損益計算の困難性を体系的に論じています。
米国Form 1099-DA(年間80億件)が抱える制度的リスク
米国では、2025年から段階的に、暗号資産取引所等が暗号資産の取引情報を税務当局(IRS)と納税者の双方に報告する制度(Form 1099-DA、暗号資産版1099フォーム)が始まっています。
IRSの予測では、年間で最大80億件のForm 1099-DAが提出される見込みでした。これは、米国の暗号資産税務情報報告の規模が急拡大することを意味します。
ただし論文は、一部規制(T.D. 10021)が議会審査法(Congressional Review Act)により廃止されたため、この推計値は減少する見込みであることも指摘しています。それでも、Form 1099-DAを通じた第三者報告の規模が大きいことに変わりはなく、暗号資産損益計算ソフトが大規模に関与し続けることも明示されています。
▼ Form 1099-DAと損益計算ソフトの関係
問題は、これらのForm 1099-DAの多くが、本記事で紹介した暗号資産損益計算ソフトを使用して作成される点です。
実証研究で示されたような計算上のエラーが、大量のフォームに影響する可能性があります。
!正しい申告者が税務調査の対象になるリスク
IRSが納税者の確定申告書とForm 1099-DAを照合した際、ソフトウェアの計算誤りが原因で不一致が生じると、納税者が誤った計算をしているにもかかわらず、税務調査の対象となるリスクがあります。
この場合、納税者は「自分は正しく申告したが、取引所のソフトが間違えた」と主張することになりますが、その立証は容易ではありません。
第三者報告制度(third-party reporting)は通常、税務コンプライアンスを高める効果があるとされてきましたが、報告の精度が確保されない場合、正しい申告者が不当に調査対象となる逆説的な状況が生じます。
日本では、米国Form 1099-DAに概念的に近い制度として、暗号資産報告書制度(令和8年度税制改正で創設、租税特別措置法38条の2第4項)があります。暗号資産取引業者は、居住者等との特定暗号資産の譲渡等について、翌年1月31日までに税務署長に報告書を提出する義務を負うこととなりました。この制度は、分離課税の導入と一体で整備された「取引業者から税務当局への定型的な報告」の仕組みです。
これとは別に、日本ではCARF(暗号資産等報告枠組み、令和8年1月施行)も施行されています。CARFは、相手国に所在する取引業者から、当該国の税務当局を経由して、日本居住者の海外取引情報が日本の国税庁に提供される国際情報交換の枠組みであり、Form 1099-DAのような国内ブローカー報告とは目的・対象が異なります。
暗号資産報告書制度とCARFはいずれも、取引業者の報告内容の精度に依存しています。米国の研究は、第三者報告制度の実装には、ソフトウェアの精度検証が不可欠であることを米国の経験から示唆しています。
!分離課税の信頼性は損益計算ソフトの精度に依存する
日本の暗号資産報告書制度は、分離課税の導入と一体で整備された仕組みです。取引業者から税務当局へ正確な情報が報告されることは、分離課税制度の信頼性を支える重要な要素となります。
報告書には、譲渡対価の合計額・取得対価の合計額に加えて、「移入数量」(他の取引所やウォレットからの受入れ)と「移出数量」(他の取引所やウォレットへの送金)が記載されます。税務当局は「年始数量+購入数量+移入数量=売却数量+移出数量+年末数量」の整合性を検証することで、課税の網から外れる取引を捕捉することが想定されています。
ところがMenzer論文が示した米国の実証研究は、まさにこの「内部送金か外部送金か」の識別においてソフトウェアがエラーを起こすことを実証しています。日本の暗号資産報告書制度の様式が、損益計算ソフトの計算結果に依拠する以上、米国の実証結果は日本の分離課税制度の信頼性に直結する論点として参照に値します。
日本の納税者・税理士への教訓
米国と日本では税制が異なりますが、暗号資産の損益計算に関する技術的な問題は共通しています。
日本の納税者・税理士にとっての主な教訓は、以下のとおりです。
1ソフトの計算結果を「無条件には」信頼しない
暗号資産損益計算ソフトは便利なツールですが、その出力を無条件に信頼することは適切ではありません。
特に金額が大きい場合や複雑な取引を行っている場合は、手計算による検算や、別ソフトでのクロスチェックを行うことが望ましいです。
2取引履歴・データ・備忘記録の自己保管
米国の研究が示すとおり、ソフトのアルゴリズムは予告なく変更されることがあります。
取引履歴・データ・備忘記録は、ソフトとは別に自ら保管しておくことが重要です。CSVファイル、取引所のスクリーンショット、ウォレットアドレスのリスト等を体系的に管理しましょう。
3計算方法の変更履歴の記録
日本では総平均法が原則ですが、移動平均法を選択している場合や、過去に方法を変更した経緯がある場合は、その記録を明確に残すことが重要です。
ソフトの内部処理を盲信せず、過去の確定申告書に記載された数値とソフトの現在の計算結果が一致しているかを毎年確認しましょう。
4複雑な取引の場合は専門家への相談
海外CEX(中央集権型取引所)、DEX(分散型取引所)、プライベートウォレット、DeFi、ステーキング、流動性供給などを利用している場合、ソフトウェアでは正確に対応できないことがあります。
こうした場合は、暗号資産の損益計算に精通した税理士に相談することが推奨されます。
複雑な暗号資産取引に備える納税者の自衛策
暗号資産損益計算ソフトの限界を理解した上で、納税者が取るべき自衛策を整理します。
▼ 自衛策のチェックリスト
| 分野 | 具体的な対応 |
|---|---|
| 取引記録 | すべてのCEX・DEX・ウォレットの取引履歴をCSV等で定期的にエクスポートし、独立に保管 |
| 残高の年末確認 | 各CEX・ウォレットの年末残高をスクリーンショット等で記録 |
| 計算結果の検証 | 主要な取引については、手計算または別ソフトで検算 |
| 計算方法の記録 | 採用している計算方法(総平均法・移動平均法等)と変更履歴を明文化 |
| 取引タイプの整理 | エアドロップ、ステーキング報酬、レンディング、流動性供給等の取引タイプごとに記録を分離 |
| 専門家への相談 | 複雑な取引を行っている場合は、早めに税理士へ相談 |
特に日本では、暗号資産の譲渡原価は総平均法が原則とされており、複数のCEXの口座やウォレットを利用している場合、1つでも漏れると税額計算全体に影響する可能性があります。
損益計算の正確性は、税務コンプライアンスの観点から極めて重要です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 暗号資産損益計算ソフトの計算結果を無条件に信頼してよいですか?
適切ではありません。米国の実証研究では、同じ取引データを複数のソフトに入力した場合、ソフト間で計算結果に大きなばらつきが生じることが明らかになっています。特に金額が大きい場合や複雑な取引を行っている場合は、手計算による検算や別ソフトでのクロスチェックを行うことが望ましいです。
Q2. 米国の研究で具体的にどんな結果が出たのですか?
米国の実証研究(Tax Notes Federal掲載)では、5社の暗号資産損益計算ソフトに同じ取引データを入力したところ、ソフト間で計算結果に大きなばらつきが生じました。真の値は1,266ドルの損失でしたが、各社の結果は1,516ドルの損失から2,696ドルの利益というレンジに分散しました。実務家から報告された別の事例では、2社間の差が約53万5,000ドル(約8,000万円)に達しました。
Q3. なぜソフトごとに結果が違うのですか?
暗号資産の損益計算には、ソフトウェアの設計判断によって結果が変わる要素が多数存在するためです。具体的には、(1)暗号資産の価格をどの取引所のデータから取得するか、(2)ウォレットへの入金を内部送金と外部からの受領のいずれと性質決定するか、(3)取引手数料を費用として処理するか取得価額に加算するか、(4)計算方法を切り替えた際に過去の取引履歴をどう扱うかなどがあります。これらの判断は税法上一意に決まるわけではないため、各社のアルゴリズムによって結果が変動します。
Q4. 同じソフトを使い続けていれば安心ですか?
必ずしも安心ではありません。米国の研究では、同じソフトを使っていても、計算した時期によって結果が変わるケースが確認されています。ソフトウェアの提供元がアルゴリズムを内部的に変更・修正していることが原因と考えられます。重要なのは、毎年の確定申告時点での計算結果を別途保管しておき、後から再計算した結果と比較できるようにしておくことです。
Q5. 米国の研究は日本の納税者にどんな示唆を与えますか?
米国と日本では税制が異なりますが、暗号資産の損益計算に関する技術的な問題は共通しています。日本の納税者・税理士にとっての主な教訓は、暗号資産損益計算ソフトの計算結果を無条件に信頼しないこと、取引履歴・データ・備忘記録をソフトとは別に自ら保管すること、計算方法を変更した際の過去履歴の取扱いに注意すること、複雑な取引を行っている場合は暗号資産の損益計算に精通した税理士に相談することです。
Q6. 日本の暗号資産損益計算ソフトでも同じ問題は起きますか?
日本では同種の実証研究は未実施のため、断定はできません。しかし、暗号資産損益計算に伴う技術的困難性は日米共通であり、日本のソフトでも同様の問題が発生しうる可能性は否定できません。日本では総平均法が原則とされており米国とは制度が異なりますが、データ取得・取込み・取引タイプ判定の困難性は共通の論点です。
